Act.8-248 バトル・シャトーのお披露目と剣武大会 scene.16
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
双剣を鞘に収め、裏の武装闘気で金砕棒を作り上げる。
「まるで、ヴァケラーさんの棍棒みたいですね」
「そうですね……よく見慣れていると思われるこの武器で、皆様を仕留めさせてもらいますわ」
ジャンロー、ディルグレン、レミュア――三人の間に緊張が走る。
「【極寒之王】」
「【暗黒之王】」
極寒の冷気を纏った『永久凍土の薔薇剣』を構えたジャンローと、闇を纏った『闇に染まりし勝利の剣』を構えたディルグレンがほぼ同時に攻撃を仕掛けてきた。
「いきますよッ! 爆熱猛打三連撃!」
聖属性の魔力が金砕棒に宿った。生成した聖属性と火属性の魔力が渾然一体となった野球ボール大の聖火球と呼ぶべきものに金砕棒でフルスイングを放ち――。
「シュートカノン!」
武装闘気を纏わせた聖火球をフルスイングで打った。
聖火球は猛烈な勢いでディルグレンに命中……するかと思われたけど、紙躱と見気の組み合わせで上手く回避できたらしい。まあ、狙いが単純だからねぇ。
「しまっていきます、二発目ですッ! ウルトラバッシュ」
今度は武装闘気を纏わせた聖火球に細工を施し、無数の小さな聖火球片へと変えるように猛打を放つ。
紙躱を使って回避をしようとしたタイミングで聖火球が爆発的なエネルギーを放って四散し、結果としてジャンローとディルグレンはかなりのダメージを受けたものの、まだ二人を撃破するには至っていない。
「これで最後です、よーく味わいなさい!! アンブッシュ・インビジブルスライダー!」
今度は聖火球を二つ作り、同時に金砕棒で打つ。
聖火球は猛烈な勢いでジャンローとディルグレンに向かって飛んでいき――そのまま姿を消した。
不輝炎放射という現象を利用して限りなく色を消し、武装闘気も硬化せずに纏わせた文字通りの消える魔球。流石に二人もこの攻撃を躱し切れずに直撃を浴びる……も、ほとんど崩壊してポリゴンを溢れ出している身体を引き摺ってなおも斬撃を浴びせようと迫ってくる。
「雷霆覇勁・猛打衝」
覇王の霸気を新たに纏わせた金砕棒を振りかぶり、二人が上段から振り下ろしを放ってきた瞬間を狙ってフルスイングを放った。
流石にこの一撃をポリゴンの流出が加速している今のジャンローとディルグレンで耐え切ることはできず、二人とも無数のポリゴンと化して消滅する。
「――汝、六属性の一角を担う火の精霊王よ! 今こそ契約に従い、我が下に馳せ参じ給え! 精霊召喚・イフェスティオ!」
レミュアの手の甲に赤い魔法陣のようなものが浮かび上がり、呼応するようにレミュアの目の前に灼熱の渦が生じた。
現れた燃え上がる炎でできた扇情的なドレスを身に纏った赤髪の女性――精霊王イフェスティオはボクに一瞥を与え、それから周囲を見渡し……そして、状況を理解したのだろう……物凄い勢いで顔色が悪くなった。
『状況は理解した……理解したが、流石にアネモネ相手は無理じゃ! まだ、あのドワーフ王の方が百倍マシじゃ!』
「……それでは、まるで私が化け物みたいではありませんか?」
レミュア、エアハルト、ラーニャ、アルベルト、エヴァンジェリン、日長、月長、玻璃、紫水が同時に首肯した。……いくらなんでも扱いが酷過ぎない!?
『……まあ、仕方ないのじゃ。これも勝たねばならぬ戦いなのじゃろう? じゃが、我も参加するならば何かしらの対価は欲しいのじゃ!』
「……参加賞は渡しますよ?」
どうやら参加賞は貰えるということでとりあえず安心したらしい……いや、参加するからにはボクの撃破を狙うくらいの志しは持ってもらいたいものだけど。
イフェスティオは武器型の精霊武装と衣装型の精霊衣装に形態変化した。
炎と化したイフェスティオは『妖精剣士の彗星細剣』とレミュアの独創級の装備の服を変化させ、灼熱の炎を纏った真紅の細剣を持った真紅の焔でできたドレス姿となる。
「天壌焼き焦す聖焔の剣」
レミュアは精霊王の力を宿した『妖精剣士の彗星細剣』に更に聖属性の魔力を込めて、聖なる炎の斬撃を放ってきた……いや、これは最早斬撃と呼べるものではない。灼熱の奔流と呼ぶべきものだ。
「圓式独創秘剣術 三ノ型 火喰-Higurai-」
霊力の炎をその剣に宿し、その火を纏った剣で切り裂くことで火で火を絡め取り、その火を剣に宿した火の中に吸収する圓式独創秘剣術三の型を放って精霊の焔を吸収しながらレミュアに向かって突っ走っていく。
「燦く星、宙より堕ちる! 砂塵嵐壁ッ!」
レミュアは極小規模なハブーブを展開する土属性と水属性の複合魔法を放って丁度ボクとの間に配置した。防御壁代わりのハブーブの上空には三つの猛烈な聖なる光が凝縮された天体が出現し、そこから収束された光が放射され……って、炎がやっぱり効かないと確信した途端にかなりえげつないコンボに切り替えてきたッ!?
