Act.9-100 魔法の国事変〜最終章〜 vs魔法の国の傲慢女王 scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
ハート魔導城の玉座の間の最奥には、玉座に踏ん反り返って座るQueen of Heartと、Queen of Heartの背後に控える明らかに他のスートランプよりも数段上の威圧感を放つ親衛隊最強の魔法少女――【ジョーカー】スートランプ・ロイヤルガードのJOKERの姿があり、二人を守護するようにスペード、クローバー、ハート、ダイヤの2からA――全てのスートランプ・ロイヤルガードが玉座の間の中心付近に集結していた。
『ヤツラノクビヲハネヨ!』
Queen of Heartが命令を下した瞬間、スートランプ・ロイヤルガードのハートはQueen of Heartを守るように魔法の盾を構え、技術力と知識を有するダイヤは魔法の罠を仕掛け始め、クローバーは隠密魔法を発動して姿を消し、スペードはスペード型の穂先の槍を構えて一斉に突撃してきた。
「偃月斬-覇潰-」
雪菜は稲妻のように迸る莫大な覇王の霸気を纏わせた薙刀で斬撃を放ち、迫り来るスペードのスートランプを纏めて吹き飛ばす。
ハートほどの耐久力を持たないスペードの大半はそのまま撃破されたみたいだねぇ……生き残ったのはJ、Q、K、Aか。
「――霸気式限界突破! 時間停止」
生き残ったスペードのJ、Q、K、Aはそのまま雪菜に狙いを定めてスペード型の穂先の槍で突撃刺突を浴びせようとしたみたいだけど、その前に黒華が霸気そのものを全身に巡ることで限界を超えた力を引き出した上で狙撃地点限定で時間を停止させる時間魔法を連続発動して四体の時間を止めた。
「マルチプルダークマター・フェイク!」
スペードのJ、Q、K、Aと隠密行動で着実に距離を詰めてきていたクローバーのスートランプを狙って暗黒物質を顕現して勢いよく地面から噴き上げる「ダークマター・フェイク」を連続で放って撃破していく。
攻撃の主力が全滅したことでスートランプ・ロイヤルガードのJOKERは魔力を凝縮した鉱石を消費して失ったスペースとクローバーを復活させるつもりだったみたいだけど、JOKERが鎌で鉱石を砕く直前に黒華が「時停の盾」を傾けることで時間を停止させる。
「時空支配から解脱せよ」を基に開発したボクのオリジナル時空属性魔法「時空解脱」を発動しているボク達と固有魔法「礼儀知らずは妾には届かぬ」に守られたQueen of Heartはこの時間停止の効果を受けていないけど、時間停止に耐性のないスートランプ・ロイヤルガードはJOKERも含めて完全動きを止めた。
『漆黒魔剣ブラッドリリー』を鞘から抜き払うと同時にボクは俊身と神速闘気を纏ってから地を蹴って加速し、武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣でJOKERの心臓に向かって刺突を放つ。
その瞬間、黒華が発動していた時間停止が解除され、吐血しながらJOKERが頽れた直後にスートランプ達は生きていた個体も死んでいた個体も全て等しく消え去った。
Queen of Heartは「前線に出ることは恥」だと考えている。煩わしいことは全て下々の者がやればいいと思っているから、スートランプ・ロイヤルガードのJOKERがやられても玉座から立ち上がることは無かった。
しかし、スートランプ・ロイヤルガードのJOKERは命を落とし、Queen of Heartが重い腰を上げざるを得ない状況を作った。
『管理者権限』を賭けた本当の戦いが遂に始まる。厄介なのはQueen of Heartの固有魔法だけど、突破する方法は手に入れている。
魔法使いだから魔法少女の固有魔法が封じられても攻撃手段はあるけど、固有魔法に頼り切っているQueen of Heartが積極的に仕掛けてくるとは思えない。それに、いくら10=1といっても事前準備が無ければ魔法の国の魔法は流石に連発することはできない。……そして、その事前準備――「創魔の魔法陣」の痕跡はない。
