Act.9-10 バトル・アイランドのお披露目 scene.6 上
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「お疲れ様。いやぁ、ナイスバトルだったねぇ。ルイーズさんとアメジスタさんのバトル、とても見応えがあったよ。……まあ、後はねぇ、今後の成長に期待ってことで」
「……不甲斐ない結果で申し訳ない」
「まあ、雫さんを含めこれから強くなっていってもらわないと困るからねぇ、ボク達としても。使節団の派遣についても中核を担う黒の使徒達がこれじゃあねぇ……という状況だから、魔法の国への臨時班の派遣は先延ばしにして、特別プログラムで鍛え直してもらうことになるよ。それに加えて、各々でも強くなれる方法を模索してもらいたい、勿論、ボクも相談に乗るよ。暇人だし」
『……私は暇人じゃないと思うわ。というか、本当に大丈夫? また仕事を抱え過ぎているのでしょう?』
「大丈夫大丈夫、ボクも自分のキャパぐらい分かっているからさ。ちゃんと自分のできる範囲でしか仕事していないって」
……ボクってどんだけ信用されていないんだろうねぇ。特にソフィス、ネスト、ルーネス、サレム、アインス、アルベルトからの視線が痛い。
細々と回る予定ではあるけど、戦闘施設の中ではこれが最後――バトル・クエストにボク達はやって来た。
「よっ、来たか親友! なんなんだ、ありゃ! いやぁ、久々にクソ面白い戦いができたぜ!」
「まあ、俺達全員三回くらい全滅したけどな! クソ笑えるぜ!」
「……全く、一体何が笑えるんだい」
「レジーナさん、私も同意見です」
「お嬢様! 流石にあれは強過ぎなじゃないですか?」
「いやぁ、親友……あれは、ちょっとな」
到着早々、ボク達に声を掛けてきたのはラインヴェルド、オルパタータダ、レジーナ、ユリア、アクア、ディランのパーティだった。
まあ、恐らくアレに挑んできたんだろうけど……まさか、早々に攻略されるとはねぇ。クソ楽しそうにしているラインヴェルド達は別としてアクア達は憔悴し切っているみたいだけど、正直、ボクの方も想定外というか、何というか?
「……百合薗圓、一体どんな強敵を用意したのかしら? あの人達って……その、色々と……その、おかしい人達よね」
「刻曜黒華、お前ほぼ初対面でそれは酷くね!? 多種族同盟のやばい三銃士連れてきたよ! って話になったら間違いなく俺達程度じゃ入らないからな!!」
「全く、侵害だね! あたしらはコイツらと違って真面だよ!!」
「レジーナさんとユリアさんはともかく、ラインヴェルド陛下とオルパタータダ陛下は……うーん、ギリギリで三銃士の候補に入りそうだよねぇ。……まあ、フォルトナ勢にはランクインしそうな奴らが大勢いるけど……でも、王様って要するにそれの親玉ってことだから、まあ、オルパタータダ陛下は三銃士に含めていいと思うんだけど……ってか、おかしくない? レベルは同盟君主の上位爵位保有者が協力し合っても簡単に倒せないレベルに調整したのに、もう攻略されちゃっているし」
オルパタータダが「纏め役だからお前が一番おかしいみたいな扱いっていくらなんでも酷いと思うぜ!」と抗議の声を上げているけど、気にしない。
ここに来て真っ先にするべきことは、この施設の紹介だからねぇ。
「この施設――バトル・クエストはNPCと戦うクエストが受けられるだよ。一つ目は常設クエストと言って、クリアするごとにクエストが解放されていくもの……迷宮探索とか、一定数の魔物の討伐とか、ここにあるクエストでは最も難易度は低いかな? クリアの報酬として他の施設同様にポイントがもらえる他に、難易度の高いものをクリアするとクエスト攻略報酬がもらえる。二つ目はミラークエスト、もう一人の自分と戦えるクエストで、クリアするごとにポイントが貰える他に初回攻略の際にはクエスト攻略報酬がもらえる。ここまではいいかな?」
「もう一人の自分と戦うということは、全く実力が同じ自分と戦うということでしょうか?」
「アルベルトさんの疑問はもっともだねぇ。うーん、心の闇の具現とか、虚像の自分とかそういうのもアリかな? とは思ったんだけど、今回のものは全てボクが予測した全員の到達可能な一つの未来だよ。しかもかなり高度なAIを積んでいるか状況に合わせて適切な行動を取ることができる……ほぼ、もう一人の自分、あるいは少し先の未来の自分と戦っている気分になれるんじゃないかな? ただ、それはゴールじゃない。戦い方の参考にするのはいいけど、模倣で終わってしまったらそこからの成長は期待できない。吸収するべきと判断するところは吸収するべきだし、もし、戦い方を見て弱点を見つけたらそこを改善するも良し……今回、各データを作るにあたり各人の癖はかなり研究したからねぇ。まあ、どう利用するかはこれまで回ってきた施設同様個人の自由だからねぇ。挑戦するもしないと、利用するもしないも」
ただ、正直の話、ソフィス、ネスト、ルーネス、サレム、アインスを除くメンバーはこのままでは使節団として連れていけないかな? っていうレベルなんだけどねぇ。
