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Act.8-326 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.13

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>


 あーその後は、まあお察しの通りですよ。

 乱入したエディルにエルヴィーラが驚き、そして泣きつき「違うの、これは違うの!」ってお約束の台詞を吐き、その背後にボクの姿を見つけてドスが利いた声で「浮気かコノヤロウ」ってキレ始め、エルヴィーラの元カレのブラックソニア辺境伯名代がエディルに向かって「てめぇがエルヴィーラを誑かした野郎か!!」とか修羅場勃発だよ。……とりあえず。


「エディルさん? 私、ちゃんと言いましたよね? 私が許可するまで動くなって。……その些細な命令さえもロクに聞けなくてよく近衛騎士なんてやれてますねぇ。……この駄犬が」


「痛い痛い痛い痛い! やめてくれ! 頭が割れる!! ってか、一体どこからそんな力が!!」


「このまま頭蓋骨かち割って脳味噌と脳漿ぶちまけてやってもいいんですよ。……だから嫌だったんだよ、話拗れるから」


 満面の笑みでエディルの頭をアイアンクローするボクを見て、エルヴィーラとブラックソニア辺境伯名代のデガンド=ガルフォロが揃って固まった。


「ああ、逃げようとすんなよ。まあ、どのみち逃げられないけどねぇ、この辺り一帯にいくつか術を掛けたから。さて、エルヴィーラ、君には後ほどゆっくり聞きたいことがある。正直に色々と話してくれると本当に手間が省けて助かるんだけど、そうでなければ……どうしようねぇ? 例えば、指を一本ずつ切り落としていくとかどうだろう? まあ、今はそんな方法に頼らなくてもいくらでもスマートな拷問方法はあるんだけどねぇ」


「……マリエッタが言っていた通りね。悪役令嬢ローザ=ラピスラズリ」


「悪役令嬢? はぁ……そんな小物と一緒にしてもらっては困るよ。程度の低い悪戯をして、ヒロインを虐めて最後は断罪される踏み台……君はマリエッタからそう聞かされていたんじゃないかな? でもさぁ、ボクってそういうの嫌いなんだよねぇ。だってさぁ、邪魔なら直接ボコしたり殺した方が早くない? そっちの方が建設的でしょう?」


 エディル、エルヴィーラ、デガンドの三人が信じられないという顔でボクに視線を向けた。


「まあ、ボクも流石に武力で全てを解決するつもりはないよ。ボクが力を振るうのは、いつもボクの大切な人達が傷つけられた時なんだよ。……ボクが誹謗中傷されることなら甘んじて受ける。でも、ボクの大切な人達に手を出されたら、ボクだって自分の理性で押さえつけられる自信はないんだ。……エルヴィーラ、今回は君が被害者かもしれないけど、そもそもこれは君の蒔いた種でしょう? 辺境ではデガンドを誘惑し、辺境から推薦されて王城の侍女になってからはエディル、そしてそこからアルベルトに乗り換えた。まあ、成り上がりの手段として効果的なものだったってことに関しては否定できないけどさぁ。蒔いた種から生えたものは、いずれ自分で刈り取ることになるものだよ。因果は巡るものなんだ」


「まさか、お前、その騎士だけじゃなくて別の男にも誘惑をしていたのか!?」


「何故、それをここで言うのよ! 貴女だって公爵令嬢の立場を利用してあの騎士の逃げ道を奪ったんでしょう! 性悪な貴女ならやりそうよね!」


「……だからさぁ、なんでボクがアルベルトのことを好きにならないといけないんだって。確かに彼はイケメンだ。女性陣からの人気は高い。でもさぁ、だからって全ての女性が彼との恋に落ちるとでも? 彼があらゆる場面で選ぶ側だと、本気で思っているの? ……イケメンよりも可愛い女の子の方が好みなのに、該当者の少なさ! ……ここから先の話は極秘のものなので、広めればその首が物理的に飛ぶと思ってもらいたい。アルベルトをボクの婚約者に据えようとしているのはラインヴェルド国王陛下だよ。彼はアルベルトを利用して、降嫁後の姫殿下とボクの間に確かな繋がりを残そうとしている。義理の姉と妹という関係をねぇ。そして、クソ陛下の目論見通り、アルベルトはボクに興味を持ったようだ。……有難迷惑だよ、正直。なんで、好きでもない人が原因で針の筵にされないといけないのか。この園遊会が終わってからボクはアルベルトを振るつもりだ。これまで通り、ヴァルムト宮中伯家と王家の協力関係を維持してくれるとアルベルトは約束してくれた。……もし、エルヴィーラがアルベルトを本気で好きならボクが応援することも吝かではないよ。勿論、過去はきっちりと精算し、蟠りを無くした上でねぇ」


「……王女宮筆頭侍女殿、貴女は本気か。本気で言っているのか。……アルベルト殿は……本気で貴女のことを」


「だから、それが何? ラインヴェルド陛下も、アルベルトも、二人ともボクの気持ちなんて考えていないじゃないか。大体、不公平だと思わない? ……ボクのことを本気で好きだと言ってくれた人は実は何人もいるんだ。ボクはどうしても心の底から愛している一人の女性がいるからずっと断ろうと思っていたんだけど、ある伯爵令嬢が、振られれば生家である宰相家とも縁を切るという一種の玉砕覚悟でボクに告白したんだ。その子はねぇ、奇異な見た目から周囲から呪われた子と言われ、迫害を受けた。一時は引きこもりになってしまったほどだ。それでも、外の世界と繋がれるツールを見つけ、今や大人気作家としての地位を築いている。恐ろしい世界に一歩を踏み出した彼女には、王女宮に勤める中で友人もできた。……ソフィス=アクアマリン伯爵令嬢、彼女と比較してアルベルト=ヴァルムト宮中伯子息はどうだ? 確かに不幸な身の上かもしれないし、それを乗り越えて近衛騎士になったのかもしれない。でも、それはヴァルムト宮中伯夫人が懐の広いお方だったからであって、家族の不仲の解消に自身の努力が関係していたかは微妙なところ。それに、まだ根本解決には至っていない。……彼はねぇ、そもそもボクが最低限求めるところ――スタート地点にすら立てていないんだよ」


