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Act.8-335 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.22

<三人称全知視点>


白銀の龍騎士(オップナーティオ)!!」


 皇牙「白銀の龍騎士(オップナーティオ)」の元となったS級危険種の白竜と同化したオーレ=ルゲイエは、理性を完全に失い、カノープスに猛烈な勢いで尻尾を振り下ろす。


「……遅い」


 カノープスは剣すら使わず武装闘気と覇王の霸気を纏わせた鋭利に尖っていた爪が竜の尻尾を綺麗な断面で両断した。


「ただ巨大化しただけか。動きも精彩を欠いている。……興醒めだ」


 闇を纏わせた剣でカノープスは次々と白竜に斬撃を浴びせていく。知性を失って本能だけに頼ることになってしまったのが大きな敗因となってしまったのだろう、抵抗も一切できないまま白竜は命を落とした。


 一方、真紅のドレス姿の美女と戦っていたメネラオスというと……。


石化(ペトリファクション)


 宝石型の皇牙「大地の女王(ザ・グレートマザー)」の力でメネラオスを一瞬にして石化させる真紅のドレス姿の美女姿のオーレ=ルゲイエ。


「おほほほ! わたくしの『大地の女王(ザ・グレートマザー)』は最強――」


 高笑いしながら勝利宣言する真紅のドレス姿の美女姿のオーレ=ルゲイエだった……が、その表情が一瞬にして凍りつく。


「私は老人だ、全盛期に比べ、力が落ちたのは認めよう。しかし、ワシの霸気までは衰えてはいない。生半可な石化などは効かんよ!」


 全身を石化される前に霸気を放って石化を解いたメネラオスは、地を蹴って加速――異様に厚みのある黄色く鋭い爪で真紅のドレス姿の美女姿のオーレ=ルゲイエの頭を落とした。

 宙を舞った首が、ゴトリと床に落ちた。数秒遅れて、ドレス姿の首無しの死体が膝をつき、続いてその胴が床に伏す。

 メネラオスは血に濡れた『大地の女王(ザ・グレートマザー)』を無造作に四次元空間へと放り込んだ。


 新種の皇牙を持ち帰れば陛下の親友であるカノープスの娘も喜ぶだろう。

 それに、この技術が何らかの新しい国防の力を生み出すかもしれない……これについては、メネラオスの霸気で無効化できてしまう程度のものだったので、あまり期待はできないかもしれないが。


 立て続けにルゲイエ四天王のうち三人を撃破され、グランディネのクローンも危機感を抱いたのだろう。

 グランディネのクローンは自身の「氷寒宝石ニブルハイム・ユヴェーレン」だけに頼らず「心無き天使のウィング・オブ・ミッシング・破滅の翼(ハート・エンジェル)」を使って飛翔し、空中から羽を雨のように降らせると共に「妖星降嵐アースミーティア・ストーム」をベルデクトへと放った。


「それでは、私は殺せぬよ」


 見気を駆使して「妖星降嵐アースミーティア・ストーム」で生じた無数の隕石と「心無き天使のウィング・オブ・ミッシング・破滅の翼(ハート・エンジェル)」によって生じた小さな天使達を全て躱すと、ベルデクトは闇の魔力を纏わせた剣でグランディネのクローンに斬撃を浴びせる。


氷域世界グラキエース・ワールド……効かないだと!?」


 斬撃で剣の刀身で触れた瞬間に冷気を流し込んでベルデクトを氷漬けにしようと企んだグランディネのクローンだが、纏っていた武装闘気と覇王の霸気に阻まれて凍結は悉く無効化された。

 更に、「氷寒宝石ニブルハイム・ユヴェーレン」によって自身の身体を氷に変え、破片を冷気で結合させて復活を目論んだグランディネのクローンも実体を捉える武装闘気の効果で氷になることはできず、真っ二つに両断される。


「『氷寒宝石ニブルハイム・ユヴェーレン』といったか……これは必要無さそうだ」


 あっさりと武装闘気と覇王の覇気を纏わせた剣で「氷寒宝石ニブルハイム・ユヴェーレン」を粉砕し、ベルデクトはカノープス、メネラオスと共に地下研究所の最奥へと向かう。

 そこに待ち受けていたのは――。


『我が四天王を倒し、ここまで辿りついたか。……もし、ここに辿り着く者がいれば、それは百合薗圓だと思っていたが』


 地下研究室でも一際大きい円形闘技場――その天井の約三分の二の背丈という異常な高さの人型の金属塊。

 ローザがかつてルヴェリオス帝国で戦った三代皇帝の「機始皇帝(ザ・エンペラー)」を彷彿とさせる巨大なロボットが、ギギギと駆動音を立てながら立ち上がる。


『我こそがルヴェリオス帝国の四代目皇帝――オーレ=ルゲイエである! この「機始皇帝(ザ・エンペラー)」のノウハウを生かして生み出された皇帝器「機至高帝(マッド・エンペラー)」こそが、我が権力の象徴! 我は現人神なり! ルヴェリオス帝国は滅び、共和国となった。しかし、それはトレディチ=イシュケリヨトの弱さが招いた結果である! 我はルヴェリオス帝国の権力の象徴である『管理者権限』を持つルヴェリオス帝国皇帝の正当な後継者である! この圧倒的な力でルヴェリオス共和国を滅ぼし、我の新たな世を作るのだ! この力でブライトネス王国もフォルトナ王国も滅ぼし、百合薗圓の『管理者権限』も奪い、いずれはルヴェリオス帝国の四代目皇帝から世界の神へと至る……ッ! 何がおかしい!!』


