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Act.8-270 ファンデッド子爵家の波乱のその後 scene.4

<一人称視点・アルマ=ファンデッド>


「まずは、クィレルさん。後日説明と言ったけど、タイミングはお任せします。王都に戻ってから希望の日にちを書いた手紙を王女宮までお願いします」


「分かりました」


「続いて、具体的なファンデッド子爵家への叙爵等の手続きですが、五つある闇の魔法の研究施設を押さえた後、王国騎士団等を派遣してこれを制圧――その後、今回の件に関わっていた貴族の抹殺等を行ってからということになるので、しばしお待ちください。さて、その後の流れですが、伯爵位の叙爵と同時にロウズさんからメレクさんへの領主交代を行うのが自然だと思いますし、そのような形になるでしょう。メレクさんとオルタンス嬢の顔合わせが終わって婚約が決まったのが一週間前、ブライトネス王国での結婚は婚約成立から一年後というルールがありますし、来年には結婚式を行うことになるのでしょうね。勿論、その日取りは当人同士が決めることではあると思うのですが……ここからは、ビオラ商会のアネモネさんからの提案を少し聞いて頂きたいと思います。本日、王城に婚約の詔書を提出すれば、アルマ先輩とバルトロメオ殿下の結婚式は、メレクさんとオルタンス嬢の結婚式が行える日の一週間後から行えるようになります。そこで、もしよろしければですが、二つの結婚式を一度に行ってみるというのはいかがでしょう? つまり、ダブル結婚式を行うというのはいかがでしょうか? 勿論、これはメレクさんとオルタンス嬢、それにアルマ先輩とバルトロメオ殿下、四人の話し合いの上で決めて頂くことになるとは思いますが。そして、もし、この提案にご興味があるというのであれば、是非アネモネさんにその旨をお伝えください。具体的な内容や日時は、その後メレクさんとオルタンス嬢、それにアルマ先輩とバルトロメオ殿下を中心に、ファンデッド家、ルーセント家、ブライトネス王家の三家とビオラの協議で決めていくことになるとは思いますが、アネモネさんはもしビオラの方で結婚式の依頼をして頂いた場合は、その費用を全額負担するそうです」


「び、ビオラで全額負担ですか!?」


「……オルタンスにも伝えておきましょう。ダブル結婚式は、私も良い案だとは思います。……しかし、アネモネ様に全額負担して頂くというのは」


「それは流石になぁ……まあ、費用云々は来年しっかり配分を決めればいいんじゃねぇか? ……分かっているって、アネモネはこういう時に一切譲ったりはしねぇって。でも、これは四人の幸せの第一歩だ……それは、やっぱり俺達の力です踏み出すべきだと思うんだ」


「では、そのようにアネモネさんにお伝えしておきますね。……しかし、ボクなんかは折角の申し出なんだしありがたくもらっておくべきだとは思いますが」


「まあ……お前ならそう言うよなぁ」


 ローザさんって、アネモネさんですからね。アネモネさんの言葉と言いながら、結局、どちらも圓さんの言葉な訳で……ただ、合同結婚式というのは確かに良いと思います……オルタンス嬢とメレク、バルトロメオ様が良ければの話ではありますが。

 ただ、全額支払ってもらうというのは……。


「さて……と、そろそろ王女宮に戻って仕事をしないといけないので、これで失礼します。今日の昼過ぎにはラピスラズリ公爵家の馬車が来る予定になっていますので、よろしくお願いします。明後日まではバルトロメオ殿下もアルマ先輩も有給扱いとなりますので、そのおつもりで。アルマ先輩、ディマリアさん、バルトロメオ殿下、昨日は忙しかったと思いますので、半日ゆっくり休んでくださいねぇ。それでは」


 そう言い残して圓さんは消えてしまった……一番休まないといけないのは圓さんだと思うのだけど。

 その後、私達はお言葉に甘えて昼までゆっくりした。既に居た堪れなくなっていたパーバスディーク次期侯爵様は、使用人達と共に早々に出発して、クィレル様もその後を追うように出発してしまわれた。……少しでも私達がゆっくりできるようにというお心遣いね。


 昼食をとったところでヘクトアールさんが到着し、私達は家族に見送られてファンデッド子爵領を出発した。



<三人称全知視点>


 ラインヴェルドとカルナ、ルクシアとフレイのダブルデートの予定日の三日前、そして、大公領のクイズ大会で優勝したソフィスが優勝賞品して求めたデートの予定日の五日前、そして、ローザが髪飾りのお礼を普段のお礼という形で手渡すことを予定しているデート擬きの予定日の八日前、ブライトネス王国国王ラインヴェルドは軍務省長官のバルトロメオに闇の魔法の研究施設の制圧のために部隊を編成を命じ、ほぼ同時刻に一斉攻撃を仕掛けた。