「……それは、あまりにも求め過ぎだろう」


「条件は同じだよ。嫌なら諦めればいいだけのこと、簡単でしょう? 誰もボクの婚約者になれって言ってないんだから。選ばれる側に回りたくないなら、自分が選べる人間の中から好きな人を選んで婚約を結べばいい。ということで、エルヴィーラさんの言っていることは、見当違いも甚だしいんだよ」


 唖然、という表情で固まるエルヴィーラを放置して、ボクはデガンドに近づいていく。


「しかし、見事に嵌められたねぇ、君。抱腹絶倒ものだよ。君は罪を被せるための生贄(スケープゴート)として園遊会に送り込まれたんだ。魔物による騒ぎを引き起こさせ、シェールグレンド王国の大臣達に冤罪を掛けつつ、公爵夫人を利用した外貨獲得を停止に追い込んだブライトネス王国に対する嫌がらせのために。ブラックソニア辺境伯はシラを切るだろうし、シェールグレンド王国も知らないと言い張るつもりだろう。でも、君は魔物を連れてきたブラックソニア辺境伯の名代だ。……まあ、残念というより自業自得だけど、もうそんなに長く生きられそうにないねぇ。それとも、牢屋生活かな?」


「な、何を言っているんだ!!」


「……そもそもさぁ、自我のない魔物を連れてくるって既にグレー通り越してアウトだ。それを黙認されているって時点で何かあるんじゃないかって気づかない? それに、今回の魔物の持ち込みにはシェールグレンド王国側の意図も絡んでいる。シェールグレンド王国は既にブライトネス王国に対して二度の外交的無礼を働いている。一度目は、第一王女殿下を王子の側室に迎えたいという提案……これが正妃ならともかく側妃だよ? 明らかにブライトネス王国を下に見た外交だよねぇ。二度目は、国内の宝石の価値の暴落による経済ダメージをなんとか回復させるために公爵夫人として嫁いだニノンを使った外貨獲得の策略。……それらが全て把握されているこの状況で、何故、シェールグレンド王国の大臣一行とブラックソニア辺境伯名代一行が園遊会への参加を許されたのか、疑問には思わないかな? 君達はねぇ、餌なんだよ。より大きな獲物を誘き寄せるための撒き餌だ。……実は少し前からブラックソニア辺境伯領にボクの配下の配下の密偵を潜入させていた。そして、彼女から『定吉』という商人が領主と面会し、仮死薬を販売したという情報を得ている。彼はその条件として今回の園遊会への同行を申し出たようだけど、彼は今回の園遊会に参加していない。でも、定吉が潜入を諦めたというのは考えにくいでしょう? まあ、恐らくだけど彼はブラックソニア辺境伯名代一行のいずれかとして潜入している。今日までの間にいつもとは違うと違和感を感じたメンバーは居たと思うんだけど、その名前を教えてくれたら、多少なり減刑を考えてあげてもいいよ? さあ、どうする?」


「――ッ! そんなこと急に言われても」


「王女宮筆頭侍女殿、そもそも貴女に減刑をするかどうかを決める権利はあるのか!?」


「そりゃ勿論。ボクは誰かさんと違って決して嘘はつかないよ。交渉のテーブルに立てるくらいの権力は有している。……子供だって、簡単に御することができる相手だと思っているなら考えを改めた方がいい」


「――ッ! 早く答えないと殺されてしまうわよ! この人は危険だよ……きっと、マリエッタが言っていた以上に危険な人なんだわ!!」


「そんなことを言われても! ちっくしょう! 知るかよ、誰だ誰だ……くそ、どいつもこいつも怪しく思えてくる!!」


 ……あー、もうこれダメかな? 埒が明かない。


「もういいや、失礼するよ」


「なっ、何を!?」


 デガンドの額に触れて記憶を複製、飴玉として取り出す。

 そして、飴玉を口の中に入れて噛み砕いて飲み込み、デガンドの記憶を取り込んだ。


 魂魄の霸気で光の速度で思考を加速させて、デガンドの記憶を参照し、十秒後、定吉さんが成り代わっている……と思われる男を特定した。


「あー、もう結構。目当ての人物の特定はできた。リディア、フェアトリス、二人を王宮の別々の部屋にお連れしなさい。今は園遊会の件が最優先ですから……まあ、今のところは王宮の部屋となりますが、近いうちにエルヴィーラの方は騎士団の詰所の方に移されると思う。取調には素直に応じてもらいたいと思うけど、ボクについてはオフレコで頼むよ。それと、ボクも近いうちに面会に訪れるから、その時は是非マリエッタのことを話してねぇ」


「おい、ちょっと待て! 俺はどうなるんだ!!」


「さぁねぇ、どうしよっか? 結局、質問に答えてもらった訳じゃないし……現状ではどのような処分になるかはお答えできないということで」


「巫山戯る――」


 フェアトリスがデガンドの意識を刈り取ると共にデガンドを抱えると、ボク達の目の前から姿を消した。


「エルヴィーラさん、抵抗せずご同行して頂けると助かりますわ」


「……分かったわ」


 エルヴィーラは抵抗せずにリディアにお姫様抱っこされる。

 俊身を使ってリディアもボク達の目の前から姿を消し、最後にボクとエディルだけがこの場に残った。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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