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Act.8-347 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.34

<三人称全知視点>


 天空城の最下層――『オーバーハンドレッドレイド:神界の天使たち』の連立ダンジョンの終着地点、天空の玉座の間にて。


 目の前に立つのは、金色と青の美しい鎧を身に纏い、赤い裏地のマントを付けた騎士風の剣士。

 兜を被らず大気に晒した容貌は眼鏡をかけた白皙の美青年。その双眸はゾッとするほど冷たい。

 その手には彼と共に戦場を潜り抜けてきた幻想級の武器『血喰の魔人剣ソード・オブ・デビルブラッド』が握られている。


『『誰が来るかと思ったらNPCの成れ果てですか。随分と舐められたものですね』』


「デッドコピーの、しかも本体では仕掛けて来れない臆病者には俺達が丁度いいって思われたんじゃねぇのか? それと、俺らはNPCじゃなくて『Eternal Fairytale On-line』とは違う『スターチス・レコード』の人間だ……っつても微妙なところではあるが。『白嶺騎士団』のギルドマスター、『狂人騎士』の忘却の河のレーテだな。相手にとって不足があるかどうか、俺達が見てやるぜ!」


『『――ッ!!』』


 あっさりと挑発に乗った忘却の河のレーテにラインヴェルドとオルパタータダがニヤリと笑う。


 圓は定吉を含め、今回仕掛けてきた各ギルドのギルドマスター達がログなどから作られた擬似記憶を持ったデッドコピーであると推測している。そして、その推測はおそらく当たっているだろう。

 だが、圓はそれを悪い意味では捉えていない。寧ろ、自由意志を得たもう一人の超越者(プレイヤー)として何とか彼らを生かす道を模索しているようである。


 ラインヴェルド達も別段忘却の河のレーテ達超越者(プレイヤー)を劣ったもの、偽物として見ている訳ではない。


(……圓の言っていた通りだな。定吉に比べて反応がどうも胡散臭い。どうやら、自由意志の発現はどれだけ人と会話したかという経験値が関係している。反応がチグハグで、まるで「こう言われたら、こう返すのが当然だ」って形で演技しているみたいだなぁ。まあ、しばらく時間が経てば自由意志ってもんが目覚めてくるんだろうが、今回はどうせ偽物を遠隔操作しているだけみたいだし、とっとと片付けるか。大して遊べそうにもないしなぁ)


「それじゃあ、トップランカーの騎士殿。雑魚な俺達の四人の相手くらいはしてくれるよ、なッ!」


 ラインヴェルドの言葉と同時にオルパタータダ、アクア、ディランがラインヴェルドと共に駆け出した。


『『クロス・スラッシュ』』


 騎士系一次元職の騎士が習得する十字斬りを放つ特技でラインヴェルドの攻撃を受け止めようとするが……。

 ラインヴェルドは十字斬りをまるで見切ったように紙一重で躱すと、武装闘気と覇王の霸気を纏った剣を思いっきり振り下ろした。


『『逆襲の一撃・吸収(カウンター・ドレイン)……クッ!』』


 守護騎士帝が習得できる特技の一つで受けたダメージを次の攻撃に加え、更に与えたダメージの合計値の半分の体力を回復する「逆襲の一撃(カウンター)」の上位互換で攻撃を耐えて反撃の斬撃を放つ……が、倒れなかったとはいえ予想以上のダメージを負った忘却の河のレーテの表情は厳しい。


「おう、効いたぜ……でも、それじゃあ死なねぇな!」


 しかし、それ以上に忘却の河のレーテの表情を驚愕の感情で染め上げたのは、ラインヴェルドが忘却の河のレーテの攻撃を直撃で浴びて全く動じなかったからだ。

 武装闘気と求道の霸気により全身を強化していたラインヴェルドは、武装闘気と覇王の霸気を纏った剣で「逆襲の一撃・吸収(カウンター・ドレイン)」の篭った剣を受け止め、ニヤリと笑う。


