Act.9-25 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.5
<三人称全知視点>
「さて、残る天恵の巫女は一人、魔法少女組は魔力回復中の小筆さんを除いて無傷、更に菊夜さん、沙羅さん、アルベルト殿、ソフィスさん、ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下、ルイーズさん、ネスト、プリムヴェールさんが控えている状況。……ここは先に天恵の巫女組を撃破し終えてから魔法少女戦に行きたいところだねぇ。……あれからソフィスさん達が全く戦う気配がないどころか四次元から取り出したポップコーンとジュースで観戦しているところを見ると、魔法少女組が撃破されるまで動かないと思うし」
――というか、見間違いかと思っていたけど、やっぱり食べているよねぇ!? 別に順番とかないから攻撃してきていいんだよ!!
と、圓が心の中でわざと聞こえるように叫ぶ中、「圓様頑張って!!」とどこから取り出したのかメガホンを持って応援するソフィス達は無視してポップコーンを口に運びながらローザを一点凝視し、一挙手一投足に目を光らせている。
そして、アルベルトは模擬戦に参加しながら全く戦う意思を見せないソフィス達を困惑しながら見ていた。
「フレンドリーファイアを警戒しているのですよ、私達は。全員で挑んでも全力を出せないまま負けるのがオチですからね。それよりも、戦いを見て様々なことを学んだ方が建設的だと思いませんか? 今後、臨時班で組むかもしれない方々の手の内や、圓様の戦い方から得られるもの……特に戦い方が似ているプリムヴェール様、ソフィス様、ネスト様はこの戦いで圓様が新技を披露するのではないかと期待しているのですよ」
「……そういうことでしたか」
「……新技ねぇ。まあ、用意はしているけどあんまり期待されても困るねぇ。……さて、ということで玲華さん。覚悟はいいかな?」
「うふふ、私を止められるかしら? 魔女宗の魔術・邪神の眷属」
「魔女の天恵」の力を使い、大邪神ク・リトル・リトルの眷属へと変貌した玲華。
髪の色は青く染まり、瞳は黄色と緑のオッドアイへと変色する。
「魔女宗の魔術・邪神の触手! 水の触手!」
魔力を送る限り半永久的に再生し続ける水の触手を操る水属性造形魔法を発動し、邪神の触手と共に嗾ける。
玲華が攻撃に使う触手全てに武装闘気を纏わせていたが……。
「新しい魔法を手に入れたようだけど、攻撃自体はワンパターンだねぇ。……一撃くらいは食らってあげたいところだけど触手に捕らえられてあられもない姿を晒しても誰得になるだけだかねぇ。這い寄る石光毒! 雷鳴迅雷八卦・骨砕猛打衝」
裏武装闘気で金砕棒を創り出すと、聖属性の魔力と稲妻のように迸る膨大な覇王の霸気を纏わせた状態で覇王の霸気の力で強化した神速闘気で雷の如き速さで移動しながら金砕棒を振り抜き、石化した触手を次々と破壊していく。
「――ッ! こうなったら奥の手よ! 雷光の九頭竜!」
膨大な雷属性の魔力を消費し、雷の体を持つ九頭竜を作り出す玲華。
「……どうやら小さな魔力糸で繋がっていて絶えず魔力を送り込んで回復させることができるようだねぇ。水の触手の進化系ということか。……でも、それじゃあさっきの二の舞だよ。八岐の石毒蛇竜」
闇属性と毒属性複合魔法で石化効果のある黒い毒で作られた九つ首の毒竜が顕現し、雷の体を持つ九頭竜の頭一つ一つに次々と食らいついた。
圧倒的な石化の毒はプラズマである筈の雷をも石化させていく。
「そんな……まさか、雷の竜まで石化させるなんて」
「これで終わりだよ。雷鳴迅雷八卦・骨砕猛打衝」
一瞬にして玲華に肉薄したローザが玲華の武装闘気を突破して玲華を粉砕し、続いて空歩を駆使して石化した雷の九頭竜の背後に立つと、金砕棒を振り抜いて粉砕した。
◆
ローザは当初、この後に雪菜達魔法少女達が参戦してくると考えていたのだが、雪菜達の前に戦場に立ったのは菊夜と沙羅だった。
ここまでローザと模擬戦をしてきた菊夜と沙羅の手の内は全てバレていると言っていい。
今回の模擬戦は他の者達とは違い、ここまでの修行でどれほどの力を得ることができたのか――その見極めと修行の総括という意味合いが強い。
「凍焔劫華! 日輪赫奕流・焔喰ノ太刀」
あらゆるものを凍らせる異界の焔を霊力で創り出した炎を利用して炎を吸収する日輪赫奕流の型によって吸収することで剣に異界の焔の性質を付与した沙羅。
「黒槍・群蜘蛛!」
菊夜は糸を束ねて槍を作り上げ、武装闘気を纏わせると地を蹴って加速――更に覇王の霸気を纏わせて突きを放つ。
対するローザは武装闘気と覇王の霸気を纏わせた裏武装闘気の剣で槍の穂先に斬撃を放ち――その瞬間、猛烈な衝撃波が戦場を駆け巡った。
「覇王の霸気同士じゃ均衡は崩せないようだねぇ」
「えぇ、だから最初から狙いは別にあるわ。爆破粘土造形魔法・大型蜘蛛」
爆破粘土製の茶色の巨大な蜘蛛を作り出し、至近距離に設置すると菊夜は高速で後退し、巨大な蜘蛛は一瞬にして爆発。
更に追い討ちを掛けるように菊夜は爆発で生じた煙の中に狙いを定め――。
