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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-65 魔法の国事変 scene.5

<三人称全知視点>


 カレンが宇沙姫に狙いを定め、レミュアはメタリナと交戦している。

 残るダークブルームもネストが標的に定めており、必然的にアインスはそれ以外の敵を相手取ることになった。


「魂魄の霸気《求道の錫杖》」


 様々な形に変形することが可能な極めて強力な求道の霸気と同性質のエネルギーから作り出された漆黒の球を九つとその球と同素材から作られた錫杖を作り出す魂魄の霸気を使い、錫杖を剣の形へと変形させると、アインスは床を蹴って空中へと足を踏み入れ、次々と警備用ホムンクルスの【デモンズウィング】に圓式の斬撃を叩き込んでいく。


 求道球と求道錫杖には触れたものを消滅させる効果もある。それは、魔法生物であるホムンクルスも例外ではない。錫杖が変形した剣によって斬られた部位は消滅し、両断された【デモンズウィング】は次々と床に落下していく。


 その光景は、暗殺チームの魔法少女達と互角以上に渡り合うネスト、カレン、レミュアの三人と共に魔法使い達や魔法少女達には脅威として映ったのだろう。

 魔法という攻撃手段が完全に奪われた魔法使いや変身していない魔法少女達はそもそも戦闘に参加することはできないが、人事部門には既に変身している魔法少女の姿も多数あった。


 しかし、その魔法少女達も誰一人として目の前の少年に――アインス=フォルトナに戦いを挑もうとはしない。


「お姉さん達は戦わなくていいの?」


 可愛らしく尋ねるアインスはその返答の代わりに一歩ずつ後退りをしていく魔法少女達を見て「うーん、俺としては折角先生の用意してくださった舞台だし、もう少しだけ腕試しをしたかったんだけど」と普段の無邪気な王子様の表情から一転、少しだけ不機嫌そうな表情を見せた。

 しかし、その表情もすぐに引っ込め、「命は大切だよね? 僕もお姉さん達を積極的に傷つけたいとは思わないし、このまま僕と一緒に人事部門が制圧されるのを待っていようか?」と優しく笑いかけた。


「やはり、普段の『僕』口調は作り物だったのですね」


「僕が圓先生に子供として甘えられる時間はそう長くないんだよ。僕と先生は同い年だけど、やっぱり僕にとって先生は先生で、圓先生にとっては出来の悪い教え子なんだと思う。……いつかは一人前の俺を先生に認めてもらいたいし、対等な存在としていつかは結婚したいと思うけど、今はまだ僕のままで居たい。もう少しだけ……ネストさんの思っているみたいな打算とか、そういうものじゃないんだよ」


「……正直、長兄のルーネス殿下や聡明なサレム殿下と違い、貴方のことはまだ子供だと思っていました。……義姉さんの生徒なんですから、色々なことを考えて当然ですよね」


 とっくの昔にルーネスとサレムと共にアインスも成長していた。それを見せないのは、もう少しだけローザに甘えていたいから。

 その気持ちはネストにも分かる。ネストの中にも義姉に甘えたいという気持ちはあるのだから。


「……流石に魔法学園に入学する頃には変えるつもりだよ。流石に恥ずかしいからね。ただ、それでも俺達の目指すものは変わらない。ルーネスお兄様とサレムお兄様と三人で圓先生を攻略する。義弟のネストさんに負けるつもりもないし、アーロンさんにも、アルベルトさんにも、咲苗さんにも、巴さんにも、ソフィスさんにも、スティーリアさんにも負けるつもりはないよ」



 裏武装闘気の剣を油断なく構えたカレンと対峙する宇沙姫の頬を汗が伝う。


 宇沙姫の左手の骨は最初の空中回し蹴りを浴びた瞬間に粉々に粉砕された。流石に超人的な再生能力を有する魔法少女といっても粉砕された腕が瞬時に回復したり、失った腕を瞬時に再生できたりといったことはそういった固有魔法を持たない限りはあり得ない。つまり、戦闘開始早々、宇沙姫は武器の一つである左腕を失ったということになる。


 とはいえ、宇沙姫の利き手は右手で、更に足技も極めている。問題は腕を失ったことよりも魔法少女の身体を破壊できるほどの超人的な力をカレンが持っているということである。

 このまま戦いを続ければ宇沙姫に勝ち目はない。あの尋常ならざる破壊力と防御力の源である黒いオーラのようなものをどうにかしなければ宇沙姫に勝利の可能性は万に一つもない。


「やっぱり足技よりもこっちの方がしっくり来るわね。――天雷光(あまつらいこう)


 武装闘気を纏わせた裏武装闘気の剣に更に覇王の霸気を纏わせ、思いっきり薙ぎ払う。

 流石に一撃で死亡とまではいかなかったが、懺悔が浴びた宇沙姫は血を吐くほどの衝撃とダメージを負い、勢いよく壁まで吹き飛ばされた。傷は浅いが普通の剣では魔法少女の身体に傷をつけることそのものが難しい。

 吹き飛ばされた衝撃で壁に打ちつけられ、更に壁にも蜘蛛の巣状にヒビが入った。人事部門の建物も魔法による強化がされている筈だが、あまり意味を成さなかったようだ。


 更に追い討ちを掛けるようにカレンは至近距離から相手の身体に直接武装闘気を流し込むことで内部から敵の身体を破壊する武流爆撃を浴びせる。カレンの攻撃に魔法少女のタフさで何とか耐えてきた宇沙姫もこれには耐え切れず、血反吐を吐きながら頽れた。



