Act.9-33 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.13
<三人称全知視点>
「ロマンティシズム!」
「アンチマナフィールド魔法-領域干渉-!」
「ディストレスクラッシュ!」
プリムヴェールが「マナフィールド」を発動して魔力を支配し、ローザが一度完成された「マナフィールド」に干渉することで「マナフィールド」の支配権を奪う技術を使い支配権を取り戻す。
そのままではローザのみが魔法を使える状態になってしまうが、プリムヴェールは新たに習得した「マナフィールド」を自分の魔力で上書きする「ディストレスクラッシュ」を使い、その支配権を奪い返した。
ローザがその気になれば更にプリムヴェールから「マナフィールド」の支配権を奪い返そうとしない。
プリムヴェールがその理由に――自らが犯した失態に気付いたのは「ディストレスクラッシュ」を使った直後だった。
「――ッ!? すまない、ソフィス殿」
「問題ありません。魔法以外にも私には戦う術がありますから」
「ただし、ソフィスさんの攻撃手段はかなり魔法に偏っている。いくら闘気系と八技習得済み、剣術も齧っているといってもボクを倒せるほどではないんじゃないかな? ……まあ、そもそもソフィスさんは本来『戦わない側』の人だからそれだけ戦えるのが寧ろおかしいんだけど。……その理由がボクに並び立ちたいからというのは嬉しいことだよねぇ。まあ、だからといって浮いた駒を取りに行かないというのは主義に反するんでねぇ。プリムヴェールさんは最後に取っておくとするよ!」
「――ッ! ムーンフォースピラー・コンセクティブ!! ムーンフォース・メテオライン!!」
「「魂魄の霸気《黒百合の眷属》! 《血動加速》!!」」
ローザとソフィスはほぼ同時に吸血姫化し、血液を操る能力を利用することで体内の血管を走る血液を加速させ、爆発的な瞬発力を得る《血動加速》を発動――無数の月光の柱が顕現し、月光の流星を降り注ぐ中、意に介した様子もなく血を収束した剣を構え、刀身に武装闘気を纏わせたソフィスと裏武装闘気で作り出した剣に武装闘気を纏わせたローザが空中で激突――覇王の霸気が迸る中、激しい立回りが繰り広げられる……が、やはり素人に毛が生えたレベルのソフィスの手数は圧倒的に少なく、徐々にソフィスは追い詰められていく。
「……ボク的にはあんまり戦場に立っては欲しくないんだけど、ソフィスさんは納得してくれないよねぇ。だったらもっと強くなってもらうしかないか……しばらくボクの元で剣を学んでみる気はないかな?」
「本当ですか!?」
「正直、筋は悪くないと思うよ。総合力ではソフィスさんの方が上だけど、剣術じゃ近衛のホープには及ばないというのが現状。その点も気にしているようだけど、鍛えれば近衛のホープにも勝てるようになれる……かもしれないんじゃないかな? 素質はあると思うよ」
撃破されて控室で戦いを観戦していたアルベルトが悔しそうな顔をしていたが、ローザ達は当然気付かない。……まあ、大方そんな顔をしているだろうなぁ、とソフィスは予想して優越感に浸っていたが。
そんなやり取りをしながらも戦いは続いていく。
そして、八十四回目のローザの斬撃でソフィスの手から刀が吹き飛んだ。
無防備になったところにローザの刺突が容赦なく放たれる。ソフィスは心臓を貫かれ、口から無数の小さなポリゴンを吐いて倒れた。
ソフィスが無数のポリゴンと化して消滅する中、裏武装闘気の剣を構え直したローザがプリムヴェールに正対する。
「さて、残るはプリムヴェールさんただ一人。……今のエルフの守護者さんの全力、遠慮なくぶつけなよ。――全て受け止めてあげる」
「……ソフィス殿の戦いの舞台を奪ってしまった責任もある。この戦い、負ける訳にはいかない! ファンタズマゴリア-スピリットキング-」
先に攻撃を仕掛けたのはプリムヴェールだ。巨大な霊体を生成して嗾けるプリムヴェールのオリジナル魔法で「ファンタズマゴリア」の派生を放ち、ローザの近くまで到達させると同時に指を鳴らすのを合図として幽霊を破裂させ、その衝撃波で相手を攻撃する「ファンタズマゴリア-ガイストプロージョン-」を発動する。
ローザはこの爆発を直撃で浴び、無数のポリゴンが飛び散ったが構わず爆風を突破してプリムヴェールに迫った。
「ムーンライト・ファントム!」
「見たことがない魔法だねぇ。原型は『ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー』だけど、月の魔力と武装闘気で実体のある自身の分身を創り出して複数人同時に放つことで攻撃手数を増やしている。……これは、三つの魔法陣を展開し、全身に月属性の魔力を纏った状態で巨体化させた刀身を突き立てて突撃する『ルナティック・ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー』の応用版もあるんじゃないかな? 名前は……例えば『ルナティック・ムーンライト・ファントム』とか?」
