Act.8-348 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.35
<三人称全知視点>
『『꙳✧˖°⌖꙳✧˖ディゾナンススクリーム꙳✧˖°⌖꙳✧˖』』
吟遊詩人系三次元職の吟遊詩仙が覚える特技で自分を中心とした円形の範囲に耳障りな不協和音を発生させる✧Étoile✧。
しかし、プリムヴェールはその不協和音を耐え抜いて✧Étoile✧の喉を切り裂いた。
ロットを使って「フォルティシシシモ」を✧Étoile✧自身と(´・ω・`)に掛ける✧Étoile✧。しかし、✧Étoile✧にできたのはそれだけだった。
「ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー!」
自身の刀身に月属性の魔力を宿す付与術式を発動した後に円を描いて中心を突く形で突撃し、全身に月属性の魔力を纏った状態で巨体化させた刀身で突く技で✧Étoile✧の上半身が消し飛び、✧Étoile✧と同化していたメタトロンも死に絶える。
『『まさか、✧Étoile✧をこれほど簡単に下すとは! なかなかやりますね! だが、これならどうでしょう! 我が眷属達よ!』』
(´・ω・`)が仮面を外し、その魔眼を煌めかせた瞬間――大量の吸血鬼と化した天使達が戦場に集結し、巨大な一体の竜へと姿を変える。
『『見よ! これが吸血龍!』』
「準備はいい! パパ! リィルティーナさん!」
「オーケー! 問題なし」
『それじゃあ放つよ! 龍神の怒號!!』
「「極大付与術!!」」
ナトゥーフの属性のないブレスに聖人に至ったリィルティーナの神聖属性をオリヴィアが「極大付与術」で付与する。
レイドクラスの古代竜が放った神聖属性が付加されたブレスは一瞬にして吸血鬼と化した天使五万体以上から成る吸血龍を浄化して消し飛ばした。
『『そ、そんな……吸血龍を一撃で……ふははは! だが、我が眷属達はまだ沢山い――』』
すぐに切り替えて新たな吸血龍を生み出そうとした(´・ω・`)だが、マグノーリエがそれを許さない。
「光の精霊よ! 光縛精霊鎖」
光の精霊に精霊力を与え、光の鎖を創り出して対象を束縛する精霊術法を発動するマグノーリエ。
(´・ω・`)は新たな吸血龍を生み出すことに意識が向いていたため、光の鎖を躱せず束縛される。
神祖といっても吸血鬼である以上、光属性の攻撃とは相性が悪い。少しずつ微ダメージを負いながら、(´・ω・`)は少しでも早く光の鎖から解放されようと踠く……が、光の鎖を引き千切る前にマグノーリエが新たな魔法を発動する。
「魂霊崩壊!」
聖人に至って獲得した神聖魔法――その力を使い、究極の神聖魔法を発動し、魂諸共消滅させる光が(´・ω・`)を包み込む。
(´・ω・`)は大魔導帝と暗黒魔術師、暗黒魔剣士という戦闘職の特技を一切使えないまま消滅し、(´・ω・`)と従魔合神していた『メタトロン』が支配していた天空城も機能を停止した。
◆
ヴェルディエ、ディグラン、バダヴァロート、レジーナ、ユリア、ミーヤが向かった天空城に待ち受けていたのは定吉と名乗るウンブラだった。
「朧黎黒流・疾風覇薙」
「巽風八卦掌」
「海王の三叉薙」
ディグランは『剛地鋼剣ドヴェルグティン』に聖属性の魔力を纏わせると横薙ぎすると同時に解放して猛烈な光の真一文字斬りを放ち、ヴェルディエは覇王の霸気の黒稲妻を黒い風に変化させると、掌底から黒い竜巻を放つ。
バダヴァロートは激流を纏った三叉槍を構え、武装闘気と覇王の霸気を纏わせると一気に薙ぎ払う。
三人の狙いは天空の玉座の間に張り巡らされた無数の鋼糸である。
触れれば武装闘気を纏っていなければ確実にバラバラにされてしまうほどの鋼糸をそのまま残しておけば戦闘に支障が出る。そう考えたヴェルディエ、ディグラン、バダヴァロートが見気で察知した瞬間に素早く張り巡らせられた鋼糸の破壊を狙ったのだ。
『『酷くないでっか! いきなり鋼糸破壊するとか! 張るの苦労したんですわ!!』』
「そんなのあたしらには関係ないことだよ! ――行くよ! ユリア!」
「光球爆烈」「向日葵の大地獄」
圧縮した膨大なエネルギーを持つ光弾を破裂させて光の洪水を引き起こすレジーナのオリジナル光属性魔法――そのエネルギーをあえて破裂させず、「向日葵の光芒」の向日葵に吸収させることで、広範囲を覆い尽くす規模の光線を放つ、レジーナとユリアのコンビネーション魔法が定吉に殺到する。
『『影移動!!』』
咄嗟にイベント職の影法師の特技で影の中に潜って直撃を免れた定吉だが、あれを喰らっていればただでは済まなかったと冷や汗を流す。
