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Act.8-337 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.24

<三人称全知視点>


 アダム・アドミニスト・カリオストロ・フィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム・アルケミカル・ニコラス・フラメル・サン=ジェルマン・ヴァイスハウプト――クロヴェス王国、サイゲロン王国、ラヴェデナ王国、ジェイドルンド公国を支配する「アルケミカル黎明結社」の首魁である。

 その目的は生物学的に「完全なる命」、地球上のありとあらゆる生物の遺伝子を体内に持つ「究極生命体」の創造という、錬金術の究極目的の達成……ではあるが、彼自身はあり得ないほど膨大な魔力を持つ一方、錬金術のセンスや人望などは皆無に等しい。


 そんなアダムが錬金術師として活動するために選んだのは膨大な魔力によってあらゆる錬金術を無理矢理行使するという力業であり、その膨大な魔力によりある意味錬金術の奥義である黄金の錬成すらも可能としている。

 細かい作業は苦手としており、目的としている「究極生命体」の創造には全く役立たないものの、その力はシャマシュ教国で「ありふれた職業」の一つに数えられる錬金術師とは思えないほど超攻撃な使い方を可能としており、ある意味、錬金術師の常識を塗り替える者と言える。


 唯我独尊な性格のアダムは同じ冥黎域の十三使徒であるルイーズと協力することもなく、ルイーズがアイオーンの配下であるアントローポスを通じて事前に受け取っていた大量のアザトホートのコケラで作ったアザトホート・ゴーレムという化け物を複数従えて試したそうにウズウズしているのを無視してトーマスとレナード相手に一対二の激戦を繰り広げていた。


「喰らうがいい! 黄金錬成核融合ゴールデン・ニュークリアフュージョン!」


「おいおい、相変わらず無茶苦茶じゃねぇか! いや、避けられるけど……絶対、それ錬金術じゃねぇよな! ってか、それ受けてビクともしない王宮を守護している結界も異常だけど。ラングドン教授、大丈夫か?」


「ああ、何とかな。直撃を受ければ確実に死ぬだろうが、幸い、狙いが雑だから対処は簡単だ。……ところで、本物の錬金術とはどのようなものなのだ? ペドレリーア大陸には無かったので興味がある」


「さぁ、俺もよく知らないなぁ。圓さんに聞けば懇切丁寧に説明してくれると思うけど」


「はぁ……仕方ないわね。暇だから教えてあげるわ。錬金術とは、化学的手段を用いて卑金属から貴金属を精錬しようとする試みと様々な物質や人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成する試み、この二つのことを指す言葉よ。シャマシュ教国では、鍛冶屋的な意味合いで認識されているようだけど、本来なら造物主にも近づく偉大なる力を扱う職業ね。まあ、アダムはそのセンスを全く持たずに生まれてきたようだけど。間違っても、金属を錬成し武器を作るだけが錬金術ではないわ。……ちなみに、私が専門としているゴーレム作りも広義においては錬金術に区分される。……私は魔導工学と呼んでいるのだけど」


「丁寧なご説明痛み入るよ。もし可能であれば彼の魔力の限界を教えて頂けると助かるのだが」


「……知らないわ。アホみたいな魔力量だもの。だから、魔力を使い切らせて倒すみたいなことを考えるよりも、先に倒してしまう方が建設的よ」


 冗談で言ったトーマスだが、ルイーズが思ったよりも遥かに建設的なアドバイスをしたので驚いた。

 ルイーズはトーマスとレナードと敵対している。その彼女が、トーマスとレナードに塩を送るような真似をするとは思っていなかったのだ。


「私だって嫌いだもの、こいつ。協調性のカケラもない、死んだって誰からも悲しまれないような人よ。私が折角手に入れた新ゴーレムを試してみようと思ったのに……」


「……初対面だけど、俺とルイーズってなんか似ているよな?」


「……何言ってんの? まさか口説いているつもり? 裏切り者のレナード」


「……いや、そうじゃなくてな。俺は別に『這い寄る混沌の蛇』の思想に賛同して所属していた訳じゃないんだ。強い奴と戦いたい、その願いさえ叶えば後は何でもいいって思っていた。そんな時、圓さんに誘われて、『這い寄る混沌の蛇』よりも良い条件で雇ってくれるって言われたから圓についた、ただそれだけだ。ルイーズも、別にゴーレムの研究さえできれば、『這い寄る混沌の蛇』に拘る必要はないんじゃねぇか?」


