Act.9-29 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.9
<三人称全知視点>
「月銀の天輪」
雪菜と黒華が撃破され、残りはアルベルト、ソフィス、ルーネス、サレム、アインス、ルイーズ、ネスト、プリムヴェールというメンバーになった戦場で真っ先にローザが放ったのは、ヴィクトスのオリジナル月属性魔法「月銀の投槍」を元にヴィクトスのオリジナル魔法「雷撃の天輪」も参考にして編み出した上空に展開した銀色に輝く輪から無数の銀色の月属性の魔力から作り出された月光のような輝きを放つ槍を降らせる月属性魔法――「月銀の天輪」。
挨拶代わり、この程度対処できるよねぇ? という意味で放たれた魔法はローザの予想通りアルベルト、ルーネス、サレム、アインス、ルイーズ、ネスト、プリムヴェールは見気と紙躱を駆使して回避し、ソフィスは暗黒の壁を展開するローザのオリジナル闇属性魔法「暗黒の守壁」の光属性版である「聖光の守壁」を展開し、見事に防いでみせたソフィス。
「七彩虹輝終焉刺突!!」
挨拶代わりの攻撃を回避され、あるいは防がれ、さてここから勝負を仕掛けるとしますか、と動き出そうとしたローザ目掛けて弾丸のような勢いでアルベルトが迫った。
アルベルトは攻撃行動に移る前に本体とそっくり同じ色と形と音と熱を本体からズレた位置に映し出し、視覚情報を偽装する魔法――「豊饒之海」を発動している。
この魔法では情報の次元における座標も偽装することができる他、闘気を混ぜ込むことで見気による索敵すらも騙すこともできるため、見気の情報に頼る未来視も無意味化されてしまう。
アルベルトはこの力でアルベルトの姿を少し前に展開し、ローザの目を欺くことを狙った。
「聖人の領域に至って『剣聖』の切符を手に入れたことだけでも賞賛に値しますが、そのうえこのようなトリッキーな魔法まで習得するとは思いませんでした」
「――ッ!? な、何のことでしょうか?」
「惚けても無駄ですよ。……使っているのでしょう? 本体とそっくり同じ色と形と音と熱を本体からズレた位置に映し出し、視覚情報を偽装する魔法を。アルティナさんの『霞幻の逃げ水』や迦陵太蔵さんの『纏幻の秘儀』……この手の能力は多いからねぇ。……今後も現れる可能性があるんじゃないかと思って編み出した……というか、元から使えるんだけど再注目してみた……という方が適切なのかな? それが、殺気把握――強者の判別ができない代わりにどんな微弱な殺気でも感じ取れる力を更に鍛え、僅かでも殺気を持つ相手の位置を正確に察知することができるという力です。実はアルベルトさんも参加したあの剣武大会でラルさんの魂魄の霸気《幻魔》に負けてから考えた突破方法なんですよ。全ての痕跡を消せるとしても、存在しないとしても、ボクを倒そうとする以上、そこに意志は介在するという訳です。――術式霧散」
特定のエネルギーによって構成された術式を対象とし、無意味なエネルギーの羅列へと分解する分解魔法「術式霧散」でアルベルトの「豊饒之海」を消し去ると、ローザは比翼のように裏武装闘気の剣を構え――。
「ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓! ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連-圓式-」
先程まで余裕の笑みを浮かべていたローザの顔が僅かに驚きの色に染まる。
「時空騎士に選ばれた私はまずローザ様に並び立てる騎士になるにはどうすればいいか考えました。今回の修行の時間を利用して既に圓式基礎剣術を習得していたアクア様に依頼し、基礎を教えてもらった後、時空から切り離された領域を作り出してずっとその中で圓式の習得のための修行を続けました。……体感で四年も時間が掛かってしまったのは不甲斐無かったと思います。……これほどの壮絶な修行を経なければ手に入れられない力、ローザ様は大切な人達を――家族を守るためにこれだけの努力を重ねられたのだと、その軌跡をなぞったことで実感しました。……世界最強の剣士に並び立つには、それを超えていくということの意味がどれほどの重みを持つかということを私はきっと理解できていなかったのだと思います」
「――圓式基礎剣術は通過点です。大切な人を、ボクの家族を守るためにはそれだけでは足りませんし、どれだけ強くなっても絶対はあり得ない。ボクも成長していきますし、ボクの家族だって、ボクのことを愛したいと宣言したソフィスさん達だってこれからもっと強くなっていきます。……しかし、このタイミングで圓式を完全に会得したことは素晴らしいと思います。正直、ボクも見縊っていたのかもしれません、アルベルトさんの気持ちの強さを。……まあ、だからと言って条件は変えませんけどねぇ。せいぜいしっかりと条件を満たしてボクを振り向かせてくださいねぇ。ちなみに、アルベルトさんの人柄の好感度は割と高めですが、恋愛バロメータで判断すると攻略度0.1%くらいですからねぇ」
「……そんなに低いんですか?」
アルベルトはあまりのショックで二十四連撃目の剣の動きが鈍った。
アルベルトの性別が男であり、ローザの恋愛対象には入っていないこと、その点を踏まえてもデートもしているし、五パーセントくらいはあるんじゃないかと思っていたアルベルトにとってはかなりの精神ダメージである。
……まあ、どっちも五十歩百歩な気がしないでもないが。
ちなみに、ローザが他の誰かとくっついた方がお互い幸せになれるんじゃないかな? と考えているうちは、五十パーセントを切っていることの証明である。
「これで終わり?」
「まだです! タイダルウェイヴ・フローズン! 燦く星の流星群!!」
アルベルトはローザの至近距離で大津波を発生させて敵を飲み込むと同時に凍結させ、凍った敵ごと斬撃で打ち砕くアルベルトがレベル99で習得する固有最上級水魔法を放ち、更に聖属性獲得者に対し、圓が贈った奥義級の聖属性魔法「燦く星、宙より堕ちる」とマグノーリエのオリジナル光属性魔法「穿光条の流星群」を基に作り出した光条の命中先に有機物・無機物、硬度、可塑性、耐熱性、弾力性を問わず対象物に光が通り抜けられる穴を穿つ性質を付与した猛烈な聖なる光が凝縮させ、一つの天体のように変化させ、収束した光条を放射するアルベルトの改良魔法を放つ。
津波に飲み込まれて凍結し、身動きの取れなくなったタイミングで貫通効果のある攻撃を浴びせて撃破を狙うアルベルトが考え得る最高のコンボを絶妙なタイミングで放った訳だが……。
「魂魄の霸気《姿眩瞬移》」
アルベルトはローザの気配が自身の真横に移動したことを見気で捕捉し、冷や汗を垂らしながら横に視線を向ける。
「お父様の魂魄の霸気――認識した範囲に瞬間移動する《姿眩瞬移》だよ。攻撃の狙いは良かったけど、転移能力を持つボクを相手にするなら移動を封じるくらいのことはしないといけないねぇ」
アルベルトはそれでも諦めず至近距離で「聖光浄弾」十発分にも相当する聖光を放つ「弩級聖光撃」を発動しようとするが、それよりも速くローザの圓式の斬撃がアルベルトに到達し、アルベルトは傷口から溢れ出したポリゴンが限界量に達して一分も掛からずに消滅した。
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