表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

941/1360

Act.9-89 魔法の国事変 scene.29

<三人称全知視点>


 研究部門に侵攻していた榊、槐、椿、榎、楸、柊とステラ=オラシオン、クララティア=ローゼンクロイツ、メルティ、竜騎士マーガレット、扉扉門雅美は研究部門の最奥部――研究部門部門長の執務室前で戦いを始めようとしていた。

 しかし、そんな状況下で榊のスマートフォンとステラの魔法の端末に掛かってきた電話によって状況は一変し、誰一人予想していなかった方向へと進んでいくことになる。


『……槐さん、椿さん、榎さん、楸さん、柊さん。たった今、圓様から新たな指令が届きました。――研究部門とは休戦協定を結ぶことになります』


『圓様のご指示というのであれば指示に従いますが……仮に、私達が停戦を求めても研究部門側は果たしてそれを受け入れてくださるでしょうか?』


「私の方もカルファ様から指示を受けました。研究部門はこの時をもって多種族同盟、黒の使徒連合軍に降伏します」


「――待ってください! どういうことですか!! 降伏って……私達はあの襲撃者達と戦うのでは無かったのですか!」


「クララティアさん、状況が変わったのです。……榊様でしたね、そちらに研究部門の者達を害する気は基本的にはないと伺っております。相違ありませんね?」


『えぇ、元々作戦では研究部門所属の方々とは仲良くしておきたいという方針だったわ。ただ、研究部門部門長の五老臣カルファ・ミディ・ベルン・エディアは魔法の国の癌の一つであるという認識を私達は共有していて、新国家の建国にあたり、彼女を処分することが必要だと考えていた。……ただ、圓様が実際に彼女と相対して、他の五老臣とは異なり処分の必要はないと判断した。……私個人の意見を述べるなら、彼女も魔法の国の行く末を憂い、良かれと思って行ったことが結果として魔法の国だけに留まらず地上世界――多種族同盟諸国にも大きな不利益をもたらしてしまったのだから、その罪を鑑みれば十分処分の対象になるとは思うのだけど』


「……その点については上司も十二分に反省していると思われますので、どうか寛大な心で許して頂けたらと思います。……その大いなる失敗がイドルフの屋敷で漁夫の利を狙っているのですね。……あまり戦力にはならないと思いますが、私共はこれから上司の指示に従い、イドルフの屋敷で多種族同盟、黒の使徒連合軍側として参戦しようと考えております。そちらはどうなさいますか?」


『私達も先程、圓様から念のために参戦するようにと指示を受けたわ。……ただ、今回の件について納得しているのはステラさんのみで他の方々は事情(・・)を知らないようだから、いずれにしても説明は必須よね。ただ、あまり説明に時間をかけて居られないし、イドルフの屋敷に向かう道中で説明すればいいんじゃないかしら?』


 榊は圓からの電話で得た情報を速やかに槐、椿、榎、楸、柊と共有するとステラ達と共に研究部門を後にする。

 最初は状況をさっぱり理解できていなかったクララティア、メルティ、竜騎士マーガレット、雅美の四人もステラからカルファとステラが魔法の国の現状を変えるために戦力を集めていたことや、その過程で起きてしまった大きな過ち、そしてイドルフの屋敷や魔法の国で現状起きていることについて簡単にではあるが説明を聞くうちに状況を少しずつではあるが、理解することができた。


 榊達も『管理者権限』を巡る戦いや、世界の真実についてステラ達に語った。

 カルファからある程度の話を聞いていたステラを除く四人はこの常識破壊に等しい話をすんなりと信じることはできなかったが、最終的には信じるしかないと判断して、榊達の話を信じた。


 カルファの立ち位置は微妙で、どう扱うかは決めきれていないものの、とりあえず命を奪うつもりはないと聞いて安堵する研究部門の魔法少女達――どうやら、変態と言われながらも研究部門の魔法少女達からは大切な仲間として思われていたらしい。


 まあ、五老臣の一人という立場上、このままカルファが要職に就き続けるのは黒の使徒を中心とした新体制への移行を全面に押したいと考えている多種族同盟、黒の使徒連合軍にとっては大きな矛盾を残してしまうことになりかねないので、カルファの魔法の国の新体制発足後の要職就任は厳しく、研究部門部門長の座も退く必要が出てくる可能性は高いのだが……その点は本人があまり野心のあるタイプではないので問題ないだろうとステラ達は考えていた。


 ……合法的に魔法少女達を愛でたり、理想の魔法少女を開発したり、カルファの理想を叶えやれる環境である研究部門を退くのは彼女にとってはそれなりに大きなダメージかもしれないが。

 この反動で、「自分の理想の魔法少女」を育て上げるために犯罪に手を染めてしまうのではないかと少し心配になったステラ達五人であった。



 五老臣の一人であるイドルフ・ギャラン・バグ・チェペシュは魔法の国の事実上の最高権力者の一人にまで上り詰めたが、オルグァのように「大魔公安処罰班」、「退魔局」、「警備企画課参謀第零部」、「独立魔導小隊」といった組織を頼ることもなく、かと言って子飼いの魔法少女を雇う訳でもなく、ホムンクルスを中心に据えた防衛システムを構築している。

 しかし、リツムホムラノメノカミ派時代の彼はこうした機関を頼ることは無かったものの、自前の魔法少女部隊を率いており、防衛戦力としてとても重宝していた。

 彼女達との関係も悪いものでは無かったらしい。


 彼女達はイドルフがリツムホムラノメノカミ派を裏切ったのと同じタイミングで解雇されている。

 その理由をイドルフは最後まで明かさなかったが、イドルフの起こした裏切りは魔法少女達を不信感を抱かせるのに充分な事件であり、彼女達がその解雇の理由を尋ねることや、契約の継続を申し出ることは無かった。それ以来、魔法少女達とイドルフの繋がりは完全に絶たれている。


