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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-66 魔法の国事変 scene.6

<三人称全知視点>


「まず、お二人の持っている疑問にお答え致しましょう。人見小路(ひとみこうじ)夏羽(なつは)さんと、十兵衛坂(じゅうべえざか)奈々枝(ななえ)さんがかつて暮らしていた地球という世界――その世界に繋がる門がある時期を境に機能しなくなったのではありませんか?」


 的確にウェネーフィカとペンナの本名を言い当てただけでなく、更に彼女達にとって重大な問題である「地球とのゲートの故障」のことまで言い当てられ、流石のウェネーフィカも僅かに警戒心を強めた。

 三人に気づかれないレベルで僅かに表情に出したつもりだったが、見気を使っているソフィス達にとってはその僅かな動揺を掴むことなど造作もない。


「確かにそれは、私達が直面していた大きな問題だな。ある日突然、ゲートが機能しなくなった。私達は唯一機能を回復したゲートを使用し、その先で私達も観測したことのない世界に到達することになった。その世界に私達人事部門は人員を派遣してその世界の探索をしつつ、魔法少女や魔法使いの素質を持つ者達を探していた。残念ながら良い報告は未だに得られていない状況だが。現状については私も何が起きているか分かっていない。魔法の国上層部も何も掴めていない状況なのではないだろうか?」


「魔法の国上層部はどうか知りませんが、Queen of Heartは恐らく現状何が起きているのかを理解していると思われます。その情報を共有する気は状況を見る限り更々ないようですが。……地上世界だけに留まらず、この魔法の国を含んだ世界は限られた方々にユーニファイドと呼ばれています。その実態は三十の世界が融合した世界です。魔法の国を含む皆様のよく知る世界と、私達の暮らす世界は別々のものとして作られ、本来混じり合う筈のない世界はある時を境に融合を開始しました。いえ、融合する形で構築されていったというのが表現としては正しいのでしょうが」


「……貴方達は一体何を知っているというのですか!? それでは、まるで――」


「えぇ、我々は創り上げられた存在です。簡単に言ってしまえば、我々は元々物語の登場人物でした。私達よりも人見小路様達の方が馴染み深いものではありませんか? この世界はゲームの世界です」


「なるほど、この世界がゲームの世界で、私達はその登場人物か。否定をしたいところだけど信じられないという話でも確かにない」


「……本当に、信じるのですか?」


「信じたくはないさ。ただ、果たして否定できるかい? 我々には自我があるし、記憶もある。それらが偽物だという訳じゃないが、創作に登場するキャラクター達にも人格があるだろう? 物語の中の人間は、自分達が物語の登場人物であるという自覚はない。いくら否定しようとしても我々が物語の登場人物ではないということを示すことができる証拠はないんだ」


「逆にゲームの登場人物であるという証拠の方は簡単に提示することが可能です。私達が本来知る筈のない別世界のお二人の情報を持っていたことが証拠になるのではないでしょうか? もっとも、こちらが人員を使って調べさせたのではないかと言われたら何も言えなくなってしまいますが」


「それなら、もっと簡単な方法があるのではないだろうか? 例えば、今後未来に起こることを予測するというのはどうかな? ゲームの世界であるならばシナリオというものがある。その未来予知が正しければ、君達の言うことが真実ということになる。違うかい?」


「確かに理屈で言えばそうですが、重要なことをお忘れですね。この世界は三十のゲームが融合した世界です。それぞれが単体で存在するのではなく融合――つまり単一の世界一つで成り立つのではなく複数のものが相互に影響し合っています。その矛盾を解消するためにシナリオには存在しない辻褄合わせも多数起こっています。そして、この世界は既にゲームという縛りからも解き放たれています。自らの意思で選択を行えば、ゲーム時代には存在しなかった結末に至ることも可能です。既に、私達の祖国であるフォルトナ王国も、ソフィス様の暮らすブライトネス王国もゲーム時代の歴史からかなりズレたものになっています。『スターチス・レコード』というゲームにおいて、私はルーネスお兄様を暗殺し、暴君として君臨する筈でした。しかし、それは今やあり得べからざる未来の一つになっています。この世界の未来は誰にも分かりません。三十のゲームの制作に携わったゲームデザイナーにも、この世界の覇権を求めて戦争を繰り広げる『管理者権限』と呼ばれる力を持つ神々にも。話を戻しますが、ゲームの登場人物といっても今の私達はこの世界の元となるゲームを作った方々の暮らす世界の住人達と何ら変わりません。様々なことを思考し、選択し、未来を作っていくことができる。この世界の元を作ったゲームデザイナーである百合薗圓先生は、元の世界の住人達と異世界化したこの世界の住人達の間に貴賎などないと、自分達と何も変わらない対等な存在であるとそう仰ってくださいました」


「ということだそうだ、ペンナ。そう悲観することでもないだろう? 確かに我々はゲームの登場人物としてデザインされたのかもしれない。しかし、その先の未来は一つではない……いくらでも変えていけるものだ。この世界の元となるゲームを作った我々にとっては創造主に等しいお方がそう言ってくれているそうだからね」


