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Act.8-272 ブライトネス王国に巣食う蛇の指先 scene.2

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「しかし、お前でも解明できないとか、魂は神秘に包まれているなぁ」


「まあ、これは神界の神々すら解き明かせてない問題だからねぇ。守護者である神々が守る『転生のシステム』という、神の力すら及ばぬ超高度技術によって魂は作られ、循環する。寧ろ、神として崇めるなら、こっちなんだけど……とにかく、このシステムの詳細は不明で、いつ頃から存在するかも、何者によって作られたのかも、或いは最初からそこにあったのかも分からない。ボクらの理解の及ぶものではないし、やっぱり完全な魂の作成はシーラの言う通り、ボクらの手に余るものなんだと思うよ。――人類だけではなく、神も含めて全ての知的生命体の、ねぇ」


「途方もなく大きな話になったわね。……とにかく、人格の付与と擬似的な魂の創造は可能で、それは一回生のものであると、そういうことでいいのかしら?」


「それも分からないよ。阿頼耶識を持たないこの擬似的な魂が、その後、『転生のシステム』に取り込まれて、次の輪廻の際には阿頼耶識を有する本物の魂に生まれ変わるのかもしれない。大体の魂はエネルギーの節約のために記憶を洗浄されるというリサイクルの形を取られ、強度の高いもの以外の魂は記憶を消されるんだけどねぇ……でも、魂の消滅などのイレギュラーも起こるし、真っ新な魂が作られるということはある。異物的な魂を解体して、魂の元となるものに戻してから他の魂の元と共に魂を再構成するということもあり得るからねぇ。ただ、その場合は元の魂と完全同一のものとは言えないけど」


 大海に流れ出た川の水を、元の川の水に戻せないのと同じで、一度素材に戻されて他の魂の元と一緒になった魂は二度と元の魂に戻らないからねぇ。


「……しかし、わざわざ女にしてどうするんだ?」


「こいつらって死刑囚扱いでしょう? なら、別に好きにしてもいいんじゃないかと思ってねぇ。極夜の黒狼は暗殺組織で、ボクにとっての【裏の剣】みたいなのだけど、諜報ができる要員が絶望的にいないし、ラピスラズリ公爵家に頼るのも良いんだけど、やっぱりボクが動かせる忍び部隊が欲しいなぁって思っていたんだよ」


「それ、ラピスラズリ公爵家のメイドである私の前で言って良いことなのですか?」


「カレンさんに話したって、別に何かできるって訳じゃないでしょう? お父様にも遠慮なく報告してもらって構わないし。……まあ、最初は抵抗するけど、男の矜持をズタボロに折ってから、少しずつ女の子に染め上げていくのって楽しくない?」


「……全く共感できないわ。ローザさんって何なのかしら? 鬼畜? 悪魔?」


「シーラさん、悪魔にも優しい子はいるからねぇ? ……ヴィーネットちゃんの悪口は許さないよ!」


「ひっ、こ、怖いわッ!」


「まあ、こいつは昔からドSだし、変なところに地雷があるからなぁ。とりあえず、シーラ、これだけは覚えておいた方がいいぜ。こいつの家族を侮辱するような発言をしたら、そいつの命は無い」


「わ、分かったわ。ぜ、絶対にローザさんの家族を蔑ろにするような発言はしないわ! 私だってまだ死にたくないもの……まだ、あの子とも合わせてもらってないし」


「あー、その件ねぇ。アルベルトさんや王弟殿下と同じ隠し攻略対象候補で、バッドエンドを誘発する地雷みたいな生徒会長のルビウス=ダルファルシア伯爵令息、本名、ラファエロ=ヴァイドカイン。……シーラさんが闇の研究所に送られたのと同時期にダルファルシア伯爵夫人の愛息子ルビウス=ダルファルシア伯爵令息を蘇らせるための闇の儀式の依代として誘拐された彼ねぇ」


「えっ……誘拐されたッ!? それって、どういう!?」


「『スターチス・レコード』にはいくつかのルートがあるんだけど、闇の魔力に関わるのは、悪役令嬢ローザ=ラピスラズリ、魔王、王弟ロードスター=ブライトネス、そして、ダルファルシア伯爵家だ。ゲームにおいてはパーバスディーク侯爵家はアルベルトの運命に影を落とす厄介な家系として登場するけど、闇の魔法には手を出していない。ダルファルシア伯爵家と王弟ロードスターには関係性はほとんどないのだけど、病弱で余命幾許もない息子を救うために闇の魔法に手を出し、その力を得るためにダルファルシア伯爵家のメイドだった彼の母を殺害、その力を利用してルビウスの魂と記憶をラファエロに移そうと画策した。しかし、記憶のみの継承という不完全な結果で終わり、ラファエロは母を殺したダルファルシア伯爵夫人への復讐を決意する。まあ、実際は、彼の中に潜んだメイドであったラファエロの母とラファエロを捕らえた男がダルファルシア伯爵夫人にいいように利用された挙句に殺害され、それを恨んで彼を復讐の方向へと動かしていたみたいだけどねぇ。彼はダルファルシア伯爵夫人に利用されて闇の魔力を得たのだけど、不要と判断されて殺された。死んだ瞬間に自らの魂を闇と同化させ、彼がラファエロに取り憑いたっていうのが真相。まあ、不完全だし、この世に物理的に爪痕を残すためにはラファエロを使って間接的に行動を起こさないといけないから、大した相手ではないのだけど」


「……大した相手ではないって。でも、それはラファエロが無事ってことよね?」


「シーラさんより一年上だし、ソフィスさん達の世代と一緒に魔法学園に入学すれば会うことはできるよ。……ってか、魔力持っているんだし、この国のルールに照らせばシーラさんには学園に入学する義務が発生するよねぇ。まあ、いいんじゃない? ちなみに、ダルファルシア伯爵家もフンケルン大公家派閥だよ? もっとも、彼女が闇の魔法に辿り着いたのは完全な独学で、フンケルン大公家の力は借りていないようだけど……って、噂をすれば」


 ってか、このタイミングで出てくるのか、ラファエロの復讐対象。この場でボクが殺したら復讐そのものが果たせなくなるけど、復讐相手を見失ったラファエロってどうなるんだろうねぇ?


