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Act.8-308 園遊会前最後の多種族同盟会議 scene.1 下

<一人称視点・リーリエ>


「次は敵戦力について確認していきます。当初想定されていたのはオーレ=ルゲイエのみでしたが、ボクの超共感覚(ミューテスタジア)で確認したところ、過去最高の収穫を見込めることが判明しました。ということは、それに見合う戦力がこの園遊会のタイミングで攻めてくることが予想されるということに他なりません。ちなみに、オーレ=ルゲイエは肥大化した脳のみを厳重に保管し、脳内に小型の制御装置を埋め込み、これで意識を同調させることで対象となる人間の意識を乗っ取り、意識を奪った者とその意識をタイムラグ無しに同期させることで、まるで指先のように思うままに動かしていることが判明しています」


 ……カルナとシエルには刺激が強過ぎる話だったねぇ。


「フェアトリス」


 ボクが名前を呼ぶと、天井裏からシュッとフェアトリスが姿を見せた。


「報告をお願いします」


「はっ、私はブラックソニア辺境伯領に潜入しておりました。これは既に陛下や王太后様もつかんでいる情報だと思いますが、ブラックソニア辺境伯とシェールグレンド王国旧王太子派が共謀し、園遊会に魔物を持ち込んで暴れさせる計画を立てています。ただ、こちらは大した魔物ではないので問題ありません」


「あー、うちの母上も持ち込ませた上で叩いた方がいいって言っていたなぁ。……で、問題はそっちじゃねぇんだろ?」


「はい、彼らは魔物を仮死状態にする薬を求めていました。その薬を売る契約を持ち出したのが、定吉という行商人でした」


「『神出鬼没』のウンブラのデッドコピーって言っていた奴だな。それで、交戦したのか?」


「……流石にレベルが違いました。あれは初見殺しですね、私も一回死にました」


「そりゃ、定吉さんだからねぇ。まあ、『マネマネカード』のことを思い出させてあげたし、彼はブラックソニア辺境伯側の人間として間違いなく参戦してくる。……ただ、あのアイオーンがこのタイミングで出してくるって悪手を打つことに疑問しかないけどねぇ。その関連で恐らく真聖なる神々(プレーローマ)は必ず出てくる。こっちの対応にボクは追われると思うから、ある程度は陛下達で耐えて欲しい。ちなみに、今回は全軍をメアレイズさんが統括する。彼女が指揮官としてどれくらい優れているかを確認するつもりだから、そのつもりでねぇ」


「それはいいが……お前、ローザとして参加するのか、アネモネとして参加するのかどっちだ?」


「ローザとして参加するよ。ペルシウムにアネモネの代わりをしてもらって、途中までは給仕を行うつもり。ただ、途中で退場するつもりだけどねぇ……ほら、魔物もいるから上手く利用してやられたフリして医務室に運ばれて、その時に上手くペルシウムに入れ替わってもらってアネモネとして参戦する。今回の件でリーリエの正体がアネモネであることも明らかにしたいと思っているけど、ローザ=アネモネはまだあかせないからねぇ」


「……まあ、そうだよなぁ。しかし、ローザがただの魔物にやられるとか……」


「「マジウケるんだけど!!」」


 ……マジでこのダブルクソ陛下ボコボコにしたい。


「ちなみに、この戦争の終結後はこの島で戦功の確認を行う。ボクからの褒賞という形で、映像は多種族同盟加盟国の主要地域でリアルタイムの映像を流す予定。この時に同盟貴族制を導入するつもりだから、そのつもりでねぇ」


「いよいよか……過去の『時空魔導剣クロノスソード』も捌き切れていないんだが、このまま同盟貴族制を導入して大丈夫なのか?」


「今後は、『時空魔導剣クロノスソード』そのものはその個人に多種族同盟から貸与される形になる。ただ、それ以外の『時空魔導剣クロノスソード』に関しては各国から多種族同盟内に戻して、今後も時空騎士選定は合議で行うことになる。別に護国に使うなって言っているんだから、国を問わず優秀な人材を登用すればいいんじゃないかな?」


「確かにそっちの方が良さそうだな。国の利権とかそういう次元の話じゃないし、ここで焦って時空騎士の選定を行って、結果として無能揃いじゃ意味がない。時空騎士は憧れの職業――誰もが目指せるものになれば、各国の戦士達の指揮も上がる。……うちの騎士達もフォルトナの連中並みに強くなってくれたらいいんだけどなぁ」


 ……あっ、カルナが一瞬だけ嫌そうな顔をした。まあ、フォルトナ王国の騎士って功績も上げるけど問題を起こすことでも有名だからねぇ。


「ということで、カルナ様。改めて今回の園遊会は波乱に満ちたものになると思います。主催者としては不本意だと思いますが……」


「ローザ様が謝るようなことは何もありませんわ。どの道、ブライトネス王国が越えなければならない試練なのですから。……非戦闘員である私には何もできません。しかし、主催者として責任を取ることはできます。――皆様は後のことは心配せず、全力で戦ってきてください」


