表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
746/1360

Act.8-318 騒乱を呼ぶ園遊会〜ブライトネス王国大戦〜 scene.5

<三人称全知視点>


「多種族同盟加盟国、ド=ワンド大洞窟王国よりディグラン=ヴォン=ファデル=ダ=ド=ワンド国王陛下、エルレシア=ヴォン=リゼローズ=ダ=ド=ワンド王妃殿下、軍部最高司令官のパーン=ヴォン=マジェボルツ=ダ=ド=ワンド様、宮廷騎士団長ロックス=ヴォン=ハルシャタ=ダ=ド=ワンド様、宮廷魔法師長ヴィクトス=ヴォン=カイネハリス=ダ=ド=ワンド様、護衛のエリッサ=ヴォン=リゼローズ=ダ=ド=ワンド様、アリーチェ=ヴォン=ライジャス=ダ=フェデッル様、ご到着になられました」


「続いて、多種族同盟加盟国、エナリオス海洋王国よりバダヴァロート=アムピトリーテー国王陛下、ソットマリーノ=アムピトリーテー第一王子殿下、ボルティセ=アムピトリーテー第二王子殿下、軍司長シャードン=ピストリークス様、ご到着になられました」


 次に到着したのは、ドワーフと海棲族の一行だった。

 多種族同盟に所属する以前は住む場所が全く異なっていたが故に全くと言っていいほど交流を持たなかったこの二国が何故同時に入場という状況になったか、というと、ドリームチームトーナメントでロックスとシャードンの二人が意気投合し、軍事面で協力する機会が増えたからである。

 夏にも両国の騎士団と軍による合同演習が行われており、同じ戦いを乗り越えた両国の戦力の間では親密な関係が構築された。そのこともあり、ディグランの方からバダヴァロートに今回の同時入場を提案したのだ。


「……何やら騒ぎが起きているようだな」


「あれは……ユミル自由同盟のメアレイズ閣下だな。……多種族同盟に加入していない国の中では未だに亜人差別が行われているという。少し遅ければ、我々も巻き込まれていたかもしれなんな」


 メアレイズが暴れたことで、ディグラン達やバダヴァロート達に絡んでくる者達は大きく減る筈だ。

 もし仮にそのような行動を取れば、最悪、ロッツヴェルデ王国の二の舞になる。

 流石にあれの後で亜人種族に喧嘩を売るという愚かしい真似をする者達はいないだろう。


 ラインヴェルドの周りには挨拶に伺おうとする隣国の使者達や貴族達で溢れている。獣人族にロッツヴェルデ王国の王子が起こした騒ぎにラインヴェルドが駆けつけた結果、その挨拶対応に遅れが生じたのも相まって、当分挨拶を交わすのは難しいだろう。

 ということで、ディグラン達は先に今回の園遊会の主催者である王妃カルナに挨拶に向かうことにした。


「久しいな、カルナ王妃」


「久しぶりだな」


「お久しぶりですわ、ディグラン陛下、バダヴァロート陛下。エルレシア様、ソットマリーノ王子殿下、ボルティセ王子殿下もようこそおいでくださいました。ソットマリーノ王子殿下、ボルティセ王子殿下、お二人はつい先日ご婚約なされたとお聞きいたしました。おめでとうございます」


 カルナに挨拶をしたいと集まっている者達は非常に多く、多種族同盟に所属する国の重鎮達だから特別扱いして時間を取り過ぎれば、他への対応が疎かになってしまう。

 本来は、王族、王族の婚約者、そして役職持ち、護衛達と一人一人に声を掛けるべきところだが、今回は最低限挨拶をしなければならない者達だけに留め、まだ述べていなかった先頃、無事に婚約を結んだソットマリーノ王子殿下とボルティセ王子殿下へのお祝いの言葉を伝えるだけで許してもらいたいとカルナは思っていた。


「「お気遣いありがとうございます、カルナ王妃殿下」」


 ソットマリーノが婚約を結んだのは、かねてからソットマリーノの婚約者候補として挙げられていたエナリオス海洋王国の貴族の娘――鯨の人魚のバリェーナ=スーマラン公爵令嬢だ。

 一方、ボルティセの婚約者は、ミュゼッタ=ヴォン=ハルシャタ=ダ=ド=ワンド――ロックスの娘である。


 ミュゼッタがエナリオス海洋王国の社交会に参加した際に、ボルティセが一目惚れし、ロックスに頭を下げてなんとかお見合いの機会を作ってもらい、その後、ボルティセの方から熱心に何度もアプローチを掛け、根負けしたミュゼッタが了承して婚約が成立した。

 最初はボルティセのことを一国の王子としてしか見ていたかったミュゼッタだが、少しずつ彼のことを知っていき、今では二人っきりの時間には砂糖を吐きたくなるほどの甘々なラブラブっぷりを見せるほどの相思相愛っぷりを見せている。


