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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-91 魔法の国事変 scene.31

<三人称全知視点>


 クシハラホムラヒメはボロボロの袋から一本の太い刃の周囲に枝分かれした刃が幾本も生えている禍々しい剣のようなものを取り出して構えた。

 神々しい見た目のクシハラホムラヒメには似つかわしくないボロボロの袋にはどうやら三次元的な物質であれば、際限なくものを詰め込むことができる一種の空間魔法のようなものが付与されているらしい。


『魔法の国の国宝の一つ、「万界無に還す妙見の剣(アメノミナカ)」はまさに最強の剣――刃を受けたくなるという脅威的な魔法に加え、戦闘用ホムンクルスが一撃で消滅するほどの切れ味を持ちます。浴びれば例えどんな強度を持つ魔法少女であっても死を迎える剣、果たして止められるでしょうか?』


 イドルフは保有する魔法の国の国宝の中でも最強クラスの武装をクシハラホムラヒメに与えていた。

 それに加え、イドルフの身体能力はリツムホムラノメノカミのものと同等以上に調整している。


 最強の武装を使うに値する最強の魔法少女がその力を惜しみなく使う――これこそが、イドルフの屋敷の最終防衛ラインである。

 いくら相手が武闘派魔法少女に匹敵するほどの力を持つ集団であったとしても、「万界無に還す妙見の剣(アメノミナカ)」を持つクシハラホムラヒメを止められる筈がない。……そう思っていたのだが。


氷魔の鎖(アイス・チェイン)


 クシハラホムラヒメに突如空気中から出現した無数の氷の鎖が巻き付き、瞬く間に拘束する。

 汀の固有魔法「水操作」によって空気中の水分を取り出し、氷の鎖を作り出したのだ。

 更に、鎖の一つを伸ばして汀が触れることで武装闘気と求道の霸気が鎖に宿り、現身クラスの身体能力でも破壊できないほどの強度に鎖が強化されている。「万界無に還す妙見の剣(アメノミナカ)」は確かに魔法の国の最強の武器ではあるかもしれないが、刃に掛けられた精神汚染魔法が無効化され、本人も剣を使えない状態になっているのであれば脅威にはなり得ない。


桜花の砲浄サクラメント・ピュリファイ!!」


業火偃月(ゴウカエンゲツ)! 業火絢爛(ゴウカケンラン)!!」


 完全に身動きを封じられたクシハラホムラヒメに正面から灼熱の業火から偃月刀を作り出して武装闘気を纏わせた篝火がクシハラホムラヒメに斬撃を浴びせ、背後を取った桃花が桜の花弁状の桃色のエネルギーを収束して極太レーザーを放ってクシハラホムラヒメの腹部に巨大な大穴を空けた。

 流石に現身用の高級魔法少女と言っても腹部を貫かれるほどの攻撃を浴びればただでは済まない。鎖を引きちぎろうという力も徐々に無くなり、クシハラホムラヒメの瞳の光も少しずつ弱くなっていく。


 そして、クシハラホムラヒメの身体から命が完全に失われると同時に自重を支えられなくなったクシハラホムラヒメの身体は頽れた。



 ディゾナンスとクシハラホムラヒメ、そして比較的真面な状態の素体の死体を「万界無に還す妙見の剣(アメノミナカ)」と共に回収した桃花達はイドルフのいる執務室を目指して廊下を走る。

 その足音がイドルフにとっては死神の足音に聞こえる。少しずつ自分の死が迫ってきていると、そしてその死がもはや避けられないものであることをイドルフは実感していた。


「……大丈夫、まだ勝ち目はあります」


 イドルフは机の引き出しを開け、三つの指輪を取り出す。


 一つ目は「魔法増幅装置」と言われる銀色と青の指輪「増魔の指輪アンプリフィケーション」、二つ目は「魔法無力化装置」と言われる銀色と赤の指輪「封魔の指輪(インビビット)」、そして三つ目が「魔法無力化装置」の起動下で魔法の使用を可能とする――より正確にはあらゆる妨害魔法を無効化する効果のある銀色と黄金の指輪「無魔の指輪(インバリデート)」だ。


