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Act.8-325 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.12

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>


「お集まりの方々、本日はブラックソニア辺境伯からの贈り物で件の魔物をお見せくださるそうですぞ!」


 王子宮筆頭侍女の担当する区画から統括侍女の担当する区画への丁度中間あたり。

 そこに、件の魔物達が檻に入れられていた。


 翼竜系の魔物で、中生代の終わり、白亜紀末の大量絶滅期の直前の時代を生きていた翼竜の一種――アズダルコ上科アズダルコ科のケツァルコアトルスによく似た魔物だ。


「魔物ですって!」


「……危険じゃないのかしら?」


「何でも腕利きの冒険者が一緒なのだそうだし……でも、心配だわ」


「まあ、恐ろしい」


「……でも、普通に園遊会の会場を魔物が闊歩しているのよね? 先程、アルラウネを見かけたという人もいたようだし」


「アルラウネ、そう言えばわたくしもお会いしたわ。……でも、そんなに恐ろしくは無かったわね。丁寧にご挨拶をしてくれたし、お薦めの料理を教えてくれたわ。よっぽどこの魔物の方が怖いわね」


「……でも、やっぱり魔物は怖いものだと思うわ。姫殿下の誕生パーティの時に現れた古代竜エンシェント・ドラゴン――会場を一瞬にして凍らせてしまったのよ。あの時は本当に恐ろしかったわ」


「その古代竜エンシェント・ドラゴン、今日もアネモネ閣下の護衛として来ているのよね。恐ろしいわ」


「……他にも古代竜エンシェント・ドラゴンが来賓として招かれているようだし、魔王の娘も来ているそうよ。……なんだか嫌な予感がするわ」


「嫌な予感とはどういう予感なのかね?」


「これだけ戦力を集めている……ってことは戦争でも始めるつもりなのじゃないかしら? このところ粛清も増えているし、怪しげな宗教も暗躍しているという噂を聞いたことがあるわ。這い寄る……なんだったかしら? その怪しげな宗教の関係者を国に連れてきたとして、大公様とその派閥の貴族が一掃されるという事件が起こったのよ。今年はいつもより警備が厳重なようだし、きっと何かあるんだわ」


 ……話がどんどん脱線していって、魔物で注目を集めようとした男は不機嫌な感情を隠しもせずに檻の背後の方へと消えていった。

 標本や剥製のようで、野次馬の貴族達は本気で恐れていないようだけど、それ、ただ仮死薬で仮死状態になっているだけだから。


 さて……警備は冒険者らしき男一名、先程の男、後はブラックソニア辺境伯の部下の文官風の者達が四名。……ブラックソニア辺境伯名代の姿はない。


 それもその筈、この騒ぎの輪の外側――ボクと対角線上に位置するところに、ブラックソニア辺境伯名代の姿があるんだから、そりゃ、騒ぎの渦中にいる訳がない。

 ちっ……やっぱり『マネマネカード』を使われるとステータスも偽装されるから看破できないなぁ。ただ、定吉(ウンブラ)さんは間違いなくこの中にいる。


 特定は……とりあえず今は諦めるか。

 それよりも、まずは青褪めた表情のエルヴィーラがブラックソニア辺境伯名代に腕を掴まれて人気のない方向へと連れて行かれるという現在進行形で発生中のトラブルをどうにかしないとねぇ、そのために来たんだし。

 ……ついでにこの名代を拷問してどれが偽物かを調査するつもりだ。というか、そっちの方がメイン、エルヴィーラの解放は二の次だよ。ほら、ボクって以前こいつの起こした騒ぎに巻き込まれている訳だし。


「リディア、外宮筆頭に侍女の一人に何かがあったと伝えてもらえないかな? エルヴィーラとブラックソニア辺境伯名代の名前を挙げる必要はない。それと、統括侍女様にこの件を二人の名前を挙げる形で報告してからこっちに戻ってきてもらいたい。八技使ってもいいからできるだけ早く」


「承知致しました」


 近くにいたリディアに外宮筆頭侍女と統括侍女への報告をお願いする。

 さて、小道の奥へと消えていったエルヴィーラがブラックソニア辺境伯名代を追いかけようとしたところ――。


「ローザ王女宮筆頭侍女殿、先程声を掛けていたのは外宮の侍女のリディア嬢だったな。……何かトラブルでもあったのか?」


 声を掛けてきたのは近衛騎士のエディル=マッカートリだった。……この脳筋、なんでこんな時だけ勘がいいんだ? 絶対にトラブルが複雑化するから連れていきたくないんだけど。


「何故トラブルだと思ったのですか?」


「リディア嬢は特別な侍女なのだろう? 確かに筆頭侍女として給仕を務める侍女に何か仕事をお願いしただけなのかもしれない。しかし、八技の俊身を使うほどの仕事は普通の園遊会の給仕にはない筈だ。……となれば、何か大きなトラブルが起きていると考えるのが自然だろう」


