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Act.8-240 バトル・シャトーのお披露目と剣武大会 scene.8

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>


「どうやら、選択を誤ったようですわ。先に倒しておくべきでした、ミスルトウ様」


 この戦いの要がラインヴェルドとオルパタータダだと確信し、守りに入った。その判断は見事……流石はエルフ族の参謀だと恐れ入った。


「……エルフの里での戦い以来ですね、この姿を見せたのは。しかし、あの時と今回は違います。――初期化(フォーマット)は使えません。それに、貴女の得物の一振りも抹消することができました」


 『神殺しの焔(レーヴァテイン)』はGM用の武器(破壊不能オブジェクト)――いくら幻想級の武器であっても、耐久力の問題で簡単に砕かれてしまう。

 折れた『銀星ツインシルヴァー』を時空魔法で修復させつつ、さて、どうするべきかと思案を巡らせる。


「本来ならば、ラインヴェルド陛下を無視して制限時間がいっぱいになるのを待つという手もありますが、それでは面白くありません。では、ミスルトウ様を倒すべきかと言いますと、ポラリス師団長の次はお二人のお相手をすると決めてしまっていますから、覆せません」


「つまり、アネモネ――お前に残された道は『神殺しの焔(レーヴァテイン)』を突破するってことだが……本当に可能か?」


 オルパタータダが戦いの最中なことを忘れたように折角隙を見せているのに、斬り掛かることなく尋ねてくる。


「可能かどうかは分かりませんし、ぶっつけ本番ですが、一つだけ試してみたいことがありますわ。それが終わってから、陛下の相手をするということでよろしいでしょうか?」


「勿論だぜ。――見せてみろよ、その秘策とやらを」


「では、お言葉に甘えて。覇王の霸気」


 覇王と求道――対極に位置する二つの霸気には恐らく最果てが存在する。


 覇道の霸気を更なる段階まで高めた先にあるのは他者や世界の形を自分が望むように改変する能力で、周囲を取り込む空間を展開したり、自分を中心に一部分だけを異界にするという力があることが判明している。

 求道の霸気を更なる段階まで高めた先にあるのは自分に対する敵対者の干渉を無効化し、独立した個として存在することができるようになる能力で、発現している最中は世界から独立した存在となり、基本的に己と接触しなければ外界に影響を与えることが無くなるということが判明している。


 つまり、この最果てとは、その力を限界まで突き詰めたもの。


 覇王の霸気であれば、自分の霸気の及ぶ範囲の既存の世界法則を、最終的にはこの宇宙全てを自らの法則で上書きして自分の望むままに上書きすることが可能となる。

 魂魄の霸気であれば、世界から外れた完全永遠の存在となり、例え世界を塗り潰すほどの覇道神の干渉を受けてもその影響を全く受けなくなる。


 ……まあ、この辺りが霸気の到達点であり、恐らく大倭秋津洲帝国連邦の存在する虚像の地球における神――つまりは、この世界における『管理者権限』を有する神と同質の存在に至るための資格なのだろう。


 名付けるなら、覇王神と求道神……ただ、ボクの有する全ての霸気を消費するほどの膨大な霸気を使用するようだから、覇王神と求道神の両立は不可能みたいだけど。


「求道の霸気最終領域・求道神の効果は圧倒的な防御力というところかな? 存在値が単一宇宙に相当する――つまり、人間大の宇宙になっているから、単一宇宙破壊規模のダメージを負わない限りは一切のダメージが通用しない。そして、覇道の霸気最終領域・覇王神とは、自分の霸気の及ぶ範囲の既存の世界法則を、自らの法則で上書きし自分の望むままに改変する力ということになるみたいだ。大凡の予想通り……そして、これなら、許可した者以外からの干渉を無効化するあの二人の魔法少女も殺せるでしょうね。これは、汀さん達と八賢人のノイシュタインさんに良い報告ができそうだ」


「つまり、求道神モードのアネモネには宇宙破壊規模の攻撃を叩き込まないとダメージを与えられないってことか?」


「まあ、そういうことになりそうですね。覇道の霸気最終領域・覇王神」


 「あらゆるものを斬り裂く」という意志を宿した斬撃は最も容易く『神殺しの焔(レーヴァテイン)』を切り裂いた。

 これが……『管理者権限』に匹敵する、世界を支配できる神の力の片鱗。


「……覇王神か、お前はいつも俺達の先を行っちまうな」


 砕かれた『神殺しの焔(レーヴァテイン)』の中から姿を覗かせたラインヴェルドが少しだけ寂しそうに呟いた。


「そんなことはありませんわ。少なくとも、覇道の渇望は私よりも両陛下の方が断然上ですからね。きっとすぐに覇道神に至ることができるでしょう」


「おい、つまりそれって求道神には至れないってことか?」


「……お二人はどう考えても覇道の性質に偏っているでしょう? 求道神は無理なのではありませんか?」


 内へ内へと求道していく者が至る求道の最果てにラインヴェルドが到達できるとは思えない。ただ、逆に覇道の最果てには簡単に到達できそうだとは思う……だって周りを振り回すことが大好きな暴走迷惑陛下達なのだから。


「なんかディスられている気がするんだけど気のせいか?」


「気のせいじゃありませんわ」


「まあ、言いたいことは分かっているし、理解もしている。ただし、反省して治す気は更々無いけどな」


「速やかに治しなさい。最もこの国で真面目で最も苦労人の宰相閣下がこのままでは過労死してしまいますわ」


「お前は一体誰の味方なんだよ!」


「この話題に関しては、私は各国の面倒ごとを押しつけられる文官を束ねる皆様の味方ですわ」


 み、ミスルトウが泣いているッ!? そんな泣くことじゃないでしょ!! ってか、ボクはずっと表明しているし、文官達の仕事が増えないように鋭意努力しているつもりなんだけど!!


