Act.8-346 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.33
<三人称全知視点>
今回の戦争において全権を握っているのは、メアレイズである。断じてシューベルトではない。
それを踏まえて……。
「……俺をアクア達やオニキス達に同行させずにこんなつまらない場所に束縛するとは、いい度胸だな、兎」
魂魄の霸気で破壊の力を宿し、剣の鋒をメアレイズに向けるシューベルト。
周囲の温度を五度下げる冷気を纏っているシューベルトは不機嫌顔でメアレイズを睨め付けている。
「……私はしっかりとパワーバランスを考えて編成したのでございます。それに、私は圓さんから全権を委任されているのでございます」
「……ちっ、あのクソ女が」
「それ、圓さんを前にして言えるでございますか?」
ブライトネス王国が危機に瀕していてもお構いなし、シューベルトは天使ではなくメアレイズに向かって剣を振るった。
勿論、メアレイズも黙っていない。武装闘気と覇王の霸気を纏った『霹靂の可変戦鎚』がシューベルトの剣と激突し、天を割るほどの衝撃波が迸った。
天使達も当然、仲間割れをするメアレイズとシューベルトを見逃しはしない。戦いに集中して天使達には一瞥すら与えない二人に天使達は狙いを定め、次々と光の剣を生成して襲いかかる。
「邪魔だ!!」「邪魔でございます!!」
メアレイズとシューベルトが無造作に鎚と剣を振るい、天使達が纏めて吹き飛ばされた。
「ああ、もう好きにするでございます!」
「ふん、言われなくても好きに行動する。貴様の指示は受けん」
シューベルトはメアレイズを睨め付けると、空歩を使ってアクア達が消えた天空の城へと向かう。
「……もう本当に嫌いでございます。あれ、最早自分の意見が通らなければ怒り狂うただの駄々っ子でございます。ああ、やだやだ、うんざりでございます。シューベルト、命令違反、この件はしっかりと圓さんに報告するでございます」
「メアレイズは本当に肝が座っているっスね。ウチなら絶対に無理っス。あの総隊長、おっかないっスもん」
「九尾の火球」を次々と放って珍しく大真面目に天使達の撃破に勤しみながら、メアレイズとシューベルトの対立に極力関わらないようにしようと影を薄くしていたアルティナがシューベルトがようやく去ったことを確認してメアレイズに話しかける。
「……おっかないもおっかなくないもないでございます。私はただ圓さんにお願いされた通り様々なことを考えてグループ分けをしたのでございます。それを、勝手な理由で放棄したのはシューベルトでございます。……騎士団の総隊長が職務放棄とは頂けないでございます。このことは、当然、皆々様に報告するでございます。……勿論、それ相応のペナルティを課すのは至極当然でございます」
「まあ、見方によっては嫌がっているのに初恋を忘れられなくて何度もアプローチを掛けつつ、アクアさんの意思を汲んでか、それとも圓さん本人の趣味なのか、反対している圓さんにも食ってかかっている子供っスからね。気に入らないことがあれば癇癪を起こして城を壊す癖は今でも治っていない……それでも、昔よりは大人の対応もできるようになったみたいっスけど」
「……以前の圓さんは『どこぞの魔王の息子な総隊長とくっつくんじゃないかと思っていたんだけど、お互いその素振りはないし、あれー』っと思っていたみたいでございますが、いつ頃からかシューベルトとアクアさんの結婚に反対し始めたみたいでございます。……まあ、あのクソ総隊長はアクアさんとディランさんの親友関係にヒビを入れてでも自分のものにしようとしそうでございますからね、それが嫌なんだと思うでございます。あの方、恋愛以上に親友関係というものをとても大切にする方でございますから」
「ウチも束縛系は却下っス」
「そもそも、アルティナさんが結婚できるとは思えないでございますけどね」
「五月蠅いっスよ! メアレイズだって独身っス! ってか、独身の方がいいに決まっているっス! 自分の時間を自由に使えるし……あっ、ごめんっス」
「……仕事のない暇人はいいでございますね。私は仕事仕事仕事仕事、たまにある有給休暇だけがオアシスでございます」
したくもないのに仕事と婚約させられた(仕事が恋人)メアレイズにジト目を向けられ、なんとも言えない表情になる自由人アルティナであった。
◆
忘却の河のレーテのいる天空城に潜入したのは、ラインヴェルド、オルパタータダ、アクア、ディランの四人だった。
RAID ENEMY:熾天使 Lv.89
HP:70,000,000
RAID ENEMY:智天使 Lv.87
HP:65,000,000
RAID ENEMY:座天使 Lv.84
HP:59,000,000
RAID ENEMY:主天使 Lv.82
HP:56,000,000
RAID ENEMY:力天使 Lv.81
HP:54,000,000
RAID ENEMY:権天使 Lv.80
HP:52,000,000
RAID ENEMY:大天使 Lv.79
HP:50,000,000
RAID ENEMY:天使 Lv.78
HP:49,000,000
