Act.8-365 ブライトネス王国大戦・祝勝会 scene.1 上
<一人称視点・リーリエ>
昼からの祝賀会の参加者は午前の戦功発表式のメンバーに加え、各国高官など……具体的に言うと、ビアンカ=ブライトネス王太后、正妃カルナ=ブライトネス、ルクシア=ブライトネス第二王子、フレイ=ライツァファー公爵令嬢、統括侍女ノクト=エスハイム、王子宮筆頭侍女アルマ=ファンデッド、第二王子専属侍女クレマンス、後宮筆頭侍女シエル=ホワイトリェル、離宮筆頭侍女ニーフェ=ホーリンク、宰相アーネスト=アクアマリン伯爵、ミランダ=アクアマリン伯爵夫人、ニルヴァス=アクアマリン伯爵令息、ルーネス=フォルトナ第一王子、サレム=フォルトナ第二王子、アインス=フォルトナ第三王子、正妃イリス=フォルトナ、側妃シヘラザード=フォルトナ、宰相アルマン=フロンサック公爵、大臣ハイン=ヴォン=ヴェルデヴォロ=ダ=ド=ワンド、政司長ヴィアベル=ノティラス、クラウディア=ラングリス女王、エリザヴェータ=ラングリス王太后、ジェーオ=フォルノア、ラーナ=フォーワルト、アザレア=ニーハイム、アゼリア=ニーハイム、アンクワール=ゼルベード、モレッティ=レイドリアスといった面々が集結している。
今日は普段の慰労会も兼ねているので、各国首脳部はそれぞれの国始まって以来の政のお休みの日ということになる。……まあ、何かあればこの場がすぐに作戦本部に変わるだけだからねぇ。
「……ソフィス嬢、そういう抜け駆けは許せませんよ」
「ルーネス殿下、サレム殿下、アインス殿下は王族ですわ。万が一その身に危険があれば大変です。しかし、私は一介の貴族令嬢です。責任が軽い分フットワーク軽く動くことができただけですわ。大変ですわね、王族は」
「……それを言うなら、ラインヴェルド陛下や父上はどうなるのかというお話ですが。正直なところ今回の園遊会で武勲を挙げてしまおうという作戦は盲点でした。圓様の隣に立ち戦いたいというのであれば何らの形で実績を作っておくべきでしたね。……手っ取り早いのは時空騎士になることですが……」
勝ち誇ったソフィスと、失敗したと悔しがるルーネスとアインス、そして冷静に計算を始めるサレム……とりあえず、助け舟を出したいところだけど。
「貴様、いい度胸だな」
ボクの首に剣の鋒を向けているシューベルトをどうにかしないとねぇ。
裏の武装闘気で剣を創り上げて覇王の霸気を纏わせる。思いっきりシューベルトの剣目掛けて薙ぎ払いを放った。
黒い稲妻が迸り、会場が軋むような音を立てる……まあ、バトル・シャトーはこの程度の霸気で壊れるような柔な作りはしていないけど。
「圓様!」
「アルベルト様、下がってください。……死にますよ」
触れ合わない剣――この均衡を崩すために求道の霸気に切り替える。拮抗が崩れてシューベルトが一瞬見せた隙を狙い、床を蹴って加速――顎に向かって蹴り上げを放ち、空中に飛んだところを空歩を使って上空に舞い上がり、踵落としで床へと落下させる。武装闘気と覇王の霸気を事前に床に纏わせておいたおかげで床にヒビが入ることはなく、シューベルトは硬い床に打ち付けられた。
「「アハハ! 超ウケるんだけど」」
その光景をラインヴェルドとオルパタータダが手を叩いて笑い、二人揃ってレジーナに杖の先で頭をボコボコに殴られた。仲良く談笑していたカルナ、イリス、シヘラザードは性格の悪さを露呈させた二人を黙らせたレジーナに頭を下げて感謝の意を評し、ビアンカは当然よねという顔でお茶を飲んでいる。
ちなみに、今回の祝賀会は予定通り、ボクが全ての食事を用意した。軽食類も多数、紅茶から緑茶、抹茶、烏龍茶、珈琲、酒類、ジュース類に至るまで幅広く用意している。
……園遊会ほどではないにしろ、まあまあ満足して頂けているようだねぇ。
「それはあまりにも謙遜が過ぎるんじゃないかしら?」
「ビアンカ様の仰る通りだと思うわ……明らかに園遊会よりも充実しているわよ。しかも、こちらの方が美味しいと思うわ」
「……それ、もし仮に本心だったとしても絶対に王宮の料理人達に言ってはダメですよ」
まあ、カルナはそういうことを言うタイプではないと思うけどねぇ。……ラインヴェルドとかは遠慮なく言いそうだけど。
「……おい……貴様……」
「あっ、意識回復したんだ。……というかさぁ、シューベルト。君って一応総隊長だよねぇ? 指揮官である筈の君が命令を聞けないって他に示しがつかないんじゃないの? ボクはメアレイズ閣下に全権を委任した。そのメアレイズ閣下が采配を振った。それなのに、君は何をした? 命令違反に職務放棄……まあ、一応天使討伐したから二級戦功を贈ったけどさぁ、ギルデロイと同じで仕方なくって意味が強いんだよ?」
「俺だって天使の討伐に貢献していた!」
「……寧ろ、足引っ張っている場面の方が多かったけど? とにかく、ギルデロイはおまけのおまけで二級戦功だし、シューベルトも違反で命令違反で取り消したかったけどおまけのおまけで二級戦功。……というかさぁ、お前らよりソフィスさんの方が天使の討伐数が多いって恥ずかしくないの? ……いや、予想以上に強くなっててボクもびっくりしたんだけど、シューベルト、君は総隊長だし、ギルデロイ、君は自称未来の『剣聖』なんでしょう? ラインヴェルドとかオルパタータダ流に言えばお前が『剣聖』とかクソウケるんだけど! って言いたくなるよ。……ボクを妾にしてやるとかいってたけどさ? ……お前みたいなクソ雑魚の嫁になるかよ、この雑魚がッ!」
