Act.8-238 バトル・シャトーのお披露目と剣武大会 scene.6
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
巫女の姿へと変化し、結界や障壁の展開が可能になる《天ツ巫女姫》を発動した巫女服姿に、更に天使の片翼と悪魔の片翼を持つ東洋と西洋の神話のキメラみたいな姿となったボク。
この天使と悪魔の力もかなりの試行錯誤の末に辿り着いた天子と悪魔の最上位――熾天使と悪魔王の力を有していて、ただの天使の力を顕現していた今までの二戦の天魔纏身とは随分レベルが違っている。
アクアはただ天使化により手に入れた翼を羽搏かせるのではなく、俊身の要素を取り入れて翼を高速で動かすことで瞬間移動にすら見えるほどの速度を得ているようだ。なかなか速いねぇ。
アクアが『光を斬り裂く双魔剣』の刀身に四重の武装闘気――赤み掛かった黒い武装闘気を硬化させて纏わせ、剣をぐるりと回して双刀を逆手で構えると、一気に飛翔して天井近くにまで飛び上がり、そこから位置エネルギーと剣を大きくもう一回りさせた剣自体の重さを使って加速し、速度という名の重さと威力の乗った二刀からの斬撃を叩き込んでくる。
「圓式独創秘剣術 一ノ型 圓-Madoka-」
覇王の霸気を纏わせずに武装闘気を四段階纏わせた『銀星ツインシルヴァー』の双刀で受け止め、衝撃を上手くコントロールしてそのまま斬撃をアクアに浴びせようとした……けど、アクアは既に距離を取っていて、高威力の斬撃を叩き込めなかったので、仕方なく適当な的を作って衝撃を流し込んで破壊する。
今度は覇王の霸気を纏わせたアクアが再び飛翔し、今度は逆手に構えた双刀で連続攻撃を仕掛けてくる。
同じく覇王の霸気を纏わせたボクの双剣とぶつかり合いそうになる度に霸気同士が激突してなかなか剣が触れ合わない。やっぱり、覇王の霸気のレベルはかなり拮抗しているみたいだねぇ。
「我流。借りるぞ、ポラリス」
アクアが『光を斬り裂く双魔剣』の左の太刀を鞘に収めて右の太刀を槍のように構えて一気に突き出してきた。
――見て、真似る。
オニキスだった頃、彼に先生と呼べる人は居なかったから、目で見て、体得で盗むか、後は我流の剣技しか無かった。
幾度となく剣を交えたポラリスの剣もアクアは当然体得している。まさか、このタイミングで使うとは思わなかったけど。
「甚だ不本意ですが、お借りしますわ。ポラリス式刺突」
「貴様、甚だ不本意とは一体どういうことだ! 不本意ならば使うなッ!」
あー、ポラリスが五月蠅いなぁ。
互いに拮抗しないようにと覇王の霸気を求道の霸気に切り替えたことで、攻撃力そのものは互いに上がったものの、霸気の衝突で剣と剣が触れ合わないという状況にはならなかった。
アクアが模倣したポラリス流の刺突にボクの方はポラリス流の刺突に「静寂流十九芸 剣術応用止ノ型 鋒止突」を組み合わせて全ての刺突を受け止める。
アクアが我流の剣技で不可視の速度に達した連続攻撃を放ってくるのを、『銀星ツインシルヴァー』で迎え撃つも、互いに決定打には至らない。
しかし、本当に楽しい戦いだ。いつまでも、いつまでもこうして剣を交えていたいと思えるくらいに楽しい死闘。異能も魔法も無しに純粋な剣の腕が勝敗を決してしまうような戦いだからこそ、ここまで本気で剣を交えられる相手がいるというのはとても嬉しい。
「楽しいですねッ! やっぱり、こんなにわくわくする戦いは本当にごく僅かな人としかできません! このままいつまでも剣を交えていても楽しいですが……それだと時間がいくらあっても足りないのでここから一気に攻めに転じさせてもらう!! 守護天使! 天軍降臨――七武の天使! 天使の加護!」
いよいよ、【天使之王】の本領発揮か。自分の防御力を著しく上昇させる派生スキル、片手剣、盾と槍、弓、両手斧、戦鎚、鞭、杖を持った七体の天使が光から生み出す派生スキル、自身に聖属性を付与する派生スキルを発動し、万全な状態で無数の天使を嗾しかけてくる。
求道の霸気を使って熾天使と悪魔王の翼を強化すると共に、光背を顕現――その光を全て無数の光の剣へと変えて弾丸の如く射出する。
この光の剣にも求道の霸気を施し、一つ一つが光の他に炎の性質を内包し、まさに、熾天の剣と呼ぶべき存在へと変化していた。求道の霸気とは、即ち「こうなりたい」という理想の追求――そして、その力は自身だけではなく自身の武装にも及ぶ。
アクア本人は紙躱と高速飛行で宛ら豪雨の如く降り注ぐ熾天の剣を悉く回避しているようだけど、七武の天使の方はそのようにはいかないようで、熾天の剣に刺し貫かれて光の爆発と共に次々と消滅していく。
「……これは、剣士同士の戦闘なのですか?」
「どう見ても違うだろ? 神話の一頁じゃないのか? しかし、よくあれを避けられるな、アクア。やっぱり、サシでやるならアネモネかアクアだなぁ」
「これは素晴らしいィ! 教皇様と枢機卿の皆様にご報告しなければ」
アルベルトの呟きにラインヴェルドが答え、狂信者のヴェルナルドが何やら面倒なことを言っている。……嫌な予感しかしないなぁ、そのメンツ。
ってか、サシでやるならアクアかボクって一体どういうことだよ? もっと他にも猛者がいるじゃないか!! オルパタータダはどうした!?