「初めまして、ジャサント=ダルファルシア伯爵夫人」


「――アネモネ大統領に、陛下。……大公様の仰った通りね。私はね、負けられないの。大切な大切な、ルビウスが私の帰りを待っているのだから。そこの裏切り者を始末して――」


「……予定変更してもいいかな? シーラ、これが終わったらすぐにラファエロを復讐から解放しに行く。君の言葉で彼を救って欲しい」


「アネモネ、貴女は何を言っているのかしら? あの娼婦の息子は私の可愛いルビウスの新たな器となって死んだわ」


「娼婦じゃなくて、メイドだけどねぇ? ってか、貴族に妾がいることも別段珍しくないし、それに、夫に愛されなかったのは、貴女に魅力が、彼を繋ぎ止められるだけの力が無かったからじゃないのかな? 裏切り者とか、そういう以前にまずは自分のことを振り返るべきだと思うけど?」


 煌びやかな真っ赤なドレスを纏い、首にはドレスと同じように真っ赤な宝石を下げた、この陰気な研究施設に似つかわしくない派手な女の表情は本来の性格の悪さが滲み出て、まるで悪役令嬢ローザのように意地悪そうだ。

 夫に愛されたいのなら、そういう意地悪さを治せば、愛される努力をすれば良かったというのに。それをせずに、一時の相手を申し付けた挙句捨てた女性に嫉妬心を抱いて逆恨みをするとか……溜息を吐きたくなるよ。


「まあ、いいや。――カレン、殺していいよ?」


「――ちっ、ラピスラズリ公爵家の戦闘メイド! 闇の渦より出て貫け! 暗黒渦槍襖ダーク・ボルテクス・ランスズ


 闇の渦を展開し、そこから回転の掛かった無数の闇の槍を放つジャサント。でも、魔法の発動速度があまりにも遅い。

 闇の渦を展開しようとした瞬間には、カレンが空歩を使ってジャサントを上空から見下す位置に居て、そのまま武装闘気を纏わせたブーツを振り下ろしてジャサントの頭部を粉砕していた。


 ジャサントが死んだことで闇の渦が四散する。――まあ、ラピスラズリ公爵家にいくら闇の魔法が使えるといっても戦いの素人が勝てる訳がないよねぇ。


 女体化した研究員を闇で縛って展開した時空魔法の魔法陣で屋敷の一つで転移させ、その後相次いで現れた研究員七人をそれぞれ『量産型拳銃・ダークネスホーン』に「女体化の天恵」を食べさせた『天恵のダークネスホーン』で狙い撃ち、こちらも転移させる。

 その後も、次々と現れる研究員を、女体化させては屋敷へと転移させた。


「しかし、ほとんど小物だなぁ……つまんねぇ」


「そりゃ、フンケルン大公家派閥に所属している貴族と元貴族はブライトネス王国の約四分の一で、そのほとんどが下級貴族や没落貴族。数自体は多いけど、そこから闇の魔法に関わっているのは一握りじゃないかな? 秘密っていうのは多くの人間が抱えるほど、その秘密は漏洩しやすくなるからねぇ」


「となると、本丸のジェムくらいしかまともな敵はいないってことになるのか?」


「……いや、どうやらそういう訳でもないみたいだけどねぇ」


 闇の魔法の実験体とされたら子供達が捕らえられている牢については一旦後回しにして、施設の地下三階へと続く階段を降り切った時、円形状に六つの扉が設置され、その先に一本の廊下が続いている大広間で、執事風の男がボク達のことをまるで待っていたかのように、直立不動の姿勢で立っていた眼鏡をかけた男が、その指を眼鏡のブリッジに持っていき、位置を正した。


「初めまして、アネモネ大統領、ラインヴェルド陛下。私はフンケルン大公家で家令をしております、ゼームズ=フリュリウムと申します。――ここから先へ通すことは致しかねます。大人しくここで私に『管理者権限』を譲渡して果てなさい。フンケルン大公様こそ、この世の王になるお方なのでございますから、その力はフンケルン大公様にこそ相応しい」


 ……なんか、また面倒そうな奴が出てきたねぇ。

 でも、身の程を弁えずに『管理者権限』を寄越せと言ってくるような者とは違う、ボクの正体を理解した上で一切油断なくこの場に立っているという猛者の風格がある。


「それは出来ない相談ですね。……ただの家令ではありませんね。フンケルン大公の手駒としては、フンケルン大公様以上に厄介な気配がします……貴方は何者ですか? いえ、冥黎域の十三使徒のうち、どなたの配下なのでしょうか?」


 ボクがそう尋ねた瞬間、我意を得たりと言わんばかりに、ゼームズは不敵な笑みを浮かべた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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