「いや、随分と身の程を知らないと思ってね。……その程度の力で私の娘に、ローザに勝てるとでも思っているのかい?」


「確かに儂はかつてお前に負けた。無数のオーレ=ルゲイエによって、ブライトネス王国は滅んだ。……しかし、今のブライトネス王国はかつてのブライトネス王国ではない。――滅びはせんし、滅ぼさせはせんよ」


「闇魔法/闇纏暗殺剣ヤミマトウアンサツケン黒一文字(クロイチモンジ)


「「暗黒魔法-鬼哭怨喰(メメント・モリ)」」


 カノープスが闇の魔力を纏わせた剣で飛ぶ斬撃を放ち、メネラオスとベルデクトが鬼哭門から「虚無の怨霊」を解き放つ。

 これほどの攻撃を浴びれば流石のオーレ=ルゲイエも耐え切れない……と思いきや、「機至高帝(マッド・エンペラー)」は全くの無傷でカノープスへと拳を振るった。


『フォフォフォフォ! 『機至高帝(マッド・エンペラー)』には並行世界に存在する同一別個体を生贄としてダメージを肩代わりさせるという最強の力がある! 我にダメージを与えるなど不可能! ドリャドリャドリャドリャ』


 ドリャドリャドリャドリャと雄叫びを上げながら繰り出される『機至高帝(マッド・エンペラー)」のラッシュはカノープスには一撃も当たらない。とはいえ、カノープス達の攻撃でダメージを通すことができないというのは厄介だ。


「闇魔法/闇牙黒竜撃(コクリュウノキバ)


 カノープスは漆黒の竜を闇の魔力によって顕現し、「機至高帝(マッド・エンペラー)」へと嗾ける。


『フォフォフォフォ! だから言っておろう! 我に攻撃は……な、なぬ!?』


 漆黒の竜の牙が「機至高帝(マッド・エンペラー)」の腕を打ち砕いた。

 「並行世界に存在する同一別個体を生贄としてダメージを肩代わりさせる」という能力が発動せず、「機至高帝(マッド・エンペラー)」の腕が床へと落下する。


「やはり、時空魔法を組み合わせることで『機至高帝(マッド・エンペラー)』にダメージを与えることができるようだね。――予想通りだ」


『……くっ、だが、まだ負けた訳ではない! 我が神話級(ゴッズ)――皇帝器「飛翔時空剣フラガ・シャルラッハロート」は冥黎域の十三使徒の一人で初代皇帝から帝器「時空裂神剣・神御前」を下賜された英雄ブランカルタ=ブロッサムの愛刀の技術と皇帝器「煌帝剣・時空穿(コンモドゥス)」を応用して作った飛翔する剣! 数秒の時間と数センチの空間を渡る帝器と時空すらも両断する皇帝器「煌帝剣・時空穿(コンモドゥス)」を融合した我が最高傑作! それが十刀! これこそが我の本当の本気である! 我が最強の力を前に平伏せ!』


 カノープス達を仕留るべく「飛翔時空剣フラガ・シャルラッハロート」を縦横無尽に踊らせるオーレ=ルゲイエ。

 一方、カノープス達は「飛翔時空剣フラガ・シャルラッハロート」を無視して直線距離でオーレ=ルゲイエに迫る。


『――ッ! 忌々しい! 我の「飛翔時空剣フラガ・シャルラッハロート」を無視するなど!』


「生憎と私達が君の大道芸に付き合ってあげる義理はないのでね。……次で終わらせるよ。闇魔法/闇纏暗殺剣ヤミマトウアンサツケン黒一文字(クロイチモンジ)


「「暗黒魔法-鬼哭怨喰(メメント・モリ)」」


 カノープスが闇の魔力を纏わせた剣で飛ぶ斬撃を放ち、メネラオスとベルデクトが鬼哭門から「虚無の怨霊」を解き放つ。

 先程はオーレ=ルゲイエに通用しなかった三人の攻撃だが、時空属性が付与されたことで並行世界に存在する同一別個体を生贄としてダメージを肩代わりさせることができなくなり、「機至高帝(マッド・エンペラー)」に真一文字の傷が刻まれ、コアである巨大な脳味噌が露出したところに「虚無の怨霊」が雪崩れ込み、オーレ=ルゲイエの記憶と存在を抹消した。


 まるでそこだけ全てが消し去られたように「機至高帝(マッド・エンペラー)」の腹にポッカリと大穴が開く。

 それと同時刻、ブライトネス王国の王都を襲っていたオーレ=ルゲイエ達が皆一斉に意識を失って糸の切れた人形のように頽れた。


「……どれほど愉しい復讐ができるかと思ったが口ほどにも無かったようだ。非常に残念だよ」


 因縁の敵オーレ=ルゲイエの討伐が思っていたよりも遥かにあっさりと片付いてしまったのでベルデクトは少々不満そうだったが、何はともあれこれでブライトネス王国を襲うオーレ=ルゲイエの軍勢は完全に撃破された。

 カノープス達は「飛翔時空剣フラガ・シャルラッハロート」を回収するとブライトネス王国へと帰還する。

 そして、ネスト達と共に天使軍との戦いに参戦し、カノープス達は多くの天使を討ち取ったのだった。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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