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Act.8-338 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.25

<三人称全知視点>


 「七彩虹輝終焉刺突(アルク・アン・シエル)」――必ず七撃で敵を仕留める聖属性の奥義。……しかし。


「……はぁ、はぁ……アタクシ、生きている?」


「あれ? 殺し損なったみたいだ。あー、神人習合した『枢機大罪の魔モノ』が身代わりになったのか。……しぶといなぁ」


 ヨナタンが心底面倒そうな表情で息も絶え絶えながらも辛うじて生き延びたラストに一瞥を与える。


「きゃははは! アタクシは死ななかった! ざまぁー! きゃははは! 今度はアタクシのターンだ! お前の絶望を、アタクシに見せてみろ!」


 ラストは『色欲』の権能を発動する。彼の最愛の、もっとも大切な女性の姿でヨナタンを殺す。

 ラストにとって最も美しいのは、崇められなければならないのは自分。そのために、自らを上へ上へと引き上げ、逆に自身の権能で他人を下へ下へと引き下げる――だが、この瞬間、ラストは何よりも大切な自身の美貌のことを忘れた。


 ただ、ヨナタンを屈服させたい。遥か頭上から見下すようにラストを見るあの男を跪かせて、踏み躙りたい。

 ラストは変身する。彼の最も大切な人――ヨナタンの姉ジャスティーナへと。


 それが、虎の尾を踏む行為だとも知らずに。


 その瞬間――世界が壊れるほどの殺気が、世界が軋むほどの霸気がヨナタンと……そして他の魔モノ達の殲滅に回っていたジョナサンから迸った。


「……こんな僕やジョセフのことを、姉さんは困った弟だと言いつつ、それでも決して見捨てはしなかった。僕とジョセフにとって、姉さんはとても大切な人なんだ……普段は気恥ずかしくて言えないんだけどね、キャラじゃないし。……その姉さんを冒涜した君を、僕が許すと思った? それが無かったら、楽に殺してやっても良かったんだけど」


 ヨナタンがラストに感覚を引き延ばす時空魔法を掛けると、ヨナタンとジョナサンは全身に覇王の霸気を纏い、そのまま神速闘気を纏って同時にラストに肉薄――ヨナタンが心の臓を狙って剣を突き立て、ジョナサンが首を切り捨て今度こそラストの息の根を止めた。

 ラストは何もできないまま命が少しずつ失われ、冷たくなっていく感覚を味わいながら命を落とした。



 『暴食』も権能を使う間も無く命を落とし、『色欲』もヨナタンによって討ち取られた。

 残るは『憤怒』の枢機司教ラース、『傲慢』の枢機司教プライド、『嫉妬』の枢機司教エンヴィーの三人だ。


「『グラットンに続いてラストまで……数的に更に不利になったな。……私の権能でこの差を埋めるとしよう』」


 『嫉妬』の権能には、望んだものを再現するという力がある。

 その力で『嫉妬』の枢機司教エンヴィーが創り出したのは、先程死を迎えたグラットンとラスト、そこに『怠惰』の枢機司教スロウスと『強欲』の枢機司教グリードを加えた四体だった。


「『倒されたグラットンとラストだけでなく、スロウスとグリードも復活し、全ての枢機司教が終結した! フフフ、全く負ける気がしない――』」


「「「魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」」」


燦く星、宙より堕ちるデウス・セーマ・グランネメシス


 アレッサンドロス、コンラート、ルイーゼの三人が「魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」を放ってグラットン、ラスト、スロウスの三人を魂諸共消し飛ばし、マルグリットゥが神の御技で金色の魔導神姫教の教典にも書かれている「焔という概念(フロスト・)を凍らせる焔(ブレイズ)」……の模倣魔法「凍焔劫華(フロスト・ブレイズ)」を放って足を凍らせて動きを封じ、上空に猛烈な聖なる光が凝縮された天体を出現させて勢いよく降り注がせる聖魔法で確実にグリードを焼き尽くして跡形もなく消滅させる。


「『な、何故!? グリードは『強欲』の時間停止の力で無敵となっていた筈!?』」


「簡単なことだ。時空魔法を付与した攻撃であれば『強欲』の時間停止を破ることができる。同じやり方で大いなる女神リーリエ様はグリードを討ち破った。その御方より直々に教えられた方法を取ったのだ。同じ方法で、例え迷誤に囚われた信者であろうともグリード如き小物を討ち取れないことなどある訳がなかろう」


「言ってくれるな、誤れる信仰を抱く聖騎士よ! 真なる神とは自然の支配者たるマリーゴールド様! 貴様らの信仰こそ誤りだ!」


 俊身を駆使してエンヴィーの間近に迫り、気取られることなく神聖属性の魔力を纏わせてエンヴィーを斬り殺したヴェルナルドはマルグリットゥがグリードを討ち取ることができた理由を説明するも、止せば良いのに一言多く余計なことを言ってしまったため、マルグリットゥの怒りを買い、売り言葉に買い言葉、ヴェルナルド達天上の薔薇聖女神教団の上位聖職者達(ルイーゼと白夜を除く)とマルグリットゥの間で激しい宗教論争が再燃した。


