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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-67 魔法の国事変 scene.7

<三人称全知視点>


「詳しい人事異動の内容を説明する前に、二点先にお話をさせて頂きたいことがございます。まず、人事部門の暗殺チームの解体です。勿論、暗部の存在を否定するつもりはありません。多種族同盟加盟国の中には暗部を保有している国も多いので、魔法の国だけに保有を認めないというのは不公平ですからね。流石にそのようなことを求めるつもりはありません。ただ、暗殺チームの三人を欲している方がいらっしゃいまして、彼女達の承諾を頂けた場合には暗殺チームを解体し、三人を雇い入れさせて頂きたいとお考えの方がいらっしゃいます。……まあ、いずれにしても人事部門が単独で暗殺チームを保有しているという状況は今後の組織改革に不都合なので、仮に彼女達が応じなかった場合でも暗殺チームを解散し、魔法の国の保有する暗殺チームとして再結成してもらう必要があるでしょうが。そして、二点目がウェネーフィカ様の人事部門解任です。ウェネーフィカ様には一部署の部門長ではなく、魔法の国の内政に関わる文官のトップになって頂きたいと考えております。これは、圓先生が提案し、雪菜様た黒の使徒も満場一致で同意したものです」


「ほう、私を文官のトップに……なかなか思い切った人事だね。私はあまり魔法の国では好かれていないのだけど」


「えぇ、重々承知しています。ただ、夏羽様は頭脳明晰ですから、是非その力を惜しみなく国政に使って欲しいというお考えも理解頂けるのではないかと思います。実際、黒の使徒の幹部である『烏羽四賢フォー・セイジズ・オブ・レイヴン』の皆様も国政をした経験はあるとは言えません。黒華様については『管理者権限』を持っていた元神ですので、ゲーム時代の知識を持ってはいますが、今のこの世界はそれだけでどうにかなるレベルを超えています。いずれにしても、ウェネーフィカ様抜きで新体制の魔法の国を構築するのは不可能だというのが、圓様、雪菜様、黒華様の共通見解ということになります」


「では、人事部門の後任はどうするつもりなのかな?」


「ペンナ様が宜しいかと。圓先生も仰っておりました。私も同意見です」


「ペンナ、人事部門の全職員に伝えよ。私達の敗北だ。我々は多種族同盟、黒の使徒連合軍に敗戦し、全面降伏する」


「承知致しました」


 ウェネーフィカの命を受けたペンナが降伏宣言を行い、人事部門での戦いは多種族同盟、黒の使徒連合軍の完全勝利に終わった。



 ソフィス達が人事部門へ襲撃を仕掛けたのと同刻、メアレイズ、アルティナ、サーレの三人は管理部門に襲撃を仕掛けた。

 管理部門は職員が管理部門部門長を務める左遷された老魔法使い――ダラグ・マデン・フェル・マハスただ一人。他の部門に比べて手薄かと思われたが……。


 実際には施設防衛のためにホムンクルスが大量に配備されていた。近年主流になっている連携能力を有する防衛用ホムンクルスの【デモンズウィング】に加え、隠密用ホムンクルスの【デモニック・カメレオン】や砲撃用ホムンクルスの【ディアブル・カノン】といった強力なホムンクルスも保有しているらしく、その数も極めて多い。

 『魔法少女暗躍記録〜白い少女と黒の使徒達〜』にはダラグ・マデン・フェル・マハスについて管理部門の部門長であること、爵位は6=5(アデプタス・メジャー)であること、現身の手法に反対したことで左遷された老魔法使いで、魔法少女のことを嫌っていること、ミューズ・ムーサ・ムーサイ派であったことが設定メモに記されているのみで、ゲーム時代にも本人が登場することはなく各部門の部門長が明かされるタイミングで名前が語られるだけだった。そのため、具体的にどれだけのホムンクルスを保有しているのか、どのような戦闘スタイルを取るのかという情報は多種族同盟、黒の使徒連合軍側には一切存在しない。


 また、魔法の国内部でもダラグは左遷後に管理部門に引きこもってしまっており、どれほどの戦力を保有しているのかという情報は明らかにされていなかった。

 黒の使徒も戦争を起こすとしても管理部門はメインターゲットになり得ないということでダラグに関する情報収集は行っていなかったが、仮に情報収集を行っていても管理部門部門長就任以後の戦力に関しては情報を得られなかったと思われる。


兎式(トシキ)雷鎚覇勁(ライツイ・ハッケイ)猛打連撃(メガミーティア)! でございます!!」


 メアレイズは得物に聖属性の魔力と稲妻のように迸る膨大な覇王の霸気を纏わせた状態で戦鎚を振るい、次々と【デモンズウィング】を撃破していく。


(まわ)れ、(めぐ)り、(めぐれや)水車(みずぐるま)! 劫火よ我が手で渦巻きて、円環を成して焼き尽くせ! 九の尾を持つ狐の王の尾より出たる九つの火球よ! 九連火球ナインス・ファイアボール! 九尾の火球ファイアフォックス・ナインボール!」


 アルティナはオリジナルの火魔法に、狐人族の妖術を組み合わせて九つの狐火の火球を生成すると武装闘気と覇王の霸気を込めてから見気で捕捉した【デモニック・カメレオン】目掛けて次々と放ち、焼き尽くした。


