Act.9-22 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.2
<三人称全知視点>
――状況はお世辞にも芳しいとは言えない。
互いの陣営にダメージこそないが、小筆は魔力を使い切って一つも魔法を発動できないという状況。
「四凶元素・波撃海竜」によって生じた水は消えており、「四凶元素・波撃海竜」の影響が今後の戦闘に響くことは無さそうだが、「四凶元素・波撃海竜」を防ぐために用意した城砦は「暁の流星群」でボロボロ……。
「……私の予想だと、そろそろ脱落者が出る頃合いだと思います」
「サレムお兄様、不吉だからそういうことは言わないようにしようね」
「そうですね……言っていると本当になりそうですからね」
「――邪魔な壁も無くなった! ローザ=ラピスラズリ! 強くなった俺の剣技で刀の錆にしてやるぜ!」
「……あっ、たった今馬鹿が突撃していきましたね」
「あー、アイツ死んだわ」という顔で見られていることなど気にした風もなく剣を構えて突撃するギルデロイ。
どうやら俊身を習得して多少は強くなったようだが、八技を完全に習得しているという訳でもなく、闘気系統も完全習得とは言い難く、お前なんで参加しているの? レベルである……一応、武装闘気の方は使えるようになったようだが、見気は習得する必要性を感じなかったのか初期レベルに留まったまま。
霸気も発現せず、ローザの求めるレベルに至っているとは言い難い。
「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」
「馬鹿正直に攻撃を受けるとでも? 魔法陣罠設置――爆裂罠陣」
「魔法陣罠設置」の「即効発動」と「遠隔設置」を使用して設置したのはジェイコブのオリジナル爆破魔法を基にローザが改良を加えた設置型爆発魔法陣で魔法陣を踏むと同時に大爆発を引き起こす改良魔法だ。
オリジナルの「爆裂罠陣」よりも低コストで使用可能で使用可能で他の魔法とは違い威力は据え置き……それでも、直撃すれば地雷並みの威力は期待できる筈だが。
「効かん!」
「はっ? 武装闘気で耐えた? いや、かなりダメージを与えている筈……あっ、そういうこと? 気合いで痛みをねじ伏せたってこと? 脳筋はやっぱり脳筋だった?」
ローザの予想に反して攻撃を耐えたギルデロイ……しかし、これがローザの逆鱗に触れたらしく。
「魔法陣罠設置――爆裂連罠陣! 魔法陣罠設置――爆裂極大罠陣! 魔法陣罠設置――煉柱連罠陣! 魔法陣罠設置――煉柱極大罠陣!」
ゾッとするような笑みで設置型爆発魔法陣で魔法陣を踏むと同時に連鎖するように次々と大爆発を引き起こす改良魔法、大量の魔力を注ぎ込み、大爆発を引き起こす設置型爆発魔法陣を設置する改良魔法、設置型の魔法陣で魔法陣を踏むと同時に同時に連鎖するように次々と火柱を作り出す改良魔法、設置型の巨大な魔法陣で魔法陣を踏むと同時に巨大な火柱を展開する改良魔法を次々とギルデロイとローザを結ぶ直線上に配置する。
元々は設置型の魔法陣で魔法陣を踏むと同時に火柱を作り出す「煉柱罠陣」も披露する予定だったローザだが、どうやら効率最優先でギルデロイの撃破を狙うつもりになったらしい。
「あー、今度こそアイツ死んだわ」という目を向けられる中、馬鹿正直にギルデロイはローザに向かって突撃していき、爆破に巻き込まれ、大爆発に巻き込まれ、連鎖するように噴き出した火柱に巻き込まれ、巨大な火柱に巻き込まれ、最後の最後でローザに一太刀も浴びせることができずに無数のポリゴンと化して、そのポリゴンも炎の中で焼き尽くされて消滅した。
「はい、ギルデロイ脱落。さあ、気を取り直して模擬戦を再開しましょうか」
◆
ギルデロイが沈められた戦場で次に動いたのは美姫だった。
「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」
「極寒の天恵」に氷魔法を融合し、特殊な氷で作られたスピードスケートスーツを纏うと猛烈な冷気を放って戦場を凍てつかせる猛吹雪を発生させ、バトル・アリーナの床をスケートリンクに変えてしまうと、美姫はまるでここは私の庭だと言わんばかりに高速でリンクを滑り出す。
美姫自身可愛くないと感じている「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」で創り出されるスピードスケートスーツはピストルの弾丸程度では軽く凹ませることしかできないほど頑丈な作りになっている。
