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Act.8-339 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.26

<三人称全知視点>


『百合薗圓の姿は無しですか……これでは、「管理者権限」の奪取はできませんね。でしたら、ここにいる者達を皆殺しにして出ざるを得ない状況を作るだけ。行きなさい! 樹神兵』


 天恵の神樹から創り出される無数の樹神兵を嗾ける『最初の天恵の巫女』イヴ=マーキュリー。

 迎え討つのは、アスカリッド、エリーザベト、アゴーギク、リサーナ、ケプラー、ヒョッドル、シュピーゲル、カトリーヌ、イリーナ、プルウィア、ネーラ、ヴァルナーという魔王の娘、天上の薔薇騎士修道会副騎士団長、魔法省特務研究室、ルヴェリオス共和国の中枢メンバーからなる即席連合部隊である。


魔王技・闇魔飛斬ダークネス・スラッシュ


聖熾天翼翔光刃セラフィムウィング・ブレイドラッシュ


凍魔の白雪剣ソード・オブ・スノウホワイト


クマの廻撃カロゼッロ・ディ・リゼリゼ!!」


骨喰の焔華(ソドム・ブレイズ)焔球(ファイアボール)


分子裁断モレキュール・ディバイド


酸性雨(アシッド・レイン)――酸性槍(アシッド・ランス)


「高速錬金術式」


「【水神顕現-龗-】!」


「【纏黒稲妻】」


「奥の手・海魔の渦撃タイダリア・ボルテクス


 アスカリッド達にとって重要なのは防衛である。避難している非戦闘員が戦いに巻き込まれることは避けなければならない。

 必然的にアスカリッド達も樹神兵の討伐に回らざるを得なかった。この樹神兵、実はオーレ=ルゲイエや天使軍などにも匹敵するほどの大戦力なのである。一体一体はアスカリッド達でも余裕で対処できるレベルだが、では、一体残らず狩り尽くして王城に攻め込ませないようにするとなると、これがまた難しい。


「――埒が明かないな。アゴーギク殿、イリーナ殿、我が抜けても防衛は大丈夫そうか?」


 魔法省特務研究室の部隊はアゴーギクが、ルヴェリオス共和国の中枢メンバーはイリーナがそれぞれリーダーの役割を務めていた。


「そうですね……アスカリッドさんと、エリーザベトさんが抜けても、まあ、大丈夫だと思いますよ。幸い、敵もそう大して強い訳ではありませんし……量が多過ぎますが」


「そうだな……特に問題はないと思います。もしかしたら、イヴ=マーキュリーを倒すことでこの樹木の兵達も止まるかもしれませんし」


「わ、我は別に……エリーザベトと行くつもりは」


「素直じゃないアスカリッドさんも、可愛らしいですよ〜。……でも、私の大切なアスカリッドさんが一人で危険なところに行くのをただ見ているだけなのは辛いですわ〜」


「……なっ、なな……」


 そんな二人のやり取りをアゴーギク達は温かい目で見守っていた。

 防衛から一転、攻撃に切り替えたアスカリッドとエリーザベトは樹神兵を次々と撃破しながらイヴ目掛けて突き進んでいく。


『あら? 防戦一方だと思っていたら樹神兵を突き抜けてくる者が居たみたいね。少しだけ遊んであげようかしら? 楽園の樹海(エデン)


 イヴの纏う巫女服が脈動するように隆起し、それを合図に無数の枝が伸びてイヴの姿が樹神兵にも似た樹木人間と化す。

 樹木で作った巨大な人型にイヴの顔だけが不気味に浮き出ているという樹木の化け物は地中深くに根を張り、地中から無数の神樹の若木を生やした。

 無数の神樹の若木は瞬く間に成長し、まるで針のように鋭い枝でアスカリッドとエリーザベトを貫きたいとでも言わんばかりに急速に伸ばしてくる。……といっても樹木の成長スピードは斬撃には敵わないので二人を撃破するには至らないのだが。


変貌の樹槍(ランス・オブ・エデン)


 更にその樹木をまるで自分の手のように操り、無数の木の槍を放つイヴ。

 刺し貫かれた者を樹木に変え、神樹の力で樹木の成長速度を早める「栄枯盛衰アクセラレート・グロース」で一瞬にして死に至らしめるという必殺コンボを決めようと目論んだイヴだが、見気を極め、八技の一つで相手の攻撃を最低限の動きでひらひらと紙のように躱す紙躱を習得している二人には全く通用しない。


『――ッ! ちょこまかと逃げますわね! ならば、避けられない力で拘束するまでです。私の『天恵の実』の力、お見せしましょう。その力は重力操作』


 イヴの食した「天恵の実」は「重力の天恵(万有引斥力)」である。その力を使ったアスカリッドとエリーザベトの周辺一帯を超重力を掛ける領域としたため、アスカリッドとエリーザベトは回避できずに超重力に囚われる。


「……思ったほどではないな」


「そう〜ですわね」


 アスカリッドとエリーザベトは超重力に見舞われながらも普段の戦いと同じような速度で闇属性、聖属性、それぞれの属性の魔力を纏わせた剣を構え、イヴに斬り掛かる。

 様々な闘気を纏わせて身体能力を強化することで、超重力の束縛を諸共せず斬り掛かることができたのである。


 神樹と融合したイヴは生み出した神樹や自身を変化させた神樹とも感覚の共有や精密な操作が可能だが、例えダメージを与えられても痛覚の共有がなされていないため痛みを感じることはなく、斬られたところ本体が直接的な損害を被ることはない。

