表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 2. 乙女ゲームにボツ設定を追加すると世界観が崩壊するようです。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/1358

Act.2-14 素材回収クエスト:ワイバーンの鱗を三匹分手に入れろ! scene.3

<一人称視点・リーリエ>


 魔法を込めなくとも電磁加速式拳銃(ミニレールガン)単体で威力は十分凄まじく、超高速で放たれた弾丸はマッスル・ド・ラビットを撃ち抜いた。


「これは……凄まじい武器だね」


「これほどの武器が実際に使われるようになれば、戦争の定石が一変するのは間違いないでしょう」


 う〜ん、どうなんだろうねぇ? この世界にはファンタジーみたいな魔法で遠距離攻撃が揃っているし、今更拳銃が登場しても……っていう感覚が正直あるんだよねぇ。

 確かに、オーソドックスに使われる剣よりも間合いは広く、優位に立ち回れるし、弾丸を斬るとなればそれこそ一流レベルの剣術を求められる訳だから圧倒的な訳だけど……。


 ちなみに、電磁加速式拳銃(ミニレールガン)は原初魔法の「雷精」の力を使い、電磁加速式拳銃(ミニレールガン)自体が霊輝(マナ)を供給する契約者(・・・)の位置にあるから原初魔法に適性がない人でも簡単に扱える。

 ……まあ、スキルを使って直接電気を流す芸当は人間にはまず不可能だからねぇ。


「正直、これ単体じゃ魔法のあるこの世界で無双するのは不可能だと思うけどねぇ。化野さんが作った反物質爆弾とかなら、この世界でも通用すると思うけどねぇ」


 表側でも裏側でも強大な兵器として認知されてきた原子力爆弾と水素爆弾。

 この悪魔の兵器すらも可愛く見えてしまう反物質爆弾を初めて実用化して見せたのは、何を隠そう星の智慧派の化野學だ。


 ニャルラトホテプとアザトホースを信仰し、NBC兵器に強い興味を示していた化野さんは、反物質を容易に観察する方法と長期間維持する技術を開発し、机上の空論を実用段階にまで押し上げた。

 百合薗圓だった頃のボクにとっては反物質爆弾は切り札の一つで、ボクの目算ではあれ一つでシャマシュ教国は容易に落とせると思っている。そして、化野さんは四次元空間に反物質爆弾は普段から三つ常備している……うん、最初から詰んでるねぇ、シャマシュ教国。まあ、もう関係ない話だけど。


 まあ、化野さんも所構わず爆破したいっていう狂人……じゃないと思いたいし、多分爆破は最終手段にすると思うからねぇ。いくら放射線も薬物も通用しない超人だからってあれを簡単に使ったりはしないでしょ……多分。……あの人ならやりかねないって思わせるところが凄いよねぇ。


 その後は電磁加速式拳銃(ミニレールガン)の扱いに慣れてもらうということでラルを先頭に、他のメンバーが援護に回る形で【リンヘン大森林】をドラゴネスト・マウンテン方向に向けて進んでいく。

 途中、アクアとヒースに自分達も使ってみたいとお願いされたので、新たに二丁、電磁加速式拳銃(ミニレールガン)を取り出してプレゼントした。


 ジーノからすれば、「完全に味方と判断できない、王家のためならお嬢様と戦うことも厭わない【ブライトネス王家の裏の剣】に自分の切り札とも言える武器を与えるなど……」とごちゃごちゃ言っていたけど、別に切り札でもなんでもないし、これくらいなら教えてあげてもいいと思うんだよねぇ。それに、君達には来たる厄災に備えて頑張ってもらわないといけないからねぇ。ボクの側からは協力を惜しむつもりはないけど、悪役令嬢として追放されていたら助けようがない訳だし……まあ、それならそれで冒険者(フリーランス)として自由気儘に生きさせてもらうよ。


 そんな感じで【リンヘン大森林】を進み、その日の夕刻、ボク達はドラゴネスト・マウンテンに辿り着いた。



 翌朝、日を改めてドラゴネスト・マウンテンの探索を開始。

 期限の一ヶ月まではまだまだ時間がある。塩漬けクエストの理由には【リンヘン大森林】の突破も含まれている訳だし、ここまで来て丁度依頼の三分の一くらい達成できたと言ってもいいんじゃないかな?


