Act.9-58 魔法の国への臨時班派遣直前、最初にして最後のブリーフィング scene.2
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「さて、脱線し続けていても仕方ないし、本題に戻らせてもらうよ。ボクの記憶が正しければ、敵の首魁はQueen of Heart、その護衛役として親衛隊と呼ばれる公式では四人、実際には五人の高級魔法少女がいる。この親衛隊はそれぞれ称号を持ち、【エース】、【ジャック】、【クイーン】、【キング】と呼ばれる。秘匿されている最後の一人は【ジョーカー】でこの【ジョーカー】に関しては一人とカウントして良いかもかなり怪しい。情報については資料の二ページと三ページに纏めてあるけど、ここまでで何か質問やこの情報が間違っているという指摘はないかな?」
「特にないわね。固有魔法も含めて情報に間違いはないと思うわ」
「『物事の本質を見抜く』【エース】のネモフィラに、『六枚の燃える翼』を持つ【キング】のネハシム、『キノコを作り出す魔法』によって胞子が取り付いた相手から無数のキノコを生やし、特殊なキノコで相手の意識を乗っ取ることができる【クイーン】のプレイグ、『突き刺した相手を洗脳する細剣』を持つ【ジャック】のマシュー・プキン、なかなかの魔法が揃っているようだが、興味深いのは【ジョーカー】のスートランプ・ロイヤルガードだ……まさか、五十三体の魔法少女を軍として扱うという発想の魔法少女がいるとは……なかなか興味深い」
「魔法の国産の人造魔法少女スートランプ……この技術自体は昔からあってかなり広まっているようだけど、スートランプ・ロイヤルガードはQueen of Heartの護衛のために作られた特注タイプで、通常のスートランプとは比較にならないくらいの力を持っている。大凡、彼ら親衛隊はQueen of Heartを守るために魔法の国の中枢にあたるハート魔導城に控えているから、ハート魔導城を攻める場合、Queen of Heartと戦う前に彼女達との戦いは避けられないものになると考えて良いと思う」
「……その間にQueen of Heartが脱出するという可能性は……無さそうだな」
「確かに、Queen of Heartは『管理者権限』を持っている唯一神で、その立ち位置は黒華さんと同じ。ただし、その知識を利用して手を変えてくる可能性は極めて低い。何故なら、それは有象無象を警戒して自分の方針を変えるということに他ならないからねぇ。彼女にとって、それは恥なんだよ」
「阿呆なのですよぉ〜」
「あれは高貴であることに誇りを持ち、高貴であるが故にあらゆる者を見下した者の、愚かな女王の戯画なんだよ。自分にとって聞きたくないもの、都合の悪いものをシャットアウトし、自分の世界に引き篭もる。その癖、自分の要求は通したい……あれが独裁者になったら国は滅ぶよ。都合が悪い人はどんどん処分されないし、ろくに仕事のできない無能は排除される。まあ、ラインヴェルド陛下やオルパタータダ陛下とは別の意味で愚王だよねぇ」
「「俺達愚王じゃないんだけど!! ちゃんとやればできる子だぜ!!」」
「……じゃあさぁ、ちゃんと仕事しようよ。アーネスト閣下達の負担を増やすなって」
もう「あー、聞こえない聞こえない」ってやっている莫迦二人は放っておいて話を続けよう。
「じゃあ、この愚物が政治やっているのかっていうとそうじゃない。五老臣と呼ばれる魔法の国の住人達――魔法使いの中でもお貴族様……まあ、公爵とか伯爵とかそう言う呼び方じゃなくて、10=1とか、9=2とかそんな感じなんだけど、五老臣は三賢者を除けば最上位に位置する五人の9=2から構成されている。元はQueen of Heartの貴族の筆頭でかつては人間世界を含めた世界中の情報を管理する組織図的には全部門の上位に位置する情報局という組織の局長でもあったオルグァ・パッヅァ・エル・レギドゥ、研究部門部門長を兼任している五老臣の紅一点で魔法の国の中でも珍しい魔法少女の素質を持つ魔法使い、自他共に認める魔法少女マニアの変態のカルファ・ミディ・ベルン・エディア、監査部門部門長を兼任しているホムンクルス研究の第一人者、自身の命令に従うように改良された特殊なホムンクルスを用いて監査部門所属の魔法少女達をホムンクルスに憑依させ、魔法少女達の記憶や自我をそのまま継承させて違和感を持たさせずに戦力として使用できるようにしている魔法少女嫌いの魔法使いコルジ・カッファ・ペル・ゲフォルン、かつては魔法魔術学校で教鞭を取っていた教授で所属していたミューズ・ムーサ・ムーサイ派閥を秘密裏に裏切ってQueen of Heart派についた対抗魔法の権威、実はQueen of Heartを攻略して魔法の国を支配下に置きたいと思っている野心ある男、ザギル・バル・グワミ・ゼント。『魔法増幅装置』や『魔法無力化装置』などの始原の大賢者ノーアが残した現代では再現不可能な秘宝も管理している元リツムホムラノメノカミ派の裏切り者イドルフ・ギャラン・バグ・チェペシュ……この五人が政治を主導している。このうち、研究部門部門長のカルファ、監査部門部門長のコルジ、この二人はそれぞれの部門から動かないと思われる。残るオルグァ、ザギル、イドルフのうち、イドルフは基本的に自身の邸宅に引きこもっている。このイドルフについては『冥黎域の十三使徒』の那由多彼方とオルタ=ティブロンが仕掛けてくる可能性が高い……というか、ここに目的のものがある訳だからQueen of Heartの次くらいに戦力を割きたい。