Act.8-356 園遊会の終わりと戦後処理。 scene.8
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>
「ちょっと待ちなさいよ! 悪役令嬢ローザ=ラピスラズリって貴女のことじゃない!」
「……どういうことでしょうか? それだと、ローザ様がお二人いらっしゃるということに」
「あれ? アルベルト様には説明していなかったっけ?」
ということで、エルヴィーラにこの世界の真実とボクの前世に関する話をした。勿論、今回はしっかりとローザが二人いる根拠――先代ラピスラズリ公爵が生きた世界線についても述べる。
「……頭がこんがらがって来たわ。つまり、本来、貴女はこの世に生まれて来る筈が無かった。既に神となった悪役令嬢ローザが居て、この世界に彼女が不在だから誰も生まれて来ない筈だったけど、ハーモナイアという女神が残っていたもう一つの貴女のデータ? というものを利用して転生させたのが今の貴女……ってことでいいのね?」
「うん、まあ、そんな感じ。で、君もよく知っている悪役令嬢ローザは、主人公が転生者で魔王も違うなら消去法で『スターチス・レコード』の管理者権限を持つ神だと推測できる。ただ、ここまで全く仕掛けてきている気配がないし、大体ローザが二人いたら大変なことになるでしょう? だから、危険を冒さず面倒ごとも起こさずに管理者権限を手に入れるために、ボクなら上手く主人公を誘導してボクと敵対させて、その上で管理者権限を手に入れるって作戦を実行する。……成功率は低そうだけど。転生者じゃないパターンでも悪役令嬢とヒロインは敵対するものだし、私ヒロインに転生したから前世の記憶を使って幸せになって当然よねという頭の中お花畑も簡単に御せる。リスク少なくリターン大きいからとりあえず一度は試してみるのが普通じゃないかな? ただ、そう考えるとエルヴィーラを助けた理由が分からない。そもそも、エルヴィーラがバルトロメオ王弟殿下ルートで王弟暗殺を目論んで実行するものの失敗して殺されるっていうのって容量が足りなくて没になったルートの話だし」
「……私ってもしあのままだったら暗殺に失敗して殺されちゃっていたの?」
「まあ、実際はそうならないみたいだからいいじゃない、終わったことだよ。……ところで、マリエッタについて他に何か知っていることはない? ほんのちょっと、これ役に立たないかもしれないってものでもいいから」
「……マリエッタは、『あたしがヒロインだからみんなを幸せにしなければならないって言っていたわ。その上であたしも幸せになるようにする』って……今考えると、あたしを助けたのもその一環だったんじゃないかしら? あたしはもしあのままだったら王弟殿下の暗殺のために利用されて処刑されていたのよね」
「……嫌いだねぇ、そのみんなが幸せにって思想。そりゃ、みんなが幸せになるのが一番かもしれないけど、じゃあみんなって誰さ。……まあ、結果論としてエルヴィーラが救われたのは良いことだとして……それって結局、自分が幸せになることを肯定して欲しい、そのために協力してもらえる人を集めたいって思惑があるんじゃないの? 彼女の予知が怖いって思ったんでしょう? そりゃ、予知を無視すれば辺境に戻されるなんて脅されたら怖くなるのも気持ちは分かるよ。……ただ、問題はエルヴィーラみたいな仲間を作っておいて何を成し遂げようとしたか、つまりマリエッタの幸が一体なんなのかって話だよねぇ」
「……私もその話をマリエッタに聞いたのよ」
「えっ……聞いたの?」
……凄いクソ度胸だ。普通、聞けないでしょ? エルヴィーラのこと、見縊り過ぎていたなぁ。
「マリエッタは、それはそれは嬉しそうに話してくれたわ。家族関係で一歩引いたりしちゃう暮らしをしょうがないって受け入れているのに、どこかで抜け出したいって願っている系男子で、あの陰のある表情とかも好みにぴったりなんだって。……『彼を助け出せるのは、自由にしてあげられるのはあたしだけ』って言っていだわ」
「――よっしゃー!」
「ちくしょぉぉ〜〜!!」
「ローザ様なんでこっちを見て嬉しそうにガッツポーズしているんですか! それに、何故ここに陛下が!?」
「ラインヴェルド陛下!? 陛下がどうしてここに?」
「……近衛の詰所に隠し通路は無かった筈だけど……どっから湧いて来やがった?」
「おいおい、親友。俺を蜚蠊か何かみたいに言いやがって。……ノクトからお前がアルベルトと一緒にエルヴィーラに話を聞きに行くって言うからこれはクソ面白そうだ! 絶対に見逃せないッ! って、書類仕事放り出して来てみたらシモンとエアハルトに止められてさ……二人を振り切るの大変だったぜ。気絶させた方が良かったかもしれないな」
「……近衛の隊長と副隊長を気絶させるとかアウトでしょ。ってか、仕事しろ仕事を。アーネスト宰相閣下の胃がまたキリキリいっているぞ」
「最近はニルヴァスも宰相の仕事を手伝いに来ているし、二人揃って胃をキリキリさせているんじゃね?」
「もっと被害増えてるじゃねぇか、ド阿呆!」
「ってか、俺頑張ったんだよ? 止めようとする文官数人を吹き飛ばして、俊身と空歩駆使して廊下爆走して、シモンとエアハルトを振り切って……なのに、なんでマリエッタがアルベルトのことをロックオンしているって話を聞かされなきゃいけねぇんだよ!! ちくしょー!! ローザとアルベルトをくっつけて、ローザをプリムラの義姉にすることで確かな関係を構築して、マリエッタとヘンリーを婚約させて、ヘンリーに跡を継がせてオルパタータダと一緒にレジーナ巻き込んで冒険者活動を再開して毎日クソ面白く暮らすっていう俺の未来設計がァ!!」
全く、五月蠅いなぁ、ファンマンが乗り移っているのか?
