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Act.8-281 ブライトネス王国の王都にて、〝トリプル・デート〟 scene.3

<三人称全知視点>


「……しかし、そうなるとローザ様に久しぶりフォルトナ王国の王宮に来て頂いてドレスを作って頂くのは難しいかもしれないわね」


 シヘラザードは空気を変えるべく、強引に話を戻した。


「……シヘラザード王妃殿下、お前の狙いはドレスってより、三王子とローザを久しぶりに会わせて距離を縮めることなんだろう?」


「それは勿論ですわ。……陛下こそ、私やイリス様に何かを言えるような立場ではないのではありませんか? 隣国まで不思議な噂が届いておりますわ。近衛騎士のホープとローザ様が恋仲だという噂が」


 シヘラザードの纏う空気が一変し、まるで恋敵を見るような視線をラインヴェルドに向ける。


 シヘラザードは、サレムを利用して天下を取ろうとしたあの一件がローザ達に見抜かれたあの事件の後にすっかり心を入れ替え、ルーネス、サレム、アインスの幸せだけを考えて行動するようになった。

 ルーネス、サレム、アインスがローザと結ばれたいと願うのであれば、そのために力を惜しむつもりはない。


 そんなシヘラザードにとって、厄介になり得るのはローザに対して想いを寄せるライバル達だ。ルーネス、サレム、アインスの三人にローザを独占させるということは月紫という最愛の女性がいる以上不可能であり、二人の仲を引き裂いて思うように事を進めようとすれば最悪の事態になることは容易に想像できる。

 しかし、できるだけルーネス、サレム、アインスに向けられる愛を増やしたいという思いはあるため、シヘラザードもイリスやアルマンと共にライバルとなりそうな者達に対しては注意を向けていた。


 ラインヴェルドの推していると思われる近衛のホープも、かなり危険な存在だとシヘラザードは考えている。

 そもそも、ルーネス、サレム、アインスは男であり、ローザの好みの対象から外れている以上、強敵揃いの女性陣よりも遥か後ろからスタートというディスアドバンテージを抱えている。その点についてはアルベルトも同じだ……そう、全く同じなのである。


 家庭教師として三人と過ごした時間が多い分、ややルーネス、サレム、アインスの三人の方が有利に見えるが、その結果としてローザからただの生徒としか見られていない可能性もある。

 そして、付き合いの長さという点では義弟のネストがやや有利と言える。こちらは目立った動きをしていないが、ルーネス、サレム、アインスの恋を応援し始めてからは厄介なライバルの一人として警戒心を向けている。


「……俺がプリムラの側にアイツを繋ぎ止めてやりたいから、アルベルトがローザに対して好意を向けるように誘導した、ただそれだけだ。プリムラはローザのことをまるで母親のように大切にしているんだ。それを引き離すようなマネはしたくない。……まあ、ローザのストライクゾーンから外れているのは百も承知だが。アイツの肩書が全部通用しない以上、ネストより一段階程度は劣るだろう。他に警戒する必要があるとすれば、極夜の黒狼のアーロンか? アイツはローザを姉のように慕っているが、それがいつ恋心に変わるかは分からない。警戒しておくに越したことはない。……ってか、それよりも警戒するべきなのは、スティーリアとソフィスの二人だと思うが? スティーリアは話を聞く限りだとローザの想い人によく似ている。きっと、ローザを大切に思っていても、決して恋人関係になることを望みはしないだろう。ただ、ローザのためだけに生きて全てを捧げたい――そう思っている。だが、もし、スティーリアが本気でローザにアプローチを掛けるようになればきっと勝ち目はないだろう。スティーリアのローザに対する愛は途轍もないものだからな。そして、ソフィス――アイツは話を聞く限り、ローザの幼馴染の柊木咲苗に似ている。しかし、百合の対象として見られていない分、柊木咲苗よりかなり良い位置にいると思う。……そして、この頃のソフィスはかなり積極的だ。ローザに対して最も積極的にアプローチを掛けているのはソフィスだと言える。まあ、焦る気持ちも分からない訳ではない。間も無く、百合薗圓がシャマシュ教国によってこの世界に召喚される。それと同時に、常夜月紫がこちらの世界に来ることになるだろう。圓と月紫が再会するその日がタイムリミットだ。そこまでに外堀を埋めておかなければ望みは潰える。あれだけ良い位置にいるソフィスだって、きっと怖いんだ」


「……アストラプスィテ大公領で、ルーネス達がアクアマリン伯爵令嬢に宣戦布告を受けたと聞いています。……焦っているというのは間違いないでしょうね。そして、それはアクアマリン伯爵令嬢だけの問題ではありません」


「イリスの言う通りだ。……何かしらの手を打たなければまずい局面に突入したが、下手な手を打ったらそれはそれで可能性が薄くなる。まあ、ルーネス達の人生だ。俺達が過干渉しすぎるのは良くないってことだけは心に刻んでおかないといけねぇな」