 イドルフが五老臣になった直後から警備体制を大きく変えたのか、その理由は決して知られてはならないQueen of Heart派最大の闇をイドルフが屋敷の中で管理するという形で隠蔽しているからである。

 それは、滅んだ筈のミューズ・ムーサ・ムーサイ派とリツムホムラノメノカミ派を復活させてしまうほどの力を持っており、Queen of Heart派、五老臣を中心とする治世をひっくり返してしまうほどの存在だ。では、何故その危険なものを処分しなかったのか。


 別にその力に畏怖を覚えたという訳でも、魔法使いの大半のようにその特別な存在を殺すことに躊躇を覚えたからでもない。その存在の持つ力が魅力的なものであったからだ。


 もうここまで話せばお分かりだろうが、イドルフの管理する最大の秘宝とは即ち三賢者のうちの二人――アヴリス・パッチ・ウネ・ミューザィとラスタ・ヴィムボス・フォルツ・テッケウスの魂である。


 管理部門部門長のダラグ・マデン・フェル・マハスが現身の手法に反対したことで左遷されたという点は以前話した。

 しかし、彼は異端の魔法使いだったという訳ではない。誰よりも魔法の国を愛し、魔法の国を信奉していた。

 それ故に、彼は勝てる筈のない戦いに身を投じ、命を落とすことになったのだ。


 では、何故、そもそも彼が魔法の国の意向に逆らったのかという点が疑問として浮上する。

 彼が例え閑職に追いやられると分かっていても反対の意思を掲げ続けたのか、その理由は三賢者の魂を動力として使うに等しいこのシステムをダラグが受け入れられなかったからだ。


 このシステムをダラグがしっかりと認識できていたかは怪しい。

 実際のところ、このシステムは三賢者に実質の不老不死を与えるものであった。魔法使いがいくら長命であったとしても、死を免れることはできない。しかし、このシステムであれば三賢者は器を乗り換えることで永遠に生きながらえることができる。


 ただ、このシステムには欠陥もあった。それは、魔法少女の性質、コンセプトを大なり小なり三賢者の精神が受けてしまうことである。

 Queen of Heartが傲慢な女王であるのも、Queen of Heartという魔法少女のコンセプトの影響を受けているからであり、シェンテラ・ルプシス・ヴァル・オルカスという魔法使いがQueen of Heart並に傲慢な性格であった訳ではないのである。……まあ、自分は特別な存在だという風には流石に自覚していたとは思われるが。


 魔法の国の歴史は長く、シェンテラの性格を知っている存在は牢獄に捕らえられていたシャッテン・ネクロフィア・ シャハブルーメくらいだろう。

 ちなみに、彼女は現身システムではなく自分自身を魔法少女にし、絶えず変身を維持することで現代にまで生き永らえている。そもそも、魔法少女システムの基礎を築いたのも彼女であり、ノーアの一番弟子であり、三賢者以上の魔法使いであって彼女がもし道を踏み外すことが無ければ魔法の国はもっと栄えていたかもしれない。


 話を戻そう。イドルフは「魔法増幅装置」や「魔法無力化装置」などの始原の大賢者ノーアが残した現代では再現不可能な秘宝の管理を任されているが、それ以上にQueen of Heart派にとっては重要な任務であるミューズ・ムーサ・ムーサイとリツムホムラノメノカミの動力源であったアヴリス・パッチ・ウネ・ミューザィとラスタ・ヴィムボス・フォルツ・テッケウスの魂を宿した魔法少女達の管理も行っている。


 アヴリス・パッチ・ウネ・ミューザィの魂を宿した魔法少女の名は【不協和音】の魔法少女ディゾナンス。

 魔法の国産の高級魔法少女の一体で、黒いアイドル衣装を纏い、魔法の杖と一体化したマイクを武器として戦う。

 様々な魔法を使える他、固有魔法として「聴く者をネガティブにさせ、他人の記憶すら操作することのできる歌」を持つ。

 自分の歌では人を喜ばせることができないことをコンプレックスだと感じている。


 ミューズ・ムーサ・ムーサイは「誰とでも友達になれる」という固有魔法を持ち、アイドル活動をすることで信者を増やしていた。彼女にとって歌やダンスは大切な武器であり、愛するものでもあった。【不協和音】の魔法少女ディゾナンスとはまさにその歌を愛する気持ちへの冒涜に他ならないものであり、魔法少女を設計したイドルフの性格の悪さが垣間見える。


 ラスタ・ヴィムボス・フォルツ・テッケウスの魂を宿した魔法少女の名はクシハラホムラヒメ。

 魔法の国産の高級魔法少女の一体で、純白の着物を身に纏っている。

 固有魔法は「質問したら答えが分かる」だが、リツムホムラノメノカミの持つ固有魔法である「質問したら真理が分かる」と違い、分かるのはその内容だけで、相手が騙されていたり歪んだ捉え方をしていても判別することはできない。

 ……まあ、ミューズに比べれば固有魔法の劣化は微々たるものなので、マシと言えばマシなのだが。


 三賢者の意識がまだ存在したこれまでの現身とは異なり、【不協和音】の魔法少女ディゾナンスとクシハラホムラヒメに封じられた三賢者の意識は最低レベルまで弱められている。

 何かが違うという違和感を抱き続けながら、自分達を殺した者達のために命を賭けて戦う。その在り方は、三賢者という存在に対する最大級の冒涜に他ならなかった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