まあ、ルイーズ、雪菜、黒華、桃花、篝火、美結、雫、綾夏、天音、燕、春海、美姫、火憐、玲華、アルベルト……この辺りは各施設での戦いで打ちのめされて、向上心を燃やしているだろうけど、正直、ギルデロイについてはどうなるか微妙だよねぇ。
まあ、弱いままなら勝手に時空騎士の資格が剥奪されることになるだけだし、ボクには関係ないけどねぇ。
一応、多種族同盟加盟国の一つだから対面的に資格を与えないといけないっていうだけだし。
「そして、三つ目が月刊チャレンジクエスト――その名の通り月毎に更新される最高難易度のクエストだよ。今回は初回だから人数制限はしていないけど、本来は最大で五人、最小だと一人で挑める内容になっている。このクエストでもポイントが獲得できるけど、それに加えて初回一回目攻略と誰一人撃破されずに勝利する完全攻略で参加者全員が合計二枚のチャレンジメダルを獲得することができる。勿論、これは別パーティで組んで挑んでも事前にこの二つの条件を満たしていたら手に入らない……つまり、毎月二枚獲得できるものだと思ってもらえたらいいかな? このメダルはポイントとは別に特別なアイテムと交換が可能になっているから、その説明は後でアイテム交換所で説明するとして……よし、ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下、アルベルトさん、ギルデロイさんの五人でこのチャレンジクエストに行ってらっしゃい!!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 陛下達が勝てないものに私達じゃ……」
「どっちが先に倒せるか勝負だ! アルベルト!!」
「サレム、アインス。実質三対一ですから作戦を練っておくべきでしょう」
ギルデロイは状況を分かっているのかいないのか……ある意味大物というか、ただの莫迦というか。
アルベルトは最初から勝てる気がしないようだし、ルーネス達もアルベルトとギルデロイのことは勘定に入れていないらしい。
組んだボクが言うべきことじゃないと思うけど、アレは簡単に空中分解しそうだねぇ。
◆
<三人称全知視点>
目の前に現れたのは異界のバトルロイヤルにおいてアクアによって討伐された『End of century on the moon』のみんなのトラウマ――鋼鉄の銃巨人である。
しかし、その戦闘力は異界のバトルロイヤルに登場したヌルバージョンや『End of century on the moon』に登場したオリジナルバージョンよりも更に高められている。
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名称:巨人の頭部 属性:鋼
HP:19,000,000 チャージまで五ターン DEF≥MDF
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名称:巨人の胴体 属性:鋼
HP:13,000,000 チャージまで二十ターン DEF≤MDF
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名称:巨人の左腕 属性:鋼
HP:13,000,000 チャージまで二十ターン DEF≤MDF
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名称:巨人の右腕 属性:鋼
HP:13,000,000 チャージまで二十ターン DEF≤MDF
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名称:巨人の左足 属性:鋼
HP:13,000,000 チャージまで二十ターン DEF≤MDF
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更に技についても改良が重ねられており、一度攻略経験があるアクアも「これは別物」と感じるほどの出来に仕上がっている。
だが、ギミック自体は落とし穴が存在しているものの、基本的には鋼鉄の銃巨人と同じである。
異界のバトルロイヤルの経験者にとっては取っ掛かりの多い相手だが、今回のパーティは全員が異界のバトルロイヤルの未経験者であり、事前情報は皆無である。
また、鋼鉄の銃巨人は異界のバトルロイヤルにしか登場していない敵のため情報共有をしておく必要性は感じられなかったのだろう、参加者達もその情報を他の多種族同盟の者達には共有していなかった。
つまり、ルーネス達はこれからオルパタータダ達が三度全滅した強敵という情報だけを持ってこの難敵に挑まなければならないのである。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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