 しかし、神樹と融合した場合でも露出しているイヴの顔は別である。末端を斬ったところで無意味だと判断したアスカリッドとエリーザベトは迷わずイヴの脳天に剣を突き立てた。


 油断も相まって二人の攻撃から身を守ることができなかった(神樹の枝を防御に利用してもそれを上回る威力で突き刺されてしまうので無意味なのだが)、イヴは絶命。

 イヴが操っていた無数の樹神兵もそれと同時に機能を停止してただの木像と化した。



 南方向から攻めてきた「天恵の巫女」は甘蔗林(かんしょばやし)結城(ゆうき)松枝(まつがえ)(しずく)宵霧(よぎり)綾夏(あやか)十六夜(いざよい)天音(あまね)阿良川(あらかわ)(つばめ)木虎(きとら)春海(はるみ)碓氷(うすい)美姫(みき)朱雀大路(すざくおおじ)火憐(かれん)今泉(いまいずみ)玲華(れいか)興梠(こおろぎ)瑞穂(みずほ)の十人である。


 雫は中性的な容姿の男性的な服装に女も見惚れる整った顔立ちをした男装の麗人の大学生で同じ大学生の綾夏と付き合っている。

 その見た目から人気が絶えないため、綾夏からヤキモチを焼かれることもしばしばあるが、本人は一途に綾夏を愛している。

 食べた天恵の実は障壁を展開することができる「守護者の天恵」だ。


 綾夏は雫と付き合っている女子大学生で濡羽色の髪の印象的な丸眼鏡をかけた女性だ。

 昔から典型的な真面目な優等生タイプで、お洒落に気を使ったことはない。地味な見た目も相まって、雫とは対照的だ。しかし、奥手という訳ではなく度々雫を驚かせるほど大胆なところがある。

 食べた天恵の実は生み出した霧を操り、実体化させることも可能な「夜霧の天恵」である。


 天音はお嬢様学校に通う女子高生だ。

 両家の生まれで雅楽、香道、華道、茶道、書道などに慣れ親しんできた。中でも横笛による演奏を得意としている。

 食べた天恵の実は音響操作の効果を持つ「音響の天恵」であり、横笛によって発生させた音を自在に操るという戦闘スタイルを取る。


 燕は一流企業に勤めるエリート社員だったが、会社や社会という狭く窮屈な世界に辟易としており、自由に空を飛べる鳥に憧れを抱いていた。天恵の実は「飛翔の天恵(モデル:(スワロー))」を食べたことを切っ掛けに生き方を見つめ直し、会社を退職して自由な生き方を模索している。


 春海はガンマニアで刀剣女子という武器というものをこよなく愛する女子高生だ。食べた天恵の実は「武器匠の天恵」で、その力で生み出した武器の威力を高めることができる。


 美姫は世界で唯一四回転アクセルを飛ぶことができる有名フィギュアスケーターの少女だ。

 食べた天恵の実は極低温を操り、周囲にあるものを冷却し凍らせる「極寒の天恵」――まるで美姫のために用意されたような、美姫の力を引き出す唯一無二と言える天恵の実である。


 火憐は熱血タイプの体育会系美少女だ。元々は喧嘩に明け暮れ、素行の悪いことで有名だったが、スポーツとの出会いを通じて有り余る力の向けどころを見つけるに至り、現在は短距離の強化指定選手としてスポーツの祭典への出場者が見込まれている。

 食べた天恵の実は「飛翔の天恵(モデル:鳳凰(フェニックス ))」――燕が食べたものと同じタイプの天恵の実だが、強力な再生能力と炎の操作の力を持つ。


 玲華は高校の廃部寸前のオカルト研究会で部長を務める女子高生である。

 魔法や魔女、悪魔などに興味を持ち、個人で蔵書を増やしている。その不気味な趣味も相まって、成績優秀で美しい容姿を持ちながらも友人や恋人は皆無だった。

 食べた天恵の実は「魔女の天恵」。この天恵の実によって得た魔法を使って部員を集め、研究会を存続させた。また、魔法による認識改編を行い、学校内部で高い人気を得るようになる。夜な夜な魔女のサバトを開いているという噂もあるようだが、真偽は不明である。


 瑞穂は自身の容貌にコンプレックスを抱いていた少女だ。その容姿が原因でイジメを受けて不登校になっていたが、天恵の実を食べて得た力により、姫系ファッションのトップモデルとして活躍するようになる。

 食べた天恵の実は「強奪の天恵」。様々なものを形の有る無しに関わらず奪うことができ、この力で周囲の人間の美貌を奪っている。

 使い方によっては相手の命を強奪する即死技すら使用可能で、その能力の危険さを見抜かれ、本編では早々に退場させられる。


 ここに真白雪菜を加えた十一人はいずれも『絆斬り』によって絆を断ち切られ、絶望に堕とされて闇堕ちしている。

 彼女達は『這い寄る混沌の蛇』の被害者だ。圓の意図を汲んだメアレイズも彼女達を討伐するのではなく、捕縛するか、戦闘を長期化させて圓の到着を待つようにと厳命している。

 

 相手を無力化することは討伐以上に難しい。圧倒的な力量差がなければ不殺ということは不可能だからだ。

 勿論、戦闘を長期化させて圓の到着を待つという選択肢もあるが、それでは圓の負担が増えてしまう。


 欅達は少しでも圓の負担を減らすべく、雪菜達を殺さず捕縛するためにいつも以上に気合を入れて戦いに臨んだ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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