天空城には九階級の天使が揃い踏み、更に、透き通る身体を持った、蜈蚣と蜥蜴を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・アレフ、透き通る身体を持った、蛸のような八本の巨大な脚を持ち、爬虫類のような顔を持つ不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ヴェート、透き通る身体を持った、蛇型の尻尾を持つ虎と甲虫を混ぜたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ギメル、透き通る身体を持った、硬い甲羅を持つ亀と蜈蚣、蜘蛛を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ダレット、透き通る身体を持った、鴉と狼と蜈蚣と鯰を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ヘー、透き通る身体を持った、蜥蜴と羊、蝙蝠と蜘蛛を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ヴァヴ、透き通る身体を持った、獅子と鹿と蜈蚣と蝙蝠を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ザイン、透き通る身体を持った、三つの狼の頭を持ち、蝙蝠と蜥蜴と蜈蚣を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ヘット、透き通る身体を持った、雉と甲虫と蜥蜴と蛇を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・テット、透き通る身体を持った、蜥蜴と鰐と蛇と蛙と蝙蝠を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ユッド、透き通る身体を持った、蛇と鰐と甲虫と蝙蝠と蜈蚣を混ぜた不気味な造形の触手の化け物の・アザトホートのコケラ・ハフ、透き通る身体を持った、蜈蚣と蜘蛛、蛇を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ラメッド、透き通る身体を持った、狼と鯨と蛸と蜘蛛と蛇と鴉を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・メム、透き通る身体を持った、烏賊と蝙蝠と蛇と蜥蜴と蜈蚣と蟹を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ヌン、透き通る身体を持った、鮫と蝙蝠と蛇と蜈蚣を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・サメフ、透き通る身体を持った、狐と蝙蝠と蛇と蜈蚣と蜥蜴を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・アイン、透き通る身体を持った、馬と鴉と蛇と蜈蚣と蟹を混ぜた不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・フェー、透き通る身体を持った、鷲と蝙蝠と蜈蚣と蛇と鹿を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・ツァディク、透き通る身体を持った、獅子と鮫と鴉と蛇と蜈蚣を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・クフ、透き通る身体を持った、猪と鮫と鴉と蛇と蟹と蜈蚣と蛙を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・レーシュ、透き通る身体を持った、鯨と鹿と蝙蝠と蛇と蜈蚣を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・スィン、透き通る身体を持った、亀と蝙蝠と蛇と蜈蚣と鶏を適当に混ぜて捏ねたような不気味な造形の触手の化け物のアザトホートのコケラ・タヴ――全てのアザトホートのコケラが集結し、犇いている。
ブライトネス王国の上空に群れを成していた天使達はほとんどが天使で権天使が僅かに混じっている程度だった。
だが、天空城の内部には上位の熾天使も含めて全ての天使が集結している。数こそ天空城外部に劣るが戦力の質はブライトネスの上空よりも遥かに高い……のだが、ラインヴェルド達にはあまり関係なさそうである。
「「よっしゃ! 暴れるぜ! 着いて来い! アクア、ディラン!!」」
「……たく、王様二人が先陣を切るって……いくぞ、ディラン!!」
「おう!!」
【天使之王】の天使化を使い、純白の翼を背中に顕現したアクアが、俊身を駆使して加速するディランと共に天使達をそれこそ九階級などお構い無しに片っ端から撃破しながら先行するラインヴェルドとオルパタータダを追う。
「――なあ、アクア、ディラン」
ラインヴェルドが突然二人の名前を呼んだ。
「ローザはかつてヨグ=ソトホートを俺達では勝てない脅威だと語った。だが、今、俺達はヨグ=ソトホートと同じレイドクラスの魔物相手に戦えている! ヨグ=ソトホートよりも上位のアザトホートのコケラも俺達の敵ではない! 俺は、俺達はここまで来たんだ!」
ラインヴェルドが普段、クソ面白いと笑っている時よりも遥かに、心底楽しそうに笑った。
ずっと、ローザと、圓と共に戦いたかった。親友と言ってもやっぱりその強さには大きな隔たりがあって、どこかで守られているという意識がラインヴェルド達の中にはあった。
それが、今や圓に全幅の信頼の元、敵を討伐するために送り出されている。
かつて、勝てないと言われたヨグ=ソトホートよりは弱いものの、この世界の人間にとっては未曾有の脅威にも等しい、魔王よりも強い天使達と、リーリエとかつてランキングを争った猛者達との戦いに。
「ああ、そうだな。……ようやくだ、ようやく俺達はここまで来た」
完全に圓の隣に立てた……という訳ではない。だが、着実にラインヴェルド達は強くなっている。
それを、天使達との戦いで自覚したラインヴェルド達は、その幸福の余韻に浸りながら次々と天使達とアザトホートのコケラ達を一方的に蹂躙していった。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