「変なところで勘のいい脳筋は嫌いです。……仮にトラブルが起きていたとしても、貴方を連れていっては面倒が増えるのトラブルです」


「しかし、何かしらトラブルが起きているのであれば、筆頭侍女殿一人で対処するという方が現実的ではないだろう?」


「……分かりました、同行を許可します。その代わり、あの時の二の舞だけは絶対にやめてくださいね」


 今の言葉で流石に誰が巻き込まれたのか理解したらしい。

 エディルは無言で首肯し、ボクの後をついてくる。


「エディルさん、声を潜めてくださいね」


「分かっている……それで、実際のところ何があったのだ?」


「エルヴィーラさんが先ほど、どなたかに小道の方へ連れていかれるのを見かけたもので。とても酷い顔色でしたので、不本意なことだったのではないかと推測されます」


「……こんな状況なのに、よく平然としていられるな」


「想定の範囲内ですからね。既にリディアには動いてもらっています。彼女が戻ってくる前に決定的な証拠(・・・・・・)を掴んでおこうと思ったのですが。……唯一の誤算はエディルさんの存在です。くれぐれも面倒なことはなさいませんように」


「……まあ、何故これが想定の範囲内なのかとか聞きたいことは沢山あるが、今聞くことではないな。……分かった、王女宮筆頭侍女殿に迷惑は掛けない」


 ……はぁ、この脳筋の言葉どこまで信じていいものか。でも、ボクの隣で茂みに隠れて黙ってことの成り行きを見守っているんだから、今の所は問題ないんだけど。


『……どうして』


『どうしてはこちらのセリフだ! エルヴィーラ! どういうことだ、婚約者がいるだと!?』


『貴方には、関係ないわ』


『あるに決まっている!! おれはお前の恋人だったんだぞ! 戻ってくるその日をどれだけ待ち望んでいたと思って』


『アタシは! もう、あんな田舎のオンナじゃないのよ!』


 いや、辺境って田舎っていう意味じゃないからな? シェールグレンド王国との国境を守護する大切な土地なんだよ。……まあ、シェールグレンド王国との国境付近は資源も乏しく旨味も少ない、かつ、シェールグレンド王国との交易が重要視されている訳でもないから限りなく外れ籤かもしれないけど。

 でも、探せばきっといくつか強みは見出せる。決して不毛でぺんぺん草一本も生えない土地っていうことじゃないんだから。ビオラだったらもっとマシな統治は行えると思うけどねぇ。


「……王女宮筆頭侍女殿、それで、ここからどう行動するつもりだ?」


「さぁ、どうしましょう? 私の聞きたいことは話題に上がらないでしょうし、もう少し決定的な場面になってから仕掛けた方が良いんじゃないかと。今はハウスです、ハウス」


「……俺は犬じゃないんだが」


 失礼な、犬の方が賢いですよ。


「まあ、いずれにしても修羅場回避は難しそうですね。……どの道このままだとあらぬ誤解を受けることは確定ですし……どんな修羅場になっても丸ごとひっくり返せる自信はありますが。とりあえず、揉め事は不可避ですが、もう少し様子を窺いましょう。……くれぐれも、独断行動は慎むように」


 ……まあ、何も情報が得られないならこのまま様子見していても仕方ないし、ブラックソニア辺境伯名代を拷問して必要な情報を引き出しに掛かるつもりだけど。


「マリエッタが言ったのよ! 大きな魔物が現れるって! 本当になったじゃない!」


「だから何だって言うんだ、結局マリエッタの父親が倒したんだから――」


 おっ、いい感じに話の方向が進んできたなぁ。

 没シナリオからもかけ離れた展開になっているなぁ、と思っていたら、やっぱり主人公(マリエッタ)が関与していたか。


 今のところ、ローザ=ラピスラズリが主人公(マリエッタ)に干渉していると仮定して動いているボクだけど、正直、暗殺者となるエルヴィーラを救う旨みがほとんど……というか、全くないと思うんだよねぇ。

 まあ、そのローザ=ラピスラズリが何を目的に動いているのかは会ったことがないから『管理者権限』を狙っていることくらいしか分からないんだけど。


 ……マリエッタを隠れ蓑にしているとして、わざわざそんなことをして助けるかな? となると、ボクの予想が外れているか、それともマリエッタはマリエッタの意思で動いているのか?

 その辺り、是非エルヴィーラを拷も……ゆっくりとお話を聞きたいところだ。


「アタシは辺境で終わる女じゃないわ! 移民の子供だからと差別されることも、魔物に怯える生活ももう沢山よ!」


「お前、俺を捨てるつもりで」


「アンタみたいな野暮ったい男、アタシがいつまでも相手してると思ってんの!! 辺境伯の館で働けるようになったじゃないの! 惨めな生活から脱して、一時いい夢見れたって思っておけばいいじゃないの!」


「この……クサレ女!」


「なんですって!!」


「そこまでにしろ!」


 ……あーぁ、あれほど言ったのに、この駄犬が。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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