「本当にアネモネ様だけですよ、そんなことを言ってくださるのは。迷惑を掛ける人達が上層部には多くて多くて……とても困っているんです!! メアレイズさんなんか、年中発狂していますよ!」


 あー、ブチギレうさぎさん。万年お怒りモードだからねぇ……消費できるだけ有給消費して積読のライトノベルを読みまくるのが唯一の楽しみだとか。その時しかリラックスできないんじゃないかな? 本当にブラック企業だよねぇ、多種族同盟加盟国の文官上層部って。


「我もエルフ族長や二人の国王と一緒くたにされるのは心外である! 我はしっかり公務をしておるからな!」


「父上の代わりに申し上げさせて頂きますと、私の父もお三方のようにご迷惑をお掛けするようなことは絶対にしておりません」


 ディグランとソットマリーノの冷たい視線をラインヴェルドとオルパタータダは「罪悪感を感じるじゃねぇか」と全く罪悪感を感じていない表情でぶった斬った。ちなみに、ここにいないヴェルディエもきっとこの場にいれば抗議の声を上げただろう。

 そして、何も知らないところでエイミーンがボコボコにされていた。……自業自得。


「……覇道神に求道神……いずれにしても途轍もない力じゃ。あまりにも力に隔たりがあり過ぎて場違いに思えてくる」


「あら? ミリアム様は資格を持っていらっしゃるではありませんか? ……人の魂というものは幾多の経験を積み、転生を行う度に鍛えられていきますわ。前世の記憶を持つ者というのは、基本的には魂の強度が極めて高い者なのです……まあ、必ずというものはこの世に存在しませんし、消えにくいというのが正しいのでしょうが。そうして、鍛えられた魂を持つ者ほど『王の資質』を有する可能性が高まります。優れた魂程、魂の持つ引力、因果に干渉する力が強まっていく傾向にあるようですからねぇ。そして、魂にはこうして自然に鍛える以外にもう一つ、鍛える方法があります。それが、聖人に至ること――当然、ミリアム様も開花していないだけで必要な資質を備えておりますわ」


「儂も『王の資質』を持っておるのか。……ちなみに、アルベルトは持っているのか?」


「持っておりませんわねぇ、少なくとも今は。しかし、未来は誰にも分かりませんわ」


「お前になら分かりそうだけどなぁ」


 ボクの超共感覚(ミューテスタジア)って別に万能能力って訳じゃないんだよ? 望んだ未来を望んだように見通せるって訳じゃないし、直前にならないと見えない場合もあるからねぇ。……異世界召喚の時とかみたいに。


「さて、こっからは真剣勝負だ! 二人同時にお手合わせ願うぜ! 勿論、さっきみたいなクソつまらない勝ち方は無しだ! 分かったな!」


 ……強制なんだねぇ、それ。拒否権ないのか。


 ラインヴェルドとオルパタータダが同時に左右から斬り掛かってくる。二人とも使うのはそれぞれの国に伝わる王室剣技ダイナスティー・アーツ王家伝剣(ロイヤル・アーツ)だ。

 それぞれの初代国王が幾多の戦いを経て完成させて剣技を基礎とし、より美しい型を目指して研鑽を重ねられた儀礼用の剣技――技名のついたものや圧倒的なものは無く、攻撃よりは守備寄りの剣技だけど、ラインヴェルドやオルパタータダが使うと両国の初代国王のもののように攻撃的な性質を帯びる。


 武装闘気と覇王の霸気を纏わせ、圓式の斬撃を振るう……やっぱり、普通の覇王の霸気だと拮抗して触れない状態になってしまうのか。この均衡を破壊するためにはやっぱり上回るほどの霸気を纏わせる力技か、魂魄の霸気に切り替えるか、相手の斬撃を上回る速度と反応できない位置に斬撃を浴びせるか、そのいずれかしかない。


 求道の霸気へと霸気を変更して、覇王の霸気を突き破ってラインヴェルドとオルパタータダの剣ともう一人のアネモネと共に斬り結ぶ。


「ってか、普通にお前も王室剣技ダイナスティー・アーツ王家伝剣(ロイヤル・アーツ)を習得しているんだなぁ。さりげなく混ぜられる猛毒が地味に恐ろしいんだけど」


「アネモネは、一目見た剣技が身体的に可能であれば大体模倣できるから別に驚きも何もないんだが……一番嫌なタイミングで型を崩してくるからタチが悪い!! やっぱり性格悪いよなぁ、お前」


「……性格悪いって酷くないですか!? ディスっているんですか!?」


「俺達もお前も贔屓目に見ても性格が良いとは言えないだろう? まあ、策を講じるタイプの策士はみんな性格が悪くなきゃ強くなれないけどな」


 ……まあ、それには賛同するけどねぇ。でも、性格悪いって言われると少し凹むよ。良い性格している訳じゃないけどねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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