以前のビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局所属のフェアトリス=グリチーヌとの戦いで超越者ではない人間であっても油断ならない力を持っていることは分かっていた定吉。当然、この場にも覚悟して来てはいたが、流石にここまで防戦になるとは考えてもみなかった。
『『千絲万光』』
定吉は影の中から脱出すると、無数の糸を通した針を戦場に高速で張り巡らせ、大量の切断の糸を一斉に動かした。
イベント職の魔縫師の奥義と呼ぶべき特技……しかし、その糸が全て張り巡らせられる前にヴェルディエ、ディグラン、バダヴァロート、ユリアの「朧黎黒流・疾風覇薙」、「巽風八卦掌」、「海王の三叉薙」、「鉄仙の金鳳花」によって針を撃ち落とされ、糸を切り刻まれ、攻撃が不発に終わる。
『滅崩放電咆吼』
ミーヤが数百億~数千兆電子ボルトにまで加速された電子を放つ「滅崩放電咆吼」を放つ。
これを定吉はギリギリのところで躱して命拾いするが……。
『『……それは流石に鬼畜やで』』
生体魔力を引き合って、群れの中であれば自由自在に空間を行き来する力を持つトビハリネズミ。
ユリアは予めトビハリネズミを増殖させ、戦場に放っていた。
ユリアはトビハリネズミを使って定吉のすぐ間近に転移――武装闘気を纏わせた「串刺しの竜舌蘭」で定吉を串刺しにして従魔合神していたメタトロン諸共絶命させた。
◆
<三人称全知視点>
落下してくる天空城は全てリーリエが『統合アイテムストレージ』に入れて天空城に出現したレイド攻略報酬諸共回収された。
残る天使の残党、アザトホートのコケラも撃破され、敵として現れた黒の使徒、ルイーズも降伏し、オーレ=ルゲイエも本体を撃破された時点で残っていた全てのオーレ=ルゲイエの機能が停止したため敵の戦力は完全に壊滅したこととなる。
一方、多種族同盟連合軍は非戦闘員も含めて死者ゼロ。刻曜黒華の『管理者権限』がオルタ=ティブロンに奪われてしまったため完全勝利とはいかなかったものの、全体的には大きな前進を遂げた。園遊会を利用した罠は結果として大金星を上げたということになる。
ブライトネス王国は王都を中心に被害が出たが、その被害は全てリーリエが『管理者権限』の回収を行いながら時空魔法を使用して全て修復済みである。結局のところ、唯一神達の連合軍はブライトネス王国に対して一欠片の傷も残すことはできなかった。
「えっ……俺が挨拶するの?」
全ての戦争が終結したところで、非戦闘員の園遊会の客達がいない園遊会の会場に今回の戦争で戦った者達が集められていた。
リーリエはその中からラインヴェルドを見つけると、無理矢理即席で作った壇場に上げる。
「……ほら、国王なんだから一言挨拶しないと。後は引き継ぐから」
「おっ、おう。皆の者! この未曾有の危機? まあ、思ったほど大したことがなかったかも知れないが、敵数だけは『怠惰』戦を遥かに上回る戦争でよく戦ってくれた! だが、それより何よりも喜ばしいのは誰一人死者を出すことなくこの戦に勝利できたことだ! 国王としてこの完全勝利のために貢献した全ての者達に心から感謝の意を示したい! まあ、要するにみんなよく戦ってくれた! ありがとうってことだ! 以上!」
「……なんというか、猫被らないとこんな感じになるんだねぇ。皆様お疲れ様でした、リーリエです。今後のことについて少しだけ説明させて頂きます。後日、改めて招待状を送らせていただきますが、本戦争で貢献してくださいました皆様には後日バトル・シャトーにお越し頂き、そこで戦功に応じた褒賞のお支払いをさせて頂きます。参加できない場合はその旨を事前にお伝え頂ければ対処致します。詳しい内容は招待状に書かせて頂きますので、本日は割愛させて頂きます。勿論、褒賞はそれぞれの働きを正当に評価してお支払いするものです。後ほどメアレイズ閣下にレポートを提出して頂き、『サーチアンドデストロイ・オートマトンプログラム』で撮った映像と合わせてそれぞれの討伐数に応じた褒賞を出させて頂くことになります。しかし、その結果がどうであろうと皆様がブライトネス王国を、そして多種族同盟を揺るがすほどの未曾有の危機から救ったということは変わりません。そして、何よりも誰一人死者なくこの戦いを終えられたこと、それが一番良かったことだと思います。皆様、本当にお疲れ様でした」
リーリエは割れんばかりの拍手の中、降壇し、最後の戦後処理を終えるために黒の使徒、天恵の巫女、ルイーズを招集した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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