Act.9-6 バトル・アイランドのお披露目 scene.4 上
<三人称全知視点>
「バトル・ルーレットッ! 特別ルールの五番勝負! 司会は私、ギドゥーが担当致します!! それでは、早速ルーレット行ってみよう!!」
タキシードを着た司会のギドゥーが口上を延べ終えるとルーレットが回り出した。
「今回のイベントはこちら!! チャレンジャーには毒の状態異常を付与した状態で戦闘を行って頂きます! それでは、バトル開始!!」
戦闘開始の瞬間に春海は毒状態に陥る。戦闘を長引かせれば不利になると思った春海は「武器匠の天恵」で「ベレッタM1934」を創り出すとフィーロに弾丸を放った。
「束ネ貫ク絲ノ槍・超過シテ燃エル絲」
フィーロのオリジナル糸魔法を発動し、糸を束ねた槍を創り出す。その上から武装闘気を纏わせた。
更に、糸を焼き尽くすことなく糸に炎を付与する魔法「超過シテ燃エル絲」で糸に炎を灯し、槍を思いっきり春海への放った。
フィーロはここまで『万物切断千変万化-レットドラゴーンプラティナクロース-』の【自動設置】と【武装透明化】を使った戦法を使っていた。
ドリームバトルトーナメントでは無属性因果干渉系魔法の「運命操作の赤い糸」を完成させていたが、同じ糸使いのスピネルはフィーロと同じ『万物切断千変万化-レットドラゴーンプラティナクロース-』を一斉に動かす「殺糸戯曲」に加え、新しく圓に作ってもらった『瞬間転針-マーキング・ピン・ニードル-』のスキル【時空転移】と糸を組み合わせた多彩かつ変幻自在な攻撃、影属性と糸属性を組み合わせた影糸魔法と呼ばれる一連の魔法群の開発とフィーロとの差別化を図って自分なりの方法で戦法を増やしている。
特に、影魔法で影の中に身を隠しつつ無数の影を糸のように細くして操って敵を貫き、上手く躱されてもその影の糸に通した『瞬間転針-マーキング・ピン・ニードル-』を使って敵の至近距離から攻撃を仕掛けることができる「影糸鬼没」は圓から伝え聞いたウンブラの戦闘スタイルからも着想を得ており、かなりの高レベルに仕上がっている。
フィーロも同じ糸使いとしてスピネルに負けたくないと思っているところがあった。
今回バトル・アイランドの一角であるバトル・ルーレットの勝利の女神に任命されることが決まると、施設長に相応しい存在になるべく行われた特訓の際に圓の協力を得て新たな魔法を開発――その魔法が「束ネ貫ク絲ノ槍」や「超過シテ燃エル絲」を含むフィーロのオリジナル糸魔法群である。
春海は攻撃を躱すが、その瞬間に糸に触れたものを凍結させるフィーロのオリジナルの氷属性と糸属性の複合魔法「凍テツク白絲」が付与された指先から弾丸状の糸を発射するフィーロのオリジナル糸魔法「連射スル絲銃」によって生成された武装闘気を纏った糸弾が春海に襲い掛かる。
躱し切れずに次々と着弾してダメージを負うも満身創痍ながら消滅には至らなかった……が、状態異常の毒がダメ押しとなり、春海は無数のポリゴンとなって消滅した。
◆
「バトル・ルーレットッ! 特別ルールの五番勝負! 先鋒の春海嬢が敗北し、次鋒は火憐嬢です! それでは、早速ルーレット行ってみよう!!」
タキシードを着た司会のギドゥーが口上を延べ終えるとルーレットが回り出した。
「今回のイベントはこちら!! 吹雪マーク! バトルフィールドが吹雪に包まれます!! それでは、バトル開始!!」
戦闘開始の瞬間にフィールドが吹雪に包まれる。
「青焔鳳」
「飛翔の天恵(モデル:鳳凰)」の効果で青と橙が混ざったような特殊な焔を纏い、鳳凰へと変化した火憐が突撃攻撃を仕掛ける。
「人形活劇ノ衣装」
糸によって衣装を編み込んで自身に装備することによって通常よりもパワーや防御力を発揮することができるようになるというフィーロのオリジナル糸魔法を使用して身体能力を強制的に高めたフィーロが指先から一本ずつ糸を出して武装闘気を纏わせるとそのまま引っ掻くように手を振るい、相手を切り裂いた。
「五色ノ絲」
炎の鳥――鳳凰となっていた火憐だが、武装闘気によって本体を捕らえられ、五本の糸をほぼ無防備の状態でその身に受けた。
素早く「再生の炎」を回復に回す……が、ここで火憐が防戦に回ったのは悪手だった。
「束ネ貫ク絲ノ槍・凍テツク白絲」
束ねられた糸で作られた槍を次々とフィーロは火憐に向かって放つ。
回避もできないまま次々と槍に貫かれ、ダメージを負いながら「凍テツク白絲」で少しずつ凍結させられていく。そこに、フィールドを支配する吹雪が追い討ちを掛ける。
「再生の炎」は燃えていなければ効果を発揮しない。炎をほとんど凍らせられてしまった火憐に勝ち目など無かった。
「天ヨリ降ル無慈悲ノ絲」
空歩を駆使して火憐の上空に陣取ったフィーロが下に向かって指先から次々と糸を発射し、火憐を無数の糸で貫いてポリゴン化させた。