「信楽狸分身〜オペレーション・オブ・サーレ〜」


 サーレは二十四体のサーレが出現し、その全てが武装闘気と新たに習得した覇王の霸気を纏った。

 寸分の狂いのない実体のない自分の分身の幻影生み出す狸人族の秘伝妖術「信楽狸分身」を改良した、大量の妖力を練り込むことで実体のある分身を作り上げるサーレのオリジナル妖術により生じた二十四体のサーレは『暴風の撃鎚』を構えると【ディアブル・カノン】の砲撃を紙躱と見気を駆使して躱しながら接近し、【ディアブル・カノン】の砲台となっている頭を叩き潰して次々と破壊していく。


 戦闘開始から五分経過した時点で管理部門の入口付近に居たホムンクルスは全て制圧された。

 その後もホムンクルスは人事部門の比ではないほど大量に現れたが時空騎士(クロノス・マスター)三人を同時に相手取れるほどの強さはなく次々と撃破されていく。


 このままメアレイズ達の進軍が止まることなく管理部門が制圧されるのか……と思われたが、管理部門の部門長の部屋へと続く最終区画でメアレイズ達は足を止めることになった。


「なんだかヤバそうな気配しかないでございます」


「……これ、絶対に危険な奴っスよね?」


「途轍もない力をサーレは感じるのです」


 目の前に現れたのはメアレイズ、アルティナ、サーレの中で最も背の高いアルティナの三倍にも迫るほどの巨人の如きホムンクルスだった。

 魔法の国の規定では一定以上の大きさのホムンクルスはゴーレムと呼ばれるため、正確にはホムンクルスではなくゴーレムという扱いになる。


 決戦用ホムンクルス【ガーディアン・ゴーレム】――その名の通り決戦用の最終兵器であり、熟練の魔法使いであっても年単位の時間を掛けてようやく一体作成することができる。

 その強さは費やした労力に見合うほど、或いはそれ以上であり、武闘派トップクラスの魔法少女三人を同時に相手取っても勝利できるほどの強さはある。……流石にスートランプのスペードのA(エース)には敵わないが。


 その【ガーディアン・ゴーレム】が両手をメアレイズ達に向けた。

 【ガーディアン・ゴーレム】の手から漆黒のオーラのようなものが放たれ、メアレイズ達は壁まで吹き飛ばされる。


「……くっ、なんなのでございますか、今のは」


絶望の奔流ネガティブ・オーラバーストじゃ。膨大な負のエネルギーを解き放って攻撃する儂の最高傑作――【ガーディアン・ゴーレム】の遠距離攻撃。……寧ろ、これを受けて希望を失わぬとはなかなか恐ろしい存在じゃな。忌々しい魔法少女でもなく、人の身でそれを受けるか。……いや、人間ではないようだが、何者だ」


「私達は多種族同盟加盟国、ユミル自由同盟出身の獣人族でございます」


「……まあ、何でも良い。儂は左遷された身だが、腐っても魔法の国の魔法使いじゃ! 侵略者には決して屈さぬ!」


「……これはダメそうっスね。師匠も可能であれば説得して欲しいと言っていたっスが、師匠も予想していたように撃破するしか無さそうっス。……三賢者の現身の導入に反対し、三派閥から睨まれてもなお主張を変えなかった頑固者、まあ、説得なんて無理っスよね」


 魔法の国の新体制を恐らくダラグは受け入れられない。

 魔法の国を変えようとするならば、絶対に決着をつけなければならない相手だ。……メアレイズ達としては魔法使いとしては比較的真っ当な部類に属する偏屈なだけの魔法使いの命を徒に奪いたくないのだが、交渉が決裂した以上、命をベットして死力を尽くして戦い、決着をつけなければならない。

 

「儂の管理部門は儂のためだけのバトルフィールドじゃ。ここで戦う以上、負ける気はせん! 一撃で死ぬがいい、侵入者共! 滅煇雷域(トニトゥルス)


 部屋の床に赤く輝く魔法陣が出現し、四つの雷で作られた柱が生成され、四つの柱を繋ぐように雷撃が走って菱形の領域が完成する。

 その雷撃に囲まれた領域を超高電圧の雷撃が満たした。


 「滅煇雷域(トニトゥルス)」は超高難易度魔法に分類される魔法の一つであり、発動するためには多くの儀式と大量の魔力が必要になる。このように一瞬にして発動してしまえるものではない。

 にも拘らず最も容易く魔法の発動ができてしまったのは床に展開していた魔法陣のおかげである。


 長い時間を掛けて構築したこの特殊な魔法陣の範囲内では流石に神話級の魔法は使用できないが、6=5(アデプタス・メジャー)のレベルで時間を掛けても発動できる魔法は全て複雑な儀式を行うことなく使用することが可能になる。


 「滅煇雷域(トニトゥルス)」は魔法使いよりも遥かに頑丈かつ人間離れしている魔法少女を殺すために編み出した対魔法少女用戦略魔法――当然、魔法少女ですらない侵入者程度容易く屠ることができると思っていたのだが……。


 しかし、メアレイズ達はダラグの予想したような焼死体にはならなかった。

 武装闘気を三重に纏って防御力を高めると雷撃の中で【ガーディアン・ゴーレム】を撃破するべく行動に移る。

 闘気はいつまでも維持できるものではない。「滅煇雷域(トニトゥルス)」がいつ効果切れになるか分からない以上、短期決戦で仕留める必要がある。流石にメアレイズ達であっても闘気無しで雷撃の中に放り出されたら黒焦げになってしまう。


「魂魄の霸気《戦兎》! でございます!」


「魂魄の霸気《狐九仙》っス!」


「魂魄の霸気《狸王》を使うのです」


 出し惜しみは一切無し。メアレイズ達は魂魄の霸気を発動し、【ガーディアン・ゴーレム】への攻撃を開始した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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