この五老臣も襲撃の対象になっているけど、それと同時に潰さないといけないのが人事部門、監査部門、管理部門、研究部門、刑務部門……このうち、監査部門と研究部門については五老臣が部門長をしているから残る三つについて、人事部門部門長は『道具に魔法の力を与える』魔法を持つ老獪な少女ウェネーフィカ、管理部門部門長は現身の手法に反対したことで左遷された老魔法使いで、魔法少女のことを嫌っている6=5のラグ・マデン・フェル・マハス、刑務部門部門長は『猛毒の身体』という魔法を持ち、全身から様々な毒を分泌、あるいは身体そのものを毒へと変化させることができる正義の体現者ポイズンヴェリー。勿論、各部門にはそれぞれ大量な魔法使いや魔法少女が居て、総じて制圧をしようとすれば連戦は避けられない。まあ、ここにいるメンバーは全員ある程度以上の力はあるし、魔法少女相手の連戦でも何とか対応できると思うよ。そして、最後に三賢者の二人――ルヴェリオス帝国の時はヴェガス=ジーグルードが敵として現れたし、今回も何かしらの方法で三賢者の残り二人を手駒にしている可能性もある。流石のQueen of Heartも無視できる存在しないしねぇ。『誰とでも友達になれる』という精神汚染魔法を使うミューズ・ムーサ・ムーサイと、『質問したら真理が分かる』という固有魔法を持つリツムホムラノメノカミ――どちらも普通の魔法少女とはかけ離れた戦闘能力を持つから注意が必要。この二人を親衛隊と共に防衛戦力として使ってくる可能性は十分にあると思う。さて、一通り説明も終わったし、ここからは具体的に誰がどこを担当するのかを決めていくよ。まず、希望とかあれば聞くけど? えっと、襲撃先はハート魔導城、オルグァの屋敷、ザギルの屋敷、イドルフの屋敷、人事部門、監査部門、管理部門、研究部門、刑務部門……ってところでいいと思うんだけど」
「三賢者に、親衛隊に、一番戦えるのはハート魔導城だな! よし、オルパタータダ! ハート魔導城に突撃しようぜ!」
「圓さん、あたしとクレールさん、デルフィーナさんは前の戦いでオルタ=ティブロンに大きな借りがある。イドルフの屋敷への襲撃、あたし達に任せてもらえないかしら?」
「まず、ラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下に言っておかないといけないけど、恐らくハート魔導城に行っても女王戦には参加できないと思うよ。他にも戦力がいるし、そっちに人員を割きたいからねぇ。……まあ、色々と思うところがあると思うけど、それを踏まえて一応人員を振り分けてみた。異論が出なければこれでいいかな?」
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◆ハート魔導城
・百合薗圓
・雪菜
・黒華
・ラインヴェルド
・オルパタータダ
・ミーフィリア
・ノイシュタイン
・オスクロ
・セイント・ピュセル
・拳法姫の娘々
・紅桜
★オルグァの屋敷
・菊夜
・沙羅
・美姫
・火憐
・シーラ
・ラファエロ
・ミリアム
・アルベルト
★ザギルの屋敷
・欅
・梛
・樒
・椛
・槭
・楪
・櫻
★イドルフの屋敷
・桃花
・篝火
・美結
・小筆
・汀
・クレール
・デルフィーナ
・レナード
・トーマス
・エイミーン
★人事部門
・ネスト
・カレン
・ソフィス
・ルーネス
・サレム
・アインス
・レミュア
★監査部門
・アクア
・ディラン
・マグノーリエ
・プリムヴェール
★管理部門
・メアレイズ
・アルティナ
・サーレ
★研究部門
・榊
・槐
・椿
・榎
・楸
・柊
★刑務部門
・スティーリア
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「若干……というか、かなりスティーリアに負担が掛かることにはなるけど、ボクの予想できていないその他の戦力がいる可能性があるから、他のところにかなりの人員を振り分けさせてもらった。刑務部門に関しては囚人の中でも重要な者達は脱出しちゃっているそうだから追加戦力は無さそうだけど、魔法大監獄は魔法の国唯一にして最高の堅牢さを誇っていた大監獄だからねぇ、想定される敵は強い。……まあ、大丈夫? って聞くまでもないと思うけど」
『承知致しましたわ。このスティーリア、ご主人様のご期待に添えるように最速で、そして誰も殺さずにこの任務、必ず成し遂げます』
「ありがとう、頼んだよ。さて、今回の戦争――別にボク達は殺戮を楽しみたい訳じゃない。恭順する者、交渉を求める者に対してはしっかりと交渉のテーブルについて交渉する。ボクは魔法の国をQueen of Heart亡き後、雪菜さんと黒華さん達に一任したいと考えている。まあ、黒の使徒勝利ルートと基本的には変わらない状況だねぇ。まあ、多種族同盟への加盟はお願いしたいとは思っているけど」
「それは勿論、させて頂きたいと思っているわ。……必要最低限の犠牲で戦いを終わらせる。一聞、甘い考えのように思えるけど、戦争後に魔法の国を統治していくとなると過去に魔法の国を統治していた人の協力は得たいわね。反面教師にするにしても、良いところを吸収するにしても……まあ、それも国の統治のノウハウを持つ圓さんの協力を得れば解決する話ではあるのだけれど」
「意図を分かってもらえたのは嬉しいけど、ボクをあんまり当てにされてもねぇ。まあ、手伝えることは手伝わせてもらうよ。……とりあえず、襲撃は明日から。終了は未定、夜襲とかではなく位置情報が判り切っている白昼に正々堂々と襲撃を仕掛ける。まあ、ルヴェリオス帝国の時と同じでそんなに時間は掛からないと思うよ。その分、濃厚な戦いになると思うけどねぇ」
ブリーフィングはこれでおしまい。明日の集合場所と時間だけ伝えてその日は解散となった。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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