「俺に構っていていいのか?」


 ラインヴェルドの言葉と同時にオルパタータダ、アクア、ディランが武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣を構えて一斉に斬り掛かった。


狂化暴走(グラディエーター)! 狂化制御シビリアン・コントロール!』


 イベント職の狂戦士の特技で狂化状態になる代わりに全てのステータスを上昇させ、「狂化制御シビリアン・コントロール」の力でその狂化状態を理性でコントロールを可能にする。

 これにより、実質的にデメリットのない強化を行った忘却の河のレーテは騎士系三次元職の習得する範囲攻撃特技「円形斬覇(サークル・ブレイド)」でアクア、ディラン、ラインヴェルド、オルパタータダを纏めて薙ぎ払って吹き飛ばそうとするが……。


『『誰一人飛ばされない……だと!?』』


「随分と舐められたものだなぁ。ラインヴェルド、アクア、ディラン、一気に畳みかけるぞ!」


 スカートが広がることも気に留めず、空中で剣を回して握り直したアクアが急降下しながら逆手に持ち替えた剣で思いっきり斬撃を放ち、ディランが「《影軀逆転》」を使って身体に掛けられたリミッター関係無しの超高速斬撃を放つ。

 更にラインヴェルドとオルパタータダが左右から高速の斬撃を放ち、忘却の河のレーテは四人の攻撃を直撃で浴びた。

 

 『オーバーハンドレッドレイド:神界の天使たち』のレイドボス――メタトロンと従魔合神していたが四人の攻撃には流石に耐え切れず、シューベルトがレイドダンジョンの最奥部に辿り着く前に忘却の河のレーテとの戦いは決着を迎えた。



 着込襦袢に襠高袴、陣羽織をまとった浪士風のボサボサした総髪の男――『満天空賊団』のギルドマスターであるモェビウスは全力で逃げていた。

 オニキス、ファント、ウォスカー、ファイス、バチスト、ティアミリスの姿はここにはない。


 戦闘開始早々、フレデリカに狙いを定め、胸元の布を吹き飛ばしてセクハラを働こうとしてフレデリカとジャスティーナの逆鱗に触れたのである。

 フレデリカとジャスティーナ、女子二人が自分達の手でモェビウスに鉄槌を喰らわすと戦いを引き受けたので、オニキス達は天空城の天使達の討伐に乗り出すことになった。


 ここまで、オニキス達はボスの討伐が最優先と天使達の討伐を後回しにしてきた。そのため、城内にはまだまだ九階級の天使達とアザトホートのコケラ達がゴロゴロと犇いている。決して手持ち無沙汰になることはないだろう。


『『いやいや、何でこんな状況になってんの!? 別嬪さん二人だからちょっとセクハラをって思ったら騎士服全然ダメージ入らないし!! どうなってんの!? その装備!! 辻居合一閃!!』』


 イベント職の浪士が習得できるすれ違い様に抜刀し、抜刀と同時に相手に一撃を浴びせる侍系一次元職の武士が習得可能な特技「辻斬り」の上位互換のような技を放つ……が、武装闘気を纏ったフレデリカの剣に受け止められて斬撃が入らない。


『『嘘だろ! ならば、奥義・四十七禍ノ太刀』』


 高速で四十七連撃の太刀筋を空中に残し、一つでも太刀筋に触れた瞬間に四十七連撃の斬撃全てが襲い掛かるというイベント職の浪士の奥義を背後から迫り来るジャスティーナに放つ……が、ジャスティーナは刃躰を応用した飛ぶ斬撃で太刀筋を誘爆させて無効化、そのまま双刀で圓式の斬撃を放つ。


『『おいおい、どんな斬撃だよ! 全く見えねぇじゃねぇか!! 奥義・太虚薙ギ払ウ御剣(アメノフツノミタマ)』』


 イベント職の野武士が習得する奥義で慌てて周囲を根こそぎ薙ぎ払い、斬撃の領域を創り上げる……が、見気の未来視で予知したフレデリカとジャスティーナは素早く背後に飛んで躱して無傷。