更に武装闘気を纏わせることで硬度は上昇――唯一の弱点は頸の辺りにある空気を取り入れるための穴だが、冷却能力を利用することで周囲の空気すら凍らせ、凍らせた空気を酸素ボンベのように取り込んでスーツ内で解凍することで穴を塞いでも呼吸することは可能であり、穴を塞いだ状態で戦闘ができるため弱点を突くことも不可能である。
特に生物を操る魔法使いに対しては効果が覿面で、レジーナと共に修行に来ていたユリアと模擬戦をした際にはユリアに一手も打たせずに勝利したこともある。
ちなみに、この後にユリアの敵討ちのために挑んだレジーナとの勝負では惜敗している。戦いの後にはレジーナ、ユリア、ミーヤと友情を育み、レジーナ達からお茶の誘いを受けていたりする。
「氷の飛翔爆弾」
「――ッ! どうやら弱点をカバーしつつ的確に能力強化をしてきたみたいだねぇ。『極寒の天恵』の力と氷魔法を融合して威力も増しているし、技のレパートリーも増えている。……さて、どう仕掛けようか? 絶対零度まで達していても−273.15 ℃、火系の魔法でお相手してもいいんだけど……よし、少し変化球でいこうか? 這い寄る石光毒!」
「氷の飛翔爆弾」を圧倒的な覇王の霸気を放って砕いたローザはラミリアのオリジナルの毒属性と土属性の複合魔法「這い寄る石毒」を元に作り出した命中した場所を石化させる黒い光条を放つ魔法を五本の指の一本一本から放つ。
オリジナルの「這い寄る石毒」よりも低コストで使用可能な上に指の一本一本から放てるようになったので、同時に複数を狙い撃ちすることができる。
「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」の防御は確かに強力無比である。しかし、それが脆い石に変化してしまえばその防御は無意味となる。
石化光線を紙躱で回避しようとするも完全にはが仕切れずに左足と右脇腹に光線を浴びて石化する。
足が石化されたことでバランスが崩れたものの、何とか動かせる右足だけでバランスを取り、左手で拳銃を作り出して狙撃する。
しかし、利き腕ではないこともあって弾丸はローザに当たらない。……まあ、仮に狙い通りだったとしても単純な攻撃では躱されてしまうが。
「這い寄る雷竜蛇」
「氷結冷気-ホワイトサイクロン-」に生じる圧倒的な冷気の中でも神光闘気に迫るレベルの治癒闘気を巡らせることで凍傷を回避している(ちなみに、美姫の仲間達が凍傷にならないのも同じ理由である)ローザを倒すにはゼロ距離から冷気を流し込むしかないと判断した美姫はローザに迫る……が、攻撃の軌道が読めてしまえば後は少し動きが速いだけの窓でしかない。
クラリスのオリジナル魔法「雷光の竜撃」を基にしつつモーランジュのオリジナル魔法「雷魔法・這い寄る雷蛇」の要素を加え作り出した青い雷撃の身体を持つ竜を飛ばして攻撃を行うオリジナル魔法を次々と美姫に嗾ける。
威力をそのままに小型化して「這い寄る雷蛇」のように使用することも可能なことを利用し、二つは的確に美姫の石化した左足と右脇腹を狙うように計算――そして、最後の一撃は美姫を丸ごと飲み込めるほどの巨大な「這い寄る雷竜蛇」を放つ。
小型な分速度の速い「這い寄る雷竜蛇」二撃を躱し切れず、美姫は右脇腹と左足を穿たれる。
最後の一撃だけは回避しようと軌道を変えようとするが、それよりも先に顎門を開いた「這い寄る雷竜蛇」が美姫に噛みつき、猛烈な電流を流し込んで美姫を撃破した。
「美姫さんもなかなか強かったですねぇ。臨時班選定もかなり難しくなってきそうです。……さて、お次はどなたが相手をしてくださいますか?」
ローザの言葉に無言で応じるように、漆黒の弾丸が迫る。
「武装闘気重掛・大燕翼撃」
「真っ向勝負ですか! 面白い! 武装闘気重掛・藍黒双刃」
ローザは裏武装闘気によって創り出した双剣に、燕は「飛翔の天恵(モデル:燕)」で巨大な燕と化した状態で全身に、それぞれ武装闘気を重ね掛けすることで青みがかった黒色へと変化させる。
燕の突撃攻撃を真っ正面からローザは双剣で受け止めた……が、ローザもこの一撃で仕留める気がなかったためか、燕の武装闘気を打ち破り、燕の身体に剣を届かせて傷を刻み付けることは無かった。
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