Act.9-85 魔法の国事変 scene.25
<三人称全知視点>
『我が名は海竜神! 「宝物庫の指輪」の守護者である! この「宝物庫の指輪」が貴様達如きに使えると思ってか!! 大津波!』
開幕早々に水を集めて津波を放とうとした海竜神だったが、その前にアルベルトがレベル99で習得する固有最上級水魔法「タイダルウェイヴ・フローズン」を放って溜めた水ごと凍結させた。
海竜神は雷属性有効、水属性と雷属性以外半減、水属性吸収という耐性を持つ。水属性攻撃の「タイダルウェイヴ・フローズン」ではダメージを負わずに寧ろ回復したが、凍結効果までは無効化することができずに身動きを完全に封じられ、無防備となった。
「爆破粘土造形魔法・大型蜘蛛!」
「日輪赫奕流・劫火竜顎門!!」
「氷結冷気-ホワイトサイクロン-!! 氷の飛翔爆弾!!」
「青焔鳳凰撃!!」
「漆黒の槍!!」
「断光の暗黒剣!!」
「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連!!」
「聖拳」
「雷鳴閃刀!」
「即射撃」
「命喰らいの暗黒魔剣!!」
凍りついて完全に身動きの取れなくなった海竜神に菊夜、沙羅、美姫、火憐、シーラ、ラファエロ、ミリアム、アルベルト、シスタールクス、ヴァレンシュタイン、ジョリーロジャー、黒騎士セレンディバイトが総攻撃を掛ける。
海竜神が凍結を打ち破り、戦闘を再開することを恐れ、可及的速やかな討伐を狙った高威力の攻撃の応酬に海竜神は耐え切ることができず、全員の攻撃を浴びて成す術なくそのまま命を落とした。
アルベルトが「宝物庫の指輪」と海竜神の遺骸を四次元空間に放り込んだ後、一行は最下層で待つオルグァ・パッヅァ・エル・レギドゥを討伐するために魔法の国の地下渓谷の探索を再開した。
◆
魔法の国の地下渓谷の最下層、水晶らしき半透明の床で覆われ、魔法の国の地下渓谷の核が輝く空間でオルグァは余裕綽々という態度で菊夜達を待ち受けていた。
「シスタールクス、ヴァレンシュタイン、ジョリーロジャー、黒騎士セレンディバイト……君達がここにいるということは、そういうことなのだな。残念でならないよ。コルジではないが、魔法少女は信用に値しないという指摘も強ち間違ってはないようだね」
「……私はQueen of Heartと五老臣の治世に疑問を持ちながらも、粛々と任務をこなしてきた。……心のどこかでそれで本当にいいのかって思ってきた。私達は自分の気持ちに正直なることにしたってことだ。まあ、多種族同盟と黒の使徒の治世が良いものになるかどうかってのは革命が終わった後に見極めることになるが」
「随分と先の未来を見ているようだ。まさか、ここから生きて帰れるとでも? ……いいだろう。ここまで辿り着いた君達に敬意を表し、私自身の手であの世に送ってやろう」
オルグァは背後にあった最後の祭壇に触れた。
「随分と時間が掛かった、私の力を持ってしてもね。原初の魔法使いノーアの力は偉大だ。……しかし、時間を掛けて魔法陣を用意し、祭壇の守護者を倒すことに成功した。そして、私は手に入れたのだよ、秘宝『進化の秘蹟』を」
深紅の複雑な幾何学模様――「創魔の魔法陣」が出現し、真っ赤な輝きを放つ中、オルグァは祭壇に置かれた「進化の秘蹟」を取った。
そして、「進化の秘蹟」が紫の輝きを放ち、次の瞬間、菊夜達の目に映ったのは七つの頭と十本の角を持ち、その頭に七つの冠を冠している深紅の竜――究慧の魔神竜と呼ぶべき存在だった。
『さあ、滅びを迎えるのだ! 灼熱の息!!』
究慧の魔神竜と化したオルグァは大きく息を吸い込み、灼熱のブレスをシスタールクス、ヴァレンシュタイン、ジョリーロジャー、黒騎士セレンディバイトに向けて放った。
「させないわ! 闇巨壁!!」
シーラとラファエロが闇の魔力で巨大な壁を展開、その上から武装闘気を纏わせて「灼熱の息」を受け止める。
菊夜は糸を束ねて創り出した槍に、沙羅は愛用する刀に、ミリアムとアルベルトはそれぞれの剣に武装闘気と覇王の霸気を纏わせると、ミリアムとアルベルトは更に聖属性を付与して「灼熱の息」が途切れた瞬間に闇の壁を乗り越え、四人同時に斬り掛かる。