 ……まあ、責任云々は有耶無耶にしてカルナに被害が出ないようにするつもりだし、そもそもカルナに被害が及ばないようにこちら側の怪我人……は無理でも死傷者はゼロに抑えるつもりだ。完全勝利をしなければ意味がないしねぇ。


 とりあえず、必要な内容の共有が終わったところで会は閉廷となった。

 ……さて、午後から叙勲式か……面倒だなぁ。



<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア>


 叙勲式はかつてないほど円滑に進んだ。

 まあ、背後にスティーリアを控えさせていたというのも大きいんじゃないかな……虎の威を借る狐さんで申し訳ないねぇ、とスティーリアに後で謝ったけど、スティーリアは『本当は圓様の方がわたくしなんかよりもお強いのに』と少しむくれた表情を見せた。


 ボクはザール公爵、ウォルザッハ侯爵、インヴェルザード伯爵、ジードラバイル子爵、ヒューレイツ男爵というかつてないほど大量の爵位を叙勲し、大量の領地を得た訳だけど、こちらも反対の声が上がることは無かった。


 やはり、フンケルン大公派閥の大規模な粛清が貴族に与えた影響は大きい。

 フンケルン大公家の滅亡、パーバスディーク侯爵家の男爵への転落、ダルファルシア伯爵家の一部の領地の没収。

 そして、そこに外戚として圧倒的な力を握っていたクロスフェード公爵家の没落が重なった……これがどれだけ貴族側に衝撃を与えたのかは想像に難くない。


 まあ、流石に鈍感な貴族でもこれで王族と貴族の力関係が圧倒的に王族側に傾いたことは理解したんじゃないかな? ……これまで結構粛清が続いていたけど、よくこれまでのことで学習しなかったなぁ、と思うけどねぇ。どれだけ王族を舐めていたんだろうねぇ、ブライトネス王国の貴族。


 ちなみに、ファンデッド子爵もこのタイミングで伯爵位を叙勲した。昨日のタイミングで正式に代替わりが行われていたようで、メレクが参加していた。

 やっぱりファンデッド家を継いだ当主に相応しい堂々とした立ち居振る舞いだったよ。……他の貴族達よりも堂々としていたんじゃないかな?


 さて、今回叙勲された貴族は大半が代官を務めていた者や中流以下の領地持ち貴族ということで、領地経営に関して完全に素人という訳ではない。でも、叙勲を経てかなり広大な領地を手にしている筈だ。これまでの領地経営とは規模も違うし、きっと困惑している者も大勢いることだろう。

 それに、叙勲される中には庶民籍で活躍して貴族位を賜る騎士や、領地を持たない貴族もいる。……まあ、今回は辺境伯領で活躍した英雄親子に関しては褒賞を見送り、次回以降にその戦果に応じた爵位を与えることになりそうだけど。


 領地経営玄人にとっても、ドゥンケルヴァルト公爵領とライヘンバッハ辺境伯を運営し、国内でも随一の高額納税を行っているビオラのノウハウは喉から手が出るほど欲しいものだろうし、人手に困っている領地にはその困っている分野に応じた人材の派遣もビオラなら可能だ。例えば、社交会に出た経験のない代官に社交会で戦っていけるだけの知識や教養を教える教員の派遣というのも一つの仕事として十分に成り立つ。


 既に今回叙勲された新しい貴族や、叙勲によって高い爵位と広い領地を得た中流以下の貴族の名簿は既に入手済みで、彼らの領地にビオラの職員を派遣する準備も整っている。先発隊の職員が彼らの求める人材を探り、その人材を派遣することでビオラが利益を得る。これも立派な商売だ。……というか、今後のビオラの商売はそういう領地経営コンサルタント業が柱の一つになってきそうな気がするけど。


 そうして、ビオラの力を頼った場合……まあ、こっちがそれを利用して勢力を拡大して派閥を形成、なんてことは狙っていないけど、ビオラにとって不利になるような行動は避けるようになる筈。そりゃ、ビオラにそっぽを向かれたら経営が立ち行かなくなったり、領地経営に関わる重要な情報を握られていたりしたら、ビオラと敵対なんてこと、恐ろしくてできないよねぇ。


 ……この計画が成功すれば、ブライトネス王国の巨大派閥だったフンケルン大公家派閥は事実上解体され、その穴埋めを行う新興貴族達の首にしっかりと首輪を嵌めることができる。

 これでラインヴェルドが長年苦しんできた王国貴族達との戦いにも一応終止符が打たれたということになるのかな?


 ……まあ、今後もブライトネス王国の貴族は存続するし、戦いは続いていくんだろうけど。流石に国王による完全な独裁体制っていうのはよろしくないからねぇ。それは、ラインヴェルドもよくよく理解していることだろう。


 とりあえずこれで邪魔な問題は解決した。後は園遊会とその後の戦いのために全力を賭していく……ただそれだけ。

 そのために……とりあえず、ヴィオリューテの指導を頑張らないとねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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