◆
「バトル・ルーレットッ! 特別ルールの五番勝負! 次鋒の火憐嬢が敗北し、中堅は美結嬢です! それでは、早速ルーレット行ってみよう!!」
タキシードを着た司会のギドゥーが口上を延べ終えるとルーレットが回り出した。
「今回のイベントはこちら!! 味方上昇マーク! 美結嬢の全ステータスが二段階上昇した状態でバトルとなります!! それでは、バトル開始!!」
一度目のルーレットも二度目のルーレットも春海と火憐の不利に働いた。
しかし、三度目のルーレットは美結のみに追い風になるもの――これ以上にない絶好の出目だ。逆にここで勝てなければ、自分がまだまだということが証明されるのである。
黒の使徒で幹部『烏羽四賢』の一人として選ばれていた絹紐美結は黒の使徒の中で最も魔法少女歴が長い。
先輩として、幹部を任せられている身として爪痕を残せずに敗北するなど許されることでは無かった。
……まあ、黒の使徒のリーダーである黒華は同格扱いの施設長に手も足も出ずに敗北したのだが。
「絹紐の大砲――究極の一射!!」
戦闘開始早々、美結は魔法で作り出したリボンを束ね、単体攻撃の威力としては最大規模を誇る大口径――「絹紐の大砲」を生み出すと、フィーロに向けて引き金を引く。
「守護スル壁絲」
地面から出した糸を分厚く束ねて盾とするフィーロのオリジナル糸魔法がフィーロを美結の攻撃から守った。
武装闘気とはいえあれほどの攻撃を防ぐとは思っていなかった美結は火力だけでは勝てないと判断――瞬時に戦法を切り替える。
「絹紐の小銃! ――銃弾の乱嵐」
十丁、百丁、千丁――リボンから次々と作り出したマスケット銃を空中に配置し、弾丸の雨を降らせる。
威力ではなく物量で攻めることにした美結だが、雨垂れ石を穿つといっても武装闘気に完全に守られている「守護スル壁絲」に僅かな傷でもつけることができなければ、その攻撃は無意味と言わざるを得ない。
一足す一を永遠し続ければいつかは十にも百にも千にもなるが、ゼロにゼロを足し続けても数が増えていかないように、今の美結の攻撃はフィーロにはいつまで経っても届かない。
しかし、フィーロに面倒臭さを感じさせるのには十分な戦法だった。
現在は実質の防戦一方である。フィーロが攻撃をしなければ戦闘は膠着状態に陥っていつまで経っても終わらなくなる。
しかし、もしここでフィーロが出ていけば「守護スル壁絲」で攻撃から身を守っている意味が無くなってしまう。
武装闘気であれば「絹紐の小銃」の攻撃は防げる。
「絹紐の大砲の「究極の一射」は無理かもしれないが、無理なら無理で無属性因果干渉系魔法の「運命操作の赤い糸」を使って攻撃を当たらないようにすればいい。
「影武者ノ絲人形」
だが、それはあくまで自分が出向く場合に限る。
フィーロが使ったのは糸を使って自分の影武者を作り出すフィーロのオリジナル糸魔法だ。
本体と同じ糸魔法が使えるが、本体よりも威力が落ちるという制約を抱えているものの、単純に人数が増えるのはそのまま手数が増えることを意味し、この魔法の効果は絶大である。
本体を守っておいて、「影武者ノ絲人形」で作り出した分身達に攻撃を任せる――そうすれば、自分の身を危険に晒すこともなく戦うことが可能だ。
それに、仮に糸の影武者が破壊されても新たに作り出せば簡単に戦力を補填できる。フィーロにとってはローリスク・ハイリターンな魔法である。
武装闘気を纏ったフィーロの影武者達が一斉に攻撃を仕掛ける。
「絹紐の小銃! ――銃弾の乱嵐」
美結は無数のマスケット銃で応戦するも、武装闘気を纏ったフィーロの影武者達に攻撃は通じない。
「回転スル舞台」
次の瞬間、美結の視線は天井に向いていた。先ほどまでフィーロの影武者達に視線を向けていた筈なのに。
指で床に触れ、血が出た。どうやら糸が張り巡らせてあるようだ。
「回転スル舞台」は自身の足元から蜘蛛の巣状に糸を展開させて、自身を中心に半径約十メートルの地面を回すことによって敵を転倒させるフィーロのオリジナル糸魔法である。
――その魔法で美結は転倒させられたのだ。
目の前には五人のフィーロの影武者達――リボンを生み出して応戦することもできるが、それでも影武者一人でも道連れにすることが不可能なのは美結も承知していた。
「……やるなら、一思いに……やってよね」
コクっと頷いたフィーロの影武者の一体が「束ネ貫ク絲ノ槍」に金属の糸を創り出すフィーロのオリジナルの金属性と糸属性の複合魔法「銀光ノ白絲」を融合させた銀色の槍を作り出し、人間体であれば美結の心臓がある部分を刺し貫いた。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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