アクアも天使をいくら召喚したところで無意味と判断したようで、覇王の霸気と武装闘気を纏わせた熾天の剣を躱しながら加速に加速を重ね――更に《昇華》によって速度を上げていく。
「――って、さっきより威力上がってません!? 覇王の霸気と武装闘気を纏って無かったじゃないですかッ!」
「元々当たったらほぼ確実に一撃で撃墜なのですから、強化されても当たらなければゼロダメージなのではありませんか?」
「そうですが!? じゃあ、強化しなくても良かったんじゃ!!」
「まあ、気分ですよ、気分」
気分で覇王の霸気を纏わせるな、とラインヴェルド達の視線が痛い。まあ、フィーリングで纏わせるものではないことは分かっているよ?
「アネモネさん、借ります」
「何をかは知りませんし、見気でも確認しませんが、どうぞ」
筋肉の動き的には斬撃を繰り出した際に筋肉の収縮を連続で行うことによって、 その際に発する衝撃波を武器を通して相手に叩きこむ「常夜流忍暗殺剣術・毒入太刀」かな? それ、ボクじゃなくて月紫さんに借りることになるんじゃないかと思うけど、まあ、アクアは月紫と会ったことがないし、ボクの技というイメージしかないのかもしれないねぇ。
基本的な技はアクアの我流剣術。それを毒入りにしたってところだねぇ……さて、これは普通なら回避するべき攻撃だけど。
魂魄の霸気を使って腕を強化――一応、部分的な鋼身と硬化変色しない武装闘気を纏って万全の状態を整える。
「――ッ! 正気ですか!?」
「何のことかな?」
アクアの圓式を使った逆手の剣から繰り出される一撃を右の剣で受け止める。まるで、鋼鉄の壁を殴りつけたように、アクアの右腕がひび割れ、血液の代わりに無数のポリゴンが迸った。
緩急をつけることで残像を生み出す歩法の幻身と音と気配を絶つ歩法の絶音を駆使してボクから距離を取ろうと思ったみたいだけど……真剣勝負の戦闘で消極的な選択肢を選ぶということは、それだけ敗北や死に近づく行為なんだよ。
空歩を使いつつ踏み込みと共にアクアに肉薄し、双剣から光の速度の圓式を繰り出してアクアを撃破。かなり楽しい勝負だったので、最後にアクアが選んだあまりにもアクアらしくない悪手はちょっと残念だったなぁ。
◆
《天ツ巫女姫》と天魔纏身を解除したボクは、「舞い踊る飛剣」で操っていたツヴァイハンダーの《雪》、大太刀の《月》、レイピア の 《風》、フランベルジェの《花》、タルワールの《朧》、ソードブレイカーの《空》、ファルシオンの《天》、ズルフィカールの《光》、クレイモアの《泡》、パンツァーシュテッヒャーの《霧》をボクの背後に集結させると、ここまで十本の剣から逃げることに成功した四人に視線を向けた。
「ヨナタン、ジョセフ、ジョナサン――三人とも生き残っていましたねぇ。約束通り、三人――いえ、四人纏めてお相手致しますわ」
「「「「そうこなくっちゃね!!」」」」
ヨナタン、ジョセフ、二人のジョナサンが武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣で斬り掛かってくる。
四人が片手で軽々と振るう剣は、遊んでいるかのように空気を裂く。素早い斬撃はまるで怒涛のようだけど、四人とも笑顔で緊迫した気配は一切ない。
「まるで遊ばれているみたいであまり気分は良くないですわねぇ。……このまま剣を交えていても退屈でしょうし、少しスパイスを加えさせて頂きますわねぇ。ゲームオーバーにならなければ、遊びに付き合って差し上げますわ」
「えぇ? 別に僕達は本気でアネモネさんと剣を交えられたらそれで十分なんだけど?」
「本気で交えたいなら、尚更この程度の攻撃――躱しきれないといけませんわねぇ? ジャガーノート・ソード」
武器攻撃系四次元職の共通奥義で自身の現在のHPと現在のMPの半分を犠牲にする代わりに、相手の防御力やHP残量に関わらずクリティカルダメージを与える「ジャガーノート・ソード」を発動し、ツヴァイハンダーの《雪》、大太刀の《月》、レイピア の 《風》、フランベルジェの《花》を次々と放つ。
ヨナタン、ジョセフ、二人のジョナサンは見気を駆使して躱そうとしたものの、完全に動きを掌握されている四本の剣は直線移動ではなく手動の追尾機能がついているから、速度の増した剣を躱し切れずに最初はヨナタン、次にジョセフという風に次々と撃破されていく。
「癒しの風律、大地の治癒、慈悲の雨癒、火鳥の快癒、ダークヒール・フェイク!」
オリジナル風属性回復魔法、土属性回復魔法、水属性回復魔法、火属性回復魔法、そしてローザがレベル50で習得する闇属性回復魔法のフェイク版を駆使し、失われたボクのHPを全回復させる。
さて、ヨナタン達も撃破したことだし、次はポラリスを撃破するとしようか。そのヅラ、吹っ飛ばしてやるよ!
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




