Act.9-61 魔法の国事変 scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
魔法の国は独立した世界になっている。各地に魔法の国へと繋がる入り口が存在し、その入り口から魔法の国に行くことができる。
入り口は、黒華達が知っていたものが三つと、今回人事部門の三人から得られたものが二つ……その中で今回はブライトネス王国に最も近い廃炭坑の坑道の一本に偽装された入り口を使うことにした。
この入口を抜けた先は魔法の国の三つある大通りの一つ――そのまま真っ直ぐ突き進んでいけばハート魔導城に行くことができる。左手側には監査部門、右手側には人事部門の建物があり、その先には住民街――貴族の階級ごとに住むエリアが分けられている――がある。
今回の襲撃先に設定されているオルグァの屋敷、ザギルの屋敷、イドルフの屋敷はいずれもこの通りに面するハート魔導城に程近い中心街に位置し、この大通りを使えば今回の襲撃は極めて効率よく行える筈だ。
今回は完全な奇襲――当然、夜襲と同じく時間との勝負になる。
襲撃に時間が掛かればそれだけ増援が来ることになるからねぇ。まあ、その増援も倒せば問題ないっていう脳筋な考え方もあるんだけど、いずれにしても早めに制圧した方がお得だ。時間的な意味でも、労力的な意味でも。
……勿論、そう一筋縄で行く作戦だとは思っていないけどねぇ。
「さて、作戦の最終確認を行う。それぞれの襲撃先ごとにパーティを組み、このゲートへの突入後速やかに各施設の制圧及び重要暗殺対象の抹殺を行う。暗殺対象については事前に渡した通り……ただし、敵がこちらに敵対する意志がないこと、そして、今後の魔法の国運営にとって必要、或いは害にはならないと判断した場合は暗殺の対象から外す。スティーリアの担当する刑務部門については基本的に殺害は無しということでお願いしたい。……それ以外の者達については必要に応じてメールで判断を仰いでもらいたい。大丈夫、戦闘中でもメールを返せるくらいの余力はある」
「……というか、親友に余裕が無くなったら終わりだよな?」
「それと、最後に重要なことが一つ。誰一人命を落とさないこと……危なくなったら逃げの一手を打つことも大切だよ。命あっても物種だからねぇ……これは、セイント・ピュセル、拳法姫の娘々、紅桜にも適用される……でいいよねぇ? ノイシュタイン卿」
「無論だ。お主らを地獄にまで突き合わせるつもりはない。オスクロも含め、勝てぬと判断すれば逃げてもらうつもりだ。場合によっては我も撤退させてもらう。我も命は惜しいからな」
「そう、それで構わないよ。ボクに迷惑が掛かるとか、多種族同盟に申し訳が立たないとかそういうのはいいから。とにかく、取り返しのつかない事態にはならないように……命大事にだよ、いいねぇ?」
一番こういう時に趣味優先して撤退し遅れるのはラインヴェルド達だと思うけど、ラインヴェルド達も退き際を見極められる筈だから……大丈夫だと思う。……大丈夫だよねぇ。
他のメンバーも退き際は見極められる者が揃っていると思う。……多分?
まあ、戦争をする以上は万が一というものがある。敵の命を奪おうとする以上は味方にも被害が出ることを覚悟しないといけないのは当然で……ただ、やっぱり無傷でみんなで生還したいなぁ、と甘い夢を見てしまう。まあ、それができるだけの準備を整え、メンバーを選定したつもりだけどねぇ。
◆
ゲートを越えて魔法の国に入る。見慣れない者達に気づき、大通りを歩いていた魔法の国の住民達(魔法使いと魔法少女が7:3くらいの割合)が一斉にボク達に視線を向けた。
「さて、まずは宣戦布告と行こうか!」
ボクは普段の赤髪に灰色の瞳を持つローザではなく、瑠璃色の髪と金色の瞳を持つ青薔薇のローザの姿になっている。当然、背丈は乙女ゲームに登場するローザを参考にしているから普段のボクよりも高い。その青薔薇のローザの背丈の二倍ほどの薙刀を構えると、衝撃を収束させた白い輝きを纏わせ、解放せずに城に向けて放った。
白い輝きの球体はそのままゆっくりとハート魔導城に向かって飛んでいき、城壁に命中すると同時に膨大な衝撃エネルギーが解放され、一瞬にして轟音と共に城が崩壊して瓦礫の山と化した。
実際は発生させた衝撃を纏わせて攻撃する近接技だけど、応用すれば遠距離攻撃にも使えるようだねぇ……ぶっつけ本番だけど上手く行ったから結果オーライということで。
震動でヒビを入れてっていうこともできるけど、それだと攻撃範囲が広くて被害が拡大してしまう。どうも使い勝手が悪くて単体狙いの遠距離攻撃という使い勝手のいい技は無かったんだよねぇ。……その点、この技は条件を満たしている……んだけど、攻撃の速度が遅いのがネックだ。まだまだ改良の余地があるねぇ。
「ローザ、お前ってそんな武器持っていたっけ?」
「そういえば初お披露目だったねぇ。これは、『震撃薙刀【神薙】』っていう帝器をメインにして作った武器だよ。随分前にジョナサンが回収してきた帝器『振動剣』を使って『王国騎士の剣』を改良できないかな? って聞かれてねぇ。折角だから、ジョナサンの『王国騎士の剣』を改良しつつ、ボク用にも同じ帝器効果を持つ武器を作ろうと思って制作したんだよ」
ちなみに、ジョナサンの『王国騎士の剣』を改良した『神父騎士の剣』と『震撃薙刀【神薙】』の詳細はこんな感じ。
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・神父騎士の剣
