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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-30 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.10

<三人称全知視点>


「ルーネスお兄様、サレムお兄様。アレを使います」


「そうなるとアインスはこの戦いで魔法を使えなくなりますね。……まあ、それでアインスの戦闘手段が無くなる訳ではないですし、案外私はいい作戦かもしれないと思います。……問題はそれが先生に通用するかということですが」


 可愛らしく小首を傾げるローザを見ながら、サレムが眼鏡を白く輝かせながらアインスの判断に賛同する……まあ、それで勝てるとは微塵も思っていないようだが。


月影の法則(ルナティック・ロウ)!」


 ブライトネス王家に王家の血を引いた者にし使えない「審判の王権ジャッジメント・オブ・レガリア」と呼ばれる口伝戦略級魔法があるように、フォルトナ王国にも口伝戦略級魔法がある。

 それが、「月影の法則(ルナティック・ロウ)」だ。


 発動にはフォルトナ王家の血を色濃く受け継いでいる必要があり、全ての魔力を消費する。

 無属性魔法で自分が「敵」と判断した者を不可避の聖なる光で攻撃する。攻撃の範囲は認識している全てで、見気で捕捉した範囲も含まれる。


 標的はローザだった一人――ローザだけを倒すために放たれた最上級魔法によって戦場は光に包まれる……が。


「求道の霸気最終領域・求道神を発動し、存在値が単一宇宙に相当するに至ったボクに単一宇宙破壊規模以上の攻撃でなければ通用しない。このタイミングでその魔法は思い切りが良かったけど、それじゃあボクは倒せないよ」


「アインス、逆に考えましょう。先生にこれだけの力を披露させたのですから、それだけ追い詰めたということです」


「ルーネス殿下、全くその通りです。こうして切り札を切らされれば切らされるほどボクはみんなの成長に驚かされます。……ボクはフォルトナの三王子の強さはその強固な団結力にあると思います。フォルトナ王国で三人の先生として教えていた時期があるボクとしては三人が手を取り合い、協力し合っている姿はとても嬉しいものです。……もし、歯車が少しでもズレていたら関係は粉々になり、ギスギスし、骨肉の争いを繰り広げる関係になっていたでしょうから。……ですが、敵対するとその関係が厄介になります。なので、まずは一人撃破させてもらいます」


 光と化したローザはルーネスとサレムの目の前を光の速度で超えて背後に守られていたアインスの目の前に到達――魂魄の霸気《求道の錫杖》で作り出した錫杖を変形させた剣で圓式の斬撃を放つ。

 アインスも魂魄の霸気《求道の錫杖》を変形させた剣で迎え撃つ。


 圓式を習得しているアインスはその圓式の斬撃の猛攻に耐えることができている……が、アインス自身、その均衡がもう間もなく崩れてしまうことを既に悟っていた。

 少しずつローザの剣が速くなっているのだ。今はまだ対処できるレベルだが、これ以上速くなれば確実に対応できなくなるだろう。


「――アインス! 毒入りの攻撃が来ます!」


 あまりにも圓式に警戒し過ぎたからなのだろう。アインスはローザが圓式以外の斬撃を使えることをすっかり忘れてしまっていた。


「常夜流忍暗殺剣術・毒入太刀」


 アインスの腕に生じた傷から無数のポリゴンが溢れ出し、アインスはその痛み故に腱を落としてしまう。

 アインスの気持ちを斟酌し、あえて加勢に入らなかったルーネスとサレムはローザの腕の筋肉の不自然な収縮に気づき声を掛ける……が、その声が届いた瞬間には時既に遅し。


 アインスが魂魄の霸気《求道の錫杖》を発動し直して体勢を整えようとするが、その前にローザが《天照日孁大御神アマテラス・ヒルメノオオミカミ》の《太陽神》を使って光の速度を超える圓式を放ち、アインスは無数のポリゴンと化して戦場から消滅した。



 アインスが撃破され、フォルトナ陣営は残りルーネスとサレムの二人のみである。


「《光ノ眼(ラー・ホルアクティ)》」


 ルーネスは魂魄の霸気《光陽》の第三の効果である視点を合わせた部分を破壊する《光ノ眼(ラー・ホルアクティ)》を発動し、ローザの右腕に視線を合わせる。

 求道の霸気を解除していたローザはこの力で右腕を消し飛ばされる……が。


銀色の魔手(シルバー・ハンズ)


 消えた筈の腕が瞬く間に止血され、傷口を覆うように銀色の液体のようなものが出現――瞬く間に手の形となってローザの失った右手を補填して見せた。

 金属性生体魔法――ローザが即興で編み出したオリジナル魔法である。


 求道の覇気を纏い直して《光ノ眼(ラー・ホルアクティ)》の効果を無効化すると、ローザは地を蹴って加速――右腕に失った裏武装闘気の剣を顕現しないままルーネスに迫る。


大結晶壁(クリスタル・ウォール)! 結晶騎士軍クリスタル・クルセイダーズ!!」


 ルーネスはオルパタータダが構築した結晶の壁を創り上げるオリジナル結晶魔法で身を守り、同じくオルパタータダが構築した無数の結晶の騎士を創り上げるオリジナル結晶魔法を発動して無数の結晶の騎士を嗾ける。


暴君の審判タイラント・ジャッジメント


 更に結晶の壁の上に空歩を駆使して登ったサレムがホーミングと必中効果のある無数の光条を放ち、命中した相手に「暴君の審判が閃いた」のスキルカードを二十枚設置する暴君サレムの使用する光属性魔法「暴君の審判タイラント・ジャッジメント」を放つ。