「何を言っている! リーリエ様もマリーゴールド様も真なる神ではなく、化身――垂迹である!」


「ネメシア様こそがこの世に舞い降りた女神」


「貴様らの信仰はどちらも迷誤だ!」


 更に聞き捨てならないとネメシアを信仰する兎人姫ネメシア教の三教主達が声を上げて宗教論争に参戦していく。


「……何故同じ神を信じるのに争うのでしょう? それに、今は争っている場合ではないというのに」


 その様子を呆れ顔で見ていたのはレイティアだ。

 以前から天上の薔薇聖女神教団、兎人姫ネメシア教、金色の魔導神姫教が信仰の不一致(実は本地垂迹説絡みで対立しているだけで、圓を信奉し、他の化身のこともそれなりに敬っているという点では似たり寄ったり)で、対立していることは知っていたが、まさか戦闘中にまで論争を始めるとは思っていなかったのだろう。


 ちなみに、カムノッツ、ペコラ、フィルミィの三人は『憤怒』の枢機司教ラースを相手に三人掛かりで聖属性の魔力と武装闘気を拳に纏わせ、容赦なく「阿修羅刹降龍拳」擬き(特技のシステムアシストはカムノッツ達には適応されないので、当然、己の身体能力だけである程度のレベルまで模倣した。これを習得することが兎人姫ネメシア教の上位聖職者に至るための条件となっている)を放ってラースを原型が無くなるまでボコボコにしながらアレッサンドロス達やマルグリットゥと論争を繰り広げている。

 『魔界教』の枢機司教達にもこれほどの屈辱はないだろう。……まあ、実際にそれだけの圧倒的な実力差があることは戦いの世界に身を投じて日の浅いレイティアも理解しているのだが。


 普通に戦えば、何の制約もなければ今頃レイティア達は『魔界教』の討伐を終えて天使達の討伐に迎えていただろう。『管理者権限』を取り戻せるように消滅させないという条件やジョナサンの面白さの優先があったからこそ、ここまで戦闘が長期化したと言える。


『レイティア様、強い負の感情のエネルギーを吸収し、その力で無限に自らを強化する権能を持つラースも撃破され、残るは心の折れた対象を奴隷支配し、洗脳する権能を持つ『傲慢』のプライドのみです。必要はないと思いますが、念のために私、白夜がレイティア様と従魔合神致します』


「よろしいのでしょうか? 白夜様は圓様の従魔です。その力を私がお借りし、振るうなんて」


『圓様より許可は頂いております。……正直、私も不要だとは思います。レイティア様は圓様も認めた真の聖職者、とてもお強い方です。精神的な意味において、くだらない争いを続けている彼らよりも遥かに。……『傲慢』の力にレイティア様が屈服することなど万が一にもあり得ませんが、ですが、何事にも想定外というものがあります。それに、私の力が加わればレイティア様の神聖魔法は更なる力を発揮します。「魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション」の完全なる制御すら可能となりますわ。私と従魔合神して損なことは何一つありません』


「そこまで仰られるのでしたら……白夜様、私に力をお貸しください」


『仰せのままに』


 白夜の力がレイティアに流れ込んだ瞬間――レイティアはまるで自分が万能な存在にでもなったように感じた。


「魂魄の霸気《聖神顕現》」


 レイティアの背後に光を纏った銀色の長髪を風に靡かせる法衣を纏い、光を背負った絶世の美青年が現れ、創り出した光の剣で『傲慢』の枢機司教プライドの腕を切り落とす。

 その瞬間、切り裂かれたプライドの右腕が光に包まれて消滅した。


 《聖神顕現》によって顕現されるフォティゾの化身にはレイティアと魔力を共有するという能力がある。

 レイティアはその力を利用して光の剣に「崩魂霊聖剣メルトスピリチュアル・ブレイド」を付与した。


 その威力の制御はレイティアと従魔合神した白夜が行っている。極めて高い魔法制御能力を有する白夜とのコンビだからこそできる芸当だ。普通の従魔合神ではこれほど上手くはいかないだろう。

 ただ魔物の力を対象者の力と合算するだけのものだと思われがちだが、実は従魔合神は奥深い技術なのである。……ただ、圓との従魔合神の場合は彼女が制御を取った方が色々と都合が良いということで、力だけを圓に貸すという形を取るため、このような分担作業は行われないのだが。


「『なっ!? 私の腕を消した……だと!?』」


「二撃目です。崩魂霊聖剣メルトスピリチュアル・ブレイド


 二度目の斬撃は『傲慢』の枢機司教プライドの腰を両断し、下半身を消滅させた。

 傷口は見事に神聖属性の魔力で治癒されている……が、下半身と腕を失ったことでプライドの血液量が急速に低下――出血はしていないものの出血性ショックと同じ状況に陥り、命を落とした。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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