▶︎ジョナサンのフォルトナ王国の騎士団に相応しい剣に振動を発生させる帝器を融合することで誕生した震災を引き起こす力を持つ神父の剣。
スキル:【加速剣】、【破壊王】、【暴虐者】、【破壊成長】
帝器効果:斬撃によって振動を発生させることで、ありとあらゆるものを揺り動かすことができる。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:神話級
付喪神度:99,999,999,999/99,999,999,999【該当者: ジョナサン】
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・震撃薙刀【神薙】
▶︎振動を発生させる帝器をベースに幻想級の薙刀とユニークシリーズの薙刀を融合して強化した『滅び』の名を持つに相応しい薙刀。
スキル:【振動増幅】、【衝撃喰】、【暴虐者】、【破壊王】、【崩壊者】、【蹂躙王】、【崩界ノ剣】、【破壊成長】
帝器効果:斬撃によって振動を発生させることで、ありとあらゆるものを揺り動かすことができる。
【管理者鑑定】
分類:『異世界ユーニファイド』アイテム
レアリティ:神話級
付喪神度:99,999,999,999/99,999,999,999【該当者: ローザ】
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「さて、ここからは各自予定通りに攻撃に移ってもらいたい。――散開!」
ボクの言葉を合図に、菊夜、沙羅、美姫、火憐、シーラ、ラファエロ、ミリアム、アルベルトは大通りを俊身で駆け抜けてオルグァの屋敷方面へ、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻は魂魄の霸気《昴》を使用し、魂絆融体してから俊身を使って大通りを駆け抜けてザギルの屋敷を目指す。
桃花、篝火、美結、小筆、汀、クレール、デルフィーナ、レナード、トーマス、エイミーンは前の二グループと同ルートで途中まで大通りを俊身で駆け抜け、イドルフの屋敷へと向かった。
人事部門方面にはネスト、カレン、ソフィス、ルーネス、サレム、アインス、レミュアが、監査部門方面にはアクア、ディラン、マグノーリエ、プリムヴェールが、管理部門方面にはメアレイズ、アルティナ、サーレが、研究部門には榊、槐、椿、榎、楸、柊が、ここから一番遠い刑務部門にはスティーリアが向かい、この場にはボク、雪菜、黒華、ラインヴェルド、オルパタータダ、ミーフィリア、ノイシュタイン、オスクロ、セイント・ピュセル、拳法姫の娘々、紅桜が残った。
「さて、と。お出ましのようだ」
これだけ派手に暴れたから仕掛けてくるとは思っていたけど、やっぱり仕掛けてきたか。
魔法の国によって生み出されたホムンクルス系の人造魔法少女の代表格――スートランプ。スートによって得意分野が違っており、スペードは攻撃力に秀でた戦闘員、クラブは隠密行動に長けた工作員、ダイヤは知識を持つ技術者、ハートは防御力が高く回復魔法の能力を持ち、数字によって能力値が変化する。2より3が、3より4が強く、KよりもAが強い。
つまり、戦闘力において最強なのはスペードのAなんだけど、それが三十体。
……一人につき一組のスートランプとしか契約ができないんだけど、流石は魔法の国本国、戦力が尋常じゃないねぇ。まあ、武闘派トップクラスの魔法少女五名とほぼ同等の戦闘力が三十体、つまり概算で武闘派トップクラスの魔法少女百五十人に相当する戦力が相手でも全く負ける気がしない。
ラインヴェルドとオルパタータダが地面を抉るほどの勢いで加速――それぞれが狙いを定めた槍を構えたスペードのAをスペードのAの反応速度を上回る勢いで武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣で両断する。
ミーフィリアは「強奪する時間の拘束」でミーフィリアを狙ったスペードのA五体を時間停止し、「凝固する時間の短針」で振るうことで時を切り裂くことができる剣を作り出して次々と両断した。
神速闘気を纏わせた雪菜が武装闘気と覇王の霸気を纏わせた魔法の薙刀を振り下ろしてスペードのAを地面のシミに変え、黒華は「S&W M500」を構え、次々と引き金を引いてスペードのAを一撃で粉砕していく。
ポーカーでも大富豪でも実戦でもまず負ける筈の無い、複数本に見える圧倒的な速度で槍を操り武闘派の魔法少女すら容易に撃破できる筈のスペードのA達が、全く手も足も出ずに蹂躙されていく光景は魔法の国の住人達にとっては悪夢に等しく、戦闘態勢を取ろうとしていた魔法少女達はほとんどがその身体能力を全て逃走のためだけに費やし、散り散りとなって逃げ出し、魔法少女ほどの身体能力を持たない魔法使い達も逃げに転じた。この場でボク達相手に戦おうという者は片手で数えられるほどしか残っていない。
残るスペードのAは十体。そのうちの九体を『震撃薙刀【神薙】』を使って生じさせた震動で大気にヒビを入れて粉砕し、残ったスペードのAを《神の見えざる手》を使って捕らえた。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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