Act.9-26 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.6
<三人称全知視点>
「凍熔火山!」
沙羅が左腕を地面についた直後――異界の焔の噴火が騎士の怨霊に命中し、一瞬にして氷漬けにする。
更に噴火は真っ直ぐローザの方に伸びるように次々と噴き出し、縦一直線に青い炎の道を作った。
当然、ローザは俊身を駆使してこれを回避する。
しかし、沙羅の狙いは別にあった。
「日輪赫奕流・劫火赫刃爆」
異界の焔との融合を解除し、霊力を変化させた炎を纏った剣で斬撃を放ち、斬撃が命中して地点を爆破する。
この一撃で騎士の怨霊は見事に粉砕された。
「『四纏魔将』が呆気なく撃破されたねぇ。……さて、次はどうしようか?」
「凍炎砲!」
「おっと、危ない」
《炎王》を発動し、熔岩から炎に切り替えた沙羅が放った異界の焔の砲撃を紙一重で躱す。
「アタシ的には当たってくれると嬉しいんだけど」
「……うーん、流石にそれは無理かな? 回避できるレベルだし……《切断糸》」
瞬時に伸ばされた糸が沙羅の右腕を切り落とす。
武装闘気を纏わせた糸は沙羅の利き腕を奪った……が、得物を奪われた筈の沙羅の顔に動揺の色はない。
沙羅は左手を伸ばして右手を掴むと、そのまま右腕を傷口に接触させる。
切り落とされた腕と傷口から炎が溢れ、一瞬にして腕がまるで切り落とされたのが幻覚だったかのように一切の不自然さもなく完璧な形で繋がった。
刀を握って違和感がないかを確認した後、沙羅は刀を構える。
「やっぱり、再生されるから狙うなら心臓だよねぇ。この空間内でも弱点に設定されているし」
次の瞬間――沙羅のすぐ目の前にローザが立っていた。
圧倒的な速度の俊身で一瞬にして沙羅との距離を詰めたのだろう。
反撃に出なければ……と思うが、思考は動いても身体がそれについてくることができない。
加速した思考の中で沙羅はもどかしさを感じながら、何とかローザから離れようと動くが、それよりも早くローザが魂魄の霸気《切断糸》の無限に細くなる性質を利用して無限小レベルまで細くすることで、限りなく細い線が爆発的な回転をしている存在しないということに限りなく近い球体を放った。
沙羅の胸が抉られ、空洞となった胸から無数のポリゴンが溢れ始める。拡大したポリゴン化は沙羅を蝕んでいき、一分も掛からずに沙羅を無数のポリゴンへと変えた。
◆
「小筆さん、魔力は回復できたかしら?」
「……やはり、六体のアネモネを描いたのは失敗だったようです。魔力は四割回復……奥の手を使えば一瞬で無くなってしまいますね」
「魔法の回復量的にはどうかしら? 後少し時間を稼いで状況は好転しそう?」
「あまり変わらないと思います」
「黒華様、雪菜様と共にしばらくお待ちください。小筆さんと、私、篝火さん、美結さんで仕掛けます」
「分かったわ。……四人掛かりでも相手は化け物よ。気をつけて」
「嫌だねぇ、化け物扱いって。ボクって一応可愛い公爵令嬢の女の子なんだけどさぁ」
不機嫌そうな顔をしつつも、桃花、篝火、美結、小筆の四人を同時に相手にするにも拘らず全く気負った様子もないローザ。
裏武装闘気の双剣を構えると、桃花達相手に余裕の表情で対峙した。
「桜火爛漫!」
先制攻撃、桃花は無数の花弁型の魔力でローザを包み込むように竜巻を巻き起こし、花弁方の魔力を炎に変化させて纏めて焼き尽くす。
しかし、武装闘気を纏ったローザは燃える竜巻の中から顔色一つ変えずに姿を見せる。……ダメージを受けた様子はない。
「桃花の光条」
「へぇ、それが桃花さんの中技の『桃花の光条』か。桃色の光条を雨のように降らせる……威力こそ大技の『桜花の砲光』には及ばないけど、その分一度に複数の箇所を攻撃できて便利なんだよねぇ。……じゃあお返ししようか? 弾力空気」
ローザの目の前に円形の空気の塊が現れ、桃花の放った桃色の光条が全て桃花へと弾き返された。
桃花は紙躱を駆使して何とか攻撃のほとんどを躱すが、流石に不意打ちだったこともあり、全ての攻撃を躱し切ることはできず左腕を光条で吹き飛ばされてしまう。
「風属性魔法――『弾力空気』、風魔法に弾力を持たせることであらゆるものを触れた瞬間に勢いよく弾き飛ばすことができるという魔法だ。その空気の領域は今みたいに円形に展開させるだけじゃなく、例えば掌にくっつければあらゆるものを掌で弾くことが可能になる。こんな風に――」
ローザが右の掌で空気を殴った瞬間――ローザが一瞬消えたかと錯覚する速度で桃花の目の前に転移する。
「暗殺脚技壱式 瞬降斧脚!」
「へぇ、カレンさんの技を習得していたんだ」
しかし、狼狽えることなく桃花はローザの攻撃を空歩を駆使して回避し、上空から身体を鋼鉄を凌駕する硬度に変える鋼身をも取り入れた振り下ろしの足技を放つ。
「桃花だけじゃないわよ! 暗殺脚技弍式 嵐脚刃旋」
