Act.9-21 臨時班派遣間近〜臨時班候補達vsローザの模擬戦〜 scene.1
<三人称全知視点>
「四凶元素・地割角皇! 四凶元素・波撃海竜! 四凶元素・旋暴風女! 四凶元素・灼熱赫降! さあ、まずはボクの攻撃を耐えてみなさい!」
二つの角を持つ土の怪物、巨大な水竜、長い髪を持つ女のような暴風、マントを翻す炎の魔人が出現し、土の怪物は巨大に見合わぬ速度で突撃攻撃を仕掛け、巨大な水竜はその身体を構成する水を全て消費して大津波を引き起こし、長い髪を持つ女のような暴風は髪を回転させて巨大な竜巻と化して攻撃し、マントを翻す炎の魔人は無数の炎と化して上空に昇り、そこから流星のように降り注いだ。
「……お義父様の魔法ですね。魔法は最適化されていて、威力も上がっている……流石です、義姉さん」
「ちょっと感心している場合じゃないわよ! 時間停止ッ!」
砂時計付きの盾である「時停の盾」を傾けること魔法を発動し、時間を停止させた黒華。
「時間解脱魔法-クロック・エスケープ-」の効果であらゆる時間干渉を無効化しているローザ自身には効果はないが、黒華はこの魔法でローザを仕留めるつもりはないので問題は生じない。
「時停の連射」
二丁拳銃型のデバイス「時撃の左銃」と「時撃の右銃」はその名の通り「時撃の左銃」が過去への干渉を、「時撃の右銃」が未来の干渉を得意とする。
実際、「時撃の左銃」には固有の能力として時間を巻き戻す「時間遡上」と過去へ攻撃を届かせる「遡上する攻撃」、「時撃の右銃」には固有の能力として時間を加速させる「時間加速」と、時間を流れをゆっくりにする「低速時間」、少し未来に攻撃を飛ばす「未来に繋ぐ攻撃」がある。
しかし、時間停止に関しては「時撃の左銃」と「時撃の右銃」のどちらでも可能であり、「時停の盾」ほどではないが狙撃地点限定で「時間停止」を発動することができる。
「時停の連射」はこの「時間停止」で時間を止めた後、弾丸を連射し、時間停止を解除されると共に一斉に襲い掛からせるという技である。今回は「時停の盾」を使ったため、「時撃の左銃」と「時撃の右銃」による時間停止のプロセスは省いたが、内容自体は全く同じである。
武装闘気と覇王の霸気を纏った弾丸は土の怪物、竜巻、流星のように降り注ぐ灼熱の炎を撃ち抜いて破壊――巨大な水竜は既に津波となってしまっているため対処することはできなかったが、この津波は誰かが対処してくれるだろうと判断し、時間停止を解除する。
「結晶の城砦!」
ルーネスは瞬時に結晶属性魔法で城壁を展開――津波から身を守ると、城砦の壁の上まで空歩で移動し、上空から無数の光条を放った。
「魂魄の霸気《光陽》の《光操作》か。……それがボクに通用するとでも? 《天照日孁大御神》――《太陽神》!」
その瞬間から始まったのは恐ろしいほどの主導権争い。
ルーネスの《光操作》とローザの《太陽神》――光を操るもの同士の激しい戦いだ。
あらゆる光を操ることができるルーネスの《光操作》とローザの《太陽神》は当然、相手の魂魄の霸気から生み出された光も操ることができる。
もし効果が同じだとすれば、その力が二方から向けられた光は一体どうなるのだろうか? 無論、その答えは魂魄の霸気の強い方である。
「……くっ、やはりローザ先生に真っ向勝負を挑むのは無理がありましたか」
「よく鍛えていますね、ルーネス殿下。ボクの《太陽神》にここまで耐えるとは……では、そうですね……ルーネス殿下、光操作と魔法への対処――この二つを同時に行えますか? ルーネス殿下の全力を絞り出してください! 風撃凍結爆破弾!!」
ここでローザが光操作の手を緩めずに放ったのはジェイコブのオリジナル魔法「風撃爆破弾」を元に作り出したオリジナル魔法の一つで、「凍焔劫華」を構成する異界の焔、爆発魔法、風属性魔法で作り出した圧縮空気弾を組み合わせ、不可視の時限爆弾を作り出す魔法だ。
「風撃爆破弾」とは異なり爆破と同時に異界の焔で相手を凍結させることができる。殺傷力自体は「風撃爆破弾」に劣るが、凍結による行動制限は大きな痛手となる。そして、ローザは生じたその一瞬の隙を見逃す筈がない。
「「大結晶弾」」
見気を駆使して「風撃爆破弾」の軌道を読み取ったサレムとアインスが巨大な結晶を生成してルーネスを守るように設置――「風撃爆破弾」を間一髪防ぐ。
ルーネスは力を振り絞って魂魄の霸気《光陽》の《光操作》で作り出した光を四散させ、間一髪のところで自分の攻撃で自陣がダメージを負う可能性を潰した。
「やっぱり一筋縄では行きませんね。ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下、とても強くなっていてボクも嬉しいです」
