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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-95 魔法の国事変 scene.35

<三人称全知視点>


 一度目の「願いを叶える魔法の札ナモサダルマプフンダリカサスートラ」で時空耐性を獲得した那由多彼方に時空属性魔法は通用しない。

 その後の那由多彼方は「即死の願い」、「攻撃無効化の願い」、「完全治癒の願い」の三種類を使って一撃で死亡してしまいそうな攻撃は無効化し、重症や致命傷を負えば即座に回復し、圧倒的な即死の力を撒き散らして桃花達を殺しにかかる。


 しかし、『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』の効果で即死は無効化され、『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』一つと引き換えに桃花達は死を免れる。


「……本当に面倒な石だよね。そのブレスレット、邪魔!」


 那由多彼方は『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』のブレスレットに狙いを定めて「破壊の願い」を使うが、『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』のブレスレットが破壊される代わりに石一つが砕け散った。


 『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』の効果は死を回避する効果を持つ石ではない。

 『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』に込められた力は不都合な真実を一度だけ上書きするというものだ。石の持ち主にとって不利な事象を石一つと引き換えに()に書き換える――それが、『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』の本来の力だが、石そのものが禁忌の生成方法ということもあって作成が困難で大量生産はできない。そのため、回避しなければ死んでしまう「死の運命」を回避するために使われてきた。


 『這い寄る混沌の蛇』時代のオシディスもフランシスコ・アル・ラーズィー・プレラーティが死を回避するために使用していたため、その石の効果を誤認していたようである。


桜花の砲浄サクラメント・ピュリファイ!!」


上は天火、下は業火デスフレイム・ヘルファイア!!」


絹紐の小銃(マジカル・マスケット)! 銃弾の乱嵐ピオッジャ・ディ・プロイエッティレ!」


氷槍雨アイシクル・ランス・レイン


魔法の手術室サージカル・オペレーション・ルーム。――魔法の刃の舞ダンシング・スカルペル・アンピュテート!」


幻想魔法毒(マジカル・ポイズン)凝膠弾(ゲルバレット)!」


「終焉の光条!」


倶利迦楼羅剣(クリカルラ)


燦く星、宙より堕ちるデウス・セーマ・グランネメシス、なのですよぉ〜!!」


不動赫雷撃(ふどう・かくらいげき)! 降三世咆嵐刃こうさんぜ・ほうらんじん! 軍荼利衝激鏑ぐんだり・しょうげきかぶら! 金剛夜叉霹降靂こんごうやしゃ・へきこうれき! 大威徳咆熱覇だいいとく・ほうねっぱ!」


 桃花、篝火、美結、小筆、汀、クレール、デルフィーナ、レナード、トーマス、エイミーン、鬼燈の飽和攻撃を那由多彼方はできる限り槍を使って無効化しようとするも、当然全ての攻撃を躱すことも受け止めることもできず、大部分の攻撃を浴びては「完全治癒の願い」を使って復活して再び戦いに身を投じる――その繰り返し。


「もう、ぼくにこんなことに付き合っている時間はないのに! 早く『増魔の指輪アンプリフィケーション』を差し出してよ!」


 呪いの蓄積が予想よりも早く、那由多彼方も少しずつ焦ってきている。

 魔女の卵(オースタン)を取り出す回数も増え、それでも回収しきれずに少しずつ呪いが魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)に蓄積されていく。


「――もう! このままだと魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)が濁っちゃうよ!」


「那由多さんの魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)がどす黒く濁ってきたわー! 後少し、畳み掛けるわよ!!」


 那由多彼方は桃花達の一斉攻撃を浴び、負った傷を治癒するべく「願いを叶える魔法の札ナモサダルマプフンダリカサスートラ」を発動する。

 那由多彼方の固有魔法は那由多彼方の負った傷を修復したが、その瞬間、爆発的な呪いが魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)を撒き散らして膨張――魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)から生じた漆黒の闇でできた殻を破って魔女(ヘクセンナハト)が姿を見せる。


 その姿は神話の八岐大蛇に近い。全身は吸い込まれそうな黒一色で無数の目のようなものが浮かび、身体の各所から手のようなものが伸びている。

 汀も魔女(ヘクセンナハト)を討伐した経験はあるが、そのどの魔女(ヘクセンナハト)とも口では説明できないが、ナニカが違った。


『酷いよ、ぼくの魂魔宝晶(ソウル・クリスタル)を濁らせるなんて。……固有魔法が使えなくなっちゃったじゃないか』


 黒い八岐大蛇の魔女(ヘクセンナハト)から伸びた無数の黒い手が桃花達に伸びる。


『仕方ないね。……もうこうなったら、ぼく自身の手で全てのかわいそうを根絶しよう。……うん、最初からこうすれば良かったんだ』



 八岐大蛇から生じた黒い腕――込められた禍々しい魔力と魔女(ヘクセンナハト)化した那由多彼方自身の言葉から(魔女(ヘクセンナハト)が自我を保っているという前例はないので、そもそもこれが魔女(ヘクセンナハト)であるかどうかも怪しい)、嫌な予感を抱いていた桃花達だったが、その予想通り黒い腕に込められた力は凶悪なものだった。