「……はい、正直信じられない話ですが、信じなければ話が進みませんし。それに、実害のある話でもありませんし」


「ご理解頂けたようなので話を続けさせて頂きます。まず、我々多種族同盟という地上世界の国際互助組織……まあ、国際連合に相当するものだとお考え頂ければ分かりやすいと思います。この多種族同盟は黒の使徒と手を組み、魔法の国への襲撃を仕掛けることになりました。理由はいくつかありますが、一つ目は魔法の国の女王Queen of Heartの討伐及び、彼女の保有する『管理者権限』の奪還。元々、『管理者権限』はハーモナイアと呼ばれるこの世界の女神が持つ権能でした。それを三十の世界の一部の者達が奪取し、次代の唯一神を決める戦争を始めたというのが現状ですので、この魔法の国への侵攻はその戦争の一環であるということになります。圓先生の最終目標は全ての『管理者権限』を集め、女神ハーモナイアを復活させることです。その上で『管理者権限』を使って世界を支配するといった目論見はありません。この世界はこの世界の人々が自分達で統治していくべきだというお考えですからね。二つ目は魔法の国の改革です。現状の魔法の国はQueen of Heart派による独裁が続いています。Queen of Heartの討伐後、この国の統治を圓先生は雪菜様と多種族同盟と同盟関係にある黒の使徒のリーダーである黒華様に委ねたいと考えておられます。その上で、多種族同盟が魔法の国に求めるのは魔法の国の多種族同盟への加盟です。私達が多種族同盟への加入を求める理由は今後この世界で起きるであろう未曾有の危機に対処するためです。――ソフィス様、ブライトネス王国大戦の時の映像を見せて頂けませんか?」


「分かりました」


 起動していたパソコンをカチカチと操作してブライトネス王国大戦の映像を見せる。

 魔法少女の力を持ってしても勝てないような戦いも散見されるが、問題はそれよりもこれほどの戦いが同時期に同じ場所で起こったという事実の方だ。


「勿論、これは極めて稀な例です。しかし、このように『管理者権限』を持つ者達の思惑が複数交差すると、このような戦争にも発展します。ちなみに戦争の結果は一応、ブライトネス王国の勝利、七つの『管理者権限』の回収に成功しました。一方、この戦争に敵勢力として参戦した黒の使徒のリーダーである黒華様の保有する『管理者権限』はご覧の通り第三勢力に奪われています」


「……見たことのない魔法少女だな」


「オルタ=ティブロンという魔法少女です。魔法の国に所属していない、『這い寄る混沌の蛇』という組織に所属する魔法少女だと聞いています。……ただ、これは組織というにはあまりにも秩序立っておらず、それぞれの目的を持つ者達が互いに利用し合っているという状況なので、本当に組織と呼んでいいのかは微妙なところですね。話を戻しまして、三つ目の目的ですが、魔法の国に襲撃を仕掛けてくると思われる第三勢力――『這い寄る混沌の蛇』に与する魔法少女達の討伐です。該当する魔法少女は那由多彼方(ナユタ≠カナタ)と先ほども名前を挙げたオルタ=ティブロン。把握していないだけで実際には他にも該当する敵がいる可能性もあります」


「なるほど、魔法の国への侵攻の概要については分かった。魔法の国を今後は黒の使徒が中心となって纏めていく……そのつもりなのは理解できるが、果たして魔法使い達がそれを許すと思っているのだろうか? それに、その話を何故人事部門部門長の私やペンナにしている理由も気になる」


「まず、一つ目の質問に関してですが、許す許さないの問題ではありません。何故、今回魔法の国のほぼ全ての施設に戦争を仕掛けたのか、それも完全に全ての施設が稼働している昼間に――暗殺をするつもりならば昼間よりも夜の方が効果的です。もっとも手厚い時間に攻撃を仕掛けたのは、魔法の国が全力を賭しても勝ち目のない者達を相手取ったことを強く印象付けるためです。それに、今回の戦争では五老臣達上層部も暗殺のターゲットとなっています。彼らが命を落とせば魔法の国の貴族の最高位は全滅することになります。勿論、魔法の国にはまだまだ力を持つ貴族はいるでしょうが、ウェネーフィカ様? 逆に質問させて頂きますが、魔法の国の中枢を余裕で破壊するような者達をバックに持つ新政府に戦争を挑んで勝ち目はあると思いますか? 戦力の揃っていた魔法の国でも勝てなかったのに?」


「確かに、そんな状況で戦争を挑む者はいないだろうね」


「それに、間違いなく彼女達はQueen of Heartよりも良い治世を敷くことになります。魔法の国をQueen of Heartと五老臣の圧政から解放した英雄と、何もできなかった弱小の魔法使い、果たしてどちらが高い支持を得られるでしょうか? 彼らはQueen of Heart派の横暴を黙って見ていたのですよ?」


「襲撃そのものの正当性も、Queen of Heart派の横暴を許せなかったという確固たる理由があれば認められることになる。なかなか良く考えているね」


「この作戦を考えたのは圓先生です。『魔法少女暗躍記録〜白い少女と黒の使徒達〜』のエンドの一つには黒の使徒が天下を取り、魔法の国を統治していくというものがあります。そして、その統治は高い支持を集めたようです。……まあ、前世代が暗黒時代だったということも大きいでしょうが。ゲーム時代には『支配』でしたが、圓先生は『統治』を行うことを条件に魔法の国の中枢の役割を担ってもらいたいと申し入れ、真白雪菜、刻曜黒華両氏の承諾を頂きました。勿論、黒の使徒をベースにはするものの魔法の国の現組織もある程度は残す形で人事異動をすることになります。それに伴い、人事部門については二点検討していることがあります。これが、お二人に最重要機密事項を説明させて頂いている理由になります」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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