「そうね……でも、魔導帝国サンクマキナの魔導研究所に居た頃は組織に億劫さを感じていたのよね。集団行動って苦手だし。……条件次第では移籍を考えてもいいけど」


「夜な夜な人体実験っていうのは流石に認められないと思うぜ?」


「しないわよ、もう人間を使ったゴーレムは作り尽くしたわ。……そうね、他に条件とかありそうかしら? 制約とか?」


「いや? ないと思うけどな。あの人はその人が望んだら、その願いが叶うようにあらゆる手を尽くしてくれる人だ。ただ、身内に激甘だからなぁ……まあ、万が一敵対したら命が無くなるのは覚悟した方がいいと思うぜ。それ以外は特に気にすることもないと思うけどなぁ」


「そうね……ところで、私と話していてもいいのかしら?」


「ああ……まあ、大体分かってきたからな」


 次々とツングースカ大爆発にも匹敵する高火力の火球をトーマスとレナードは躱していく。


(インターバルは……十秒か。レナード、次の黄金錬成を放った後が狙い目だ)


(――了解)


 互いに見気を利用して意思疎通を行い、アダムを撃破するタイミングを決めたレナードとトーマス。

 しかし、事はそう上手くは運ばないようで。


「――ッ! ちょこまかと! いいだろう! 見せてやる! 我が神話級(ゴッズ)の力を! 破滅もたらす主砲ブリューナク・ゲヴェーア!」


 アダムの神話級(ゴッズ)は一見すると円筒だ。しかし、「発生したエネルギーを収束させて放つ」という特殊な魔法術式が刻印されており、「黄金錬成核融合ゴールデン・ニュークリアフュージョン」で発生したエネルギーによって崩壊することなく収束してレーザーとして放つことができる。

 雑にぶっ飛ばす以外に使い道のない「黄金錬成核融合ゴールデン・ニュークリアフュージョン」のエネルギーに指向性を与えられるアダムにとってはある意味究極の兵器……なのだが、見気を使って的確に回避できる二人にとっては寧ろより回避が楽になっただけのようで――。


「滅びを迎えろッ! 『終焉の光斬』!」


倶利迦楼羅剣(クリカルラ)


 トーマスの無数の聖属性と火属性の魔力を融合した浄焔により生まれた剣によって腹部で綺麗に両断され、レナードの滅焉剣(フィニッシャー)の一撃を浴びて頭部が蒸発し、アダムは生き絶えた。



 東上空からブライトネス王国へと侵攻した『暴食』の枢機司教グラットン、『色欲』の枢機司教ラスト、『憤怒』の枢機司教はラース、『傲慢』の枢機司教プライド、『嫉妬』の枢機司教エンヴィーに対処するために派遣されたのはアレッサンドロス、コンラート、ヴェルナルド、ルイーゼ、ジョナサン、白夜、レイティア、ヨナタン、マルグリットゥ、カムノッツ、ペコラ、フィルミィ、アリシータだった。


 枢機司教グラットンは『深淵の大罪(アビス・シン)』と、枢機司教ラストは『夢魔の大罪(ドリーム・シン)』と、枢機司教グラットンは『激情の大罪(フューリー・シン)』と、枢機司教プライドは『支配の大罪(ドミネート・シン)』と、枢機司教エンヴィーは『嫉妬の大罪(インウィディア・シン)』と――全員がそれぞれ神人習合を使って『枢機大罪の魔モノ』と融合しており、万全の戦闘態勢を整えている。


