Act.9-20 臨時班派遣間近〜沙羅、菊夜vsローザの模擬戦〜
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
王女宮筆頭侍女の仕事終わりに三千世界の烏を殺して真っ先に向かう先はバトル・アリーナだ。
八大タイトル戦もまだ開催されていたいため、施設は現在無人――戦闘訓練をするにはもってこいだ。
「さて、今日からはより実戦的な内容になる。ルールは二対一の模擬戦。ルールは簡単、あらゆる手を使ってボクを倒せれば勝ち。……さあ、勝負といこう」
「黒槍・群蜘蛛! 爆破粘土造形魔法・小型蜘蛛」
菊夜は糸を束ねて槍を作り上げ、武装闘気を纏わせると土属性と火属性を融合した爆破粘土という特殊な物質を作り出して造形するオリジナル魔法を使い、茶色の無数の小型蜘蛛を作り出してボクの方へと放つ。
遠隔操作はできないものの、創り出すタイミングである程度動きを設定しておくことが可能で見気の未来視と組み合わせれば敵に当てることも造作もない……ただ、相手が未来視を使えたら話は変わるけど。
「日輪赫奕流・劫火竜顎門」
沙羅が放ってきたのは日輪赫奕流の型の一つで霊力を変化させた炎を纏った剣で斬撃を放ち、その斬撃を竜の顔へと変化させて襲わせる技。
それが同時に三つ――。
「幽霊の十字架」
リサーナの無属性魂魄魔法を元に作り出した無数の幽霊を固めた十字架を放つ魔法を放って次々と灼熱の竜の顔を相殺し、そのままフェアトリスのオリジナル魔法「音子増幅砲」を元に作り出した小型の魔法陣を銃口の代わりとして魔力を収束させ、音子を増幅・発振させて解き放つ音属性魔法で次々と茶色の無数の小型蜘蛛を吹き飛ばしていく。
……しかし、いくら狙撃が正確でもいかんせん数が多い。このままのペースだったら撃ち漏らした小型蜘蛛に懐に入られてしまうねぇ。
そうなれば、武装闘気を纏わせた糸の槍――『黒槍・群蜘蛛』を構えて襲い掛かってくる菊夜に大きな隙を作ってしまうことになる。
「だったら……魔法陣罠設置! 黄泉爆獄陣!!」
空歩を駆使して空中へと退避すると同時にジェイコブのオリジナル魔法「簡易設置」、「即効発動」、「遠隔設置」を元に作り出した「簡易設置」、「即効発動」、「遠隔設置」、「空中設置」の四つの魔法が一体となった罠魔法を発動――仕掛ける罠はフェイトーンのオリジナル魔法で魂魄魔法と闇属性の複合魔法を元に作り出した万象を凍らせる異界の理によって成り立つ黄泉の焔を解き放ち、直径約百メートル範囲の周囲を炎の領域へと変える魔法――「黄泉爆獄陣」だ。
「――喝ッ!」
菊夜が無数の小型蜘蛛を爆発させたけど、タイミングが遅い……爆発の炎ごと「黄泉爆獄陣」の黄泉の焔で凍らせた。
ヒュッと黄泉の焔で凍結した爆炎の上に降り立つと、新たな魔法を発動する。
「簡単にやられてくれないでよ? 風獣顕纏・暴風恐鳥-テンペスト-! 聖獣変化-ドロー・サンシャイン-! 聖獣喰鳥・大聖浄恐鳥-サンシャイン-!!」
ディーエルのオリジナル風魔法で暴風の鳥を二十体生成――うち五体を残して十五体を「魔術改変」の技術を使って聖属性に変化させ、更に九体の聖なる鳥を一体の聖なる鳥に吸収させて巨大化させる。
「暴風の鳥五体、聖なる鳥五体、巨大な聖なる鳥一体。勿論、警戒するべきなのはそれだけじゃない、ボクだって攻撃を仕掛ける。さあ、絶体絶命の状況だ――しっかりと対処し給え」
「――ッ! やってくれるじゃない。何がしっかりと対処し給え、よ!! ムカつくわ!! 菊夜さん、どうする?」
「絶体絶命と言っているけど、別にあの人からしたら窮地でも何でもないんじゃないかしら? ……底が知れないわね。正直、これまで生きてきてこれほどの窮地に遭遇したことはないわ。とりあえず、あの鳥に込められている魔力は膨大だし、巨大な光の鳥に至っては異次元の魔力を秘めているわ。……どこまでやれるか分からないけど私が対処してみる。だから、沙羅さんは――」
「分かっているわ。……恐ろしいけど、やるしかないと決まったらアタシだって腹を括るわよー。……死なないのがせめてもの救いね」
「さて、作戦は決まったようだねぇ。……それじゃあ、ボクの方も仕掛けさせてもらうよ! 爆熱猛打三連撃!!」
武装闘気を凝縮させ、裏武装闘気で金砕棒を創り出して構える。
「いくよ! シュートカノンッ!」
武装闘気を纏わせた野球ボール大の聖属性と火属性の複合魔法で作り出した聖火球を金砕棒でフルスイングする。
武装闘気を纏わせた聖火球はそのまま超高速で沙羅に迫る……けど。
「日輪赫奕流・劫火赫刃爆」
