表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
760/1360

Act.8-332 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.19

<三人称全知視点>


 冥黎域の十三使徒の一人オーレ=ルゲイエの軍勢は、別の世界線のブライトネス王国を滅ぼした時よりも多い三千万体――この戦争でも一、二を争う大軍勢だった。

 その出自は様々だ。オーレ=ルゲイエが器にするために攫った者、様々な遺伝子を掛け合わせて創り出したデザイナーベイビーを成長させることで誕生した個体、そしてオーレ=ルゲイエ自身のクローン。


 この三千万体というのは、オーレ=ルゲイエが長い時間を掛けて少しずつ増やしてきた兵力であった。それを今回の戦争に全て注ぎ込んでいるというのは、それだけ今回の戦争に賭けていることの裏返しだ。

 オーレ=ルゲイエ自身も『管理者権限』を狙っている。『這い寄る混沌の蛇』の首魁に渡る前に『管理者権限』を手に入れ、そのまま『這い寄る混沌の蛇』を裏切って独立することを計画していた。


 それに、オーレ=ルゲイエが個人的に百合薗圓に対して並々ならぬ執着を持っているということもこれだけの戦力の投下を踏み切った理由の一つだった。

 かつて、ルヴェリオス帝国の「皇帝の魔剣エンペラーズ・レイヴンテイン」だったオーレ=ルゲイエ――彼のクローンで指先の一つだった男は百合薗圓に殺された。その結果、帝国の皇帝を殺し、『管理者権限』を奪いつつルヴェリオス帝国そのものを支配し、皇帝として君臨するという夢は破れたのだ。


 百合薗圓を滅ぼし、ルヴェリオス帝国の皇帝が持っていた『管理者権限』を奪い、そのついでに圓が持っている『管理者権限』を根こそぎ手に入れることでルヴェリオス帝国で受けた借りを返す。それが、今回オーレ=ルゲイエが参戦した最大の理由である。


 しかし、オーレ=ルゲイエの目論見は外れた。

 三千万のオーレ=ルゲイエの前に立ち塞がったのはカノープス=ラピスラズリ公爵、ネスト=ラピスラズリ次期公爵、ヘレナ=グラナス、エリシェア=ハーフィリア、カレン=エレオノーラ、ナディア=ファレンシエント、ニーナ=ファレンシエント、クララ=ホグウィード、フィーロ=トラモント、ブルーベル=ヒュミラティ、ジーノ=ハーフィリア、ヒース=グラナス、ヘイズ=ネコルノミア、サリア=ヌエンハルス、スティーブンス=ウィルクス、ジェイコブ=ジェンデイブ、ジミニー=ジョータス、アルバート=アーヴァンス、パペット=ウィズリー、カッペ=マージェスト、ヘクトアール=ヴァンジェント、フェイトーン=グラダース、『剣聖』ダラス=マクシミラン、メネラオス=ラピスラズリ先代公爵、リスティナ=ラピスラズリ先代公爵夫人、マナーリン=ウィルクス、マイル=スクトゥム、クイネラ=エルファバ、アンタレス=スコルピヨン、シュトルメルト=アーヴァンス、ローランド=コーウィッシュ、ベルデクト・ランドロフ、アリエル・ツェペシュ、ミッチェル・レイホルン、レイチェル・レイホルン、エルネスティ・ライファレド、アノルド・ローグロード、キュラソー=バラライカ侯爵、ジュラ=バーネット伯爵、ハーベイ=ウォールバンガー子爵、ティフィナ=クレオパトラ女男爵――ラピスラズリ公爵家、先代ラピスラズリ公爵家の全戦力、『瑠璃色の影ラピスラズリ・シェイド』の全戦力、バラライカ侯爵家、バーネット伯爵家、ウォールバンガー子爵家、クレオパトラ男爵家の各当主というこちらもブライトネス王国の闇を担う一大勢力だ。