「……先生に褒めて頂けるのは嬉しいことですが、私がやったのは自分の魂魄の霸気が味方に被害を出さないようにコントロールを奪い返して四散させただけです。……ローザ先生相手に先生の得意分野で挑むのはやはりハードルが高かったというか、身の程知らずでした」
「そんなことはないと思いますけどねぇ。……ボクも割と本気でコントロールを奪いに行きましたが、完全にコントロールを奪い切れませんでしたし、『風撃爆破弾』への対応も見事です。ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下は臨時班に所属できるレベルに達していると判断します……ただ、実際のメンバーはこの後選定するので、選ばれるどうかは未定ですが」
「ローザ先生に認めて頂けるだけで十分です」
ルーネスとアインスは満面の笑みでローザの評価を受け取った一方、サレムは二人のように喜びたいと思いながらも二人のように素直に受け取ることはできず、複雑な表情をしている。
サレム達の目指すローザに背中を任せてもらえる強さには今のままでは到底及ばない。
そもそも、ローザの得意とする魔法を使わないことからも、ローザが本気を出していないのは明らかだ。
今回の模擬戦、未知の攻撃に対してどれほど立ち回れるのかということが審査基準になっているので趣旨には則しているが、もしローザが本気になっていたら今頃サレム達は全滅していただろう。
「幻想戯画・比翼の女剣士」
ローザの意識がルーネス達に向けられている中、「幻想戯画」を使って戦力を揃えていた小筆は魔力が底をつくのを恐れず六体のアネモネを描き上げ、空歩を駆使して城砦を突破させて一気にローザに嗾ける。
「晩鐘の断光壁」
勿論、この攻撃は見気を冴え渡らせて戦場全体を監視していたローザには予測済み――絶妙なタイミングでマグノーリエのオリジナル光属性魔法「穿光条の流星群」を基にしつつヴィクトスのオリジナル魔法「月銀の断光壁」の要素を加え作り出した光の分布を強制的に偏らせることで光が存在する座標を自身の前に設定し、いかなるものも消滅させる壁を作り出すローザのオリジナル魔法で次々とアネモネ達を消滅させる。
本来、「晩鐘の断光壁」は攻撃から身を守るための魔法だが、あえて座標をアネモネ達に重ねることで攻撃手段に転用したのだ。
元々が「穿光条の流星群」のため威力は充分――絵の具に武装闘気を練り込むことで強度を増していてもその強度がまるで意味を成さなかった。
「小筆さんには前から言っていますが、貴女の魔法は結局のところ構図です。中身がない……ただ、私を殺すアネモネをいくら創り出しても馬鹿正直にその時の最善手で攻撃を仕掛けてくるのであれば、逆に読みやすい……確実に強くなっていますし、臨時班に所属できるレベルには至っていると思います。後は絵が以外の勉強をすればより厄介な技へと成長するでしょうねぇ。……さて、その砦邪魔ですねぇ。折角ルーネス殿下が作った芸術作品を壊すのは忍びない……うーん、どうしようか? 壊さなくていいなら別に壊す必要は……」
「先生のお好きになさってください」
「そうですか……じゃあ、壊しちゃいましょう。暁の流星群!!」
ローザが放った魔法はノーリエのオリジナル光属性魔法「穿光条の流星群」を基に作り出した元に作り出した光の分布を強制的に偏らせることで光が存在する座標を小さな球、細い光条として設定し、有機物・無機物、硬度、可塑性、耐熱性、弾力性を問わず対象物に光が通り抜けられる穴を穿つ魔法……まあ、要するに「穿光条の流星群」と全く同一の魔法である。
では、何が違うとかと言えば、ローザが手を加えて最適化されているというただ一点であり、戦闘序盤で披露された「四凶元素」と名の付く魔法と同じく低コストかつ出力も大幅に強化されている。
「……ローザさん、今回の模擬戦の映像は後々に公開して頂けるのでしょうか?」
「えぇ、プリムヴェールさんを含め、今回の参加者が望むのであれば……今後の参考にして頂くのに必要であれば吝かではありませんが、プリムヴェールさんが仰りたいのはそういうことではありませんねぇ? 希望者には今回の戦いの映像をお見せしようと思っています。申請頂ければマグノーリエさんにも映像をお見せ致しますよ」
「忝い」
「というか、必要であれば『暁の流星群』や『晩鐘の断光壁』の魔法式はお教えしますし、今回の戦いで使用した新作魔法は全てバトル・アイランドの『魔法大全 第二版』に収録予定ですから、そちらを手に入れるのもおすすめですよ」
プリムヴェールの願いをあっさり見抜いたローザは同性でも惚れそうな笑顔を浮かべながらちゃっかり新作の辞典を参加者達に売り込んだ。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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