 この機会に婚約者をお披露目しようという話も持ち上がっていたが、この後に起こる大規模な戦争に彼女達を巻き込みたくないということで、二人の園遊会への参加は見送られることになった。


「今度、ソットマリーノ王子殿下とボルティセ王子殿下の婚約者をわたくしのサロンで紹介してもらうことはできないかしら?」


 カルナの主催するサロンは、圧倒的な影響力を誇るミランダ=アクアマリン宰相夫人のサロンに匹敵するほどの影響力を有している。

 このサロンにエナリオス海洋王国の二人の王子とその婚約者を招くことはブライトネス王国の国内の貴族達にブライトネス王家が亜人種族と友好関係を築くことを心から望んでいると示す良い一手となるだろう。


 勿論、政治的に大きな影響を与えることだけを狙ってこの招待を行ったという訳ではない。


 カルナ自身も二人の王子の婚約者がどのような人物かということに並々ならぬ興味を持っている。

 後に多種族同盟の一角を担うエナリオス海洋王国の王妃と第二王子の妻――その存在は、同盟国として決して無視することはできないものとなるからだ。


 無論、厳正な審査の上で婚約が内定したのだろう。

 未来の国を担う王妃に相応しい人物なのは間違いないだろうが、カルナ自身もその目でエナリオス海洋王国の次世代を担う女性達の為人を確認したかったのである。


「……次世代か」


「婚約したばかりの私達には、まだ早い話ですわね」


「エナリオス海洋王国はソットマリーノが王位を継ぎ、ボルティセが軍事の面で国を支えることになった。ユミル自由同盟はこのままの治世が続くだろう。緑霊の森はマグノーリエ殿が族長に、プリムヴェール殿が族長補佐となって支えていく、今よりももっと緑霊の森は安定するだろうな」


 「それじゃあ、まるで私が頼りにならないダメ人間みたいに聞こえるのですよぉ〜」と空耳が聞こえた気がしたが、バダヴァロートは何も聞かなかったことにした。


「ニウェウス自治領はリィルティーナ殿が継ぎ、風の国ウェントゥスとルヴェリオス共和国、ラングリス王国はこのままの治世が続くだろう。ビオラ=マラキア商主国は将来、選挙制を導入して厳正なる選挙の結果で大統領を選出するつもりだというが、正直、アネモネ閣下以外があの国を指揮する未来は全く想像できないな」


 現在はビオラ商会合同会社の支配下にあるビオラ=マラキア商主国だが、アネモネは近い将来、民に政治を委ねたいと考えている。

 そのための準備も進めている……が、ビオラ=マラキア商主国の民からアネモネは相当な支持を集めており、アネモネが大統領を辞めるのは極めて難しいだろうというのが、アネモネを除く多種族同盟君主達の共通認識だった。

 そもそも、多種族同盟は百合薗圓を中心として出来上がった相互協力組織としてラインヴェルドを始めとする君主達から認識をされている。何らかの形で組織に留まり、次世代以降も多種族同盟を導いて行ってほしいというのが、各国君主の総意であり、その点でもアネモネが国家の君主の地位を持っているというのは都合が良い。


「フォルトナ王国は、ルーネス殿下が王位を継ぎ、サレム殿下は宰相として、アインス殿下は新しく大公家を築き、領主貴族として国を支えていくそうだな。……そういえば、ルーネス殿下がポラリス閣下に、サレム殿下がファント大臣閣下に、アインス殿下がシューベルト閣下にそれぞれ弟子入りしたと聞いている」


「……我が聞いた噂と少し違うな。我は三人がオニキス閣下とフレデリカ閣下に剣の教授を頼んだと聞いているが……まあ、三人ともあの方の婚約者となる可能性があるのだ。男として釣り合うために、剣を学びたいと思うのも当然かもしれんな」


「……我なら絶対に叶わぬ夢と諦めるが、フラれても諦めない執念深さは本当に尊敬している」


 それ、本当に褒めているのか? という感想を口にするバダヴァロートだが、カルナ達も全くその通りだと心の中で頷いた。


「カルナ王妃と話したい者達が集まってきておるし、我らはここで失礼するとしよう。他にも挨拶回りをしなくてはならないからな」


「……父上、エイミーン殿には挨拶をした方が良いのでしょうか?」


「……楽しそうに食事をしているし、わざわざ邪魔するのも気が引けるしな」


 呆れた表情のソットマリーノの問いに、遠回しにお関わりになりたくないと言うバダヴァロートに賛成し、ド=ワンド大洞窟王国とエナリオス海洋王国の一行はエイミーン、アクア、ディランの三人を見なかったことにして、ラインヴェルドに挨拶をするために、カルナの元を後にした。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