「――ッ! 百合薗圓! 奴の持つ『管理者権限』を奪い、我は世界の覇者へと、そして神へとまた一歩近づく! 我らは此奴らの相手をしている暇などないのだ!! そうか、我など相手をするに値しないというのか! ならば、この国を全て蹂躙し、是が非でも我の方に注目を向けさせてやる!」


「……随分と勝手なことを言ってくれるね。私の娘に宣戦布告をするだけでなく、この国を滅ぼすと……度し難い!! 我らがいる限り、この国を不届き者に蹂躙させはしない!」


「「よく言ったカノープス! それでこそ、【血塗れ公爵】じゃ」」


『盛り上がっているところ、申し訳ないでございますがオーレ=ルゲイエの本体の居場所が判明したでございます! 情報提供主はビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局局長殿、工作員を派遣して捜索していたそうでございますが、つい先ほど脳内に埋め込まれた小型の制御装置のアルゴリズムを読み取り、その送受信先の特定が完了したようでございます! 場所は旧ルヴェリオス帝国の辺境にある廃街マルシャワの旧領主館の地下、住民が次々と失踪事件を起こした結果、廃棄された街のようでございます! 恐らく、オーレ=ルゲイエが実験のために選んだ場所で、その失踪事件もオーレ=ルゲイエの開発に深い関わりがあると思われるでございます!』


「……メネラオスお父様、ベルデクトお父様、ということでございますがどうなさいますか?」


「王都の守りは大切じゃが、儂は因縁あるオーレ=ルゲイエの本体をこの手で抹殺したい」


「ベルデクトもこう言っている。……儂はここを任せても良いと思っている。儂、ベルデクト、そしてカノープスの少数精鋭でオーレ=ルゲイエの本体を叩く、これが一番安心じゃと思うのだが」


「異論はありません。ということで、ネスト、この場の指揮は君に任せるよ。……次期当主としてその力、存分に奮ってくれ」


「……僕は別に【ブライトネス王家の裏の剣】を継ぐつもりはないんですが、義姉さんに弓引く者達は僕の手で抹殺したいと思っていますから、ここでオーレ=ルゲイエ軍の討伐の指揮を取ります。……と言っても指揮などせずとも手前勝ってに動く連中ばかりだとは思いますが。……義姉さんには指一本触れさせません。ここで、こいつらは仕留めます」


「……でもなぁ、坊ちゃん。……そのローザお嬢様、俺らじゃ勝てない奴と戦っているだよなぁ」


「……まあ、ヘクトアールさんの仰る通りなのが辛いところですね。一人でも死亡後に発動する自動蘇生は必須、二人出てきたら死亡後に発動する自動蘇生があっても死ねるって義姉さんも笑いながら言っていましたから。……そもそも、あの義姉さんがバフを盛りまくって攻撃するっていう時点で私達の理解の及ばない化け物ですし……義姉さんが相手をしてくれなかったら今頃王都は壊滅していますね」


 ブライトネス王国の戦力は尋常ならざる成長を遂げている……が、それでも勝てないのが真聖なる神々(プレーローマ)という存在だ。

 『管理者権限』を持つ唯一神すら任される立場になったというのは嬉しい反面、まだまだ本当の意味で圓から頼りにされてはいないのだと自覚し、ネストは苦笑いを浮かべた。


「……適材適所だよ、ネスト。我々は我々の任された仕事をする。完全に頼りにされていないという訳ではないのだからね。……とはいえ、この現状に不満を持っているというのは良く分かるよ。【血塗れ公爵】として、【ブライトネス王家の裏の剣】を束ねる者として、自らの手でブライトネス王国の存亡を賭けた真の戦いに身を投じられないのは辛いことだ。だが、それをクヨクヨ考えても仕方のないことだ。我々は我々の役目を果たそう」


 カノープス、メネラオス、ベルデクトの三人はネスト達にその場を任せるとブライトネス王国の王都の中心街に設置されている魔法門を経由してルヴェリオス共和国の首都へと転移した。



