Act.8-330 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.17
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>
『いやぁ、お嬢さんには敵いまへんわ』
『マネマネカード』の効果を解除し、姿を見せたのは不思議なほど存在感のない黒髪糸目のハンチング帽を被り、紺色のだぼっとした服を着て前掛けを下げた行商人の身なりで風呂敷のような唐草模様の入った帆布でできたリュックサックを背負った男。
国際犯罪組織『阿羅覇刃鬼』のボスの定吉――ウンブラさんだった。
『で、なんでバレたんやで?』
「『マネマネカード』を使うように仕向けたのはボクだからねぇ。後はまあ、過去数ヶ月の記憶を遡って変装前の時と変装後の時に明らかに変化が出ているメンバーを探ったっていうただそれだけ。正直、ボクも定吉さんにこうして会えるのを楽しみにしていたよ。……と言っても、今回は生身で来てくれていないようだし、他にも用事があるんだよねぇ、色々と。もし、良かったら今度生身でお茶をしに来てくれると嬉しいなぁ、個人的に定吉さんに話しておきたいことはあるし。それによって今後の動きが変わってくるからねぇ。まあ、アイオーンもこのタイミングで切り札の一つを切ってきたくないだろうし、ボクの方もあまり都合がよろしくない。お互いに手を出さないという立場でお話しできる機会を持てたらいいなぁ、って思っているってアイオーンに伝えて置いてもらえない?」
『旦那さんに話しときます。……しかし、いつまでアネモネの姿でいるつもりなんやねん? アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラスと使い分けとるようですけど、実際、リーリエが貴女の正体やろ? サブアカウントで勝てるっちゅう自信があるっちゅうことでっか? つくづくうちも舐められたものやね』
「お望み通り、リーリエの姿でお相手してあげるよ。……もっとも、君の相手はボクじゃないけどねぇ!」
まだ避難は完全に完了していない。園遊会の会場には非戦闘員の来客やブライトネス王国の貴族達の姿がある。
こうした中でアネモネの正体がリーリエだということを示せば、その情報は一気に知れ渡るだろう。
……そう、この定吉さんの発言は想定の範囲内。ボクはここで定吉さんと相対すると決めた時点でアネモネ=リーリエであり、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラスとも同一人物であるという事実は明らかにするつもりでいた。
まあ、その事実を明かして実際に何がどう変わるのかは明かした後のお楽しみ……だけど、恐らくアネモネに対する攻撃的な発言は完全に無くなるんじゃないかな? 四つの宗教を敵に回すことになるし。
……スティーリアの活躍でそういった反応をする貴族は元々かなり減ってきてはいたんだけど、これがきっとトドメになるだろうねぇ。
リーリエにアカウントをチェンジして、吸血姫の固有技能「吸血姫の翼」を発動して翼を使って飛翔し、『統合アイテムストレージ』から取り出した「E.DEVISE」を掛け、『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』を鞘から抜き払った。
「とっとと戦争の狼煙を上げてもらってもいいかな? ……どうせ侵入した定吉さんが何かしらの行動を起こした瞬間に、それを合図としてブライトネス王国に戦争を仕掛けてくるつもりだったんでしょう?」
『流石はお嬢さん、敵いまへんな。……それじゃあ、遠慮なく始めさせて頂きますわ』
定吉がどこからともなく取り出したカードを宙に放り投げると、カードが中空に吸い込まれるように消えていった。
そして、顕れたのは五つの天空の城――そして、無数に現れ、地上へと攻めてくる天使の群れ。
