Act.8-349 園遊会の終わりと戦後処理。 scene.1
<一人称視点・リーリエ>
ボクの身代わりをしてくれているペルちゃんとの交代は三千世界の烏を殺して戻ってからやるとして、まずはバトル・シャトーに転移して戦後処理を終えることにした。
具体的には、ルイーズ、黒の使徒達、天恵の巫女達――今回の戦争に敵として参加し、生き残った者達の意向を聞くための場を設けるということだねぇ。
参加者はルイーズ、真白雪菜、刻曜黒華、『烏羽四賢』の咲良坂桃花、炎谷篝火、絹紐美結、菱川小筆、甘蔗林結城、松枝雫、宵霧綾夏、十六夜天音、阿良川燕、木虎春海、碓氷美姫、朱雀大路火憐、今泉玲華、興梠瑞穂の十七人、ちなみに、他の黒の使徒のメンバーに対しては黒華と『烏羽四賢』に一人一人今後の方針の確認をとってもらうことになる。……流石に全員に一人ずつ確認とっていると大変だからねぇ。
それに加えて美青木汀にも参加してもらっている。魔法の国絡みのことで意見を聞きたいからねぇ。
全員分の紅茶とお茶菓子のケーキを用意する。……さてと、どういう順番で聞いていこうかな? ……よし。
「まずは、ルイーズさん。『這い寄る混沌の蛇』を裏切ってこっち側に来てくれるってことみたいだけど、これについては相違ない?」
「レナードからはゴーレム研究のために必要なものを全て用意してくれると聞いているわ。夜な夜な人体実験をするようなことさえなければ、それ以外の条件はないって」
「まあ、勝手に約束されたけどゴーレム研究のために必要なものは全てこっちで用意させてもらうよ。ただ、一つ条件っていうのを忘れているねぇ。ボクは来るもの拒まず、去るもの追わずだけど、敵対するなら徹底的に潰す。もし、『這い寄る混沌の蛇』にも引き続き加入し続けてどっちが勝っても旨みを得たいとか考えているなら、正直やめた方がいいよ。要するに、敵にさえ回らなければ、別にボクのために働けとか言わないし、それこそ好きにしてくれたって構わない。ということで、『這い寄る混沌の蛇』を裏切ってくれるなら大歓迎、ゴーレム研究のために必要なものを用意させてもらうよ。ただ、流石に無償でっていうのは虫が良過ぎる話だからねぇ。まあ、何らのお仕事は頼むと思うけど……君が嫌いだという集団行動や組織に縛るってことはないから安心して。あっても、ボクが直属の上司になるってだけだから複雑な対人関係は要求しない。以上、何か質問は?」
「特に無いわ。今のところ、貴女が私に求めていることはないということでしょう? それを今から考えていくってことはよく分かったわ。私は今日、現時点をもって『這い寄る混沌の蛇』と手を切る。これで良いかしら?」
これでルイーズは『這い寄る混沌の蛇』と手を切った。具体的に彼女に何をしてもらうかはこれから決めることになるねぇ。……ピアノが得意なのだそうだから、そっち方面か、後はゴーレム関係か。
ネストの戦闘使用人……にはちょっと厳しそうだしねぇ。
「次に結城さん、雫さん、綾夏さん、天音さん、燕さん、春海さん、美姫さん、火憐さん、玲華さん、瑞穂さん。まず、慣れない世界に来て困惑していると思うけど……ある意味、異世界に召喚されたみたいなことだからねぇ。ただ、君達の暮らしていた世界は今のところはどこなのか不明。ボクの予測通りなら存在しないってことになるのだけど」
「……それは、どういうことかな? 私には綾夏と共にこことは別の世界で暮らしていた記憶がある。それがまやかしだとでも言いたいのかな?」
「まあ、雫さんの認識に間違いはないんだけどねぇ……雫さん達は勿論信じられない話だと思うけど、一応、この世界は三十のゲーム……物語が融合した世界ということになる。結城さん達も、雪菜さんも、黒華さん達も元々はそのゲームの登場人物だった。……黒華さん、そうだよねぇ?」
「えぇ、私はそう自覚しているわ。私は『魔法少女暗躍記録〜白い少女と黒の使徒達〜』に登場した悪役の一人……ってことになるのかしら? Queen of Heartを倒し、魔法の国を支配してその技術を独占しようとして、雪菜さんに倒される悪役。……雪菜さんは覚えてないと思うのだけど、貴女は『魔法の国を支配してその技術を独占する』という野望を抱いて魔法の国を支配しようとしていた私に、それが間違っていると真正面から突きつけ、『魔法少女達が地球の一般人達とも手を取り合える世界を創り上げよう』という彼女自身の願いを叶えるために手助けをして欲しいと手を差し伸べてくれた、私にとっては恩人なのよ。……魔法の国のために……いえ、Queen of Heart自身の欲望のために私達を犠牲にしようとしていた、私はその運命から逃れたいと思っていた。そのために、黒の使徒を立ち上げた。……でも、次第に支配者に回ることの方が目的になってしまった。雪菜さんの言葉は理想でしかないとかつての私は思っていた。そんなことは絶対に成し遂げられないと。でも、その願いが叶えられると微塵も疑わないで真っ直ぐに進む貴女がとても眩しく見えたし、貴女が私に手を差し伸べてくれた時にとても嬉しかったの。……ごめんなさい、私は本当の目的を内緒にして来たわ。内緒にして貴女達を利用してきた」
「……まあ、Queen of Heartを撃破するっていう点に関しては間違っていないんだけどねぇ。問題は、その後――結局、権力目当てに、甘い汁を吸いたいがために黒の使徒に入った連中もいる。もし、それを望むなら止めはしない……どうぞ、Queen of Heartの討伐レースに参加するといい。ただ、さっきも言ったように敵になる以上は容赦しない……邪魔するなら殺すよ」