 その後、しばらく展示を眺めているうちに時間になり、ラインヴェルド達は昼食を食べるために『Rinnaroze』へと向かった。



 新星劇場(テアトル・ノヴァ)の第二ホールを貸切にして行われた演奏会はいよいよ終盤に差し掛かった。

 アネモネが登壇してピアノを務めていた女性と交代し、奏でられるのは『スターチス・レコード』のメドレーと、『賛美歌二十四番 星の光は満ちて、あゝ聖女様』に『スターチス・レコード外伝〜Côté obscur de Statice』の『バトルⅡ 〜vs枢機大罪〜』、『スターチス・レコード』の『ヒロインのテーマ』をアレンジした『魔王戦 〜聖女、最期の戦い〜』を混ぜてバトル曲風に仕上げた『天上に御座します聖女神リーリエ様を賛美する歌』の二曲。


 その圧倒的な演奏を聴いて、フレイはこの日、何度目か分からない感動の涙を流した。


「……素晴らしい演奏ですね」


「まさか、『極夜の黒狼のテーマ』から『煌びやかな宮廷舞踏会』、『黄昏と狼の綺想曲』へと来て、『チャラ男の襲来〜義弟ネストのテーマ〜』へと繋げるなんて……しかも、その繋ぎ目が分からないくらい自然で、とても素晴らしい演奏ですわ」


「……私も少し『スターチス・レコード』をプレイしてみましょうか」


 婚約者と同じものをみたいと思い、ローザから『スターチス・レコード』を借りれないか今度相談してみようと決意するルクシア。


「ロザリンド、本当に立派になって!!」


 一方、この貸切の場に娘の晴れ舞台をみたいだろうとローザから誘われて客席に座っている劇団フェガロフォトの支配人兼演出家のゴードン=ヴァーツレイクも、娘の立派な姿を見て今日何度目か分からない涙を流していた。

 ルクシアと、フレイやゴードンの間の温度差は大きい。


「まず、何よりも婚約者のフレイがこうして楽しんでくれていることが、私にとってはとても嬉しいことです。本当にローザ様には感謝せねばなりませんね」


 ルクシアにとっては、フレイが笑顔でいてくれることが一番の幸せだ。

 幸せの時間はあっという間に過ぎていく。ルクシアは最愛の婚約者に、次こそは自分の力だけで彼女を笑顔にして見せると強く決意した。



 ルクシアとフレイもラインヴェルド達と合流し、三組は『Rinnaroze』に向かうことになった。

 ちなみに、『Rinnaroze』での昼食を終えてからはそれぞれ別々に予定が立てられている。それぞれ、カルナ、フレイ、イリス、シヘラザードを喜ばせるためにラインヴェルド、ルクシア、オルパタータダの三人がローザと相談に相談を重ねて決めたとっておきのデートコースだ。


 『Rinnaroze』へは馬車で向かうことになった。


「……なぁ、ラインヴェルド。実はここに来る前から気になっていたんだが、俺達見張られてないか?」


「あー、それな。敵意を向けてこないから気にして無かったんだが、明らかに監視されているなぁ」


 ラインヴェルドとオルパタータダの監視されている発言を聞いて、ルクシア、フレイ、カルナ、イリス、シヘラザードの顔が強張る。


「大丈夫なのでしょうか……監視って」


「敵意がないということは……ラピスラズリ公爵家でしょうか?」


「確かに、それはありそうね」


「いや、カルナ。それはねぇなぁ……ラピスラズリ公爵家よりも練度は高くない。だけど、素人って訳でも無さそうだ。ラインヴェルド、実は何か知っているんじゃねぇか?」


「いや……ローザが前に行っていた子飼いの諜報部隊だと思っていたけどなぁ。ラピスラズリ公爵家に頼らない私兵を前々から欲しがっていたらしくて、闇の魔法の一件で獲物を見つけて嬉々として調きょ……まあ、色々としていたみたいだ。ローザは自分好みに育てられたって嬉しそうにしていたが」


 カルナ、イリス、シヘラザード、ルクシア、フレイはその話題を揃って聞かなかったことにした。


「まあ、アイツは人を好んで不幸にする奴じゃねぇからな。直接は会ってないが、全員が全員、アイツに恩を感じていることはあっても嫌っていることはねぇだろう。それに、変なところでイケメンだし、女性より女心を分かっているし見た限りだと大半が男だったが、全員中身まで女になっていると思うぜ。……というか、あの処分からそんなに時間経ってないのにこの練度とかそっちの方が怖えよ」


「……ローザだしな」


 まさに、ラインヴェルド達にとっては「安定のローザ」である。ラインヴェルド達の中のローザ像は一体どうなっているのやら。


「まあ、害意がないなら放っておけばいいだろう。アイツらだって、きっとローザに報告するっていう大事な仕事がある筈だ。ローザとしても関わった仕事は絶対に成功させないといけないし、上手くいったかどうかは確認しておきたい筈。その仕事をわざわざ邪魔するっていうのも気が引けるしな」


 最終的にラインヴェルドは彼女達と敵対することを避けて、平穏に『Rinnaroze』を目指すことにしたのだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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