Act.9-31 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.11
<三人称全知視点>
「残る三人は最後に戦いたいそうだし、次は私が出るわ」
「ゴーレムマスターのルイーズさんか。既出の技は雷と火属性の複合魔法の『炎雷の咆竜』と、時空魔法を使い、アザトホート・ゴーレムを召喚する『時空召喚魔法・アザトホート・ゴーレム』、後はジェイが借り受けていた透明なゴーレム。……さて、既存のものを進化させたのか、それとも新地を開拓したのか、楽しみだねぇ」
「そんな期待しない方がいいと思うわよ。……機械仕掛けの巨神!」
小さな歯車が無数に造られ、その歯車が合わさって巨人の形を成していく。
その姿はダートム=アマルガムのオリジナル金属性錬成魔法「機械仕掛けの巨人」を彷彿とさせる姿だが……。
「私の機械仕掛けの巨人はただの歯車が寄せ集まった巨人ではないわ。巨人にはコアとなる歯車が一つだけあって、それを破壊できない限りは歯車が増産されて壊れた歯車をすぐに補填することができる。その歯車もランダムで『機械仕掛けの巨神』の中を移動し続ける……さあ、倒せるかしら?」
「わざわざ解説どうも。……まあ、倒せないことは無さそうだねぇ」
ルイーズは「機械仕掛けの巨神」に触れて武装闘気を纏わせるとローザへと嗾けた。
巨人は右腕を前に向け手を構成する歯車を次々とローザに向けて射出する。
「闇纏魔剣・漆黒連斬」
対するローザは裏武装闘気で作った剣に闇属性の魔力を纏わせると連続で斬撃を放ち、次々と歯車を打ち落としていく。
「機械仕掛けの巨神」は歯車を撃ち出した瞬間には失った歯車を回復させており、決して攻撃を途切れさせることはない。
宛ら、それは歯車を使った弾切れしないマシンガン――当然、このペースで撃ち合っていればいつまで経っても決着が付かずそのままスタミナ勝負に持ち込まれればローザ勝利の可能性が薄くなっていく訳だが……。
「攻撃は見切ったよ」
見気と俊身、紙躱を駆使してローザは最低限の絶妙と言える動きで歯車を躱しながら「機械仕掛けの巨神」に迫る。
「電離の咆竜!!」
勿論、それはルイーズの想定の範囲内である。
慌てず「炎雷の咆竜」の発展系で電気や炎よりも遥かに高温の太陽風に匹敵するプラズマによって形作られた竜を嗾ける「電離の咆竜」を複数同時に発動しつつ、更に秘密裏に透明なゴーレムを召喚してローザに嗾ける。
ルイーズの作戦は単純明快――物量で捩じ伏せるというものだ。
一つ一つでは対応できてしまうなら対応できないレベルの攻撃で押し切ればいい。勿論、光の速度まで加速されてしまえば容易く突破されてしまうが、そうなればどの道ルイーズに打てる手はない。
「大丈夫大丈夫、《太陽神》は使わないから。透明なゴーレムに、『電離の咆竜』に、『機械仕掛けの巨神』……これだけ揃えてきたのなら、全部叩き潰した方が楽しいでしょう?」
「前々から思っていたけどドSよね、貴女。……直接全部叩き潰される方がよっぽど堪えるのよ」
「……別に言うほどドSじゃないんだけどねぇ」
ラインヴェルドやオルパタータダに肖た獰猛な笑みを浮かべるローザに、「今の貴女の顔、ラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下にそっくりよ」と言いたくなってグッと堪えたルイーズだった。……ちなみに、見気を使っているローザには全て筒抜けである。
◆
「石毒蛇竜・顎」
まずローザが狙いを定めたのは「電離の咆竜」で作り出された二十体のプラズマの竜達だった。
ギリギリまで引きつけた後、「八岐の石毒蛇竜」の派生で闇属性と毒属性複合魔法で石化効果のある黒い毒でできた毒竜の頭部のみを生み出すローザのオリジナル魔法を放ってプラズマの竜を石化させ、石化したところを裏武装闘気の剣で破壊していく。
「風撃爆破弾」
その合間合間にジェイコブのオリジナル魔法「風撃爆破弾」を放って透明なゴーレムを破壊していい、あっという間にルイーズが用意した追加戦力を全て滅ぼして見せた。
「さて、ルイーズさんの言うランダムが真乱数か擬似乱数を判別して擬似乱数であることに一縷の望みを託して次のコアの移動位置を読むというのもアリではあるんだけど、そんなに時間掛けたくないからねぇ。……確実に倒せる方法で倒させてもらうよ。磁角鉄柱」
ローザが発動したのは雷属性と金属性の複合魔法――その効果により六角形の鉄の柱が「機械仕掛けの巨神」を取り囲む。
「『機械仕掛けの巨神』! そんなもの壊しなさい!!」
「無駄だよ」
「機械仕掛けの巨神」が歯車で構成された手で思いっきり鉄の柱を殴る……が、いつまで経っても手は鉄の柱から離れない。それどころか――。
「身体を構成する歯車が……強力な電磁石で『機械仕掛けの巨神』を構成する歯車をバラバラにしてコアの歯車を見つけようって魂胆ね!」
「ご明察だよ」
猛烈な速度で「機械仕掛けの巨神」を構成する歯車が鉄の柱に引っ張られてバラバラにされていく。新たに歯車を作り出しても火に油を注ぐだけ――柱は少しずつ広がるように移動していき、それに伴い電磁力も増しているのか歯車の飛んでいくスピードが速くなっていく。
最早、「機械仕掛けの巨神」にローザを攻撃する暇はない。
「ブラックホール・フラグメント」
小さなブラックホールの破片が一つだけ青みがかった銀色と色の違う歯車を飲み込み、消滅させる。
その瞬間、「機械仕掛けの巨神」を構成する歯車はコアの支配から解放される……が、「磁角鉄柱」の効果が解除されていないため、歯車は今なお八つの鉄の柱の引力に引っ張られ続けて空中を超高速で移動し続けている。
「マルチプルブラックホール・ジャッジメント」
無数のブラックホールを展開して「磁角鉄柱」ごと歯車を飲み込むと、落下する歯車を無視してローザはルイーズに迫る。ルイーズは諦めずに「時空召喚魔法・アザトホート・ゴーレム」を使ってアザトホート・ゴーレムを召喚しようとするが、その前にローザの剣がルイーズに到達した。
「圓式比翼」
辛うじて大気が擦過する白い輝きを肉眼で捉えられるレベルの高速で繰り出された双刀がルイーズの身体に深々と傷を刻み込み、無数のポリゴンが溢れ出す。
それでも召喚魔法を発動しようとしていたが、魔法陣が完成する前にポリゴン放出量が限界に達してルイーズは戦場から消滅した。
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