Act.8-246 バトル・シャトーのお披露目と剣武大会 scene.14
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
バルトロメオの剣技は王室剣技と近衛隊特有の守りの剣、そして近衛隊隊長時代に培われた経験から来る我流剣の組み合わせで、攻撃的過ぎでもなく、防御重視でもなく、丁度その中間の良い塩梅に仕上がっている。
型通りの騎士剣ではなく、経験で培われたものも含まれているから、不測の事態への対応も容易い……まあ、これは、その剣技が自らの血肉となっていれば何も問題はないのだけど。
一回、二回と剣を交えようとして、覇王の霸気で互いの刃が触れずに終わる。
力は拮抗。じゃあ、求道の霸気に切り替えると、三重の武装闘気と求道の霸気、そして《戦騎士》という大きな壁が立ち塞がる。
いずれにしても長期戦はあり得ない。バルトロメオの《剣》はボクの《剣》で防いでいるものの、戦闘の意思を見せたロックス、シャードン、ラル、ヘルムート、ラミリア、フォッサス、イフィス、トーマスが隙を見せれば仕掛けてくる。
ここでバルトロメオを早めに突破し、次に備えなければならない。
「剣舞嵐撃!」
「ここで特技を使ってくるのかッ!?」
武装闘気と覇王の霸気を纏わせた斬撃の嵐が竜巻と化して敵を切り裂く剣士系三次元職の剣聖の奥義を放つ。
「【大海嘯】!」
『溟渤貴公子の軍務長官』に込められた武装闘気でコーティングされた【大海嘯】のスキルにより生じた波と斬撃の嵐が激突するも、斬撃の嵐を完全に止め切ることはできずに少しずつ粉砕される。但し、速度自体は大きく減速させられてしまった。
「終焉齎す断魔の紅炎劒」
魂魄の霸気の《戦騎士》の剣に炎が宿り、天空まで伸びるほどの巨大な焔の剣と化し、そのままボクへと振り下ろされる。
ボクは《太陽神》を発動して、炎の剣を躱しつつ、そのままバルトロメオの背後に俊身を使って回り込み――。
「千羽鬼殺流・金烏-圓式-」
腰の捻転力を活かして抜刀し、鞘走りで加速させた勢いを殺さずに、生み出された力の全てを相手の背後へ回りながら放つ太陽の別名の名を冠する鬼斬の技「千羽鬼殺流・金烏」を圓式で放つ。
僅かな時間耐えられたものの、結果としてボクの斬撃が勝って三重の武装闘気と求道の霸気、そして《戦騎士》という圧倒的な防御が打ち砕かれた。
「――ッ!? 間に合えッ!!」
斬撃を放とうとしたタイミングでバルトロメオが素早く振り返り、素早い斬撃を放ってくる。
ボクは剣を鞘に収めると、その鞘でバルトロメオの斬撃を受け止め――。
覇王の霸気同士の衝突によって天を裂くほどの猛烈なエネルギーが迸った。拮抗する筈の剣はボクが覇王の霸気を解除した瞬間に拮抗を失ってボクの方へと刃が迫る。
ボクは臆さず、二度目の踏み込みで太刀を躱して肉薄すると共に円を描くように抜刀した右の太刀で切り裂いた。
「千羽鬼殺流・破軍」
バルトロメオのポリゴン化を横目で確認しつつ、ボクの視線はロックスとシャードン、そしてラルに移った。
「高速錬成魔法・聖剣! 高速錬成魔法・魔剣!」
「炎の殺戮剣!!」
左からは聖剣エヴァンスカリバーと魔剣ジュラルスレイヴを構えて二刀流で切り掛かってくるロックスが、右からは万物を切り裂く燃え盛る炎の斬撃――魂魄の霸気《鰐》の一撃を放ってくるシャードンが、そして、真正面からは『双極の英雄殺し剣-ブルートガング・アンド・ナーゲルリング-』の双刀を構えたラルが仕掛けてくる。
「雨纏循延」
右の太刀で水の魔力を大きく引き伸ばし、循環させることで大きな流れを作り出すことで宛ら回転鋸のように水の刃を変化させる「雨纏循延」を放って「炎の殺戮剣」を消火し、そのまま水の刃をシャードンまで伸ばして武装闘気を三重に纏わせた水の刃でシャードンの纏った武装闘気ごと両断すると、「極大付与術」を使って一瞬にして聖剣エヴァンスカリバーと魔剣ジュラルスレイヴをただのよく切れる剣に変える。
「またそれですか!? やめてくださいよ、それ!!」
「圓流耀刄-比翼-」
武装闘気を三重に纏わせた双剣から繰り出した圓式の不可視の斬撃でロックスが斬撃を放つ暇を与えず両断し、そのままラルと剣を交えようとして、またも覇王の霸気の拮抗が切り結びを邪魔した。
「魂魄の霸気《幻魔》」
その瞬間、ボクは完全にラルを見失い――ボクの脇腹から無数のポリゴンが漏れ出たのを見た。
◆
「――なかなかやるねぇ。まさか、ボクに斬撃を浴びせるなんて、流石は暗殺者だ」
ラルの唯一の失敗は剣を抜き去ったこと。その結果、ボクに傷の修復のチャンスを与えてしまった。
例え剣を一本道連れにしてしまうとしても、そのまま突き刺しておけば、回復魔法で修復できなかったというのに。
「ダークヒール・フェイク」