「まあ、この程度じゃ対処されるのも仕方ないよねぇ」
霊力を変化させた炎を纏った剣で斬撃を放ち、斬撃が命中して地点を爆破する日輪赫奕流の型の一つで生じた爆発で聖火球を受け止められた。
しかも、ご丁寧に武装闘気と覇王の霸気を纏わせていたからただの武装闘気程度じゃ貫通も難しいか。
まあ、今回は実戦演習――命を奪い合う戦争じゃないし、このまま予定通り仕掛けていくか。
「しまっていきます、二発目ですッ! ウルトラバッシュ」
今度は武装闘気を纏わせた聖火球に細工を施し、無数の小さな聖火球片へと変えるように猛打を放つ。
習得したばかりの紙躱を使って回避をしようとしたタイミングで聖火球が爆発的なエネルギーを放って四散させ、沙羅を爆発に巻き込んだ筈だけど、煙が晴れた時に沙羅は平然と立っていた。
「覇王の霸気の力で武装闘気の力を引き上げ、攻撃のダメージを軽減したか……なかなかやるねぇ。これで最後だ、よーく味わいなさい!! アンブッシュ・インビジブルスライダー!」
今度は聖火球を三つ作り、同時に金砕棒で打つ。
聖火球は猛烈な勢いで沙羅に殺到し――そのまま姿を消した。
不輝炎放射という現象を利用して限りなく色を消し、武装闘気も硬化せずに纏わせた文字通りの消える魔球……だけど、目を瞑って見気に全神経を集中させている沙羅は確実に避けてくる。
「雷鳴迅雷八卦・骨砕猛打衝」
だから、本命は「アンブッシュ・インビジブルスライダー」ではない。
ヴァケラーの聖属性魔法「雷霆覇勁・猛打衝」を元にして開発した、得物に聖属性の魔力と稲妻のように迸る膨大な覇王の霸気を纏わせた状態で覇王の霸気の力で強化した神速闘気で雷の如き速さで移動しながら得物を振り抜き、対象を一撃の下に粉砕する必殺の一撃――「雷鳴迅雷八卦・骨砕猛打衝」、こっちが本命だ!
沙羅の双眸が見開かれた。聖火球を警戒し、紙躱で回避することだけ考えていた沙羅は当然、それ以上の速度で襲い掛かってきたボクの攻撃を回避することなどできずに一撃で粉砕。
「――ッ! 沙羅さんッ! 行きなさい! 爆破粘土造形魔法・大型蜘蛛」
爆破粘土という特殊な物質を作り出して造形するオリジナル魔法……さっきの蜘蛛の大型版か。
まあ、大きさは「小型蜘蛛」よりも遥かに巨大だし、爆発力も相応だと考えるべきだろうねぇ。
「――喝ッ!」
「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-!! 聖獣爆裂-サンシャイン・ピュリファイ・バースト-!!」
まあ、爆破には爆破という安直極まりない考えで暴風の鳥五体、聖なる鳥五体、巨大な聖なる鳥一体を全て菊夜に嗾しかけて暴風の鳥を解体し、無数の風の刃として展開する魔法と爆発的な聖属性のエネルギーを放出する魔法を発動させる。
生じた膨大なエネルギーは「大型蜘蛛」の爆発を遥かに上回り、菊夜にポリゴン化の猶予すら与えずに消滅させた。
◆
菊夜、沙羅と戦闘訓練を始めてから十五日目――この日、臨時班メンバーの候補達の実力を測るための模擬戦をすることになった。
……まあ、要するに特訓の成果を見る総括試験的なものだねぇ。そこまで畏まったものでもないんだけど。
メンバーは雪菜、黒華、桃花、篝火、美結、小筆、雫、綾夏、天音、燕、春海、美姫、火憐、玲華、菊夜、沙羅、アルベルト、ギルデロイ、ソフィス、ルーネス、サレム、アインス、ルイーズに加え、本人達の希望からネストとプリムヴェールの二人が参戦する。
……プリムヴェール以外はバトル・アイランドを巡った面子が勢揃いだねぇ。
「ルールは単純明快、これまでの特訓で培ったものを披露すること。個人的にはボクを倒してもらいたいところだけど……まあ、おまけのおまけで爪痕を残せたら、或いは臨時班として戦える実力があると見做すことができたら合格にしてあげるよ」
「……そもそもローザ殿を倒すのなど不可能ではないか?」
「もし、それが条件ならここにいる誰も臨時班入りは果たせそうにないですね。義姉さんは強過ぎますから」
プリムヴェールとネストがボクを鬼畜扱いしてくる……酷いよねぇ。って、誰が鬼畜だよ! ……まあ、鬼畜って面と向かって言われている訳じゃないんだけど、ニュアンス的にはそんなところだよねぇ。
「四凶元素・地割角皇! 四凶元素・波撃海竜! 四凶元素・旋暴風女! 四凶元素・灼熱赫降! さあ、まずはボクの攻撃を耐えてみなさい!」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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