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Act.8-321 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.8

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>


 筆頭侍女として望む……となれば、ただ第一王女の担当する区画で給仕をしていれば良い、という訳ではない。

 各宮の筆頭侍女には、園遊会で給仕を行う全ての使用人を監督し、必要であればフォローを行うという仕事がある。


 それと同時に有力な貴族や商人や文官――お客様に挨拶回りを行うということも必須だ。

 そうして繋がりを作っておくことで、後々に王女宮に利益をもたらすことができるかもしれない……っていうのは、まあ、そこまで重要ではないんだけど。どちらかというと、宮の使用人を代表するボク達筆頭侍女が挨拶回りをするのは礼儀として当然で、それを怠れば王女宮の看板、そしてプリムラの顔に泥を塗ることにも繋がりかねない。……社交界って面倒なんだよ。


「ヴィオリューテ、アペタイザーが足りないようだわ。カナッペとダンプリングをあちらのテーブルに運んでくれないかしら?」


「分かりました」


「……変な男は寄ってきていないかしら?」


「いいえ、視線は感じますけれど」


 ボクの言葉に丁寧に応じつつドヤ顔を見せるヴィオリューテ。……まあ、成長しているんだろう。貴族令嬢はあまり感情を表に出さず、ってことは後々覚えてもらおう。

 まあ、ポーカーフェイスはまだまだボクも修行の身だけどねぇ……特にフォルトナ勢が絡むと仮面を投げ捨てたくなるし。


 一応、ミステリアスな美女というものを演じてくれている……ようだけど、ところどころ被った猫が落ちそうになっているというか。


 まあ、最大限自分の可愛さを見せているつもりで、ぼんやりでうっかりが祟って暴力的なリボンの似合うメイドさんと成り果てているアクアに比べればどんな令嬢もマシってことになるし……というか、最近あいつ猫被りすら辞めたし、なんか色々と悪化している気がする。アクア単独だとやらかさないんだけど、悪友(ディラン)と組むと絶対にトラブル発生させるからねぇ、あいつ。


「筆頭侍女様……何か失礼なことを考えていなかったかしら?」


「……気のせいじゃないかしら? メイナとメアリーの方も心配なさそうだし、スカーレット達は他の宮の侍女達よりも有能だと客人達から感心されているようだわ。うん、このまま任せておいても大丈夫そうね」


 プリムラはビアンカ王太后が側に居てくれるからなのか、メインのテーブルでボクの予想していた以上に堂々と場に臨んでいる。

 挨拶をこなして微笑むというのがほとんどで、あまり政治的なことなどで問題が起こらないように会話はほぼビアンカがしているものの……今はとても嬉しそうだ。


 まあ、ルークディーン=ヴァルムト宮中伯子息がご挨拶に来られて同じテーブルに座っているからだよねぇ。

 勿論、ビアンカが「ルークディーン公子も良かったらここでお喋りしていかないかしら?」と誘った故の状況だ。王族と同じテーブルに座るにはお許しを得るか、お誘い頂くしかないからねぇ。

 まあ、これでルークディーン=ヴァルムト宮中伯子息は王女殿下の婚約者として内定しているとより印象づけることができたんじゃないかな? 勿論、これも全てビアンカの計画の内だよ。


 側で給仕を行うのはシェルロッタ、影には真月、このメンツで荒事が起きて対処できないということはあり得ない。

 さて……と、そろそろボクも挨拶回りに動こうかな? と思っていた丁度その時だった。


 仮面をつけた(デビュタントしていない貴族の子女は仮面をつけることになっている。……侍女待遇の王女宮の面々はつけていないけどねぇ。そもそも、行儀見習いの貴族の子女を侍女として参加させることに反対意見をあげた貴族って多かったようだけど、ラインヴェルドが王女宮の実績を並べ立てて黙らせたという経緯がある)、小さな貴族令嬢が泣きながら歩いていた。

 すぐ側には困り顔の櫻の姿がある。


『……ローザ様、お忙しい中、申し訳ございません。この方が親御さんと離れ離れになってしまったようで、私の方で親を探そうとしたのですが、なかなか泣きやんでくださらなくてお話を聞けず困っていたところです。ローザ様なら彼女がどこの子女なのかご存知かと思いまして』


