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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-75 魔法の国事変 scene.15

<三人称全知視点>


「ムーンライト・バインド」


 マグノーリエによって「創魔の魔法陣ソルシェール・マギサークル」が解除された直後、月属性の魔力で触手を生成し、ナイトメアメリーのホムンクルスに魔法陣から螺旋を描くように回転する無数の漆黒の魔力を打ち上げる「ブラックリリィ・スパイラル」と魔法陣から螺旋を描くように回転する無数の純白の魔力を打ち上げる「ホワイトリリィ・スパイラル」を相次いで放ち、続いて圧縮した暗黒物質を剣先から飛ばし、敵の足元に命中させると同時にそこから暗黒物質を顕現して勢いよく地面から噴き上げる「ダークマター・カンタフェイト」を放ち、追い討ちを掛けるように月の魔力を圧縮し、細剣の切っ先から螺旋状の奔流として解き放つ「ルナティック・バーストストリーム」を放ってナイトメアメリーのホムンクルスをほとんどオーバーキルの連続魔法攻撃で撃破する。


「アクア殿、ディラン殿。【ガーディアンゴーレム】は私が相手をする。お二人には森羅鬼燈とくま子のホムンクルスを引き続きお願いして良いだろうか?」


「元からそのつもりだ。【ガーディアンゴーレム】も対処した方がいいかと思ったが、引き受けてもらえるのはありがたい」


「相棒と俺で厄介な二体は相手をする。となると、本丸(コルジ)の討伐はマグノーリエさんにお願いすることに……いや」


「……どうやら、敵にまだ隠し玉があるようですね」


 ディランとマグノーリエに続いて、アクア、プリムヴェールもコルジの心を見気で読み、敵がまだ切り札を持っていることを知った。


「私の力がこれだけだと? 『創魔の魔法陣ソルシェール・マギサークル』も万能ではない。万が一を想定して次の手を用意しておくのは当然のことです! 行きなさい! コルジ式魔法少女捕獲用ホムンクルス【タイラント】!!」


 距離が離れたと錯覚するほど遥か後方にいるコルジの背後から複数のホムンクルスが現れ、アクア達の方へとゆっくりと行軍する。

 見た目は長い腕を持つ人型のホムンクルスで【ガーディアンゴーレム】よりも小柄だ。しかし、その身に纏う威圧感は【ガーディアンゴーレム】よりも濃厚――アクアやディランの対峙する森羅鬼燈やくま子といった「明王會」の中核を成す魔法少女達に比肩するほどの力をあのホムンクルス達は持っているとアクア達は瞬時に判断した。


 そして、その判断は実際に的中していた。

 コルジ式魔法少女捕獲用ホムンクルス【タイラント】は魔法少女捕獲用にコルジが開発したこともあって従来のホムンクルスとは一線を画す力を持っている。特にスピードと装甲の厚さが脅威で、並の魔法少女ではダメージを与えることができない。

 攻撃手段は主に徒手空拳だが、炎、氷、風、土、雷属性の魔法も使用可能。バランスが良く、比較的様々な状況に対応できるように設計されている。


 プリムヴェールは【タイラント】達が仕掛けてくる前に【ガーディアンゴーレム】を撃破してしまおうと「ルナティック・バーストストリーム」で【ガーディアンゴーレム】を薙ぎ払い、アクアとディランも森羅鬼燈とくま子のホムンクルスを撃破するべく剣を構え直した。


 くま子のホムンクルスは魔法の熊を次々と召喚してディランへと嗾ける。


「流石におじさんもさぁ、このタイミングで嫌がらせされて喜ぶほど戦闘狂じゃないんだけどなぁ。――覇者鳴神・連撃ッ!」


 ディランは膨大な武装闘気と覇王の霸気を『闇を斬り裂く真魔剣フェイタル・エリュシデータ』に纏わせると次々と剣を振るって魔法の熊達に斬撃を浴びせていく。

 激しく黒雷が迸り、空気がひび割れるほどの斬撃を浴びた魔法の熊達の大半はそのまま撃破されたのだが、攻撃を辛うじて耐え切った魔法の熊が二体ほど残ってしまった。


 ディランはそのままくま子のホムンクルスに攻撃を仕掛けようとしたが、くま子のホムンクルスは肉球で大気を弾くことで生き残った魔法の熊の付近に高速移動されてしまう。

 本物のくま子との戦いでは使用されることがなかった蓄積されたダメージを弾くことで取り出すという方法を使われ、魔法の熊達から薄赤い球形の固まりが取り出された。


 そして、ダメージが凝縮された薄赤い球形の固まりをディランに向かって放つ。

 浴びれば「覇者鳴神」二発分のダメージが跳ね返ってくるという状況だが、ゆっくりと飛んでくる薄赤い球形の固まりを回避することなどディランにとっては造作もなく、あっさりと回避すると魂魄の霸気《両影》を使って「《黒影の抱擁(シャドウバインド)》」で今度は確実に二体の魔法の熊達を確実に捕らえ、肉球に当たらないようにくま子のホムンクルスを捕らえる。


「《影軀逆転》」


 二体の魔法の熊をすれ違い様に武装闘気と覇王の霸気を纏わせた『闇を斬り裂く真魔剣フェイタル・エリュシデータ』で切り裂いて今度こそ絶命させた後、ディランは俊身を駆使してくま子のホムンクルスの背後を取り、本来実体の動きに従って動く影という概念そのものに干渉し、影を動かすことで実体を動かすことで、身体に掛けられたリミッター関係無しの超高速攻撃を放つディランの最強の一太刀を浴びせる。