「『あらあら、アタクシ達相手には百合薗圓が出る必要はないかと判断されたということかしら?』」


「そうなんじゃない? 僕から見ても君達弱そうに見えるよ? 殺し甲斐があってくれるといいんだけどね」


 妖艶な女性――ラストの美貌に全く靡かなかった……どころか、嗜虐心を僅かにくすぐられたらしいドS神父ヨナタンの言葉に、まさか言い返されるとは思わなかったのだろう、ラストの表情が苛立ちに歪む。


「『色欲』の権能は魅了と状態異常の誘発、後は変身能力なんだって? 魅了は聞かないようだし、状態異常さえ気をつければ後は簡単かな? この女、僕がもらっていいよね? レイティア最高司教臺下」


「……はぁ、どうぞお好きになさってください」


 レイティアが諦めの表情で許可を与えた直後、ヨナタンはいきなりラストに斬りかかった。


「『――ッ! 早いッ!』」


「まずは一撃」


 聖属性の魔力でラストの混沌の魔力を浄化しつつ一太刀浴びせ、ニヤリと笑うヨナタン。


「『でも、擦り傷よ! きゃははは! アンタ、案外大したことがないようね!』」


「はい、二撃目」


 二度目の攻撃もラストの頬を切る程度の軽い傷。

 言っていた割に大した実力じゃないと判断したラストは余裕の笑みを崩さない……が。


 虹色に輝く猛毒の剣は着実にラストの命を蝕んでいる。


七彩虹輝終焉刺突(アルク・アン・シエル)をとても悪趣味なやり方で使いますね」


 『暴食』の枢機司教グラットンに狙いを定め、「龍宿魔法(ドラゴン・フォース)」を使って最初からラファールの〝暴風竜〟の力をその身に宿して強固な風の結界で拘束――権能を一切使わせることなく(『暴食』の権能『真名』喰らいと『記憶』喰らいの発動条件は触れることだとアリシータは事前にメアレイズ経由で情報を得ていた)「暴風束ねし天龍の嵐剣(クサナギ)」で一刀両断するという普段のアリシータからは想像もつかないえげつない方法でグラットンを撃破したアリシータが、ヨナタンの手法を見て顔を顰める。


 「七彩虹輝終焉刺突(アルク・アン・シエル)」は肉体ではなく精神に作用する聖属性魔法剣術である。少しでも擦れば一撃をにカウントされ、七撃で必ず絶命する。蘇生魔法を使えば蘇生することは可能だが、死そのものは免れない。

 ラストは事の重大さに気づいていないのだろう。そして、彼の性格からしてその真実を突きつけるのは最後の一撃を放つ僅か前の筈だ。

 絶対に死を免れない状態になってから、真実を突きつけて絶望に落とす。ただ、その絶望の顔が見たいというだけでヨナタンは一撃で倒せる相手を甚振り続けている。……その光景は見ていて楽しいものではない。


 三撃、四撃、五撃、六撃とラストに斬痕が刻まれる。


「『きゃははは! 本当に大したことないわね! ザーコザーコ! アタクシの魅了が効かないから警戒したけど、恐るるに足らなかったわね!』」


「これでも僕って一応聖職者なんだよね。だから聖人に至る修行っていうのも一応ジョナサン神父、もう一人の僕と一緒に行ったんだよ。七彩虹輝終焉刺突(アルク・アン・シエル)も聖属性魔法の一つでね、七撃で必ず仕留めることができる。それこそ、擦り傷でも……さて、僕は今まで何撃君に斬撃を浴びせたっけ?」


「――ッ!? 六回斬撃を受けたわ! まさか、アタクシは後一撃で、必ず死ぬ!?」


「そう、その顔が見たかったんだよ。その顔が見たいから簡単に殺せるのに我慢した。さて、美女の恐怖っていうまあまあいいものも見れたし……死んでいいよ」


 ヨナタンは今度は一切油断なく剣を構え、恐怖で美貌が台無しになっているラストの心臓目掛けて神速の突きを放った。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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