 「封魔の指輪(インビビット)」は使用者を中心にあらゆる魔法を封じる特殊な結界を張る力がある。内部にいる魔法少女は変身を解除され、魔法の国産の魔法少女は一切の魔法が使えなくなる。勿論、Queen of Heartも例外ではない。

 しかし、「無魔の指輪(インバリデート)」を嵌めている者にはその効果が及ばない。つまり、魔法が使えない環境の中で一人だけ魔法を使えるという圧倒的な有利な状況を作り出すことができるのである。


 その上、「増魔の指輪アンプリフィケーション」によってイドルフの魔法は大幅に強化されている。流石に使えない魔法が使えるようになるということはないが、魔法の威力自体は跳ね上がっているので問題は生じない。


 イドルフは敵がイドルフの執務室のドアまでやって来たことを確認し、「創魔の魔法陣ソルシェール・マギサークル」を起動した。


「ようこそ、私の屋敷へ。まさか、ディゾナンスとクシハラホムラヒメを斥けるとは驚きました。……しかし、いくら強くても魔法が封じられれば何もできないのではありませんか?」


 イドルフが予想した通り、「封魔の指輪(インビビット)」を起動した瞬間、桃花、篝火、美結、小筆、汀、クレール、デルフィーナ――七人の魔法少女が変身を解除され、無防備な人間体に戻った。


「やっぱり魔法が使えなくなっているのですよぉ〜」


 それに加え、魔法少女ではない者達も魔法を封じられて大きく戦力ダウンしたようだ。

 イドルフにとっては嬉しい誤算である。


「……まあ、大方圓さんの予想通りなのですよぉ〜」


「想定の範囲内ですね。……予定通り、私、篝火さん、汀さん、レナードさん、トーマスさんの五人で仕掛けましょう」


 闘気と霸気に加え、練度は低いものの八技を使えるがやはり魔法が主軸となっているエイミーンと闘気も一通りは習得し、八技も基礎レベルでは使えるもののまだまだ応用の面では不安の残る美結、そもそも自分自身が戦うことに慣れていない小筆、魔法を使わない戦い方に苦手意識のあるクレールとデルフィーナは戦闘に参加せず、桃花、篝火、汀、レナード、トーマスがイドルフと戦う意思を見せる。


 これは、イドルフにとっては予想外の状況だった。

 魔法少女の変身を解除された桃花、篝火、汀は大きく弱体化している筈だ。


 そもそも、彼女達の反応を見ればイドルフが「増魔の指輪アンプリフィケーション」、「封魔の指輪(インビビット)」、「無魔の指輪(インバリデート)」を持っていることを知っていたことは明らかだ。

 にも拘らず、桃花、篝火、汀はイドルフに勝利する気満々で戦いに身を投じようとしている。――勝てる筈がないというのに。


 圧倒的にイドルフにとって有利な状況――それ故にイドルフには油断があった。

 絶対に勝てるという慢心――それが、イドルフにとってら致命的なものになる。


「暗殺脚技參式 廉貞俊疾! 暗殺脚技壱式 瞬降斧脚!」


 桃花が足に武装闘気を纏わせた上で完全に音と気配を消す隠密行動技に特殊な呼吸法と歩法によって相手の脳を誤認させ、自身の存在を認識させなくする古武術の抜き足を組み合わせた「千羽鬼殺流・廉貞」と一瞬にして地面を十回以上蹴って高速移動する八技の俊身の融合技でイドルフと距離を詰めて空歩を駆使して上へと飛び上がり、身体を鋼鉄を凌駕する硬度に変える鋼身をも取り入れた振り下ろしの足技を放ち、篝火は武装闘気を纏わせた脚で次々と手や足を刃に見立て、超人的脚力や腕力で放つ飛ぶ斬撃を放つ。