 ローザは一目でサレムの魔法の方が厄介だと確信――その全てを裏武装闘気で作り出した即席の盾で受け止めると、そこからが早かった。


 カノープス、メネラオス、ベルデクト――ラピスラズリ公爵家の【血塗れ公爵】達の彷彿とさせる動きで武装闘気を纏わせた銀の腕の爪を立て、次々と結晶の騎士の胸部分を的確に打ち砕いて撃破していく。

 その人を殺すためだけに磨かれ尽くした暗殺の御技を間近に見て、ネストはローザの背後に歴代【血塗れ公爵】の幻影を見た。


毒細菌増殖(バイオ)!」


 サレムは相手に有害な猛毒の細菌を発生させて急激に増殖させる暴君サレムの使用する無属性魔法を発動し、少しでもローザを足止めしようとする……が、皮膚が焼け爛れるのもお構いなしに神光闘気を巡らせて細菌を増殖する前に除去――更に治癒闘気で皮膚を回復させ、サレムの攻撃を完全に無効化する。


「まさか習得していたとは思わなかったけど、暴君になったサレムが使う魔法、サレム殿下は全て習得済みだったんだねぇ。ということは、最後のアレも――」


「ごめんなさい、先生。不可視の風刃インビジブル・エアブレイド!」


 サレムが発動したのは任意の範囲に風の刃を発生させる風属性魔法だ。

 タイムラグがほとんどなく任意の座標に発動できるため回避はほぼ不可能。


 見気の未来視を使えば回避できないことはないが、回避できないように絶妙に結晶の騎士が配置されており、唯一空いている上に跳んでも上空には狙ったように「不可視の風刃インビジブル・エアブレイド」が展開される。


 ローザはここまでルーネスとサレムが追い詰めた二人の頑張りを評価し、サレムの作り出した風の刃を浴びる。

 ……まあ、防ごうと思えば武装闘気で身体を覆ったり、光の速度で発動される前に上空に跳んで「不可視の風刃インビジブル・エアブレイド」を躱したりと方法があった訳だが……。


暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)!!」


 そして、魔法の条件が満たされた。サレムは満を辞して傷をつけた相手に任意で痛みを発生させる暴君サレムの使用する無属性魔法「暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)」を発動する。

 この魔法は傷をトリガーとしているものの、傷を治しても効果は持続する。解除する方法は魔法を発動しているサレムが撃破されるのみ、それ以外の方法はない。


 『スターチス・レコード』では暴君サレムは大きな壁として立ちはだかった。

 バトルパートの多くが削られた『スターチス・レコード』の数少ない戦闘の一つがサレムとの王位を賭けたバトルなのだが、この「暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)」があるため戦闘で一撃でも浴びれば回避不能の攻撃が毎ターン飛んでくるためターンを掛ければかけるほど厳しい戦いを強いられることになる。幸い、HPはそこまで高くないためレベルを上げて物理で殴れば勝てる相手だが、『スターチス・レコード』の暴君サレムを遥かに上回る成長を遂げたサレムが扱えば「暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)」はより一層凶暴な技と化す……筈なのだが。


 ローザは絶えず痛みを浴びているにも拘らず涼しい顔で結晶の騎士を撃破していく。

 サレムが良心の呵責に苛まれるほどの痛みを与えても、ローザの歩みは止まらない。


「悪いねぇ、サレム殿下。この程度の痛みで止まるほど、ボクは弱くないんだ」


「そんな訳がありません! こんな痛み耐えられる訳がない……もう、やめてください。これ以上は――」


「……負けを認める? それはできないねぇ」


 サレムは「暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)」の威力を高める。

 例え痛みが強くなっても、一刻も早く大好きなローザを痛みから解放するために……その行為が矛盾していることをサレムは誰よりも理解していたが、それしかもうサレムにローザを倒せる手立ては残されていないのだから。


 しかし、サレムの予想を嘲笑うかのようにローザは「暴力による叫喚地獄(スカード・スクリーム)」の痛みを耐え抜いて結晶の騎士を全て撃破すると、最後にサレムの乗っていた結晶の壁を武装闘気を纏わせた拳一つで粉砕してみせた。


「――サレム、やりますよ!」


「分かりました、ルーネス兄様!」


「「魂魄の霸気《対極》! 《求道球》!!」」


 二人の霸気を共鳴させることで、本来は人間的な成長でしか高めることができない霸気を一時的に増幅する形で高めることができる《対極》を使って霸気を増幅――そして、強力な求道の霸気と同性質のエネルギーから作り出された漆黒の球を作り出す《求道球》を九つ生成して融合――《大求道球》と呼ぶに相応しい漆黒の球体をローザに向かって放つ。


「魂魄の霸気《求道の錫杖》」


 対するローザはアインスの魂魄の霸気を使って漆黒の球を九つ生成し、融合させてこちらも《大求道球》を作り出すとルーネスとサレムが作り出した《大求道球》に真正面からぶつけた。


「魂魄の霸気《強化》! 魂魄の霸気《弱体化》!」


「まさか……ここでアクアさんの魂魄の霸気を!!」


「……いえ、ルーネス兄様。それだけではありません。あの魂魄の霸気はもう一つ――」


「魂魄の霸気《強化》! 魂魄の霸気《弱体化》!」


 アクアとオニキス――二人の魂魄の霸気を浴びて強化されたローザの《大求道球》と弱体化させられたルーネスとサレムの《大求道球》――当然、それまで保ってきた均衡はこのバフとデバフによって崩れることになり、ルーネスとサレムの《大求道球》はローザの《大求道球》に貫かれて崩壊する。

 そして、そのまま《大求道球》はルーネスとサレムに迫り、命中と同時に二人を一瞬にして消滅させた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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