「幻惑の森――幻惑爆散! 暗殺脚技弍式 嵐脚刃旋」


 誰よりも先にオーレ=ルゲイエへの攻撃を開始したのはカレンだった。

 水属性を応用した幻惑魔法で虚像を二十体作り上げ、水を利用した幻惑の虚像のうち十八体を、四散させて小さな礫に変える。

 その礫全てに神光闘気と武装闘気を大量に込めて超高速で射出すると、武装闘気を纏わせた脚で次々と手や足を刃に見立て、超人的脚力や腕力で放つ飛ぶ斬撃――刃躰を駆使して斬撃を礫を放ったのとはまた別のオーレ=ルゲイエへと放つ。


「「「「「「靂電障壁イレクトリシティ・バリア」」」」」」


 狙われたオーレ=ルゲイエは一斉に雷属性の魔力を障壁の形に展開するが、武装闘気でコーティングされた礫はオーレ=ルゲイエの心の臓を貫き、飛ぶ斬撃の一部はオーレ=ルゲイエの首を刎ねて絶命させた。


「「「「「焔獄の鬼神パーガトリー・デーモン」」」」」


「「「「「凍界の魔神(ニヴルヘル・デヴィル)」」」」」


「「「「「雷裁の女神セレスティア・ゴッデス」」」」」


 とはいえ、まだまだオーレ=ルゲイエ軍の方が圧倒的大多数だ。更にここで戦力を拡大しようとオーレ=ルゲイエ達は燃える焔の巨大と翼を持つ、槍を装備した西洋の竜の如き姿をした神、氷の鎧を纏った六本の腕を持つ、四つの翼を生やした騎士風の神、羽衣のような薄物を身に纏った人間の女性のような姿をした女神を五体ずつ創り上げる。


「なかなか強力な魔法のようですな。――しかし、武装闘気を纏い、実体のないものも斬れるようになった我らにとってはただのデカブツ。倒すのは実に容易い」


 一瞬にして十五体の炎や氷や雷で象られた神や女神の像が真っ二つに両断され、次いで縦にも斬撃が走り、十字に切り裂かれて四散した。

 素早く、鋭く、そして重く豪快な斬撃を放ったのはダラス=マクシミラン――亡国の元『剣聖』だ。

 魂魄の霸気《羅刹那》を使わずとも、魔法師相手に一切の魔法の適性を持たぬまま戦い抜いてきた『剣聖』の斬撃の速度はオーレ=ルゲイエの生み出した自律魔法の反射速度を遥かに超えている。

 オーレ=ルゲイエが大きな被害を出すべく創り上げた魔法はたった一人の剣士によって呆気なく葬り去られたのだ。


 更にダラスは俊身と空歩を駆使して一度も地上に降りることなくオーレ=ルゲイエをすれ違い様に斬り伏せていく。


 ダラスに続くようにエリシェアとクイネラが参戦し、武装闘気を纏った特注のブーツで次々とオーレ=ルゲイエを撃破していく。


 マナーリンとミッチェルが『明星の星球式鎖鎚矛モーニングフレイル・クラッシャー』を放ってオーレ=ルゲイエの頭を潰し、パッと花が咲くように凄惨な戦いを繰り広げていく姿を見て、マイルとレイチェルはうっとりとしながら【ククリナイフ創造 Ⅹ+Phantasmal】で創り上げたククリナイフでオーレ=ルゲイエの腑を抉り出した。


 パペットが二メートルを超える『黒刃天目刀-首斬-』を軽々と振るってオーレ=ルゲイエの首を落とし、ヘレナが【銃火器創造Ⅹ+Phantasmal】で創り上げた二丁拳銃で次々とオーレ=ルゲイエの心の臓を撃ち抜き、仕留めていく。


 ナディアとニーナが嫣然と微笑みながら『災禍の死神鎌カタストロフ・リッパー』を振るってオーレ=ルゲイエの首を落とし、『明星の星球式鎖鎚矛モーニングフレイル・クラッシャー』を放ってオーレ=ルゲイエの頭を潰していく。


 フィーロが設置した『万物切断千変万化-レッドドラゴーンプラティナクロース-』によってオーレ=ルゲイエが切り刻まれ、肉片となって地上に落下した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