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Act.8-309 侍女会議(2) scene.1 上

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>


 園遊会まで残り僅か。

 ヴィオリューテの指導の方は……まあ、かなり進んで王女宮に来た頃よりは多少はマシになったかな? まあ、マシってレベルでここからもうちょっと園遊会までにレベルを上げて欲しいものだけど。


 この(彼女にしては)大きな成長の裏には急にヴィオリューテがやる気を見せ始めたのが深く関係している。

 遠征で怪我を負い、ヒロインことマリエッタ=スターチスの治療を受けたヴィオリューテの片思いの相手――幼馴染リジェルがすっかり骨抜きにされていることに焼き餅を焼いているみたいだ。


 そんなリジェル=レムラッド侯爵令息を振り向かせて「今更遅い!」って盛大に振ってやるという屈折した計画のために何処の馬の骨かも分からないマリエッタからヴィオリューテの方に視線を戻させるために絶賛奮闘中のようだ。……うん、報告に上がっている範囲の情報を精査すると、彼女って恐らく転生者だし、もしそうなら狙いはリジェルじゃないと思うんだけどなぁ……ただ、リジェルとも継続して文通をしている、となると、狙いはリジェルを踏み台にしてアルベルト……というところかな?


 ローザ=ラピスラズリ……あっ、『管理者権限』を持つ方ねぇ、アイツがヒロインを手駒の一つとして仕掛けてくるかな? って思っていたけど、そういう感じじゃないのかな? まあ、ヘンリーを攻略する感じの方向性で動いていないならラインヴェルドの例の作戦は暗礁に乗り上げることになってしまうけど。

 転生者のヒロインと第三王子ヘンリーを婚約させ、王妃としてこの国を支えてもらうという例の計画。あれはボクにとっても都合の良いものだったんだけど……まあ、それでアルベルトがヒロインに落とされたところで正直何も支障はないし、例の婚約の噂についても大義名分を提げて無かったことにできるなら、それはそれでいいのか。


 そのアルベルトからは一通の手紙が来た。内容は「ギルデロイ=ヴァルドーナという面倒な人物がシェールグレンド王国側の護衛としてやってくる。厄介な人物なので気をつけて園遊会に臨んで欲しい」ということだった。

 ……これ、普通に話に来ればいい話だと思うけど……あれだな、ソフィスが真正面からアルベルトに喧嘩を売った件が効いているな。

 ここでイチャイチャした、ボクにとっては大変不本意な気配を垂れ流しにしてヴィオリューテの機嫌を損ねると、ただでさえ時間がなくて大変なヴィオリューテの教育に支障が出るから、正直に言えば本当に手紙で対応してくれてありがとうと思ったよ。



 さて、園遊会を間近に控えた前々日。遂に最後の確認をするために筆頭侍女が勢揃いする日が来た。


 ヴィオリューテの教育は満足がいった……とはお世辞にも言えないけど、大分会話もできるようになったし、他の侍女とかなり連携もとれるようになったし、大きな進歩じゃないかなと思う。

 まあ、とりあえず園遊会に向けてある程度のレベルまで育て上げるというミッションはクリアってことでいいかな? ノクト統括侍女の期待に応えられたといいんだけど。


 この話し合いは直前の最終確認でしかないので、どこも変更点や心配事がないかを確認し合う程度だ。


 基本的にはクソ陛下がいる周辺をノクト統括侍女が担当する。

 ここでは、当然ながらラインヴェルドと同等クラスの多種族同盟の重鎮クラスも対応するらしく、ビオラ=マラキア商主国の一行もクソ陛下が担当することが決まっている。

 ラインヴェルドは勿論、来賓全てに挨拶をすることになるだろうけど、ほとんど多種族同盟の盟主達と行動を共にすることになるんじゃないかな? トラブルメーカーが必然的に集まるので、最も騒がしくなることが予想される。

 特に騒ぎを起こしそうなメンツはブラックリストを作ってノクトとアーネストに提出済みだ。まあ、いつも通りのメンツだねぇ。


 カルナ王妃殿下がいらっしゃる周辺をシエル後宮筆頭侍女が担当する。この園遊会の主催者はカルナだし、仕事はかなり多くなるだろう。

 本来は文化人が毎年多く集まる傾向にあって、それはそれで大変なんだけど、今年はラインヴェルドのところに集まる各国の王族や商人の重鎮などの比率が圧倒的だからねぇ。そっちにフォローに回らないといけないし、大変そうだねぇ。


 ヴェモンハルト第一王子殿下、ルクシア第二王子殿下、ヘンリー第三王子殿下、ヴァン第四王子殿下、バルトロメオ王弟殿下のいらっしゃる周辺をアルマ王子宮筆頭侍女が担当する。特に婚約者のいない第三王子の周りには未来の王妃の座を狙う肉食女子がいっぱい現れる。ヴェモンハルトの腕の見せ所になりそうだねぇ。


 アクアマリン宰相夫妻がいらっしゃる周辺をエーデリア内宮筆頭侍女が担当し、マルゲッタ商会の会頭を始めとする商人の重鎮達(ビオラを除く)がいらっしゃる区画をファレル外宮筆頭侍女がそれぞれ担当する。どちらの区画も諸国の商人や政治家関係が多い傾向にあるねぇ。


 そして、プリムラ王女殿下とビアンカ王太后様がいらっしゃる周辺をボクとニーフェ離宮筆頭侍女の二人で担当することになる。恐らく王太后様の連なりから挨拶回り……という流れになるんじゃないかな?