「……私は黒華さんについて行くと決めてここまでついて来たんだから、最後までお供するわ」
「全く、水臭いわね。……だったらそれを早く言いなさいよ。まあ、ちょっとは魔法の国の技術を手に入れて天下取りたいなって欲望はあったわよ。でも、それを黒華様は望んでいないんでしょう。……全く、仕方ないわね」
「元々、私はQueen of Heartを倒すために黒の使徒に入ったわ。その後の支配なんて正直興味が無かった。支配するなら支配する、しないならしない、どっちでも正直構わないわ」
「私も美結さんと同じです。……まあ、黒華さんだから付いてきたということもありますし、黒華さんがそれが良いなら従います」
「決まりだねぇ。ただ、黒の使徒の中には魔法の国の技術によって得られる権力を狙って黒の使徒に入った者達もいると思うから、ちゃんと説明した上で、彼女達にはしっかりと選択をしてもらうように。……まあ、Queen of Heartも重要だけど、ボクは他に警戒した方がいい相手がいると思っている。汀さん、貴女の元上司について説明してあげて」
「はいはーい! ここからは汀ちゃんが説明しちゃうよ! ……まあ、上司と言ってもあたしもあの人の考えには賛同できなかったんだけどねー。彼女の目的はこの世から全ての可哀想を消し去ること、そのために彼女は自分の魔法を魔法の国の『魔法増幅装置』を使って増福させ、生物の存在しない原始海洋まで世界を巻き戻すつもりみたい。彼女の固有魔法は『願いを叶える魔法の札』という恐ろしいほど強力なものだけど、その範囲は限られている。だけど、もしその力を増幅されてしまったら」
「……恐ろしいことになってしまうわね」
「問題は本人が全く悪意があってやっているという訳ではないことだねぇ。……心の底からあらゆる可哀想なことを憎んでいる。富む人がいれば貧する人がいる、食べる人がいれば食べられる人がいる、素敵な出会いがあれば悲しい別れがある……その必然的に生まれる格差、逃れられない『可哀想なもの』から全てを解放して、『みんなのほんとうの幸』を実現しようとしている。……肉食を嫌い、液体や野菜を好んで食べているみたいだし、その考えはかなり根深いものであることは間違いないだろうねぇ。いずれにしても、彼女に君達の狙っている『魔法増幅装置』が奪われたらゲームオーバー、本当に世界が終わってしまう。それだけは絶対に避けなければならない」
「……それは、確かにそうね。ナユタ≠カナタの目的は分かったわ。でも、まだ貴女の目的を聞いていない。『魔法増幅装置』、具体的に貴女はそれを手に入れて何をするつもりなの?」
「……とりあえず、どういうシステムか把握してから『 E・M・A・S』の機構に組み込めたら戦力増強に繋がるかな? 程度には思っているけどそれだけだよ。その力で何かを成し遂げたい訳じゃないし、魔法の国の支配も目的にはしていない……ただ、Queen of Heartを倒したら誰かが自治やってくれないと国として破綻しちゃうし、その辺りはまた考えていかないといけないけどねぇ。一番は、黒華さんに国の統治をお願いすることだけど、まあ、それはおいおいねぇ」
「……まだQueen of Heartを倒した訳ではないからその後のことを考えても仕方ないわね。……正直、貴女に『魔法増幅装置』が渡るのが一番平和そうだわ」
「まあ、戦力増強って言っちゃっている時点で物騒なんだけど、世の中物騒だしねぇ。『管理者権限』を巡る戦いが終わるまでは戦力増強は欠かせないよ。……さて、予定が狂ったけど結城さん達の話に戻るねぇ。君達は確かにゲームの世界の住人だけど、君達が暮らしていた世界は極めてゲームを作ったボク達の世界に近いものだった。一方、この世界はファンタジー寄りで『スターチス・レコード』の影響が極めて強い。局所的にシャマシュの力が加わっているところ、ルヴェリオス帝国のような別世界観の世界がそのままくっついているもの、ペドレリーア大陸のようなゲームの世界が丸々新大陸となったもの、そういうものもあるのだけど、それとは別のパターン……それこそ、その世界の主要な住民だけをこの世界に送り込んだというパターンもあると思う。黒華さんだって、経験があるんじゃない?」
「えぇ、こちらの世界にあるのは魔法の国だけで私の故郷だった地球という星はこのユーニファイドには取り込まれなかったみたいだわ。それが、天恵の巫女達にも同じことが言えるんじゃないかしら?」
「……つまり、それって元の世界には戻れないということですよね?」
「戻れないというか……元の世界がゲームを基に異世界として構築された際に排除されてしまったというか、そもそも存在しないというか。こればかりは申し訳ないけどどうしようもないんだよねぇ。そもそも、この世界って誰かが構築した訳じゃなくて『形成の書』っていう巨大システムが勝手に構築して、その管理をハーモナイアに委ねたっていう成り立ちの世界だし。まあ、受け入れ難いことだとは重々承知しているんだけど、ボクにできることは何もないよ」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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