「ワイバーンってアレかな?」


 ――鋼鉄のような銀の鱗を持つ翼竜が五体、竜の巣に侵入したボク達を洗礼するように奇襲を仕掛けてきた。


 ……って、いきなり目的達成じゃん。コイツら倒せば。……塩漬けクエストェ。


「――渡辺流奥義・颶風鬼砕! 千羽鬼殺流奥義・北辰-圓式-」


 いつもの鬼斬コンボでワイバーンの魂のみを両断し、落下する前に統合アイテムストレージを保管する。……クエスト、完了? ……マジか。


「お嬢様、クエストは無事に達成したようですが、この後はどうなされますか?」


 ジーノが言いたいことは「屋敷に帰還するorこのまま探索を続ける」ってことだねぇ。そして、答えは勿論――。


「全く達成感がないまま依頼を達成しちゃったし、折角ここまで来たんだから個人的にはもっと探索したいけどねぇ。ということで、もう少し探索して素材を手に入れるとしようか」


 これで探索続行が決定した。まあ、依頼じゃない以上、素材の売値は普通に依頼を受けた時よりも安くなってしまうけど、別に素材を売るだけが全てじゃないし、いくらでも利用することができるからねぇ。例えば、錬成スキルと組み合わせて新たな武器を生み出したり、『Eternal Fairytale On-line』以外のゲームの(・・・・・・・)アカウントを使ってアイテムの合成や分離によって素材としたアイテムよりも高レベルや低レベルのアイテムを作り出すってことも可能だからねぇ。あくまでメインは『Eternal Fairytale On-line』のリーリエ達を使う予定だけど、それ以外にも使えるものは使いたいし、違うゲーム同士のアイテムの掛け合わせは未知な領域だからいつか試したいと思っていたし、その足しにすることもできるからねぇ。


 ボク達はワイバーンの討伐後、とりあえずは山頂を目指して一直線に進んでいくことにした。

 といっても、ドラゴネスト・マウンテンは二千メートル級……まあ、不死之高嶺(ふじのたかね)が約三七七六メートルだから、大倭最高峰よりは少し低いけど、油断は禁物。元の世界には魔物が出現しなかったけど、こっちは魔物が出現するからねぇ。


 登山開始……とは、ままならないもので、急下降してきた二体のドラゴンが行手を阻んだ。

 四肢を持たず、蛇に翼が生えたような姿をした個体と尾の先にもう一つの頭のついている双頭の竜――。


「……ワイアームとアンフィスバエナだねぇ」


 確か、どちらも『スターチス・レコード』には登場しなかった。『スターチス・レコード』には、鋼鉄の翼を持つワイバーン、炎を操る真紅の竜ドライグ・ゴッホと冷気を操る白き竜グウィバー、雷を司る黄金の竜ナム・ドゥルック、そして天を覆い隠すほどの巨体を誇るボスモンスターの、ヴリトラの合計五体が登場する予定だった……ボツにされたけど。

 ヴリトラはありとあらゆる物質を作り出すが可能な高次元万能物質を自在に作り出すことができるという設定を原典のものに加えた気がする……まあ、それでも万能にはならないように調整するつもりだったけどさ。それが異世界化に伴いどうなったかは分からない。……多分、制限していないから際限なく物質を生み出せるんだろうねぇ。


 ゲームと現実は別――ここは、ゲームの世界ではなくもう一つの現実なんだよねぇ。だから死んでも簡単に復活できないし、シナリオ通りに動くことはない。もし、シナリオ通りに動くなんて思っているとしたら結構早い段階で死亡するよねぇ。

 ましてや、ここは三十ものゲームを取り込んだ世界だし。


 ワイアームとアンフィスバエナは、『スターチス・レコード』には登場しないから、『スターチス・レコード』の知識に頼っていたら情報のないまま戦うことになっていた……って、それはボツ設定のワイバーン達にも言えることか。


 この二体は『Eternal Fairytale On-line』に登場するドラゴン系のモンスター。他にも何体かドラゴン形のモンスターは登場するけど、『Eternal Fairytale On-line』は実際かなりの人気を博していたし、ボツ設定のワイバーンよりも認知されている確率は高そうだねぇ。……というか、社内の人だけだよねぇ、あのボツ設定の話を知っているのって。確かネットの海には流出していなかった筈だし……。


 ちなみに、ワイバーンとヴリトラは『Eternal Fairytale On-line』にも登場しているけど、戦ったワイバーンは間違いなく『スターチス・レコード』のワイバーンとしてデザインしたものだった。……なんで分かるかって? 色がメタリックシルバーじゃなくてやや黒みがかった銀色だし、角の位置とか細部がかなり違っているからねぇ。……そもそも同じワイバーンでも、『Eternal Fairytale On-line』のものと『スターチス・レコード』ものってほとんど別物な見た目(デザイン)だし。