完全に読まれているとプリムヴェールはこの瞬間に確信したが、自身の捉えた範囲に斬撃を含めあらゆる物体を瞬時に転移させる《転送》の魂魄の霸気を使ってローザに命中するように斬撃を転送する。
ローザは俊身と「千羽鬼殺流・貪狼」を組み合わせて爆速で鋒を回避、そのままプリムヴェールに迫る……が。
「ムーンフォース・コンプレッション! ムーンフォースピラー」
その瞬間――ローザは猛烈な月属性の魔力により押し潰された。身動きの取れないタイミングで月光の柱を顕現する大魔法をローザを巻き込むように発動する。
「やったか?」
「やってないねぇ!」
武装闘気と神攻闘気、治療用の治癒闘気を巡らせながら「ムーンフォース・コンプレッション」を突破したローザは裏武装闘気の双剣を構え、そのままプリムヴェールに勢いよく跳躍し、落下速度に体重と剣速を乗せた斬撃を放つ水星の別名の名を冠する鬼斬の技を放つ。
「千羽鬼殺流・辰星-圓式-」
「千羽鬼殺流・武曲-圓式-」
対するプリムヴェールは弧を描くようにして斬撃を浴びせるおおぐま座ζ星の名を冠する鬼斬の技と武器に霊力を流し込むことで破壊力が増し、相手の体内に毒のような効果をもたらす金星の別名の名を冠する鬼斬の技――「千羽鬼殺流・太白」。
奇しくもバトル・シャトーで行われた剣武大会の逆パターンとなったが、ここでローザは「千羽鬼殺流・太白」を使ってくることを読んで直接相手に触れずに武装闘気を衝撃波として放つことで吹き飛ばす武気衝撃を使い、プリムヴェールの『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』を持つ利き手に衝撃波を放つ。
『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』を取り落とすことこそ無かったが、プリムヴェールの意識は利き手に集中してしまった。その一瞬の隙を突き、ローザの左手から放たれた圓式の刺突がプリムヴェールの左脇腹を貫く。
「ムーンライト・チャリス」
「まあ、回復されるよねぇ。やっぱりプリムヴェールさんは強くなっている、惚れ惚れするくらいに」
「……ローザが魔法無し縛りという圧倒的優位な状況で討ち取れていない時点で例え勝ったとしても私の負けだがな。――ブラックリリィ・スパイラル! ホワイトリリィ・スパイラル!」
プリムヴェールは魔法陣から螺旋を描くように回転する無数の漆黒の魔力を打ち上げるオリジナル闇魔法と魔法陣から螺旋を描くように回転する無数の純白の魔力を打ち上げるオリジナル聖属性魔法を同時に放つが、ローザは俊身でプリムヴェールに肉薄することで攻撃を回避――。
「千羽鬼殺流・巨門!」
特殊なステップで瞬時に残像を発生させ、残像を囮にして攻撃を仕掛けるおおぐま座β星の名を冠する鬼斬の技を使って作り出した残像に霊力を混ぜて実体化させ、更に武装闘気を纏わせて硬化――そこから三人同時に相手の神経を麻痺させる衝撃剣――「静寂流十九芸 剣術三ノ型 渾衝流」に斬撃を繰り出した際に筋肉の収縮を連続で行うことによって、 その際に発する衝撃波を武器を通して相手に叩きこむ「常夜流忍暗殺剣術・毒入太刀」を組み合わせて猛烈な衝撃をプリムヴェールの細剣に浴びせるローザ。
流石にこの攻撃には耐え切れずプリムヴェールも細剣を落とす……が。
「ファンタズマゴリア-スピリットキング-! ムーンライト・チャリス!」
ローザの追撃を許さずプリムヴェールは巨大な霊体を生成し、自分を巻き込む形で爆発させ、その勢いを利用して後ろに跳ぶ……が。
「常夜流氷遁忍術・氷鎖縛地」
地面から無数の氷の鎖が現れ、プリムヴェールは一瞬にして捕らえられた。
「自然エネルギーを変換して発生させた氷の鎖で対象を捕らえる常夜流氷遁忍術か。流石にそれでは私は捕らえられんぞ!」
プリムヴェールが鎖を粉々に破壊した直後――爆発の中を突き破ってローザが現れた。手にはプリムヴェールから奪った『ムーンライト・フェアリーズ・エペ・ラピエル』が握られている。
更にもう一つの手には裏武装闘気で作られた細剣が握られていた。
「魔法無しでこれ以上はキツいので、そろそろ幕引きにしましょう!」
《太陽神》によって大幅に強化された圓式の刺突が《転送》の魂魄の霸気によってプリムヴェールの心臓を胸側と背中から同時に貫き、「ムーンライト・チャリス」を使う間も無く意識を失ったプリムヴェールは無数のポリゴンと化して戦場から消滅した。
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