「……『オーバーハンドレッドレイド:天軍降臨』。それも、五回分……どうやら、アイオーンには既存のレイドを含めたクエストを再現する力もあるみたいだねぇ。だけど、問題はそっちじゃなくて……」
ボクは見気を使ってブライトネス王国王都――王宮の中庭へと迫り来る全戦力の情報を把握。そして、音属性の魔法で拡声し――。
「全多種族同盟軍戦力に次ぐ! 定吉は『オーバーハンドレッドレイド:天軍降臨』を発動し、五つの天空城を顕現した! 更に各方向から次々と戦力がこのブライトネス王国王宮へと迫ってきている! 以後、作戦指揮はメアレイズ閣下が担当する! これはブライトネス王国、ひいては多種族同盟諸国の存亡をかけた戦いだ! 負ければ多種族同盟秩序はこのブライトネス王国と共に滅ぶことになるだろう! 各人、それをよく心に刻んで戦いに臨むように!」
『軍の全権を引き受けたメアレイズでございます! これより、作戦行動に入るでございます! 《天ツ瞳》で確認した敵は、西上空からアントローポス、エクレシア、アザトホートのコケラの大群、その数四万、『永劫の虚無』。東上空から『暴食』の枢機司教はグラットン、『色欲』の枢機司教はラスト、『傲慢』の枢機司教はプライド、『嫉妬』の枢機司教はエンヴィー。北上空から刻曜黒華率いる黒の使徒達、南方向から『最初の天恵の巫女』イヴ=マーキュリー、無数のオーレ=ルゲイエ達、冥黎域の十三使徒のアダム・アドミニスト・カリオストロ・フィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム・アルケミカル・ニコラス・フラメル・サン=ジェルマン・ヴァイスハウプト、冥黎域の十三使徒のルイーズ・ヘルメス=トリスメギストスとゴーレム部隊、その他十人の「天恵の巫女」達と魔法少女真白雪菜の姿がありましたでございます! そして天空城、忘却の河のレーテ、ウンブラ、✧Étoile✧と(´・ω・`)、モェビウスが『オーバーハンドレッドレイド:天軍降臨』のレイドボス『メタトロン』と従魔合神をしてそれぞれの城で待ち構えていることが判明したでございます! このうち、『永劫の虚無』、四人の枢機司教、刻曜黒華、イヴ=マーキュリーは『管理者権限』を有しているので死体を残す形で必ず討伐して欲しいでございます! これより、各メンバーの割り振りをしていくでございます! オーレ=ルゲイエの討伐はご希望に沿う形でラピスラズリ公爵家、先代ラピスラズリ公爵家の全戦力、『瑠璃色の影』の全戦力、バラライカ侯爵家、バーネット伯爵家、ウォールバンガー子爵家、クレオパトラ男爵家の各当主にお願いするでございます! 冥黎域の十三使徒のアダム・アドミニスト・カリオストロ・フィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム・アルケミカル・ニコラス・フラメル・サン=ジェルマン・ヴァイスハウプト、冥黎域の十三使徒のルイーズ・ヘルメス=トリスメギストスとゴーレム部隊の討伐はトーマス・ラングドン、レナード=テンガロンの両名にお願いするでございます! 刻曜黒華率いる黒の使徒達は美青木汀、クレール=ナイトメアブラック、デルフィーナ=イシュケリヨト、紫の女神アメジスタに、『魔界教』の枢機司教と魔モノ達はアレッサンドロス=テオドール、コンラート=シラクサ、ヴェルナルド=グロリアカンザス、ルイーゼ=プファルツ、ジョナサン・リッシュモン、マリシア=ミッドナイトサン、レイティア=ベネディクトゥス、ヨナタン=サンティエ、マルグリットゥ=グリシーヌ法皇、カムノッツ=澄月=トリアンタ=ラゴモーファ、ペコラ=綿毛=ニヴェア=オウィス、フィルミィ=木実=フォチィル=スキウールス、アリシータ=エメラインにそれぞれお願いするでございます! イヴ=マーキュリーの討伐はアスカリッド・ブラッドリリィ・オルゴーゥン、エリーザベト=グロリアカンザス、アゴーギク=アンダースン、リサーナ=ノーヴェンバー、ケプラー=ゲルン、ヒョッドル=コーニッシュ、シュピーゲル=プラードン、カトリーヌ=デーリアス、イリーナ=シャルラッハ、プルウィア=ピオッジャ、ネーラ=スペッサルティン、ヴァルナー=ファーフナにお願いするでございます! 