Act.8-234 バトル・シャトーのお披露目と剣武大会 scene.2
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ビオラ=マラキア>
「今回の剣武大会はバトル・シャトーの最上階にある大ホールを利用して行われます。ちなみに、現在の空間は「L.ドメイン」となっておりますので、既に皆様、仮想の体に切り替わっております。この試合中に敗北した場合、実体の身体に戻った上で舞踏室で目を覚ましますので、そこから再度挑戦は可能です。舞踏室では給仕を受けて食事も行えるようになっていますので、是非お楽しみください」
「……しかし、随分長い螺旋階段だな。転移とか使っちゃいけないのか?」
「ショートカットとなる空間転移は、魔法・技能問わず一切が無効化される仕様になっています」
「――つまり、空を飛んだり、歩いたりする分には許されるってことだな」
「ご想像にお任せしますわ」
攻略の鍵はいかに復活してから戦線に復帰するまでの時間を短縮するかに掛かっている。ゾンビアタックが許可されているなら、積極的に利用すべきだからねぇ。
……まあ、今のでラインヴェルド達も空歩や飛行を使ってショートカットを使うことが推奨されている――逆に、八技すら使えない者は暗に戦力外と言われているということを把握したのだろう。
……それが知られても、ボクにとっては大した痛手にはならないんだけどねぇ。
七千段にも及ぶ螺旋階段を登り終えると、到着したのは大広間。大理石をふんだんに使われた部屋は極めて頑丈に作られていて、どれだけ暴れても破壊されない強度が保障されている。まあ、少々殺風景ではあるけど……別に戦いの場に華美さは必要ないからねぇ。
「それでは、これより一時間、私の全力――とくとご賞味あれ!」
◆
「Dear my homeland. For my homeland. Allegiance to my homeland. Devote to my homeland. Loyalty to my homeland. 纏う守護剣」
誰よりも先に動いたのは、意外なことにシモンだった。
五つのオリジナル身体強化魔法を発動し、一度目で魔力操作によって身体能力の底上げと筋力強化を行い、二度目で自己治癒力と耐久力を上昇させ、三度目で敏捷性を上昇させ、四度目で身体のリミッターを外し、限界を越えた力を出し、五つ目で魔法威力上昇と魔法耐性強化が加わる。
『近衛守護騎士の両装備』に水を纏わせて空歩を駆使して肉薄し、攻撃を仕掛けてきたシモンに対し――。
「マジックディスターバー、フォースディスターバー」
『銀星ツインシルヴァー』の二刀に特殊な月の魔力で魔力の流れを掻き乱して暴発させることでダメージを与える「マジックディスターバー」と特殊な月の魔力で気の流れやエネルギーの流れなどを掻き乱して暴発させることでダメージを与える「フォースディスターバー」をそれぞれ纏わせ、シモンに叩き込んだ。
確かにシモンの強化は圧倒的だ。だけど、もしその強化が自らに牙を剥いたとしたら? その結果は、一撃でポリゴン化するシモンがその身で体現している。
「――シモン近衛騎士団騎士団長が一撃で!?」
アルベルトは驚いているようだったけど、ほとんどのメンバーにはさほど驚きも無かったようで――。
「血纏刃。一突必殺」
「【水神顕現-龗-】ッ!」
「【纏黒稲妻】」
『宵鋼双刃-吸血剣・小烏丸打ち直し-』に吸収していた血液を纏わせ、その上から武装闘気でコーティングしたイリーナが俊身を駆使してボクの背後を取り、『黒刃天目刀-千鳥雷切-』に【纏黒稲妻】の黒い稲妻と武装闘気を纏わせたネーラがほぼ同時に斬りかかってくる。
更にそこに神光闘気を纏わせた【水神顕現-龗-】によって生み出した水の九頭龍をプルウィアが完璧なタイミングで放ってくるのだから、コンビネーションは最高で、相対する敵にとっては最悪の展開だ。
――ボクじゃなかったら今ので死んでいるんじゃないかな?