更にシスタールクスが「聖拳」を発動して殴りかかり、ヴァレンシュタインが「雷鳴閃刀」を発動して雷を纏わせた剣で斬り掛かり、黒騎士セレンディバイトが「命喰らいの暗黒魔剣」で命を削って闇を纏わせ、斬撃を放ち、ジョリーロジャーが「即射撃」で遠距離から攻撃を仕掛ける。
猛攻を浴びた究慧の魔神竜だが、魔法少女すらも凌駕する秘宝の守護者達と同じ脅威の耐久力で攻撃を全て耐え切って見せると、灼熱の炎の塊を上空に向かって放った。
『火炎流!!』
炎の塊が究慧の魔神竜の頭上で爆発を引き起こし、炎の竜巻が降り注ぐ。
菊夜達は見気の未来視で事前に攻撃を予測して回避することに成功し、シスタールクス、ヴァレンシュタイン、ジョリーロジャー、黒騎士セレンディバイトの四人も魔法少女の驚異的な身体能力で爆発を目視した直後に回避を始めて「火炎流」を回避することに成功したが、すぐに菊夜達はこの攻撃が敵を攻撃するためだけの技ではなかったことを思い知ることになる。
『……思った以上に傷が深かったか。一回で回復し切らないとはな』
究慧の魔神竜には火属性を吸収する効果がある。
この性質を利用し、敵味方に火属性の攻撃を仕掛けることで攻撃をしつつ自身の傷を癒すことができるというのは火属性無差別攻撃の「火炎流」の利点だ。
とはいえ、かなりの回復効果のある筈の「火炎流」でも回復し切れないというのは究慧の魔神竜にとっては予想外の状況だ。
それに、回復効果は発揮できても攻撃として意味を成さなければ意味がない。
『火炎流を連発しているだけでは勝てない相手ということか。……ここまで辿り着いたのだ。我でも討伐が困難だった秘宝の守護者達を倒してここまで来たということであれば、強いのは当然だが……忌々しい! 大渦禍!!』
「氷結冷気-ホワイトサイクロン-!!」
究慧の魔神竜は対処が困難な強力な技を放ったつもりだったが、美姫にとっては初見で封殺した経験がある技である。
美姫は陸獣神と殺戮天使の時と同様に「極寒の天恵」に氷魔法を融合した技「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」の力を惜しみなく発動して、魔法の国の地下渓谷の七層を覆うほどの極寒の領域を形成し、更に複数の猛吹雪の竜巻を作り出して「大渦禍」によって生じた無数の青紫色の竜巻にぶつけて相殺した。
究慧の魔神竜にとっては陸獣神や殺戮天使とは異なり氷属性が弱点だったことである。
陸獣神や殺戮天使を上回る勢いで氷が侵食、その痛みから究慧の魔神竜が呻くような声を上げる。
しかし、流石は五老臣の一人まで上り詰めた9=2、流石に完全に氷に閉ざされてしまうということはなく、最後の力を振り絞って自らの鱗に秘めた熱線を放射する「熱線」を放ち、氷を溶かすことに成功した。
……しかし、攻撃技としては効果を発揮せず、放たれた熱線は全て回避され、誰にも当たることは無かったが。
一度は氷を溶かすことに成功したが、美姫の「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」の効果が消えた訳ではない。
再び氷が究慧の魔神竜を侵食し始める。鱗に溜めた熱エネルギーも無くなり、口も凍りついたため「灼熱の息」や「火炎流」も放てなくなった。
究慧の魔神竜は最期の悪足掻きをするように「隕石雨」を発動しようとするが、「隕石雨」が発動する前に炎による回復を警戒した火憐以外の総攻撃を浴びて遂に命を落とした。
戦闘終了後、究慧の魔神竜の遺骸は究慧の魔神竜となる前にオルグァが祭壇に遺した、彼が蒐集した貴重な魔法道具――使い手の魔力に頼らず膨大な数の魔法を瞬時に発動させられるが、一つ一つの威力は弱い、超器用貧乏な杖である「万書の杖」とホムンクルスを掠めただけでも戦闘用ホムンクルスを黒い染みに変える鋭さを持つ「万斬の剣」――と共に四次元空間に放り込む形で回収され、菊夜達は魔法の国の地下渓谷の十八層を後にした。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