ってか、ここにアルベルトもいるんだよ? それ話しちゃ拙くない?
「どういうことでしょうか? 陛下?」
「俺個人はアルベルトとローザの恋を応援していたが、別にお前のためって訳じゃ無かったってことだ。いや、語弊があるなぁ、お前の恋心が報われることも確かに応援していたぞ? でも、やっぱり一番はプリムラだ。プリムラはローザのことを母親のように慕っている……ただ、ローザはシェルロッタに王女宮筆頭侍女の座を明け渡そうとしている、そして、そのままプリムラが結婚する際についている侍女にシェルロッタが任命されるように仕向けるつもりなんだ。……アルベルトはそもそもなんでローザが傲慢令嬢って呼ばれるようになったのか知っているか?」
「……公爵家からメイドを一人連れて来たことが原因だと聞いています。行儀見習いに自分のメイドを連れてくるなど前代未聞、私も恥ずかしながら最初はローザ様のことを誤解していました。……あのシェルロッタという侍女は一体何者なのですか?」
「シェルロッタの正体はプリムラの母――メリエーナの弟、つまり、プリムラの叔父に当たる人だ。随分前に馬車の事故で死んだってことになっているが、実際のところはメリエーナを特殊な毒で暗殺した暗殺者を王宮内な手引きした正妃シャルロッテを暗殺し、ラウムサルト公爵家を一族郎党皆殺しにして、国家に憂いを与えたことを理由にラピスラズリ公爵によって抹殺された……ってことになっている。実際はコイツがこっそり死体回収して蘇生させてシェルロッタに生まれ変わらせたんだけどなぁ。メリエーナの弟のカルロスは姉のことが大好きな子だった。まあ、俺は最愛の姉を奪った挙句、その姉を守れなかった最低最悪の男ってことになる……それでもあいつは国家のために心を殺してその手を血に染めてきた。ローザはカルロスが報われないことが許せなくて、生きる理由だった復讐を果たし、姉の後を追って命を絶とうとしたカルロスを生かし、姉の忘れ形見の世話をさせるという生きる理由を与えたんだろう。プリムラはメリエーナの代わりにはなれない。でも、シェルロッタはプリムラと共に生きることで心の隙間を少しでも埋められるかもしれない。……これはシェルロッタへの罰でもあり、同時に救済でもあったんじゃないかと思う。違うか?」
「まあ、そんなご大層なものじゃないよ。メリエーナ様の件は守れなかった陛下が全面的に悪い。どんな手を尽くしても大切なものは守れよ、と言いたいし、ボクだったら絶対に殺させない。そのためなら命くらい捨てる覚悟だよ。……でも、プリムラには責任がない。生まれた時には母親はいなくて、母の愛無くして育った。……父親はこの通り賢い癖に娘相手だと溺愛することしかできないクソダメ親父になるし……マリエッタの言っていたデブスな傲慢王女っていうのはありえた未来の一つ。母の愛を知らず、父の溺愛は将来嫁がせるためだからと考え、誰にも愛されない孤独、そのストレスから過食に走ったもう一つの可能性。幸い、先代の王女宮筆頭侍女様が彼女を孤独にしなかったから、罰せられるのを覚悟の上で諫言をしたからこそ、今のプリムラ様がいる。正直、ボクは美味しいとこ取りをしただけだと思っているよ。……というか、アルベルトの件も、ボクの件も全て計算尽くで、そうなるように仕向けているよねぇ? いい加減さぁ、本心を言ったらどうなの?」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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