表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
715/1360

Act.8-287 圓を取り巻く恋模様、動き出す scene.4

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


 昼食の時刻に来たので、まずは料理を注文。ボクは前菜のサラダとパンと野菜スープに、トマトとナスのパスタ、スイーツのセットを、アルベルトは前菜のサラダとパンと野菜スープに、ペペロンチーノ、スイーツのセットをそれぞれ選んだ。

 ちなみに、会計はボクがしようと思ったんだけど、先に伝票を握られてしまった。まあ、仕方ないか。


「本日来て頂いたのは、普段のお礼をしたいと思ったからでして」


「おや、そのような気遣いなど無用ですのに。……とはいえ、せっかくの貴女からのお心遣いです。ありがとうございます」


「いえ、大したものではありませんから」


 にっこりと微笑むアルベルトの笑顔はなかなかの破壊力だ。ニルヴァスの魔性の笑みとはまた違う系統ですねぇ……どっちも通用しませんが。

 ボクを撃破したいなら、プリムラ様の天使の笑みを目の前で見せるのが一番だ。アクアのど天然の天使の笑みも効果抜群だけど。


 鞄から紙袋を取り出して、アルベルトに手渡す。


「ありがとうございます、開けても?」


「はい、どうぞ」


 まあ、中身はそう大したものでもない。では、印象を悪くするような品かというと、そうでもなく……頗る無難というところだろうねぇ。

 ボクにとって、プリムラとルークディーンの婚約に何らかの支障が出ることは不都合で、そのために、王家とヴァルムト宮中伯家の間に蟠りを作るような真似はご法度だ。


 ボク個人がどう思っていたとしても、王女宮の筆頭侍女であるボクはアルベルトと良好な関係を築いておかなければならない。

 王女宮筆頭侍女は王女に仕えるために、ヴァルムト宮中伯家に嫁入りするつもりだ、と思わせておいた方が都合がいい。そして、その可能性はラピスラズリ公爵家を養子のネストが継ぐということでより高まってくる。


 まあ、アルベルトと本気で結ばれたいと思っている令嬢には申し訳ないけど、どうせ近いうちに玉砕するんだし、気にしなくてもいいと思うけどねぇ。というか、単に匂わせているだけで、ボクは一度もアルベルトと恋仲だって言表していないんだしさ。

 アルベルトが可哀想っていう話もありそうだけど……普通に考えれば年の離れた弟と同じくらいの、社交界デビューすらしていない小娘を好きになる方がおかしいんじゃないかなぁ、と思うよねぇ。ロリコン疑惑を持たれたって致し方なしだよ。


 アルベルトの半生には十分同情の余地があるだろうけど、じゃあそれに同情して、なんというのはやっぱり惨めじゃないかと思うんだよねぇ。アルベルトもそういうのは望んでないだろうし。

 彼は自立して生きていける類の人間だし、誰かを守れるだけの力を持っている強い人間だ。だからこそ、彼の出生の秘密という彼の心に影を落とす例の件も必ず自分の力で超えてくれると期待しているし、ボク自身があの件に関して何かしらの干渉をするつもりはない。


 ……まあ、アルベルトを好きになる可能性は万が一にもないんだけど、もし仮に彼とも結ばれることになるんだったら、最低でもアルベルトの実母との関係は自分の力だけで解決してもらいたいものだよねぇ。

 ソフィスは生まれ持った容姿の件を、ルーネス、サレム、アインスの三人はサレムの闇堕ちと側妃・宰相派の反乱の阻止を、ネストはソーダライト子爵家との因縁をそれぞれ達成している。彼女達に並び立ちたいというなら、その程度は頑張ってもらわないと。


 ……まあ、そのソフィス達ですら確定じゃないんだけどねぇ。


「これは……ブランデーケーキですか。それに、蜂蜜も。ありがたく頂きます。それに、ハンカチですか。……使わせて頂きますね、本当にありがとうございます」


「いえ、こちらこそ、ただ買い物にお付き合いしただけでこのような素晴らしい髪飾りを頂いてしまって、本当に申し訳なく思っていましたから」


「申し訳なく思うことではありませんよ。私が貴女に贈りたかったから贈っただけですから」


 こういう台詞で落とされる令嬢もいるんだろうなぁ……まあ、イケメン耐性特化の不沈艦には全く通用しませんが?


「……しかし、ローザ殿はなかなか笑ってくださいませんね。笑顔の時も、少し目が笑っていないというか……姫殿下のお姿をご覧になっている時のような笑顔をなかなか見ることができないのは、残念でなりません」


「そうでしょうか……普通に笑っているつもりなのですが」


「……ずっと聞こうか、聞かないか悩んでいたことがあるのですが……この際、はっきりと聞いてもよろしいでしょうか? ……この件で、勿論、私がヴァルムト宮中伯家に何かしらの働き掛けをするつもりはありません。まあ、それ以前にそのような力もないのですが……」