「篝火さんも……カレンさんに二人とも修行をつけてもらったのか?」
「弾力空気」を利用して後方に飛び、攻撃を回避しながら篝火に狙いを定め――。
「音子増幅連砲!!」
小型の魔法陣を同時にいくつも展開し、銃口の代わりとして魔力を収束させ、音子を増幅・発振させて解き放つ。
「刻すらも凍れ、世界の摂理を逸脱する絶対零度の劫火! 凍焔劫華! 焔潜! 焔融! 上は天火、下は業火-凍火-!!」
焔すらも凍らせる、あらゆるものを凍らせる異界の焔を顕現し、篝火の魔法少女としての固有魔法を利用した技の一つで炎と同化し、炎から炎へ高速移動できる「焔潜」を使用――更に篝火が「焔潜」のシステムを応用して辿り着いた炎と融合してその性質を得る新技を利用して異界の焔と融合し、上空から赤熱の炎の塊が降り注ぎ、更に地上からは灼熱の炎が噴き上げる「上は天火、下は業火」を異界の焔バージョンで放つ。
「音子増幅連砲」を回避され、一転して窮地に立たされたかに見えたが、ローザは僅かに驚いたような表情を見せたが、慌てずに裏の武装闘気で槍を生成――《天照日孁大御神》の《太陽神》を使い、光の速度で投擲した。
槍は炎に紛れていた篝火の魂魔宝晶を的確に射抜き、打ち砕いて篝火を消滅に追い込む。
「桜色魔力身体強化! 桜花の砲滅!」
「『桜花の砲光』に魔力を込めて威力を上昇させたのか。……そして、『桜色魔力身体強化』は桜色の魔力を纏い身体能力を強化する技……『桜花の砲光』の方は囮かッ! 弾力空気!」
桜の花弁状の桃色のエネルギーを収束して放たれた極太レーザーを「弾力空気」で跳ね返すと、ローザは戦場から姿を消したを消した桃花の捜索に意識を向けようとするが……。
「紐縛り! 究極の一射・聖夜! 心無き天使の破滅の翼! 燦く星、宙より堕ちる!!」
「……殺意高い攻撃ばかりだねぇ。弾力空気!」
「絹紐の大砲」から放たれる最強の一撃に神聖魔法を付与し、あらゆるものを浄化する極太のビームを放つ「究極の一射・聖夜」に加えて光から生み出した天使の翼を背中から生やし、空中から羽を雨のように降らせる。羽一つ一つが小さな天使へと変形し、縦横無尽に数にものを言わせて襲い掛かる光属性魔法の「心無き天使の破滅の翼」と猛烈な聖なる光が凝縮し、一つの天体のように変化させ、そこから収束した光条を放射する聖属性魔法「燦く星、宙より堕ちる」――流石に部が悪いと判断したローザは全身に武装闘気を纏わせて「弾力空気」を自らに放ち、地面から生えてローザを捕らえていたリボンを突破して脱出する。
「完全に音と気配を消す隠密行動技に特殊な呼吸法と歩法によって相手の脳を誤認させ、自身の存在を認識させなくする古武術の抜き足を組み合わせた『千羽鬼殺流・廉貞』と一瞬にして地面を十回以上蹴って高速移動する八技の俊身を組み合わせた『暗殺脚技參式 廉貞俊疾』か。……一瞬桃花さんのこと見失ったよ」
「桜花の砲浄!!」
「魔力の代わりに霊力を融合した『桜花の砲光』といったところか? 霊力を融合することで威力を上昇させ、更に霊力による浄化効果が付与されている……努力の跡が見て取れるよ。弾力空気」
しかし、いくら威力を上げても「弾力空気」を突破することはできない。
またしても、桃花の攻撃はローザに届かなかった……のだが、何故か跳ね返された「桜花の砲浄」は桃花には届かずあらぬ方向に飛んでいく。
「……今ので負けたかと思っ……ッ!?」
今度こそ『弾力空気』を使われる前にローザを仕留めると決意をした直後だった。
桃花は自らの身体が全く動かせなくなっていることに気づく。
目の前にいつの間にか顎門を開いた漆黒の竜が現れていた。
漆黒の竜は冷たい黒い靄を放ち、その靄に触れた桃花は体を動かせなくなった……そう考える以外にこの状況を説明する方法はない。
「呪縛の冷気……特殊な闇の魔力で敵を麻痺させて動きを封じる技だよ。だけど、それで終わりじゃない……黒竜の闇牙死纏撃!」
漆黒の竜の牙が輝き、桃花の皮膚を貫いた瞬間――桃花の命は一瞬にして掠め取られる。
魂魔宝晶がダメージを受けた訳では無かったにも拘らず、魔法少女の命を奪った――その攻撃の恐ろしさを理解し、雪菜、黒華、美結、小筆の表情が驚愕の色に染まる。
「……父上のオリジナル闇魔法『闇牙黒竜撃』を基にした魔法ですね。漆黒の竜を闇の魔力によって顕現し、その牙で即死級の高威力な一撃を浴びせる」
「ネストの考察通りだけど、付け加えるなら『漆黒の竜を闇の魔力によって顕現し、呪縛の冷気と呼ばれる特殊な闇の魔力で敵を麻痺させて動きを封じた後、その牙で即死級の高威力な一撃を浴びせる』という魔法だよ。『闇牙黒竜撃』とは異なり魔法そのものに低確率の即死効果がある……桃花さんは運が無かったということだねぇ」
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