「……誰が行く?」


「えっ? お嬢様が行くんじゃないんですか? 俺は嫌ですよ?」


「……私もてっきりローザお嬢様が鎮圧するとばかり。さっきもノリノリで討伐していらっしゃいましたし」


 ……おい、ヒースとアクア。なんで戦闘のプロの【ブライトネス王家の裏の剣】がお嬢様に先頭を任せちゃっているの? 一応、ボクってお嬢様だよ? しかも二歳なんだよ……見た目は冒険者のリーリエで、心は高校生の百合薗圓だけどさぁ。


「……お嬢様、悠長に会話などせず攻めた方がよろしいかと。敵は既に攻撃態勢に入っておりますぞ」


「……あの、ジーノさん? なんで貴方とエリシェアさんは攻撃しないのかな? なんで当たり前のように護衛対象のボクが攻撃することになっているのかな? まあ、ラルさんはいいとして四人はプロでしょう?」


 ……まあ、ラルもプロだけど。極夜の黒狼の女ボスだけど!! 何故か二体のドラゴン相手にビビって戦意喪失しているし……ここにラルを連れてきたのって鍛えてボクの護衛として頑張ってもらうためなんだけどねぇ……明らかに守られるべき立場のボクが前線で頑張るって本末転倒している気がするけど……愚痴を言ってても仕方ないか。仕掛けてきたし。


吸血姫ヴァンパイアプリンセス固有技能スペシフィック・アビリティ・吸血姫の翼」


 蝙蝠のような翼を背中から生やして飛行を可能にする吸血鬼と吸血姫、その上位個体のみが持つ固有技能だ。

 まあ、飛行技能を持つのは吸血鬼系だけじゃないし、他にも飛行能力はあるんだけど手の内をあまり明かしたくはないからねぇ。


「それじゃあ、ラルさん。ちょっと見ててねぇ。ジーノさん達は頼まなくても勝手に解析してお父様に報告したり、【ブライトネス王家の裏の剣】の内部で情報の共有をしたりすると思うからわざわざお願いしないけどさ。今から見せるのはボクが会得した技術の一つ――闘気戦闘術というものだ。きっちりものにしてよねぇ」


 身体全身に金剛闘気、『漆黒魔剣ブラッドリリー』に剛力闘気、足と翼に迅速闘気をそれぞれ纏わせる。

 今、俯瞰で見れば全身と武器をオーラがボクを包み込んでいるように見えるだろう。


「見えるかい? これが、闘気戦闘術と呼ばれる力だ。気を纏わせることで身体強化を行う技術で、ボクは今体を硬化させる金剛闘気、強力な膂力を得る剛力闘気、速度を上昇させる迅速闘気をその身を纏っている。まずはこの力をラルさん達、極夜の黒狼には習得してもらいたいんだよねぇ」


 闘気を使用した戦闘術は香辛料(カルダモン)の和名を持つ赤鬼の少女(といっても年齢は遥かに上だけど)から教えてもらったけど、実はその使い手はかなり多く、獲得難度は特殊能力の中では比較的簡単な部類に属する。


 気を纏い強化する闘気、これを武装の気の技とし、気を読み、鍛え方次第では未来視や他者の心を読むことする可能とし、神仙のみが会得することができるという神通力に匹敵する力を得ることすら可能な見気。

 この二つを合わせて闘見気戦闘術……なんだけど、生憎とボクには後者の見気戦闘術の師に巡り合わなかったからねぇ。だから、ボクが使えるのは闘気戦闘術だけということになる。


 まあ、ボクも闘気戦闘術を極めた訳じゃない。纏うだけではなく、相手の身体に流すことで内部破壊を狙うという使い方もあるらしいってことを知っているだけなんだよねぇ。


「まあ、これだけ言われても感覚が掴めるとは思わないし、詳しくは後で説明するよ。だから、まずはこれがどういうものなのかをよく見ておくといいよ」


 そのまま翼を二度動かしてまずはワイアームに肉薄――。


「スラッシュ」


 闘気を纏って威力が上がった剣士系職業の初期に獲得できる斬撃を放つスキルが、熱したナイフでバターを切るように呆気なく両断……もしかして、闘気要らなかった?


「エアスラッシュ」


 「スラッシュ」の斬撃を飛ばすだけで威力はそのまま据え置きという剣士系職業の初期に獲得できる斬撃を放つスキルを発動して、斬撃に闘気を乗せて放つ……これで、アンフィスバエナも撃破かぁ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] > 「……ワイアームとアンフィスバエナだねぇ」  実は現実にもアンフィスバエナの名を持つ爬虫類がいる……学名:アンフィスバエナのミミズトカゲさんがな! その理由も手足もないのにすごくムーンウ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