「魂魄の霸気《切断糸》」
菊夜の手から放たれた透明な球体のようなものがローザへと放たれる。
菊夜の魂魄の霸気は糸を作り出す《切断糸》である。研ぎ澄ませるほど糸は無限に細くなり、細くなるほど長く伸ばせる糸を操ることができる能力だ。
霸気の一部を周囲に拡散させることで、その範囲内ならどこでも瞬時に糸を生成することが可能で、更に糸には森羅万象をも断ち切る概念を付与することができる。
それだけではない、この《切断糸》にはもう一つの使い道がある。それは、無限に細くなる性質を利用して無限小レベルまで細くすることで、限りなく細い線が爆発的な回転をしている存在しないということに限りなく近い球体を作り出すことができるというものだ。
この球体には森羅万象をも断ち切る概念を付与せずともあらゆるものを削り取って貫通し、消し飛ばすという性質がある。
更に防御無視かつ時間停止下でも影響を受けずに攻撃可能であり、「自分に対する攻撃を全て無力化し、一方的な干渉を可能とする」魔法を持つ魔法少女に対する切り札となる可能性を秘めている。
……まあ、糸を研ぎ澄ますのに膨大な霸気を消費するため一発放つのが限界だが。
「へぇ、そんな隠し球を持っていたんだねぇ。だけど、いくら威力の高い攻撃であっても、存在しないに限りなく近いと言っても、目に見えるなら回避は容易い! 《蒼穹の門》!!」
菊夜の攻撃が届く前にローザの放ったナイフが菊夜の足元に到達する。
眩い輝きと共に菊夜の目の前にローザが現れ、菊夜が冷や汗を流す中、ローザが裏武装闘気の剣を構える。
「聞くがいい! 頭に直接響け! 超絶大音響テレパシー!!」
「このタイミングでそれはないでしょ? 圓式比翼!」
頭に直接大音量のテレパンーをぶつける菊夜に対し、容赦なく双剣を構えて斬撃を放つローザ。
その瞬間、ローザは菊夜がニヤリと笑ったのを見た。
「これぞ、肉を切らせて骨を断つじゃ!」
「なるほど、求道の霸気をありったけ凝縮して防御に転じましたか。そして、習得した奥の手の圓式の刺突でボクを倒そうと――『超絶大音響テレパシー』もボクの油断を誘うためにわざと……なかなかいい作戦だけど、それで、ボクは倒せないな。《蒼穹の門》」
二度目の《蒼穹の門》を発動し、ローザは菊夜の放った大気の擦過する輝きを残して残像すら捉えられない圓式の刺突を菊夜の背後に転移することであっさりと回避すると、武装闘気を三重に重ね掛けし、覇王の霸気を纏わせた剣で圓式の斬撃を一閃――菊夜の求道の霸気が消える絶妙なタイミングで放たれた斬撃は菊夜の胴体を断ち切った。
◆
「さて、面白い力も手に入ったことですし、沙羅さん、覚悟してくださいねぇ」
「……あっ、最後にとんでもない置き土産残していきましたね。……圓先生は魂魄の霸気を複製して自分のものにすることができます。菊夜さんの使った魂魄の霸気は既に圓先生が十全に使いこなせるものになっていると考えるべきです」
「……修行の時から多分そうなんじゃないかって思っていたけど、流石は特異点ねー。……全く勝てる気がしないけど、逃げ出す訳にはいかないわ! 日輪赫奕流・劫火赫刃爆」
霊力を変化させた炎を纏った剣で斬撃を放ち、斬撃が命中して地点を爆破する日輪赫奕流の型に異界の焔を組み合わせ、爆破地点で凍結する炎の斬撃を放つ沙羅。
対するローザは三度目の《蒼穹の門》で攻撃を躱すと――。
「四凶集結・四纏魔将」
「――ッ!? これは、四凶魔法の果て!?」
ネストが驚愕で目を見開く中、「四凶元素・地割角皇」、「四凶魔法/波撃海竜」、「四凶元素・旋暴風女」、「四凶元素・灼熱赫降」を合体させたような騎士の怨霊が姿を見せ、地割れ、津波、竜巻、流星のような灼熱の奔流を次々と放つ。
「凍焔劫華! 魂魄の霸気《炎魔王》――《熔王・炎喰》! 凍熔噴火!」
沙羅の左腕がドロドロの熔岩へと変化し、体積が一気に膨張――その溶岩の腕らしきものが異界の焔を吸収し、冷たい熔岩が沙羅の左ストレートと同時に爆発――無数の溶岩弾が降り注ぐ流星のような灼熱の奔流に突っ込んでいき、次々と凍らせていく。
沙羅の魂魄の霸気《炎魔王》――この力は霊力、魔力、闘気を相互に変換させることができる《変換》と自身の身体を炎へと変化させることができる《炎王》、自身の体を熔岩へと変化させることができる《熔王》によって構成される。
炎や熔岩の性質は霊力、魔法、霸気のいずれにも変化可能で、沙羅は《熔王》を使ってからその性質を霊力に変化させ、「日輪赫奕流・焔喰ノ太刀」を発動したことで氷の熔岩を生み出すことに成功したのだ。
更に氷の熔岩は津波にも降り注ぎ波がソフィス達に届く前に凍結させることに成功する。
残る竜巻はネストが「エアリアル・ウィンドテンペスト」を放って相殺し、地割れは攻撃範囲にいた全員が空歩を使って回避したので被害はゼロ――しかし、騎士の怨霊はこれまでの四凶魔法のように発動と同時に消える訳ではないようなので、攻撃を乗り切ったところで喜んではいられなさそうだ。
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