 メタリナも宇沙姫も敵対した相手にかつてないほどの苦戦を強いられていたが、それはダークブルームも同じだった。

 手裏剣や苦無を投げてネストを仕留めようとするが、魔法少女の膂力から繰り出された高速の手裏剣や苦無を最も容易くキャッチされる。武装闘気を纏わせた上で投げ返された手裏剣や苦無はダークブルームの頬や脇腹を擦り、傷口から血液が流れ出る。

 回避をしようとしても、ダークブルームの行動をまるで先読みしているかのように避けることに失敗し、魔法少女の反射神経でも手裏剣や苦無をネストのように受け止めることはできない。


 ネストは裏武装闘気で作り出した苦無を無数に作り出し、武装闘気と神光闘気を纏わせると一気に投擲した。

 的確に行動を先読みした上で放たれた苦無の雨をダークブルームは完全に躱し切れず、ダークブルームは苦無を五つその身に受ける。流し込まれた膨大な神光闘気――太陽エネルギーと同じ波長のエネルギーに曝され、焼けるような痛みをダークブルームは味わった。


 程度の低い吸血鬼なら致命傷、人間であっても鍛えていなければ焼け死ぬ場合もある膨大な神光闘気をダークブルームは耐えきってみせた。

 しかし、耐え切れたところで戦いを続ける権利を勝ち取っただけに過ぎない。そこから勝利の二文字まではまだ途方もない距離がある。


「さて、底は見切りました。仮に固有魔法が使えたとしても十分対処は可能ですね。行動先も見え見えですから。――さて、これでチェックメイトにさせて頂きます。あんまり時間をかけ過ぎてもご迷惑をおかけすることになりますからね」


 ダークブルームの目でも追いきれない速度で目の前に肉薄したネストは武流爆撃を浴びせる。

 覇王の霸気が混入したことで強化された武装闘気のエネルギーに耐えきれず、放たれた部分に熱さを感じながらダークブルームは意識を手放した。



 裏武装闘気の剣で圓式の斬撃を放ち【デモンズウィング】を撃破しているルーネスとサレムを先頭にソフィス、ルーネス、サレムの三人は人事部門の最奥を目指していた。

 ここまでは順調そのもの、途中で戦闘を仕掛けてくる魔法少女も二、三人居たが、ソフィス達の相手にはならなかった。そして、その三人が撃破されると勝ち目がないと理解したのだろう、それ以上の戦闘は起こらなかった。


「ここが人事部門部門長の執務室ですね」


 「人事部門部門長」と書かれた表札を確認してから、ソフィスは扉の取手を引っ張り開けた。

 中には警戒心剥き出してソフィス達の方に視線を向ける和服とセーラー服の要素を足したような和風セーラー姿の少女と、椅子に座り全く警戒心を見せずに微笑む純白の魔女風衣装にフリルを大量にあしらったガーリーな衣装の少女の姿があった。


「初めまして、君達が襲撃者かな?」


「えぇ、魔法の国からすれば襲撃者でございますね。初めまして、私はソフィス=アクアマリンと申します。セイント・ピュセル、拳法姫の娘々(ニャンニャン)、紅桜という三人の魔法少女のことをご存知ですよね? 彼女達が派遣された魔法の国とは違う世界、地上世界にある国家の一つ、ブライトネス王国のアクアマリン伯爵家の長女ですわ。そして、この方々はブライトネス王国の隣国であるフォルトナ=フィートランド連合王国の王太子ルーネス=フォルトナ殿下と第二王子のサレム=フォルトナ殿下ですわ」


「ご紹介に預かりましたルーネス=フォルトナです。お初にお目にかかります」


「同じく、サレム=フォルトナです」


「なるほど、魔法の国とは別の世界の。彼女達の件を侵略と受け取られたのでしたら謹んで謝罪しましょう。……しかし、私にはただ苦情を言いにきたのではないように思えます」


「えぇ、その通りですわ。……ここからの話は最重要機密事項も関わってきますので、部屋の扉を閉めさせて頂きたいのですが」


「必要であればペンナも退室させよう」


「――ッ! ウェネーフィカ部門長! それは……」


「いいえ、その必要はございませんわ。ペンナ様にもこの話は是非聞いて頂きたいと思っております。勿論、こちらから不意打ちを仕掛けることはございませんので、警戒も解いて頂いて結構ですわ」


「それは流石に無理なご要望だと思います。何者かも分からない襲撃者に警戒を解くなどあり得ません!」


「そもそも、殺すなら今頃すぐにお二人とも殺すことができていますわ。ペンナ様の固有魔法は非戦闘系の『書いた文章が真か偽か十二時間後に判明する』というもので、ウェネーフィカ様の固有魔法は使いようによっては戦闘にも活用できるものの攻撃性はあまり高くない『道具に魔法の力を与える』、どちらも対処は簡単です」


「だ、そうだよ。ここまで情報を握られているんだ。負けを認めて話を聞く選択肢しかないと思うんだけどね、私は」


「……それしかないようですね」


「それでは、ここから先の説明はサレム殿下にお願い致します。その前に、必要な機材の準備をさせて頂きますね」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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