「魂魄の霸気《太陽神》!」
光の速さと化した俊身でハブーブを避けて……ではなく、武装闘気を幾重にも纏わせた状態でハブーブに突入し、そのまま突破。
流石にレミュアもまさか弾丸のようにハブーブの中を突破してくるとは思わなかったのだろう。呆然としたままのレミュアの横を擦り抜けるのと同時に刃を抜き払って一閃――レミュアを無数のポリゴンへと変えた。
同時に魔力供給の絶たれたハブーブと光球が瓦解する。
そして、いよいよエヴァンジェリン、日長、月長、玻璃、紫水が各々武器を抜き払って戦闘態勢を取った。
戦闘開始からそろそろ十五分……いつになったら戻ってくるのだろうか?
◆
『灼熱鬼爆』
『苦無連投撃』
『瞬撃斬』
『紫電閃斬』
日長、月長、玻璃、紫水――四人の中では灼熱の炎の塊を投げつけて爆発させる日長の攻撃が一番早く到達しそうだ。とりあえず、灼熱の炎が爆発する前に「凍焔劫華」を放って凍結させ、無数の苦無を裏武装闘気で作り出した苦無で撃ち落として、玻璃の流れるような美しい連続斬りと斬り結ぶ。
雷属性魔法で生み出した紫電を纏わせて大振りで剣を振り下ろしてきた紫水に対し、ボクは「超音爆破」を放って猛烈な音の衝撃波で紫水の体勢を大きく崩し、体勢の崩れたところに左の剣で圓式を放って袈裟懸けに深々と斬撃を刻んだ。
ポリゴン化する紫水に注目している余裕はない。すぐに流れるような斬撃を放ち続けている玻璃に対処しなければならないからねぇ……しかも、日長と月長が攻撃を仕掛けてくる可能性もあるし。
「瞬撃斬」の軌道を読み切り、武装闘気を三重に纏わせた剣で玻璃の剣を受け止める。その瞬間、「常夜流忍暗殺剣術・毒入太刀」が炸裂し、玻璃の腕に猛烈な衝撃を走らせた。
剣を落としこそしなかったものの、もう利き腕は使い物にならない。剣を持ち替えることもせず、覚悟を決めて目を閉じた玻璃に圓式の斬撃を逆袈裟で放ってポリゴンへと変えた。
『鬼流忍術・影縫縛り』
月長が放ったのは相手の影に干渉することで相手の動きを封じる影魔法か。
そして、炎を纏わせた刀で日長が斬りかかってくる――素晴らしい連携だ……だけど。
「甘いですわ! 影片蝙蝠」
影魔法で縛られたボクの影が一瞬にして四散し、無数の小さな黒い蝙蝠となって日長と月長に襲い掛かった。
よく見ると、蝙蝠の頭部分には小さな薔薇の花のようなものがあしらわれ、その瞳は緋色に輝いている。
蝙蝠の猛攻を受けた日長と月長は猛烈な、抗い難い眠気に襲われて眠りに落ちてしまった。後はもう簡単だ――無防備な二人を斬ってしまえばいいだけ。最早、圓式を使う必要すらない。
『先程の攻撃、まるでリーリエ様をミニチュア化したようなものだったな。……闇属性と影属性の複合で、命中した者に睡眠の状態異常を引き起こさせる、といったところか?』
「流石はエヴァンジェリンさんですわねぇ。その通りですわ。状態異常耐性が無ければ防ぐことはできない睡魔――この眠りに抗うことはできません。さて、影も無事回収できたことですし、迷宮防衛戦以来の一対一の戦いと参りましょうか?」
エヴァンジェリンが刃に黒い雷を奔らせ、漆黒の靄のようなものを纏わせた両刀をクロスさせ、そのまま八の字を描くように剣を斜め下方向に高速で振り抜くことで黒い雷を纏った漆黒の竜巻のような斬撃を放ってきた。
『漆黒無双両太刀・黒刃雷閃大竜巻!』
「天覇鵬神劒!」
剣士系四次元職の剣帝が習得する特技を発動し、横の回転の斬撃によって生まれた竜巻に武装闘気を纏わせて漆黒の竜巻にぶつけてこれを相殺。
俊身を使って竜巻を避けるように迂回しながら、エヴァンジェリンの方へと攻め込む。
『天碎く衝撃』
「術式霧散」
不死の大魔術師が習得する地面に打ち込めば地震が発生するほどの振動を発生させる魔法を特定のエネルギーによって構成された術式を対象とし、無意味なエネルギーの羅列へと分解する分解魔法で分解する。
『漆黒無双両太刀・黒刃大竜巻-圓式-』
至近距離で「漆黒無双両太刀・黒刃大竜巻」を圓式で放ってきたエヴァンジェリン――ここまで近づいた状態だと《太陽神》を使わない限り回避は不可能だ。
だけど、それだとつまらない。やっぱりこういう窮地は真っ向勝負で打ち破ってこそだ。
「万象無ニ還ス靈劔」
一条、二条、三条、四条――無数に伸びた線状の斬撃が竜巻を貫通、そのままエヴァンジェリンの胴を貫いた。
剣属性と消滅属性を持つ剣士系四次元職の剣帝の奥義とも言える一撃の効果でエヴァンジェリンは竜巻と共にポリゴンと化す間も無く消滅する。
「さて、残るはエアハルト様、ラーニャ様、アルベルト様ですわねぇ? 戦うつもりがないのでしたら、このまま次の皆様が来るまでお待ちしても良いですが?」
ボクがこてんと可愛らしく(当社比)首を傾げると、エアハルト、ラーニャ、アルベルトの表情が強張る。
これでしばらく休戦かな? と思ったその時、闘技場の扉が開いて満身創痍のシモンが姿を現した。
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