 背後を取ったのはくま子のホムンクルスの肉球によって斬撃を弾かれる可能性を危惧したからだったが、ディランの懸念は杞憂に終わり、くま子のホムンクルスは抵抗する間も無く頭と胴を切り離され、剣に斬られて飛んだ頭がボトンと空しく音を立てて地面に転がった。


 アクアと対峙する森羅鬼燈のホムンクルスは口から風の刃で構成された竜巻をブレスのように放つ「降三世咆嵐刃こうさんぜ・ほうらんじん」を放ったが、見気の未来視で攻撃を予測していたアクアは当然、これを天使の翼を羽撃かせて回避する。

 そのまま一気に決着をつけようと剣を構えて斬撃を浴びせようと森羅鬼燈のホムンクルスに迫るアクアだったが、森羅鬼燈のホムンクルスもそのまま攻めさせるつもりはないようで愛用の棍棒『六道怨羅』を振り上げ、赤い雷を次々と降らせる。


 しかし、回避不能の攻撃でなければ未来視に到達しているアクアにダメージを与えることはできない。

 アクアは見気の未来視と紙躱を駆使して最小限の動きで「不動赫雷撃(ふどう・かくらいげき)」を全て躱すと、真正面から【劇毒之王】の「劇毒八岐蛇デッドリー・ポイズン・ヒドラ」を放って森羅鬼燈のホムンクルスを劇毒の蛇に飲み込ませると、瀕死のダメージを負った森羅鬼燈のホムンクルスに「天使の加護エンジェル・プレッシング」で聖属性を付与した双剣で圓式の斬撃を放ち、森羅鬼燈のホムンクルスを撃破した。



 アクアが森羅鬼燈のホムンクルスを撃破したのとほぼ同刻、行軍してきた【タイラント】が一斉に攻撃を開始した。

 これに関しては情報が皆無だが、【タイラント】に少なくも二種類存在しているようで、鋼のような色をしたプレーンバージョンと、それ以外のものに分かれるらしい。


晩鐘の断光壁ミーティア・ライトニング・ウォール


 プレーンバージョン以外の【タイラント】はオリジナルバージョンと呼ばれ、簡易的に魔法少女の固有魔法を付与されているのだが、その力がお披露目されるタイミングは残念ながら来なかった。


 マグノーリエがプリムヴェール伝えに聞き、ローザから教えてもらって習得した光の分布を強制的に偏らせることで光が存在する座標を自身の前に設定し、いかなるものも消滅させる壁を作り出すマグノーリエのオリジナル光属性魔法「穿光条の流星群ミーティア・ライトニング」を基にしつつヴィクトスのオリジナル魔法「月銀の断光壁ムーンライト・ウォール」の要素を加え作り出したローザのオリジナル魔法――「晩鐘の断光壁ミーティア・ライトニング・ウォール」が展開され、アクア、ディラン、プリムヴェールの三人に狙いを定めて攻撃を仕掛けた【タイラント】が全て突如出現した光の壁に飛び込み、消滅したのだ。

 【タイラント】は圧倒的な防御力を持つが、有機物・無機物を問わず、また物体の硬度・耐熱性・可塑性・弾力性を問わず消滅させる効果のある「穿光条の流星群ミーティア・ライトニング」系の魔法との相性は極めて悪い。当然の結果である。


 攻撃を仕掛けなかった【タイラント】は生き残った……が、マグノーリエは生き残った【タイラント】達に「暁の流星群ミーティア・ライトニング」を浴びせ、全滅させる。

 コルジの隠し玉も撃破し、今度こそコルジの手札は無くなった。


「……想定外でした。まさか、ここまでとは。……おみそれしました。認めましょう、私の敗北です。私は女王陛下の権能であれば、世界を支配できると確信し、自らの意思で彼女につきました。三賢者の一人、シェンテラ・ルプシス・ヴァル・オルカスに付き従えば、更なる繁栄が約束されると。……アレは不埒な声は聞こえないように設計されていますからね。采配も全て我々五老臣に任されている。後は、邪魔な他の五老臣を片付けてしまえば、Queen of Heartの世界掌握後、私が全てを手中に収めることができる……そういう計算だったのですよ」


「……その計算は最初から破綻している。お嬢様がいなくてもアイオーンが、最強の『唯一神』がQueen of Heartの覇道を止めることになった筈だ。……諦めろ。お嬢様からお前を討伐するように言われている。討伐される以外の道はない」


「果たしてそうでしょうか?」


「……まさか、逃げられるとでも思っているのか?」


「ご冗談を。私も状況は理解しています。今更逆転などできる筈がない」


 コルジは杖でコンコンと床を叩いた。監査部門の建物を覆う屋根が音を立てながら開いていく。


「……しかし、私一人だけで死んでいくというのも認め難いのですよ。なので、私と一緒に死んでください!」


 まるで生命力が吸われていくかのようにコルジの身体が急激に皺だらけになっていき、遂には木乃伊のようになって朽ちて、塵となってしまう。


「……一瞬、コルジの身体に膨大な魔力が発生したのを見た。命を魔力に変え、分不相応な魔法を発動した……というところか」


「プリムヴェール殿の言う通りだな。……上空に何か膨大なエネルギーが発生したのを感じた。たく、面倒な置き土産を残しやがって!」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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