 斬撃の領域が消え去った瞬間に、トップスピードに達して二人同時に斬り掛かる。今度は二人とも圓式を使い、モェビウスを討伐するつもり満々だ。

 モェビウスとの戦いで超越者(プレイヤー)が一体どれほどの存在なのか実力を測りたいと思っていた二人だが、戦闘スタイルを変えたところを見るともう底は見切ったということなのだろう。今度は確実に目の前のセクハラ魔を討ち取る気満々だ。


『『虚空ヨリ降リ注グ(アメノム)真ナル神意ノ劒(ラクモ)』』


 刃渡り百メートルを優に超える巨大な剣を顕現し、その剣が一斉に降り注がせる侍系四次元職の征夷侍大将軍の奥義とも言える最強の物理系範囲攻撃特技を発動するモェビウス。

 しかし、圓との戦いで何度も見ているフレデリカとジャスティーナは落下速度を計算して討ち取れる範囲だと判断――俊身を駆使して虚空属性の剣が落下する前にモェビウスに迫り、圓式の斬撃でメタトロン諸共確実に討ち取る。

 標的を失った虚空属性の剣は音を立てて天空城の床に突き刺さった。


 レイドボスを喪ったことで、天空城はその機能を停止し、静かに王都――より正確には王城の庭へと落下を開始する。



 マグノーリエ、プリムヴェール、リィルティーナ、ナトゥーフ、オリヴィアが向かった天空城に待ち受けていたのは水色のフリフリのアイドル衣装風ミニドレスに身を包み、手にはマイク型のロット(どちらも幻想級装備)を持った神祖の天使――✧Étoile✧と笑い顔の仮面をつけたシルクハットにコート、スーツ姿の神祖の吸血鬼――(´・ω・`)(変態紳士シュバイン)だった。


『『꙳✧˖°⌖꙳✧˖みんなー! ♫彡。.:・¤今日は私のライブに来てくれてありがとう♪˖°⌖꙳✧˖ ✧Étoile✧のライブ、楽しんで逝ってね!!꙳✧˖°⌖꙳✧˖』』


「……ライブに来たつもりはないのだが」


「なんというか……凄いテンションですね。ああいう衣装の美少女をやっぱり殿方は好きなのでしょうか?」


「……ザ、アイドルって感じですね。昔の僕ならときめいたかもしれませんが、女になったからかあんまり惹かれないというか、寧ろ、ちょっとイタいと思ってしまいますね。……これ、本人が見たらどんな反応するんでしょう?」


『何というか……凄いね。アイドルって』


 マグノーリエ、プリムヴェール、リィルティーナ、ナトゥーフの四人は若干✧Étoile✧のテンションに引き気味だ。

 オリヴィアはアイドルが物珍しいのだろう。マイク型ロットを掲げて華麗にポージングを決めている✧Étoile✧に興味津々のようだ。


「一応、分かっているとは思いますが、相手は圓さんと同じ戦闘系ギルド――それも上位クラスのギルドマスターです。しかも、✧Étoile✧は後方支援に長けたアイドル、施療帝、聖女の保有者ですが、吟遊帝の特技を駆使して前線で戦い鼓舞するタイプの超越者(プレイヤー)のようです。その隣の(´・ω・`)(変態紳士シュバイン)は大魔導帝と暗黒魔術師、暗黒魔剣士というガチガチの戦闘職、復活されると厄介なので先に✧Étoile✧を落とすべきでしょうが、油断は禁物です」


 リィルティーナが圓から与えられた情報を再度確認し、マグノーリエ達が頷いたところでいよいよ戦闘が始まった。


「月の力よ、我が武器に宿れ! ムーンライト・スティング」


 プリムヴェールは自身の細剣に武装闘気と覇王の霸気と共に月属性の魔力を宿すと地を蹴って加速――✧Étoile✧の喉笛を狙って圓式の突きを放つ。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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