闇の魔力が瞬く間に傷を塞いだ。ラルの顔は見えないけど、きっと歯噛みしている筈だ。
とはいえ、後一歩まで追い詰めれたのだから、ラルには後で個別にお祝いを出したいと思っている。油断は全く無かったのに、まさか初見の技とはいえ、ボクの身体を刺し貫かれるとは思っても見なかったからねぇ。
「差し詰め、あらゆる観測を掻い潜り、一方的な攻撃が可能となる魂魄の霸気でしょうか? しかし、それほどの力を無限に維持することができるとは思えない。タイムリミットがあるのでしょうねぇ」
見気で気配を探ることもできない。足音ひとつ聞こえない。まるで初めから存在しなかったように……これが、あらゆる存在証拠を抹消する魂魄の霸気《幻魔》の力か。
ラルの剣は完全な我流の暗殺剣――双刀から繰り出される剣は素早く、そして極めて鋭い。
そして、ラルはボクと協力関係になる以前から急所のみを的確に突けるように愚直なまでに反復を重ねて体に染み込ませている。急所を晒した隙を見逃さない眼力と、決してその隙を逃さない無意識にまで高められた隙突きの技術は、決してボクの隙を見誤らなかった、ということなのたろう。
――流石は攻略対象の母親というべきか。強いねぇ。
「はい、そこだねぇ」
覇王の霸気と武装闘気を纏わせた剣で、振り返りざまに袈裟斬りを放つ。タネが割れれば対処も容易い。
「……なんで、私の位置が見抜かれたのかしら? まだ解除まで十秒の余裕はあったのに」
「対象が観測できないなら、それ以外を観測すればいい。大気を風の魔力で掌握し、その動きを観測すれば、不自然に観測できない人型が浮かび上がりますよねぇ? それが、ラルさんです」
「お見事、だわ」
ラルが無数のポリゴンと化して消滅するのを見送ると、ボクはヘルムート、ラミリア、フォッサス、イフィスの四人に視線を向けた。
トーマスはまだ動かない。四人の戦闘を見た上で、生まれた隙を突くつもりなのだろう。
「這い寄る石毒」
ラミリアの指先から黒い光条が放たれ、それが新たな戦いの幕開けの合図となった。
石化の光条を回避したところを狙い、「音纏・打音」によって音という名の衝撃を纏わせたククリナイフの二刀を構えたフォッサス、同じく衝撃を纏わせた青龍偃月刀にも匹敵する巨大な太刀を構えたヘルムート、独創級の蛇腹剣『相喰む蛇の牙剣』のスキル【喰蛇環】を発動して、蛇腹に変形する刀身の三分の一を切り離して高速回転させた回転刃を放ったラミリアが一斉に攻撃に転じた。
無詠唱で「音纏・打音」を発動したボクは回転刃を躱すと、ヘルムートと剣を交えた瞬間に「超音爆破」を放ち、奇しくもヘルムートが「超音爆破」を放ったので互いの衝撃が相殺し合う。
「音纏・打音」の付与が消えた瞬間を狙って武装闘気とは覇王の覇気を纏わせ、圓式の斬撃を浴びせてヘルムートを仕留めた。
「――まずは、一人。次は……『落暉驟雨』でお相手致しますわ」
『銀星ツインシルヴァー』の双刀を鞘に戻し、『落暉驟雨』を構える。
「アクセラレーション・スパーク! アクセラレーション・ソニック! アクセラレーション・フラッシュ! アクセラレーション・ライトニング! 烈刃嵐撃――引っかき回す、引き摺り回す、斬る、どんどん斬る、じゃんじゃん斬る、斬りまくる、切り崩す、切り拓く、素早く斬る、もっと素早く斬る、滅多に斬る、矢鱈に斬る、夥しく斬る、滅茶苦茶斬る!」
一度目は「音纏・打音」の付与を利用して「音纏・打音」を相殺――その後は、武装闘気を全身に硬化せずに纏ったフォッサスに次々と二重に武装闘気を纏った『落暉驟雨』で斬撃を浴びせていく。
切り刻まれてポリゴン化したフォッサスから、すぐに視線を【喰蛇環】を解除して『相喰む蛇の牙剣』を構えたラミリアに向けた。
鞭のような怒涛の軌道の読みにくい斬撃を全て『銀星ツインシルヴァー』で捌くと、爆発的な踏み込みにより一瞬でトップスピードに達し、相手の間合いに入るおおぐま座α星の名を冠する鬼斬の技「千羽鬼殺流・貪狼」で、一瞬にしてラミリアの間合いに入った。
鞭と剣の中間のような『相喰む蛇の牙剣』は中距離での戦闘を得意とする武器だけど、その性質上、近づかれると攻撃を当てることができなくなる。
ラミリアは武装闘気で硬化した尻尾を鞭のように使って最後の抵抗を試みたけど、ボクの右の太刀が先にラミリアの纏っていた武装闘気を貫き、ラミリアを無数のポリゴンへと変える。
さて、残るはイフィスとトーマス。しかし、トーマスは動く気配を見せず、イフィスが細剣を構えたところを見ると、イフィスとボクの一対一の対決になりそうだ。
まるで、あの獣王決定戦の時の再戦でもしているみたいな気持ちになるねぇ。
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