 櫻が魔物だから怯えて泣いている……という訳ではないようだ。

 ただ、これは少々困ったねぇ。


『あの子、大丈夫かしら?』


 プリムラも心配そうにルークディーンとビアンカと共にこっちを見ている。


「……お嬢様、お父様とお母様はどこにいるのかしら?」


「えっ、うぇーーーーん」


 ……こりゃ、簡単に泣き止みそうにないな。


「お嬢様、私の手にご注目!」


 まずは令嬢に顔を上げさせる。ボクの手に注目させ、手を開くと同時に一輪の花を取り出した。


「ぐすん……お姉さん、凄い」


「このお花、お嬢様にあげるわ。……お父様とお母様と離れてしまって悲しいのよね? 良かったら私がお嬢様をお父様とお母様の元に届けて差し上げるわ」


「ぐすん……本当に? 本当に……お父様とお母様に会えるの?」


「私にお任せください、アセロラ=ティアラロップ子爵令嬢」


「わたしの……名前」


「櫻、この方は私の方でお届けします。ここまでお連れしてくださり、ありがとうございました」


『……お嬢様のお仕事を邪魔してしまい、申し訳ございません』


「いえいえ。アセロラ様、この方がここまでお連れしてくださったのですよ。アルラウネの櫻さんです。良い魔物ですよ」


「ありがとう……櫻お姉ちゃん」


『もうその言葉だけで十分です……尊い! アセロラ様、きっとお嬢様がすぐに親御さんを見つけ出してくれるわ。それでは、私は失礼致します』


 さて、一応この場を離れることをプリムラとビアンカに伝えておかないとねぇ。


「王太后様、姫さま、アセロラ様を親御さんの元にお連れしつつ、そのまま挨拶回りをして参ります。こちらには、ニーフェ様やシェルロッタ、オルゲルト執事長もおりますし問題はないと思いますが、何かありましたら影の中にある真月かシェルロッタにお申し付けください」


「分かったわ。……アセロラさんっていうのね。もし良かったら後で親御さんと一緒に私達に会いに来てくれないかしら?」


「……ぐすん、必ずお父様とお母様と一緒に、ここに来るわ」


「ところで、さっきのお花ってどこから出したのかしら? とてもびっくりしたわ。もしかして、魔法かしら?」


「魔法ではなく、奇術というものですわ。トリックというものがありまして、それさえ覚えてしまえば後は誰でもできるようになれるものです。いくつかレパートリーを持ち合わせておりますので、今度もし宜しければ」


「わたくしも是非見てみたいわ。今度、プリムラと二人で離宮にお招きするから、その時に披露してくださらないかしら?」


「ご招待ありがとうございます。その時はまた新作のケーキを携えてご参加させて頂きますわ」


「……なんだかケーキを催促してしまっているようで申し訳ないわね」


「いえ、寧ろあの程度の品しか用意できなくて申し訳ないと思っている次第です。……そろそろ、アセロラ様をお届けに参らないといけないので」


「ええ、そうね。――行ってらっしゃい、ローザ」


 ビアンカとプリムラに見送られ、ボクはアセロラを送り届けるために王女宮に与えられた区画を後にした。



 アセロラを送り届けるミッションは簡単に終わった。

 まあ、鏡写した《天ツ瞳》を使えば園遊会の会場のどこで何が起こっているか簡単に把握できるからねぇ。


 アセロラの両親が居たのはアクアマリン宰相夫妻がいる内宮筆頭侍女の担当する範囲だった。


「お父様、お母様!!」


 トタトタトタトタと駆けていき、アセロラはティアラロップ子爵夫人に抱きついた。


「あらあら、どこに行っていたの? 心配していたのよ」


「気づいたらお父様とお母様の姿が見えなくなって、私、とても不安だったの。でも、櫻お姉ちゃんとローザお姉ちゃんがここまで連れてきてくれたの」


「……ローザ、様?」


「初めまして、ティアラロップ子爵様、ティアラロップ子爵夫人。私は王女宮の筆頭侍女を務めております、ローザ=ラピスラズリと申します」


「これは、どうもご丁寧に。……娘がお世話になったようですね。迷子になってしまった娘を送り届けてくださり、本当にありがとうございます」


「いえ、私も友人の櫻さんからお願いされただけですから。ところで、まだ王女殿下にご挨拶はなされておりませんよね?」


「……とても畏れ多く、園遊会の招待状は受け取りましたので、参加させて頂きましたが」


「王女殿下と王太后様から是非お話をしたいと言伝を預かっております。アセロラ様がしっかりとご両親の元に辿り着けたことをお伝えして、王女殿下を安心させて頂けませんでしょうか? 随分と心配されておりましたので、きっとお喜びになられると思います」


「……えぇ、そういうことでしたら是非お会いしたいと思います。……失礼ながら、ローザ様はラピスラズリ公爵家のご令嬢ということでよろしかったでしょうか?」


「えぇ、そうですわ。ただ、本日は王女宮の筆頭侍女として出席させて頂いておりますので、お気遣いなさる必要はございません」


「今回の件、後日お礼に伺わせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「私は侍女として当然のことをしたまでで、それほどお気になさるようなことでもないと思いますが。……それに、私も王女宮に仕えておりますのでラピスラズリ公爵邸には休みの時に帰省するのみです。すれ違いになると思いますし、どうぞお気になさらず。……アセロラ様、良かったですね」


「ありがとうございます、ローザお姉ちゃん!」


「次は離れ離れにならないようにね。それでは、私は職務に戻らせて頂きます」


「お仕事を邪魔してしまって申し訳なかった。……この御恩は一生忘れない」


「そんな大袈裟なことではありませんわ。では、失礼致します」


 さて、と……折角内宮の区画まで来たからアーネスト閣下にご挨拶をしようかな?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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