 ディラン大臣はアクアと一緒に行動するらしく、担当する侍女はいない。勿論、ブラックリストにはしっかり名前を載せさせてもらった。……アイツら、絶対に騒ぎを起こすからねぇ。


「後宮から一点、報告があります」


「後宮の、どうぞ」


「はい、先日、私は王妃様と共に多種族同盟の会合に出席させて頂きました。その会議の詳しい内容に関してはこちらでは述べません。ただ、多種族同盟加盟国の盟主の中で味方戦力、予想される敵戦力に関する情報が共有されたことはしっかりとご報告させて頂きたいと思います。当日の警備については、事前に通達が行った面々が対処し、それ以外の各騎士団は各宮の侍女と共に避難誘導に動いてもらうことになります」


「後宮の、多種族同盟の会合への出席お疲れ様でした。既に報告の資料は受け取って陛下や王太后様とも共有済みです。各宮の筆頭侍女は改めて避難経路の確認をすると共に、各宮の使用人へ避難経路を再度確認するように申し渡しておくように」


「統括侍女様、よろしいでしょう?」


「王女宮の、どうぞ」


「避難に使用する予定の王宮地下の迷宮ですが、アネモネ閣下経由で藍晶殿よりブライトネス王国、緑霊の森、フォルトナ=フィートランド連合王国の各首都間の地下鉄の敷設が無事完了し、王都中央駅との接続も完了したという報告を受けております。最悪の場合はこの地下鉄を利用して緑霊の森やフォルトナ=フィートランド連合王国への避難を行うことになりますので、頭の片隅に置いておいてください。まあ、そのような事態には陥らないと思いますが。また、アネモネ閣下からブライトネス王国の王城への強化魔法の付与が完了したという報告を受けております。レイドクラスの魔物の攻撃も耐えられるレベルですので、完全に窓や扉を閉めれば籠城戦も十分に行えます。基本的には地下への避難を推奨しますが、最悪の場合は王城内部に避難するという手も取ることができるそうです。以上二点がアネモネ閣下から預かっていた報告になります」


「王女宮の、報告お疲れ様でした。……地下への通路は王城の内部にあります。どちらにしろ王城の内部へ避難が必要ですが、強化魔法を貼ってくださったことで籠城戦が可能になったというのは嬉しい知らせです。王女宮の、貴女から閣下にお礼を伝えてもらえませんか?」


「えぇ、勿論です。私の方から統括侍女様がお礼を述べておられていたことをしっかりとお伝えさせて頂きますわ」


 まあ、この時点でボク(アネモネ)はお礼を受け取っているんだけどねぇ。


「後宮と王女宮以外は特にありませんね? 幸いにも晴天と予想されていますが、何があるかは当日朝まで分かりません。皆、油断をせぬように」


「「「「「「はい」」」」」」


 ノクトの〆のお言葉にボク達も声を揃えて返事をした。……んだけど、このタイミングで外宮筆頭が手を上げて発言を求める仕草を見せた。

 さあ、ここからプチ修羅場だぜ。……あっ、普通に嫌だよ。


「統括侍女様、他の筆頭侍女の立ち合いの元少々確認したいことがございます。どうぞ皆さまお時間をいただけませんか」


「……良いでしょう。蟠りがある状態で園遊会に臨んでも良い結果には結びつきません。どうしたのですか」


「王女宮筆頭、貴女に確認したいことがあります。貴女、以前に私のところの侍女を侮辱した覚えはありませんか? 彼女はそれ以来すっかり塞ぎ込んでしまって……」


「……まあ、それはどなたですか」


「エルヴィーラという侍女ですわ。婚約者のいる彼女が、不埒に言い寄る他の男に対し婚約者を伴って毅然とした態度を取ったというのに貴女が疑問を呈したと……」


 ……やばい、ノクトからの視線が絶対零度だ。正直、このプチ修羅場よりもノクトから冷ややかな視線を向けられる方が辛い。


「王女宮の、外宮のを嵌めましたね」


「……統括侍女様、流石にそれは言いがかりでは? 私はただエルヴィーラさんを心から信頼していただけですわ」


「取り繕う必要はありません。貴女には最初から外宮のエルヴィーラという侍女が外宮筆頭侍女に嘘の報告をして同情を買うことを予測してあえて泳がしたのでしょう?」


「まあ、正直に申し上げればその通りです。ただ、彼女を貶めるためにやったつもりは更々ありませんわ。まあ、過去に私が予定時刻きっかりに会議室に入ってきた時に散々言われた件を根に持っていなかったというと、嘘になりますが」


「統括侍女様、王女宮筆頭! 一体どういうことですか!?」


「単刀直入にお聞きしますが、外宮の、エルヴィーラさんに言い寄っていたという不埒な相手というのが誰かご存知ですか?」


「いいえ、頑なに。彼女に言わせれば身分が上の方で、婚約者よりも上だということを気にして……」


「では彼女の婚約者が誰かは?」


「確か護衛騎士の、庶民出身の青年であったと思うけれど。彼女もそうだけれど、血筋に拘らず有能な人材がこのような――」


「彼女の婚約者である王子宮で活動している近衛騎士のエディル=マッカートリ殿が近衛騎士アルベルト=ヴァルムト様に対し、エルヴィーラさんに対し不埒な真似をしないでもらおうと白昼堂々使用人館の庭でギャラリーのいる中、対峙しておいででした。エルヴィーラさんは誤解だと仰っておりましたが」


「な、なんですって?」


 ……さて、ちょっとだけ可哀想になってきたけど、しっかりと証拠をお出ししないと納得してもらえないだろうし、この場できっちりと今回の件は片を付けましょうか。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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