 汀は裏武装闘気でサーベルを作り出し、その上から金剛闘気と武装闘気を纏わせ、更に武装闘気と神攻闘気と神速闘気を全身に纏わせて強化すると、俊身を駆使してイドルフに連続で斬撃を浴びせ、レナードは神速闘気を纏わせて加速して裏武装闘気で創り出した剣で斬撃を浴びせ、トーマスは裏武装闘気の剣に武装闘気と覇王の霸気を纏わせ、イドルフを腹部で両断した。


 イドルフのみが魔法を使うことができるという圧倒的なアドバンテージを得つつも、魔法の国の出身者故に魔法を過信し、それ以外の技術を軽んじた結果、イドルフはそのアドバンテージを全く生かすことができないまま命を落とした。



「イドルフの屋敷の戦いは決着を迎えたみたいだね」


 黒い帽子にゴスロリ風の衣装を纏ったエルフ耳と銀髪の魔法少女が遠身魔法でイドルフの屋敷の中を確認し、鮫を模したフードを被り、鮫皮のような質感の黒のドレス風の魔法少女衣装を纏い、背中には羽毛が生えていない骨のような形をした翼が左に片翼だけ生えているという容姿の魔法少女と白髪の老人に状況を伝えた。


「まさか、本当に勝っちゃうなんてびっくりだね。一応、現身が二体居たんでしょう? あれは、武闘派魔法少女でも討伐は不可能に近い神の如き存在……だから、潰し合わせて弱ったところを叩こうという話だったんじゃないの?」


「その予想が外れて、完全に先を越されたということか。……とはいえ、相手は現身でもない魔法少女――黒の使徒の幹部と那由多、お前の元配下の雑魚魔法少女三人と『冥黎域の十三使徒』だった速度馬鹿くらいしか真面な戦力はいないのだろう? 三賢者を倒せたとしてもまぐれに決まっている。……もし、そうで無かったとすれば」


「あまりにも成長が早過ぎる。……でも、実際に汀、クレール、デルフィーナと戦ったけど、あの三人は那由多さんの情報よりも明らかに強くなっていたよね。百合薗圓、彼女の持つ人を成長させる力は恐ろしいものだと認識しておいた方が良さそうだわ」


 百合薗圓が転生して以来、ブライトネス王国を中心として目覚ましい発展を遂げている。そして、これまで潜伏して秩序の破壊のために邁進していた『這い寄る混沌の蛇』の関係者が根刮ぎ潰され、『冥黎域の十三使徒』クラスも敵対した場合は一部例外を除き、死を迎えている。

 接触して命を奪われずに済み、かつ、『這い寄る混沌の蛇』側のままでいるのはオルタくらいだ。残りの生存者は『這い寄る混沌の蛇』を裏切って圓側についた裏切り者しかいない。


 まあ、オルタも仲間意識は薄いため、裏切り者の討伐のために命を賭けることはないが。

 オルタにとって『這い寄る混沌の蛇』とはオルタ自身の願いを叶えるための組織でしかない。アポピス=ケイオスカーンに手に入れた『管理者権限』を献上したのも、彼のもたらす混沌の世界こそが、オルタの求める一欠片も腐っていない清浄な世界と同一だからである。


 同じ治世が続くことによる腐敗のない、永遠の革命の世界――オルタの理想を叶えるためには、生物の存在しない原始海洋まで世界を巻き戻すという那由多彼方の願いも、この世にある全てのものを滅ぼすことによって永遠のものにするという太多繁松の願いも叶えてはならない。


「――私達は、それぞれの抱く願いを叶えるために師プシューケー=ファルファッラの元に集いました。我々は平等です。しかし、叶えられる未来は一つしかない。……終わりの時が近づいていますが、もう少しだけ仲間でいましょう。敵になるのは『増魔の指輪アンプリフィケーション』を私達が手に入れてからです」


 そして、那由多彼方、オルタ=ティブロン、太多繁松は最後の戦い(・・・・・)に身を投じることになる。

 この戦いの末には共食いが待っているが、それは最初に手を携えていた時から決まっていたことだ。この中の誰が望む未来を手に入れても、恨むことはない。


 文字通り世界の命運を賭けた戦いがイドルフの屋敷で始まろうとしていた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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