真白雪菜、天恵の巫女達への対処はエイミーン=メグメル、ミスルトウ=オミェーラ、バルトロメオ=ブライトネス、クィレル=ルーセント、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、榊、槐、椿、榎、楸、柊にお願いするでございます! 『永劫の虚無』の討伐は〝火竜帝〟カリエンテ=カロル・ヴルカーノ、〝白氷竜〟スティーリア=グラセ・フリーレン=グラキエース、〝暴風竜〟ラファール=ウラガン=トゥールビヨン、琉璃、紅羽、ホネスト=ブラックストーン、ミーフィリア=ナノーグにお願いするでございます! 続いて、天空城の内部に突入するメンバーを発表するでございます! 忘却の河のレーテの討伐はラインヴェルド=ブライトネス、オルパタータダ=フォルトナ、アクア=テネーブル、ディラン・ヴァルグファウトス・テネーブルに、ウンブラの討伐はヴェルディエ=拳清=ラシェッド=ティグロン、ディグラン=ヴォン=ファデル=ダ=ド=ワンド、バダヴァロート=アムピトリーテー、レジーナ=R=ニウェウス、ユリア=ニウェウスに、✧Étoile✧と(´・ω・`)の討伐はマグノーリエ=メグメル、プリムヴェール=オミェーラ、リィルティーナ=レイフォートン、ナトゥーフ=ドランバルド、オリヴィア=ドランバルドに、モェビウスの討伐はオニキス=コールサック、ファント=アトランタ、ウォスカー=アルヴァレス、ファイス=シュテルツキン、フレデリカ=エーデヴァイズ、ジャスティーナ=サンティエ、ティアミリス・エトワ・フィートランド、バチスト=シルフスにお願いするでございます! 今名前を呼ばれなかった面々は全員防衛に回ってもらうでございます! 各々、持ち場での戦闘が終了した時点で、各自の判断でフォローが必要そうなところへのフォローをお願いするでございます!』
さて、後はメアレイズ達に任せて……ボクは先にアントローポスとエクレシア――二体の真聖なる神々の相手に集中しないとねぇ。
コイツらの討伐はボク以外には厳しいし。
「『E.DEVISE』と『管理者権限』の接続を確認、『異世界ユーニファイドサーバー』へのログインを完了。『L.ドメイン』のゲートを顕現――『管理者権限』により『L.ドメイン』を実体化……完了。さて、アントローポス、エクレシア、お前らはボクの討伐命令をアイオーンから受けているんでしょう? 手っ取り早く二対一で相手してあげるよ」
『エンノイアが倒されたのは大誤算……だが、まさか、我々を二人同時に相手しようとは、随分と身の程知らずな! 望み通り、二人でお前を滅ぼし、お前の大切なもの全てを悉く破壊し尽くしてやる! 天命は二度も覆えさせん!』
ボクが上空に出現させた『L.ドメイン』へのゲートを通ると、アントローポス、エクレシアもボクを追うようにゲートの中に突入した。
よし、これでアントローポスとエクレシアはボクを倒さない限り『L.ドメイン』を脱出できなくなった。
今回の『L.ドメイン』はこれまでの模擬戦用のものとは異なり、現実世界と同じく実際にダメージを受ける。……そうじゃなかったらアントローポスとエクレシアにダメージを与えられないからねぇ。
この『L.ドメイン』の展開はボク達の戦いの余波で園遊会の会場に影響が及ばないため。……これで、あの海上でのエンノイアとの戦いの時のような状況を創り上げることができた。
後は、アントローポスとエクレシアを倒すだけだ。
『『アイオーンの神域』』
アントローポスとエクレシアが「アイオーンの神域」を発動し、いよいよ戦いの幕が切って落とされる。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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