「武装闘気重掛・藍黒双刃」
武装闘気を重ね掛けすることで青みがかった黒色へと変化させ、イリーナの放つ全身の力を指の先に集約させて指を突き出し、超スピードで相手の身体を貫く突きの技――八技の白指を剣に応用した高速突きを体勢を大きく変えることなく超高速の突きを放つ突きの基礎技でもある「静寂流十九芸 剣術一ノ型 震紫電」を応用した対刺突技で相手の突きを受け止める技――「静寂流十九芸 剣術応用止ノ型 鋒止突」で受け止め、薬物強化をせずとも少女のものとは思えない尋常ならざる膂力から繰り出される素早い斬撃を放ってきたネーラの剣を「千羽鬼殺流・太歳」で霊力を溜めて放出することで生み出した暴風で吹き飛ばし、バランスが崩れたところに「静寂流十九芸 剣術一ノ型 震紫電」を放ってネーラの心の臓を貫いた。
「渡辺流奥義・颶風鬼砕」
鋭い風の刃をイメージした霊力を武器に宿し、勢いよく抜刀して横薙ぎすると同時に爆発させて周囲全てを斬り捨てる渡辺流奥義でイリーナを滅多斬りにして撃破しようとした……んだけど、まさか相手の攻撃を最低限の動きでひらひらと紙のように躱す紙躱で躱されるとは……じゃあ。
「神速闘気――俊身」
神速闘気を纏ったまま俊身を使い、イリーナの背後から唐竹、逆風、袈裟斬り、右切り上げ、逆袈裟斬り、左斬り上げ、左薙ぎ、右薙ぎの順に高速で斬撃を放つ「静寂流十九芸 剣術十一ノ型 八華閃」を浴びせて撃破。
「アクセラレーション・スパーク! アクセラレーション・ソニック! アクセラレーション・フラッシュ! アクセラレーション・ライトニング! 神速闘気全開ッ! 目にも止まらぬ速さに翻弄され、滅びを迎えろッ! 『終焉剣』ッ!!」
そのままプルウィアを撃破しようと思っていたところに、「アクセラレーション・スパーク」、「アクセラレーション・ソニック」、「アクセラレーション・フラッシュ」、「アクセラレーション・ライトニング」と、次々とダメージを負う代わりに速度を上昇させる魔法を発動し、更に神速闘気を纏って加速したレナードが空歩を駆使して翻弄しながら、滅焉剣に装填した魔法を込めた弾丸に闘気を込めて爆発的な威力へと高めて放ってくる。
光属性の魔法――ただでさえ強力な一撃を高めているから相当な威力だ。そのまま食らえばアネモネでも命はないだろう……滅焉剣ってやっぱりチート武器だ。
「《天照日孁大御神》――《太陽神》」
光速以上の速度での攻撃や光の操作が可能になる《太陽神》を駆使して光の速度の空歩で滅焉剣の攻撃範囲を回避する。
……「過剰殺傷を付与する者」があれば受けても良かったんだけど、普通に浴びれば死ねるからねぇ。
《太陽神》を解除し、『銀星ツインシルヴァー』を鞘に収める。
そして、統合アイテムストレージから『落暉驟雨』を取り出して――。
「それじゃあ、速さ自慢のレナード様に、同じ速さでお相手致しますわ。アクセラレーション・スパーク! アクセラレーション・ソニック! アクセラレーション・フラッシュ! アクセラレーション・ライトニング! 私の師匠――赤鬼小豆蔲の烈刃嵐撃、どこまで耐えられるのでしょうか? 引っかき回す、引き摺り回す、斬る、どんどん斬る、じゃんじゃん斬る、斬りまくる、切り崩す、切り拓く、素早く斬る、もっと素早く斬る、滅多に斬る、矢鱈に斬る、夥しく斬る、滅茶苦茶斬る」
レナードは元々スピード特化で神速闘気との相性はばっちりだったものの、逆に防御との相性が悪く、武装闘気の適性もあまり高くはなかった。それでも短期間でかなりのレベルにまで仕上げてきた。
……まあ、でもボクの方が練度が高いし、更にこっちは重ね掛け。まるで熱したナイフでバターを切り裂くが如く、もう本当に呆気なくレナードは倒れた。
「おいおい、レナードをスピードで上回って撃破とか鬼畜かよ!? 得意なものでボコされるのが一番精神ダメージデカいんだぞ!!」
「では、陛下も陛下の得意分野で撃破して差し上げますわ!」
武器を『銀星ツインシルヴァー』に持ち替え、ラインヴェルドを目標に定めて攻撃を仕掛けようとしたのだけど、その前にジルイグス、ディーエル、モーランジュの三人が立ち塞がった。
「あら? 国王陛下を守る忠臣ですか?」
「いや、どう見ても違うだろッ! 折角先に仕掛けようと思ったのに割り込みやがって!」
「風獣顕纏・暴風恐鳥-テンペスト-!」
最初に仕掛けたのはディーエルか。自らに風の魔法陣を展開し、暴風の鳥を纏うと、更に武装闘気で暴風の鳥をコーティングした上で神攻闘気、神堅闘気、神速闘気を自身の身に纏わせる。
更に足から風の魔力を流し込んで魔法陣を展開し、武装闘気を纏った暴風の鳥を顕現すると、一斉にボクの方へと殺到させた。「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-」を使って一気に爆発させるつもりなのだろう。
「風獣顕現・暴風恐鳥-テンペスト-! 聖獣変化-ドロー・サンシャイン-」
ボクもディーエルの魔法を模倣し、全く同じ数の暴風の鳥を出現させる。ただし、違うのはイスタルティが完成させた「魔術改変」の技術を使って属性を風から聖属性へと変化させたこと。
更に纏わせる武装闘気も二つから三つ――黒から黒み掛かった青、そして黒み掛かった紫へと変化させる。
「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-」
仕方なく狙いをボクから暴風の鳥だったもの――聖なる鳥へと変えたディーエル。
一斉に暴風を解放し、爆発的な旋風を撒き散らす暴風の鳥だけど、武装闘気に阻まれて全くボクの元暴風の鳥を撃破することはできない。
お返しとばかりに、今度はボクがジルイグス、ディーエル、モーランジュの三人に狙いを定めて攻撃を仕掛けた……んだけど、あっ、やっぱり空歩で躱されるか。
「聖獣喰鳥・大聖浄恐鳥-サンシャイン-」
複数の聖なる鳥が光へと変化し、一体の聖なる鳥が吸収して巨大化――その巨体を全く感じさせない速度で空中に飛翔すると、ディーエルに狙いを定めて――。
「聖獣爆裂-サンシャイン・ピュリファイ・バースト-」
聖なる鳥が一瞬にして爆発的なエネルギーを放出し、ディーエルの身体を飲み込んで焼き尽くした。
……まあ、単なる「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-」の聖属性バージョンってだけなんだけどねぇ。威力は「風獣爆裂-マグヌス・ストーム・バースト-」とほとんど変わらないけど、なんかこっちの方が威力高く見えるのってなんでなんだろうねぇ?
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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