Queen of Heartが「自分に対する攻撃を全て無力化し、一方的な干渉を可能とする」固有魔法に頼り切っている隙に固有魔法を突破できる攻撃で一気に撃破して『管理者権限』を奪えばいい。この固有魔法も本来は厄介極まりないものだけど、突破の方法はいくつか用意してきた。
このまま仕掛ければ高確率でQueen of Heartに勝てる。……油断は無かったと言いたいところだけど、この時のボクはあまりにもQueen of Heartの愚かで傲慢な性格を過信し過ぎていて、『管理者権限』を得たQueen of Heartがゲーム時代と全く変わっていないと思い込んでしまっていた。
自分が命を落とす可能性を知ってしまったQueen of Heartがいくら傲慢だと言っても何も対策せずまま放置しておく可能性は薄いというのに。
『ブレイモノドモノクビヲハネヨ!』
次の瞬間、ボク達は命を落とした。背後から飛んできた断頭台の刃に首を吹き飛ばされた……『生命の輝石』がなければ今頃確実に死を迎えていただろう。
この刃に乗せられた即死の呪いはスキル【鑑定】を使って調べてみたけどなかなか厄介なものだった。攻撃を浴びた者に耐性を持とうと無効化能力を持とうと絶対に作用する即死の呪い、固有魔法としての名は「全ての生の向かう先は断頭台」。
幸い蘇生魔法を掛けることで蘇生は可能で、自己蘇生魔法も機能する。……ただ、このままこの固有魔法を使われ続ければ『生命の輝石』も足りなくなってくる。
リーリエのアカウントに切り替えて念のために蘇生魔法を三人に掛けるつもりだけど、もっと楽な方法で永続的に「全ての生の向かう先は断頭台」を無効化する方法が必要だ。
そして、「全ての生の向かう先は断頭台」の無効化はボクの予想が正しければ恐らく当初Queen of Heartを倒す方法として考えていたものを流用することで可能になる筈だ。……まあ、Queen of Heartの討伐方法も全ての生の向かう先は断頭台」の無効化の方法も所詮は机上の空論の域を出ない。ぶっつけ本番、こういう展開がワクワクするっていうところを客観視すると、やっぱりボクはラインヴェルド達の生みの親なんだなぁってつくづく思う。
「ボクの大切な者を傷付けた、その報いは受けてもらうよ、Queen of Heart!」
「妾ガ死ネト言ッタモノハ死ナネバナラナイトイウノガ世ノ摂理! クビヲハネヨ! クビヲハネヨ! クビヲハネヨ! クビヲハネヨ!」
ボクは霸気を限界まで振り絞る。覇道の霸気を最終領域・覇王神の領域まで高め、自分の霸気の及ぶ範囲の既存の世界法則を、自らの法則で上書きして自分の望むままに改変する力を発現させる。
その力でボクはボク自身と雪菜、黒華に単一宇宙に相当する防御力――世界から外れた完全永遠の存在となり、例え世界を塗り潰すほどの覇道神の干渉を受けてもその影響を全く受けなくなる求道の霸気の最終領域・求道神を付与した。……バトル・シャトーで開いた剣武大会の時には両立できなかった求道と覇道の最終領域の共存が実現した訳だけど……これ、本当に消耗が激し過ぎるねぇ。
ボクの予想通り、Queen of Heartの断頭台の刃はボク達の首を落とすことができなかった。
これなら、「自分に対する攻撃を全て無力化し、一方的な干渉を可能とする」固有魔法の突破も現実味を帯びてくるねぇ。
「雪菜さん、黒華さん。この霸気はあまり保たない。――予定通り、三人同時に攻撃して仕留めよう。黒華さんには覇道神の力を込めた裏武装闘気の弾丸を渡しておくよ。弾丸には『礼儀知らずは相手にしない者に無理矢理届かせる害意』が込められている」
「地の果てまでも追いかけて必ず殺す……みたいな物騒な意志が込められているのね。……恐ろしいわ。――ありがとう、これなら私でもQueen of Heartにダメージを与えられそうだわ」
「魂魄の霸気《一姫当神》! 私も準備完了です!」
雪菜も超因果魔法少女となり、固有魔法「超因果魔法」を使えるようになった。