「はぁ……どのような話でしょうか?」


「忌憚ない言葉を頂きたいのです。ローザ殿が私のことをどう思っているのか」


「……正直、私はあまり触れられたくない話題なのですが。……私こそ、アルベルト様が私のことをどう思っていらっしゃるのかお聞きしたいくらいですわ」


 こういうやり取りは、正直ラインヴェルドと策謀を巡り合わせるよりも苦手だ。

 王家とヴァルムト宮中伯家との関係にダメージを与えずに上手くボクの願う方向に持っていくってのはなかなか難易度が高い。

 ってか、思わせぶりな態度を取りつつ、上手く告白を躱して禍根を残さずって、無茶が過ぎると思うよねぇ。ラインヴェルドもとんだ宿題を出してくれたものだよ。


「正直、最初は噂を鵜呑みにして、ローザ殿にあまり良い印象を持っておりませんでした。しかし、あのお茶会でお目に掛かって、姫殿下を心から大切にしておられるのだと、その心の奥の感情がそのまま溢れ出しているような笑顔を見て、その印象は覆りました。興味を持ったのは、その時が初めてです。それから手紙のやり取りやルークディーンへの対応や気遣いを見て、ああ、この人は仕事を楽しんでいるんだと、今の仕事に満足していて、誇りにしてるんだと感じて……地位にも名誉にも、容姿にも振り向かない貴女に少しずつ気持ちが傾いていって、手紙の中から感じ取れる小さく繊細な心遣いのような、そういったことに全く気づかず、未だに傲慢な令嬢だと思っている周囲に対して優越感を感じることもあって……そういった中で、この人が、自分の恋人だったら素敵だなぁ。と思うようになったのです。……すみません、こういったことは苦手でして」


「それは意外でしたわ。……私も昔はあまり無かったのですよ、こうして、面と向かって思いの丈をぶつけられることは。……一先ず、その告白の言葉は有難く受け取って持ち帰らせて頂きたいと思います。……この告白に、一つの答えらしきものを出すのは、園遊会後にして頂けないでしょうか?」


「……えぇ、構いません」


「ただ、この場でアルベルト様にお話しできることがありますので、そちらは先にお話しさせて頂きます。どうやら、アルベルト様は私という人間を誤解しておられるようだ」


「……誤解、ですか?」


「いえ、誤解というと語弊があるかもしれませんねぇ。そうですね、この角砂糖が入った入れ物を例に致しましょうか? アルベルト様はこの入れ物を私の反対側から見ていますが、当然、私の見ている方からの入れ物の姿を目視することはできません。もしかしたら、この入れ物が歪で、そちら側と違う形をしているかもしれないことは、当然判別できない訳です。アルベルト様は確かに話を知っているかもしれないですが、その姿が全てとは限らない、それどころか、アルベルト様に意図的に見せている幻想かもしれません」


「……幻想、ですか?」


「この、幻想という言い方も妥当ではないかもしれませんね。人間というのは、様々な役を使い分ける生き物だと思いますわ。例えば、アルベルト様が近衛騎士として活動している時と、弟のルークディーン様に接している時ではやはり違いますでしょう? 意図的か無意識かは別として、人は誰もがそういった役をいくつも使い分けているのです。先程、アルベルト様は姫殿下を大切にしているとおっしゃいました。実際、半分は姫殿下を純粋に心から敬愛し、王女宮筆頭侍女として、専属侍女として仕えていますが、しかし、もう半分は微妙なところです。勿論、姫殿下を敬愛しているという事実は変わりませんが、そこに何らかの打算的な物や不純物が存在するのも事実です。その打算も、私は全て姫殿下のことを思ってのものですが、そのように受け取られない方もいらっしゃいます。……アルベルト様もきっと私と会う時には心の中に隠している部分というものがあるのではありませんか? そして、それは私にもあります。それもきっと、アルベルト様以上のものが。それを知ってなお、諦めないということであれば、私も真剣に本腰を入れて交際について考えなければならないと考えています。……誰かを好きになるという感情は、自分でもどうしようもない感情だと思います。いくら玉砕しても、諦めない方という者がいることを、私はよく存じ上げています。アルベルト様が知らない私という部分を知って幻滅したなら、それまでのこと。それを知ってなお諦めないとなれば、そこからのことはそれからまた考えるべきだと思いますわ。……ただ一つ、ここでお約束ください。例え何があっても、姫殿下とルークディーン様の恋路には影響を及ぼさないと。私のせいでお二人の仲が引き裂かれることは絶対に避けなければならないですから」


「それは、私としても同意見です。……しかし、私も知らないローザ殿の顔ですか、とても興味があります」


「あんまり面白い話ではありませんよ」


「……それでも、一つだけ確かなのは、ローザ殿が律儀な性格で、とても優しいということは何も変わらないということですね。この場で私を振っても良かったのに、こうしてチャンスを頂けるのですから」


「個人的には、アルベルト様は高い人気を誇っているのですから、こんな小娘一人に執着しなくても、と思いますけどね」


 これについては正直に言ったつもりだけど、アルベルトの表情が翳ってしまった……褒めたつもりだったんだけどなぁ。

 というか、揃いも揃ってボクに執着する理由ってなんなんだろうねぇ。こんな残酷で捻くれた性格の可愛げのない令嬢捕まえて、見る目がないのだろうか?

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