 ブライトネス王国でも本当に信頼に足ると判断された騎士百五十名に緘口令を敷いた上で、各隊を三十人ずつに分け、ジルイグスと平民出身で元傭兵の第一騎士団副団長ホセ=ファルクル、ディーエルと第二騎士団副団長クラップ=カーター伯爵令息、モーランジュと第三騎士団副団長ゼルガド=ナクゥワルァード伯爵、イスタルティと天馬騎士団副団長デイビッド=サテルラ子爵、ペルミタージュと陸上騎兵団副団長クレイン=ランスロット子爵が指揮するという作戦が事前に参加者に通達されたが、当日、彼らが目にしたのは三十人の部隊と共に予定地点に集結した統一感の欠片もない猛者達だった。


 まずは、一つ目の闇の魔法の研究施設。ブライトネス王国の最北に位置するこの施設の制圧のために派遣された増援は、アクア、ディラン、バルトロメオの三人。


 二つ目の闇の魔法の研究施設。ブライトネス王国の南西に位置するこの施設の制圧のために派遣された援軍は、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻の七人。


 三つ目の闇の魔法の研究施設。ブライトネス王国の北西に位置するこの施設の制圧のために派遣された増援は、リェッタ=クリムゾンスミスに変装したスザンナ、アゴーギク、リサーナ、ケプラー、ヒョッドル、シュピーゲル、カトリーヌの魔法省特務研究室の七人。


 四つ目の闇の魔法の研究施設。ブライトネス王国の東に位置するこの施設の制圧のために派遣されたのは、トーマス、レナード、ジョナサン、ヴァーナム、クレール、デルフィーナ、汀の七人。


 そして、最も重要性が高いと判断された南東の闇の魔法の研究施設に派遣されたのは、アネモネ、シーラ、ラインヴェルド、カレンの四人。


「王国騎士団である! 以下の罪名により、国王陛下の命によってこの研究施設を制圧する! 速やかに降伏せよ! 逆らえば斬り捨てる!」


 研究施設を包囲し、正面の門の前でジルイグスが一枚の書面を掲げて見せた瞬間――誰よりも先に研究施設に向かって攻め入ったのはアネモネ、シーラ、ラインヴェルド、カレンの四人だった。


「――ッ!? へ、陛下が!?」


「ジルイグス騎士団長、いかがなされますか?」


「いかがも何も、ホセ、お前は分かっているだろう? アネモネ閣下と陛下が先陣を切った。我らよりも強いお方達だ。――本来、国王は守られるべき存在だ。しかし、あの方は守られて玉座に座っておられるような方ではないことは重々承知している筈だ。我らが為すべきことは、陛下達の邪魔をしないこと。そして、降伏せぬままこの門を脱出しようとする者を一人残らず捕まえることだ。他の門に向かった連中にも、そう伝えろ!」


 ジルイグスの指示を受け、二人の騎士が急ぎ他の門を封鎖している小隊へと伝令を伝える。


「……しかし、あの陛下とアネモネ閣下を突破できる猛者など果たして存在するのでしょうか?」


「さぁなぁ? まあ、それは他の騎士団も似たようなものだろう? 助っ人が全部掻っ攫っていくことになるさ。……それじゃあ、ホセ、ここは任せるぜ」


「……うちの騎士団長も、陛下やアネモネ閣下(ローザ様)に負けず劣らず戦闘狂ですね。承知致しました、このホセ、この場の指揮を引き受け、一匹たりとも鼠を逃さず全てこの場で押さえてみせます」


 ホセが鞘から剣を抜き、守りを固めるように指示を出す中、ジルイグスは俊身を駆使して研究施設の主要な建物へと駆け出した。



<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「はぁはぁ……速過ぎるわ。もう少し、ゆっくりできないのかしら?」


「別にゆっくりしたいなら良いぜ? その前に俺が殲滅してやるから!」


「私もお供しますわ」


 ボク、シーラ、ラインヴェルド、カレンの四人はジルイグスの宣言が終わった瞬間に研究施設の主要な建物に襲撃を仕掛けた。


 俊身を使えることが当たり前になっているラインヴェルドとカレンと異なり、シーラは八技を習得していない。典型的な魔法使いタイプで体力もほとんどなく、鍛えているという訳でもないシーラは闇の魔力を固めて翼を作り、その翼で飛翔することで何とかボク達について来れているといった状況だけど、やっぱり、同等の速度で移動することは無理なのようで、徐々にだけど離れていっている。

 そして、ラインヴェルドとカレンはそんなシーラを慮るということはない……いや、勿論、討伐最優先だからシーラを慮って敵を取り逃したら何をやってんだって話なんだけどねぇ。


「……シーラさん、ちょっと失礼するねぇ」


「……ふぇ。えっ……は、離して! 恥ずかしいわ!!」


 シーラを片手抱っこで抱えると、シーラが恥ずかしかったのか抵抗した。


「そ、それに、このままだと戦えないでしょう!?」


「ほら、片手空いているでしょう? まあ、剣は難しいけど、銃なら問題ないからねぇ」


 ホルスターから黒く染まった(・・・・・・)銃を構え、剣を握って斬り掛かってくる施設の研究員と思われる男に向ける。

 次の瞬間――研究員の男が白い霧に包まれ、霧が消えたその場には剣と共に見知らぬ女性が倒れていた。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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