雪菜は「聞く耳を持たない相手に声を届かせたい」という願いを次元すら超えるエネルギーで構成された矢に込め、弓に番える。
黒華も覇王神の力が込められた弾丸を銃に装填して狙撃の準備を整えた。
「魂魄の霸気《切断糸》」
そして、ボクも菊夜の魂魄の霸気を使って、無限に細くなる性質を利用して無限小レベルまで細くすることで、限りなく細い線が爆発的な回転をしている存在しないということに限りなく近い球体を作り出し、雪菜、黒華と同時にQueen of Heartに向かって放つ。
「自分に対する攻撃を全て無力化し、一方的な干渉を可能とする」固有魔法を使っていてもこの攻撃を無効化することはできない。この攻撃は存在しないが故にその無効化の影響すらも貫通して軌道にある総てを削り取ってしまうのだから。
誰の攻撃を浴びても理論上はQueen of Heartの死が確定する。それが三人同時、流石にこれならQueen of Heartでも生き残れない。……もし、この攻撃で生き残ってしまったらボク達にはもう打つ手がないということになる。そうなったら撤退しかないかな?
「クビヲハネヨ!」
断頭台の攻撃も通用しないと理解したQueen of Heartはなんと一切の予備動作も呪文や儀式もなく魔法を放ってきた。
攻撃に対する防御ではなく、ボク達に対する直接攻撃ということはボク達三人の攻撃は通用したいと判断したんだろうねぇ。
「『原初魔法』……本来は儀式などの複雑な行程を経なければ発動できない筈の魔法を一瞬にして発動してしまう超魔導師ノーア=ネフィリムにしかできない芸当。……『管理者権限』の力で獲得したのか? それとも、超魔導師ノーア=ネフィリムの魂を変化させて固有魔法として取り込んだのか? ……確かにその力は恐ろしいものだけど、求道神の力に守られたボク達には通用しないよ!」
Queen of Heartはノーアのみが使うことができたと言われる伝説の魔法「究極爆散」を発動し、純白の爆発を巻き起こすも、求道神の力に守られたボク達に効果はない。……ただ、消滅属性は備わってないものの威力そのものは相当高いようだから求道神で単一宇宙レベルの防御力を得ていなかったら相当なダメージを負っていたかもしれないねぇ。まあ、武装闘気や普通の求道の霸気を纏えば程度軽減できたと思うけど。
これが、Queen of Heartの最後の攻撃となった。Queen of Heartはボク達が「究極爆散」の効果で死んだかどうかも確認できないままボク、雪菜、黒華の攻撃を浴びて命を落とす。
ボクの「魂魄の霸気《切断糸》」も、覇道神の力を込めた弾丸も、超因果魔法少女雪菜の力もQueen of Heartにしっかりと作用していた。……流石に『管理者権限』を手に入れても本当の意味での無敵の力は手に入らなかったみたいだねぇ。
スートランプ・ロイヤルガードのJOKER の死体を回収し、続いて『管理者権限』諸共Queen of Heartの死体を回収しようと『統合アイテムストレージ』を操作、しようとしたのだけど……。
『統合アイテムストレージ』の操作が終わる前に目のようなものが浮かんだ黒い影のようなものが現れ、Queen of Heartの死体に触れた。
「……Queen of Heartの魂が、魔法少女としての力が消えている。それに、『管理者権限』も……」
「もしかしなくても、あの影が『管理者権限』とQueen of Heartの力を奪ったのでしょうね」
「……それだけじゃありません。アレからはそれ以外の魔法少女の力も感じます。……この力は、ミューズ・ムーサ・ムーサイと、リツムホムラノメノカミ……それに、他にも……誰かは分かりませんが」
……Queen of Heartを撃破して終わりか、と思っていたけど、まだ最終決戦が残っていたみたいだねぇ。
……覇王神と求道神の力もあまり長くは保たないし、早く決着をつけないと……もし、戦いが長引けば確実にボク達は死ぬ。
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