「……くっ……悔しいが反論できない!」
「自業自得じゃな。……まあ、『剣聖』がどうのこうのというのももう関係ない話じゃがな。……儂は一から鍛え直すつもりじゃ。『剣聖』と呼ばれて儂も天狗になっているところがあった。その慢心を抱いたままでは強くなれぬからな」
「……まあ、ミリアムさんに関してはあんまり慢心ってことはないと思うけどねぇ。……本来、称号っていうものは実力がつけば後からついてくるものなんだけど、逆転の発想で将棋みたいにタイトルにしてみたら面白いと思うんだよねぇ。正直、ダラスさんも『剣聖』って呼ばれていて紛らわしいところもあると思っていたし」
「おっ、面白そうな話だな! 具体的にはどうするつもりだ?」
「そうだねぇ……ざっと考えてみたんだけど、剣帝、剣聖、剣座、剣鬼、勇剣、剣将、叡剣、黎剣……この八つはどうかな? ミリアムさんは剣聖、ダラスさんは剣鬼のタイトルを持っておいてもらって、この二つは防衛戦。残りは、準優勝者同士で戦ってもらって、勝利した人がタイトルホルダーになるって感じでいいと思うんだけど。時期もズラして条件とかも変えて……毎年開催して、何度か防衛に成功したら永世称号を獲得できるとかねぇ。こういうのあったら剣士のモチベーションも上がるんじゃないかな? ……個人的にはバトル・アイランドというものを考えていたんだけど、こういうのも面白そうだよねぇ」
「バトル・アイランド? そいつは初耳だがクソ面白そうな響きだな!」
「オルパタータダ陛下は気に入ってくれると思っていたよ。このバトル・シャトーのある島を開発して大々的に複合バトル施設として売り出そうと思ってねぇ。何種類か計画している段階だったんだ。このバトル・シャトーが今後同盟貴族制の根幹を担う施設になるから、バトル・シャトーに来た人達をターゲットにした施設を作って盛り上げようかと思ってねぇ。まあ、次いで利益が上げれば良いんだけど」
まあ、普通の商人なら利益がメインなんだろうけど、ボクの場合は多少赤字になっても収支合わせて黒字になれば問題ないからねぇ……最悪の場合は持ち出しも可能なんだけど、それはなるべく最終手段にしたいなぁ、と思っているよ。
「それよりも差し迫った件があるねぇ。同盟貴族制を導入するにあたり、まずはそれぞれの爵位を設定しないといけない。そこで不公平が起きるといけないし、明日からしばらく全時空騎士と時空騎士候補で総当たり戦を行いたいと思っている。ここにいるメンバー以外だと、真白雪菜、刻曜黒華、咲良坂桃花、炎谷篝火、絹紐美結、菱川小筆、ルイーズ・ヘルメス=トリスメギストス、松枝雫、宵霧綾夏、十六夜天音、阿良川燕、木虎春海、碓氷美姫、朱雀大路火憐、今泉玲華、興梠瑞穂、ガネット、それから宙乃と時乃が参戦することになるねぇ。……個人的にはギルデロイは時空騎士候補になれるほどの実力はないと思うんだけど、まあ、ヴァルドーナ=ルテルヴェ市国から一人も出さない訳にはいかないからねぇ。まあ、ボクも見立てだと同盟男爵が限界じゃない?」
ちなみに、興梠瑞穂は例の手術の対価としてビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局に入って白夜に絞られることになった。まあ、頑張ってねぇーってところだねぇ。
甘蔗林結城は戦禍と離れたところで暮らしたいということでパティシエを始めることにしたらしい。
勿論、ビオラから融資をさせてもらうことになったよ。
他のメンバーは自らの意思で時空騎士になる申し出を受けた。ちなみに天恵の巫女組で依頼された結城の家族、天音の家族、春海のメイド、美姫の妹については明日以降のところで『管理者権限』に残されているデータをアクティベートして呼び寄せようと思っている。
既に住居等の用意は終えているし、問題はない。
「総当たり戦か! クソ楽しくなりそうだな!」
「それに伴い、文官勢の皆様には主要メンバー不在で……いえ、いつも通りですねぇ」
「……ミスルトウ殿やメアレイズ殿……文官組もかなり優秀な人員減ってしまうのだが」
「まあ、そこはボクも協力しますから。さて……本日はブライトネス王国王都の防衛に成功した祝勝会です! 演奏会等様々催し物を用意していますから是非最後まで楽しんでください」
会場の給仕をビオラ商会合同会社の使用人派遣部門(割と最近設立した部門で読んで字の如く使用人を派遣する部門。例の大粛清の少し前に作った領地経営コンサルタント部門と共に急速に需要が高まっている)所属の執事や侍女達にこの場を任せ、ボクは演奏会を始めるための準備に向かった。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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