 触れたものが瞬時に風化し、跡形も無かったように消滅する。文字通り死のエネルギーの塊、これに触れたものは例外なく命を落とす。……まあ、『生命の輝石ラピス・フィロソフィカス・セフィロト』がある限りは死を回避し続けることも可能だが。


 この力が世界に満ちれば、世界は生命が存在できない場所と化すだろう。あらゆる生命が存在しなくなった、全ての「かわいそう」が根絶された理想郷。

 その理想郷を創り出したという意味では、この魔女(ヘクセンナハト)の姿は呪いではなく願いを叶えるための姿と言えるのかもしれない。


 そう考えれば、呪いから生まれる魔女(ヘクセンナハト)とは根本的に違うのも納得がいく。


 「本統の幸福(ほんたうのさいはひ)」へと総ての生命を導く呪い(祝福)は手始めにイドルフの部屋を蹂躙し始める。

 一方、円華と繁松の戦いは佳境を迎えていた。


「――くっ、こんな結末な、認めないッ!」


「――させないわ!」


 無数の槍と矢に貫かれ、満身創痍の繁松は最後の力を振り絞って時間を巻き戻そうとする。

 桃花、篝火、美結、小筆、汀、クレール、デルフィーナ、レナード、トーマス、エイミーンは黒い腕の攻撃を躱しつつ、時間加速アクセラレンション・タイム」を発動して、「豊穣なる時間の支配」の発動を無効化した。


 繁松の魔法少女化が解除される。そのタイミングで、円華は消滅攻撃の無効化効果の魔法陣を解除した。


「――今なのですよぉ〜!! 三位(トリムールティ・)魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション


 このチャンスをエイミーンは見逃さなかった。「魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」を三つ重ねることで範囲を拡大した「魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」――「三位(トリムールティ・)魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」を放ち、光の速度で光の奔流を発生せよ、相手の防御も回避も許すことなく、細胞から魂までを完全消滅させる魔法で那由多彼方の魔女(ヘクセンナハト)を消滅させる。


『そんな……ぼくは、こんなところで……』


 光が溢れ、黒い八岐大蛇の表層が光に飲み込まれて溶けていく。そして、魔女の卵(オースタン)だけになった……その時。


『そうだよねェ……まだ、神は私を見捨てていない。まだ、やれる』


 悍ましいほどの執念で光の速度を超えて伸びた黒い腕がオルタ=ディブロンの死体に触れた。


願いを叶える魔法の札ナモサダルマプフンダリカサスートラ!』


 消滅の光が一瞬にして消え去り、魔女の卵(オースタン)を中心に残った闇が収束して人型を作った。


『――ダメージが思った以上に大きい。仕切り直して一からやり直しだ。今回は君達に勝ちを譲るよ。でも、次はぼくが勝つ。ほんたうの本統の幸福(ほんたうのさいはひ)のために』


 黒い人型は大気の中に溶け込むように消えていき、イドルフの屋敷に静寂が戻った。


「……逃げられたみたいだな」


「オルタが持っていた『願いを叶える魔法の札』を使ったのね。……札は生み出せないけど、残っている札を使うことはできる。先に潰しておけば良かったわね……失敗したわ」


 那由多彼方は事前に「願いを叶える魔法の札」をオルタに一枚渡していた。

 この「願いを叶える魔法の札」を那由多彼方は使って消滅攻撃を無効化したのだろう。

 深傷を負った状態でこれ以上の戦闘は不可能だと判断し、逃げの一手を打った。折角、那由多彼方を仕留められる絶好のチャンスだったのに、それを逃してしまった。

 このことが後々、厄介な状況を招く気がして桃花達は胸騒ぎを覚えた。


「この失態のことは後で考えるべきだ。それに、この戦いで得られたものも大きい。――とりあえず、今は屋敷を後にして予定通り他の者達と合流しよう。まだ、本丸は落とせていないようだしな」


 トーマス達はオルタと繁松の死体を四次元空間に収納すると、イドルフの屋敷を出た。

 そのタイミングで研究部門からイドルフの屋敷の増援のためにやってきた榊、槐、椿、榎、楸、柊、ステラ、クラウディア、メルティ、竜騎士マーガレット、雅美と合流し、情報交換をしながら大通りを使ってハート魔導城へと向かった。

 同刻、人事部門、監査部門、管理部門、刑務部門、オルグァの屋敷、ザギルの屋敷の襲撃を任されていた者達も合流――三つの大通りを使ってハート魔導城へと向かう。


 魔法の国始まって以来の大事件――魔法の国事変。

 各地で繰り広げられた戦いも次々と幕を閉じ、いよいよ最終段階(クライマックス)へと突入しようとしていた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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